医療・製薬

医療分野におけるAIの全貌を俯瞰!ディープラーニングが開く医療の未来

さまざまな分野において当たり前のように使われるようになったAI(人工知能)ですが、ディープラーニングにより医療の領域にもAIが進出するようになりました。そもそもAIとは何なのか、ディープラーニングでどのような変化が起こったのか、医療へのAI導入が具体的にどのように進められているのかなどを詳しく解説します。

AIの医療分野への進出により、これからの医療現場にどのような変化が起こり得るのか、AIを用いた未来の医療について考えてみましょう。

医療分野におけるAIの全貌を俯瞰!ディープラーニングが開く医療の未来

先端技術とAI倫理がもたらす「より良い医療のかたち」

ディープラーニングが開いた医療へのAI導入

ディープラーニングにより医療分野へのAI導入が活性化していますが、これまでの医療と何が変わったのかを詳しくご紹介します。

人工知能(AI)とは

まず、そもそも「人工知能(AI)」とは何かを解説します。

AIは人工知能という言葉と同じ意味で使われていますが、その定義は曖昧といえるでしょう。プログラムを組み込んだロボットであったり、人間の知能特有だと思われていたことを行う人造物であったり、心をもっているロボットととらえられることもあります。

1950年代にはすでにその概念が登場していたAIですが、実用には程遠い存在ともいわれていました。しかし、情報社会化が進む昨今、AIはなくてはならない存在になりつつあり、人と共存すべきものとしてとらえられています。

AIはディープラーニングで何が変わった?

AIの存在に大きな変化をもたらしたのは、「ディープラーニング」です。

まず、計算機(コンピューター)の性能向上によって、大量のデータを学習する「機械学習」という技術が生まれましたが、そこからデータを自身で抽出して判断できるようになったのが、ディープラーニングです。

ディープラーニングとは「深層学習」と直訳されます。ロボットは事前に与えられた情報をもとに正誤判定や単純作業を繰り返すことができていましたが、ディープラーニング技術はロボットが繰り返し作業を進めるうちに、自動的に学習できるようになります。

機械学習の手法として「ニュートラルネットワーク」という仕組みが用いられます。これはデータの一つひとつにどのような特徴があるのかを数値化した「特徴量」と呼ばれるものを組み込み、機械に判断させます。

ディープラーニングはこの特徴量をもとに、より細かく分析し精度の高い判断ができる技術です。これにより、人が機械に対して「教える」より高い精度の結果を出すことができるようになりました。

たとえば、AI開発者がチェスのルールに詳しくなくても、作ったAIはチェスを分析し学習を重ねて世界チャンピオンを破る方法を打ち出すといったことが挙げられます。

この結果、医療分野においてもAIを用いたさまざまな応用が可能になりました。

AIによる疾病の診断は可能

すでにAIが活躍している分野として、「疾病の診断を行える」ようになっていることが挙げられます。どのように疾病を見つけ出して診断をしているのか、その方法を見てみましょう。

画像認識による診断

まず、「画像認識による診断」ができるという点です。

画像認識は、ディープラーニングの最も得意とするタスクの一つでもあります。レントゲンやMRIなどの画像を用いて「異常」である部分を発見するのが、AIを用いた主な疾病診断方法です。

時には人の目では細かく、時間をかけて探す必要がある病変ですが、AIを用いれば高速・大量に画像を処理し、病変の可能性のある画像を抽出できるメリットがあります。もちろんAIにすべて委ねるのではなく医師が最終的な診断をしますが、最終的な診断に至るまでの医師の負担を大幅に軽減できるのは間違いありません。

人間の医師では見逃してしまったり、気づけなかったりするようなわずかな病変も検出する可能性があります。それは患者にとって初期の段階で病変を見つけやすくなる可能性が高くなること、医師は負担軽減や早期発見が可能になるなど、双方にとって大きなメリットといえるでしょう。

AIによるゲノム解析

次に、AIによる「ゲノム解析」での疾病診断についてです。

ゲノム解析とは、生物がもつ遺伝子や染色体などの遺伝情報であるゲノムを調べ、病気の予防や診断を行うことをいいます。AIが遺伝子を解析してがんゲノムなどの悪い遺伝情報を検出し、早期発見・早期治療を可能にするといいます。

AIを用いたゲノム解析では、検出結果がわかるだけでなく、そのデータをもとに治療方針もAIが助言することも可能です。すでに先進医療の一つとして活用されつつありますが、ゲノム解析に必要なデータは非常に膨大です。よって、活用するには相応のインフラも整備が必要であることが課題になっています。

医療機器への組み込み

最後に、AIを「医療機器に取り込んで活用する」ことについて解説します。

心電図系や尿分析装置などには、古くからAIによる自動診断システムが組み込まれており、医療現場のDX化を図るきっかけになったといっても過言ではありません。

また、診断から医師への情報共有までを行う「AI聴診器」なども実用化されており、医療機器とAIとの組み合わせはさらなる広がりを見せています。

その他海外では、患者に接触しないスマートスピーカーといった音から心拍数などをモニタリングして早期発見を行う医療機器や、採血を行うロボットなどが活用されています。

患者への施術・ケアへのAI支援

医療分野にAIが用いられることで、患者への施術・ケアに対してはどのような活用方法やメリットがあるのかといった、AI支援について解説します。

注射・採血のロボット化

検査や治療などで日常的に行われているのが注射や採血ですが、ディープラーニングを用いた注射・採血ロボットを使う取り組みが行われています。

ディープラーニングが得意とする画像解析を応用し、人の血管を特定して注射・採血する場所を決め、実際に針を穿刺するというものです。医療スタッフ・患者双方の要因によって見つけにくいこともある血管ですが、ディープラーニングによる画像解析は制度が高く、人間の目ではなかなか見つけられない血管を探し当てることもできるといいます。

外科手術のAIロボット併用

次に、外科手術におけるAIロボットの併用についてです。

外科手術はどんな部位・病変であっても、高い精度を保ちながら行う必要があり、医師のスキルによって大きな差があります。中には手術用顕微鏡を用いて非常に細かく、精密な手術を行うことも少なくありません。

こうした際に、AIによる画像解析と正確な動作を活用して、手術の手技を支援する取り組みが行われています。

具体的には、内視鏡手術を外科医が容易に行えるようになったり、人の手では難しい小さな部分に対応できたりするなど、手術ができる幅が広がったといえます。また、遠隔での手術の可能性も考えられており、今後も外科手術における医者とAIロボットの併用は注目されています。

薬学へのAI進出の影響

AIは手術や病変の診断だけでなく、薬学にも進出を果たしています。新薬ができるのを待つ人々にとって大きな可能性となり得る薬学へのAI進出について解説します。

医薬品の開発

医薬品の開発にもAIが取り入れられており、新たな治療薬となり得る化合物の発見といったことに活用されています。

治療薬を作ることを創薬といいますが、創薬は計算機によるシミュレーションが重要な役割を果たします。一つひとつの薬を作るまでには何年もかかることが多く、あらゆる研究や検証が必要です。AIによるディープラーニングを用いることで、長期間にわたる創薬プロセスを短縮できるため、コストや時間の削減はもちろん、新薬研究の生産性を大幅に高められるという大きなメリットが得られます。

処方の管理

薬を処方する際の管理についても、AIが活用されています。

患者の症状や処方される薬の組み合わせによって、患者に悪影響を及ぼす可能性があります。よって、処方の誤りは大きな医療ミスの一つとして注視されています。これを防ぐのは薬剤師や看護師の役割ですが、AIを通じて処方することで処方ミスを検出できるというメリットがあります。

複数の入院患者を担当する看護師が投薬ミスを起こしたり、医師が誤った薬の組み合わせをした処方箋を出してしまったりする医療ミスのケースをAIが監視して防ぎます。それだけでなく、AIが患者のカルテにあるデータをもとに、より積極的な処方の提案・支援ができるといいます。

ケアレスミスが重大な医療ミスにつながる投薬ですが、そのリスクを回避できるのがAIによる投薬の大きなメリットです。

医療事務の支援

病変の診断や投薬のサポートといった医療現場だけでなく、その裏方となる医療事務の支援にもAIが活用されています。

レセプト業務のAI化

医療事務の大きな部分となる「レセプト業務」のAI化が進められています。

レセプトとは診療報酬明細書のことで、各保険団体から診療報酬を請求するために行われる業務です。レセプトを算定するには多くのルールがあり、間違いや不正があると医療機関に診療報酬が支払われなくなるため、細かな点検が重要になります。

そこで活用されるのが、AIを用いたレセプト業務です。レセプト点検だけでなく、電子カルテや手術データなどを機械学習させ、算定漏れや間違いを高い精度で検出できるというものです。

こうしたレセプト業務は人工知能による自動化に向く分野のため、医療事務をAIが担うことで事務コストを大幅に削減できるメリットがあります。

AIによるセキュリティ確保

医療分野でのセキュリティ確保についても、AIが活用されています。

患者の個人情報や、研究内容の漏洩を防ぐために医療業界は厳格なセキュリティ対策を講じる必要があります。あらゆる情報がデータ化される中、サイバー攻撃の技術も高まってきています。

そこで活用されるのが、AIによる監視です。不正なアクセスといった異常な挙動を迅速に発見するほか、攻撃パターンを学習して対策を強化していけるのがAIの強みです。

また、医師や看護師によるカルテ改ざんといった、人間の手によって起こり得る内部不正についてもAIが監視・検知できることもメリットの一つでしょう。

医療分野へのAI導入の限界と可能性

医療分野へのAI導入についてさまざまなメリットをご紹介しましたが、ここからはAI導入の限界や今後の可能性について解説します。

法的な制約がある

医療分野へのAI導入は多くのメリットをもたらすと考えられる一方で、多くの法的な制約が存在しています。

まず、AIの急激な発展に法制度自体が追いつけていないという課題が挙げられます。患者のカルテ情報などは個人情報にあたるため、そのデータを活用するには個人情報保護法といった障壁があります。さらに医療という人間の生死がかかわる分野へのAI活用には、倫理的な面でも議論が続けられています。

また、ロボットを用いた際の誤作動、情報漏洩などの問題対策など、本格的にAIを導入するには課題が山積みです。

このため、医療分野へのAI導入は人間の代わりではなく、あくまで医師の「補助」にとどまることになります。

AIの可能性を引き出してベストな医療を

医療分野へのAI導入はメリットもデメリットもありますが、AIの可能性を引き出して多くのメリットを享受しながら、ベストな医療を患者に提供していく必要があります。

医療の発達、要求水準の上昇とともに問題視されるのが、医師や看護師など医療従事者の労働環境の悪化といった状況です。これに対応するには、業務効率化を図れるAI支援が有力と考えられます。

つまり、AIの可能性を引き出す導入を図ると、最良の医療が提供できる体制を構築できるということです。そのためには、AIのトレーニングから情報インフラの整備まで、実際に活用するための入念な準備が必要になります。

低コストかつスムーズにAIを導入するには、専門的な知識をもつ信頼できるアドバイザーの支援が望ましいでしょう。NetApp(ネットアップ)はAIの可能性を引き出し、医療のワークフローに組み込めるソリューションです。

このように、短期間でAI導入を実現できる包括的なAIソリューションの積極的な導入を検討してみると良いでしょう。

まとめ

日々進歩する医療の世界では、診断・治療・投薬・医療事務など、あらゆる場面ですでにAI(人工知能)が活躍しています。

医療分野でのAI導入には、できるだけ低コスト・短期間で導入を実現できる「NetApp」の活用をおすすめします。予測分析から自律的な判断が可能なAIは、業務の効率化を図れるだけでなく、医師や看護師の負担軽減、多くの患者を支援できるポテンシャルをもつ重要な技術であることを理解し、積極的な活用をしていくと良いでしょう。

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