新たなビジネスモデルを構築したいと考えてはいるものの、どのようにして進めればよいのかわからない、といった企業経営者や担当者の方は少なくないでしょう。新たなビジネスモデルの構築には、フレームワークの利用がおすすめです。本記事では、ビジネスモデルを構成する要素や具体的な作り方、役立つフレームワークなどをお伝えします。
ビジネスモデルとは
ビジネスモデルとは、企業が事業で利益を生み出す仕組みです。また、顧客から選ばれるべく企業としての価値を高め、末永く事業に取り組むための基本的な枠組みでもあります。
業界や業種により、ビジネスモデルはある程度パターンが完成しています。たとえば、ウォーターサーバーを無料で提供し、継続的に水を購入してもらう、コピー機を貸し出してインク代やメンテナンス代で利益を得る、といった消耗品を用いるビジネスモデルは有名です。
ビジネスモデルを作るメリットは、事業への理解が深まることです。事業の全体像を把握するのはもちろん、競合のリサーチも必要となるため、自然と事業への理解が深まります。
また、ビジネスモデルは収益を獲得する仕組みなので、構築する段階で問題点が明確になるメリットもあります。あらかじめ問題点を把握し、適切な対策を練ることができるため、安全にビジネスへ取り組めるでしょう。
ビジネスモデルを構成する4要素
ビジネスモデルの構築で必要となる要素は4つあります。「Who(誰に)」「What(何を提供して)」「How(どのようにして)「Why(収益につなげるのか)」です。
・Who ビジネスのターゲットとなる顧客です。ビジネスモデルを構築するにあたり、まずは誰をターゲットにするのかを決めなければなりません。ターゲットにより、何をどのように売るかが変わります。
・What 顧客に何を提供するかです。ターゲットとなる顧客にどのような商品、サービスを提供するのかを考えます。
・How 顧客に対しどのようにして商品やサービスを提供するのかを考えます。オンラインなのか店頭販売なのか、どういった集客手法を用いるのかを決めましょう。
・Why なぜ扱う商品やサービスが収益につながるのかを考えます。企業側は価値があると考えていても、顧客にとっては価値を感じられないかもしれません。収益を生み出せる根拠を考えましょう。
代表的なビジネスモデルのパターン6選
ビジネスモデルには、代表的なパターンがあります。以下、よく知られている6つのビジネスモデルをピックアップしました。
・物販モデル 自社で開発、製造した商品を、店舗やオンラインで提供して利益を得るビジネスモデルです。野菜や果物を直販する農家や、自社で手掛けたアプリをダウンロード販売するソフトウェア会社などが該当します。
・小売モデル メーカーから仕入れた商品を販売するタイプです。競合にも同じ商品が卸されているケースが多く、利益率が低くなりやすい傾向があります。コンビニやスーパーマーケット、ドラッグストアなどが該当します。
・広告モデル 運営している媒体に広告を掲載し、広告収入を得るビジネスモデルです。たとえば、TwitterやFacebookといったSNSが該当します。SNSが無料で利用できるのは、運営会社が広告で利益を得ているためです。
・従量課金型モデル 利用者の使用状況に合わせて料金が変化するタイプです。携帯電話料金やタクシー料金などが該当します。クラウドサービスにも、従量課金制を採用したサービスが多々あります。
・サブスクリプションモデル 定額で利用できるサービスを提供するビジネスモデルです。身近なものでは、動画視聴サイトが挙げられます。安定した収益を期待できる一方、利用を継続してもらうための工夫が求められます。
・フリーミアムモデル 無料でサービスを提供し、もっと利用したいのなら有料会員登録を促すパターンがよく知られています。無料サービスは機能や利用できる範囲に制限を設けるケースが多く、課金により制限を解除できます。
ビジネスモデルの作り方
ここでは、ビジネスモデルの具体的な作り方を解説します。新規事業などの構想を具体化する場合は、以下の手順で進めるとよいでしょう。
1.業界を分析する
業界分析では、主に競合のビジネスモデルをリサーチします。業界で採用率の高いビジネスモデルがあれば、なぜ多くの競合が用いているのかを分析しましょう。分析により、競合が採用している理由やメリットなどが見えてきます。
2.アイデアを洗い出す
代表的なビジネスモデルを把握したうえで、新たな収益化の仕組みを構築できないか、アイデアを列挙してみましょう。最初から一つに絞らず、アイデアを出せるだけ出して、その後に絞り込むのがポイントです。もしかすると、これまでになかった斬新なビジネスモデルを創出できるかもしれません。
アイデアの抽出には、3C分析法が役立ちます。3C分析は、顧客と競合、自社それぞれの視点で分析を行う手法です。また、SCAMPER法も、アイデアをたくさん出したいときに役立つフレームワークです。
3.アイデアをブラッシュアップする
捻り出したアイデアを絞り込むステップです。ここで大切なのは、顧客にとって高い価値を提供できるかどうかです。革新的なアイデアであっても、顧客に高い価値を提供できないのなら失敗に終わるおそれがあります。
顧客視点で考え、付加価値の高いビジネスモデルが見つかるまで絞り込みましょう。そのうえで、アイデアをさらに練り込み、もっと高い価値を提供できないかどうかを考えることが大切です。
4.実現可能なアイデアを選ぶ
斬新なアイデアであっても、実現が難しいようでは採用できません。たとえば、コストがかかりすぎるケースが挙げられます。最終的には、実現できるかどうかを判断基準にしましょう。
ただ、実現可能性を意識しすぎてしまうと、面白味のあるアイデアを創出できない可能性があります。自ら可能性を狭めてしまうため、こだわりすぎるのは避けたほうがよいでしょう。とりあえず自由にアイデアを出して絞り込み、最後に実現性をチェックする方法がおすすめです。
ビジネスモデル構築に役立つフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」
ビジネスモデルの構築には、ビジネスモデルキャンバスと呼ばれるフレームワークの利用がおすすめです。以下に挙げる9つの要素を埋めることで、ビジネスモデルの全体像を可視化できます。
・顧客セグメント 自社の商品やサービスをどのような人に販売したいのか、ターゲット設定を行います。
・提供価値 購入してくれる顧客に対し、どのような価値を提供できるのかを考えます。顧客の立場で考えることが大切です。
・販路 顧客へどのように提供するのか考えます。扱う商品やサービスに合わせ、適切な販路を選びましょう。
・顧客との関係 顧客と継続的な関係をどう築くかを考えます。定額制なのか、オンラインで対応するのかなどを書き出します。
・収益の流れ どのような形で、ターゲットからお金を支払ってもらうのかを考えます。登録料なのか、販売代金なのかなど、お金を回収する流れです。
・キーリソース 事業にとって大切なリソースを書き出します。設備や不動産、資金のほか人材もリソースに含まれます。
・キーアクティビティ ビジネスにおいて、自社がどのような行動をするのかを考えます。自社の活動を客観的に把握すれば、強化すべきポイントを可視化できます。
・キーパートナー ビジネスへ取り組むにあたっての、大切なパートナーを書き出します。取引先や委託先などが該当します。
・コスト構造 事業を進めるにあたって発生するコストを書き出します。コストを細かく抽出して整理することで、ふるいをかけるように無駄なコストが見えてきます。
まとめ
ビジネスモデルを考えることで、事業への理解が深まるほか、問題点を事前に把握できるというメリットがあります。本記事で紹介したフレームワークも活用し、オリジナルのビジネスモデル構築に取り組んでみましょう。新たなビジネスモデルを構築できれば、競合との差別化につながり、シェアの拡大も実現できます。ぜひお試しください。