CO2排出による環境への影響が懸念されてから久しく、世界各国で環境規制が厳しくなっています。特に自動車業界は取りざたされることも多く、年々強化される規制も相まって目を離すことができません。この記事では各国の排気ガス規制の現状と、電気自動車についてご紹介します。
世界中で厳しさが増す環境規制
2020年現在、パリ協定で制定された2050年CO2削減目標に向けて、各国は環境規制に対してますます厳しさを増しています。特に自動車の排出ガスは環境への影響が大きいとされ、排ガス規制が厳しく設定されているほか、定期的に規制強化がなされています。各国がどのような対策を打ち出しているのか、最新事情をご紹介します。
日本でも2020年度燃費基準に採用される「CAFE」
排出ガス規制が、世界でも厳しい水準にある「日本」。日本では2050年の目標に向けて、2025年までは年率5%程度の割合でのCO2削減を掲げています。2021年の規制達成可否に対しても、多くの日系自動車メーカーは達成可能との予測です。
そんな日本ですが、2020年度燃費基準に新たな基準を設けることが決定しています。「CAFE(企業別平均燃費基準)」と呼ばれる、自動車メーカーの負担を軽減しつつCO2削減を可能とする基準です。現在日本で販売される自動車は、すべて一定の燃費基準を満たしたものしか許されません。そのため自動車メーカーは開発予定のすべての自動車において、基準に沿うように徹底する必要があります。
一方CAFEが導入されれば、車種別ではなくメーカーごとに年間販売台数などを加味したうえで燃費基準が設けられます。これによってメーカーは販売するすべての自動車に対して徹底した燃費基準を設ける必要がありません。例えば特定の車種に技術を集結させて燃費基準をクリアするということも可能になります。企業が目標の達成に向けて、柔軟に対応できるようになる基準というわけです。現在CAFEはアメリカや欧州で採用されており効果が見込まれているため、それを受けて日本でも採用となりました。
「アメリカ」ではZEV規制が大幅強化
米国カリフォルニア州大気資源局では、「ZEV規制」という制度が実施されています。経済大国であることから排ガス量も多いアメリカでは、目標達成に向けての対策が急務であり、それを受けてZEV規制は世界でも類を見ないほど厳しいものとなっています。
はじめにZEVとは「Zero Emission Vehicle」の略称で、排出ガスが一切出ない自動車を意味しています。販売台数の多い特定のメーカーに対し、販売数のうち一定比率はZEV対応車を含めることを義務づける制度です。現在ZEVの条件を満たすのは、EV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)のみです。
2017年まではZEV規制対象メーカーは、カリフォルニア州で年間「6万台」以上販売するメーカーでしたが、2018年以降は年間「2万台」以上に対象が引き下げられました。これによって対象メーカーは6社から倍の12社となり、中規模メーカーにまで及んでいます。日本のメーカーでは、トヨタとマツダがEVの共同開発をはじめるといった影響がありました。
販売数のうちのZEV比率も年々引き上げられており、2020年現在の比率は16%。この比率を下回った場合、メーカーは基本的には罰金を支払うことになります。ただし16%を超えて達成したメーカーから超過分の権利を購入し、みなし達成とすることも可能で、現に多くのメーカーがこの手段をとっていると指摘されています。お金での解決では根本的な問題は解消されないため、比率については見直されるのではないかという話もあります。
排ガス規制の達成期限が迫る「EU」
「EU」では、2021年に乗用車のCO2排出量を95g/kmにするという規制が実施され、その達成期限が迫っています。これは日本の掲げる排ガス122g/kmを上回る、厳しい制限となっています。2025年/2030年にはさらに15%/30%の規制強化も実施される方針です。しかし厳しい条件なだけに、クリアが困難なメーカーも多いとの見通しです。
NEV規制がスタートした「中国」
CO2排出量最大国である「中国」でも、排ガス削減に向けて2019年から「NEV規制」がスタートしました。NEV規制は、中国国内で3万台以上生産・輸入を行うメーカーに対し、一定比率のNEV対応車の販売を義務化した制度です。達成できなかった分は、超過達成した他社から権利を買い取るという、米国カリフォルニア州の実施するZEV規制と似た罰則の回避方法を設けています。
NEVとは「New Energy Vehicle」の略称で、日本では新エネルギー車といわれるEV・FCV・PHV(プラグインハイブリッド車)が対応しています。2020年にはNEV比率が12%に引き上げられ、以降年率2%ずつ引き上げられる見込みです。
自動車のEV化で排出ガスゼロの時代へ
日本で電気自動車を意味する車両に、「EV(Electric Vehicle)」があります。排気ガスゼロに向けて、世界はこの車両に注目しています。
EV(電気自動車)の仕組みとは?
ガソリン車がガソリンをエンジンで燃焼させてエネルギーを生み出すように、電気自動車は電動モーターで車を動かします。車両を駆動させるための重要パーツには以下のようなものがあります。
モーター
電気自動車におけるモーターは、ガソリン車におけるエンジンと同等の部品です。モーターには大きく分けて、直流式と交流式の2種類があります。直流式は安価かつ以前から利用されていたためにノウハウが確立されており、扱いやすいという特徴があります。交流式はより細やかな制御が可能でさまざまなニーズに応えることができる一方で、制御が難しく技術的なハードルが高いという特徴があります。
バッテリー
電気自動車のバッテリーには、リチウムイオン電池やニッケル水素電池が主に使われています。バッテリーの基本的な役割は、充電した電気を蓄えておくことです。しかし電気自動車においては、モーターのコントロールやバッテリー管理、バッテリー冷却などの機能を複合しており、バッテリーパックと呼ばれます。
コントローラー
アクセルペダルと連動し、バッテリーに蓄えられた電気を調整してモーターに出力する装置です。交流式のモーターを搭載している自動車では、直流から交流への変換器も含みます。
EV(電気自動車)とHV(ハイブリッド)の違い
EV(電気自動車)と同様エコな自動車として、HV(ハイブリッド)があります。ハイブリッドも電気自動車と同じく電気で動くという共通点はありますが、異なる点も多々あります。ここではそれぞれの特徴から考えられるメリット・デメリットをご紹介します。
電気自動車は100%電気を動力源とするうえ、排気ガスも出さないので非常にエコです。エンジンを搭載していないので、駆動音が静かという特徴もあります。一方で電気のみを利用することから、充電場所を選ぶというデメリットも見られます。今後、より利用者が増え、EVが一般的になれば、この問題は解消されるでしょう。
ハイブリッドはガソリン・電気の両方を動力源とします。走行する環境によってエンジンとモーターを使い分け、エンジン稼働時には自動的に蓄電も行います。そのため充電スタンドなどから充電の必要がなく、ガソリン車と似た使用感のため利便性は高いでしょう。ただしエンジン・モーターを双方搭載していることで劣化や故障に対処する場合、よりコストがかかるというデメリットがあります。
まとめ
この記事では、各国が新たに取り組んでいる環境規制についてご紹介しました。2020年に新たに日本でも採用されるCAFE規制への対応など、これからより一層の環境規制が推進される以上、メーカーはEVの開発・販促に注力する必要があるでしょう。