製造業

物流業界におけるDX化とは? 必要な5つの要素と例を紹介

近年、さまざまな分野でデジタル技術の活用による「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進が重要な経営課題となっています。なかでも、その実現が急務となっているのが、生産と消費をつなぐ物流業界です。本記事では、物流業界のDX化に必要となる5つの要素を解説するとともに、具体的なDX化の事例を紹介します。

物流業界におけるDX化とは? 必要な5つの要素と例を紹介

Factory of the Future

DX化とは?

DXとは「デジタル技術の活用による変革」を意味する概念であり、その本質的な目的はデジタルソリューションを駆使して経営体制に変革をもたらし、市場における競争優位性を確立することです。近年、人口の減少や高齢化率の上昇といった社会問題が深刻化しており、物流業界においても人材不足や就業者の高齢化が加速しています。

国土交通省の調査によると、約70%の物流企業が人材不足を重要課題に挙げており、さらに全産業の平均よりも高齢層の割合が高い状況となっているのが物流業界の現状です(※1)。このような背景から、物流業界ではビジネスモデルの抜本的な変革が求められており、政府が物流領域の社会課題をまとめた「総合物流施策大綱(※2)」においてもDX化の重要性が主張されています。また、国際物流への対応が必須であること、災害の甚大化に対して備える必要があることも、物流のDX化・効率化が求められる理由です。

物流業界のDX化に必要な5つの要素

現代はデジタル技術の加速度的な進歩によって、時間や場所に縛られることなく、誰もが容易に商品を購入できる時代になりました。しかし、どれだけテクノロジーが発展しても、生産と消費の間には「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」などのプロセスが不可欠であり、現代のデジタル社会を支えているのは物流業界といっても過言ではありません。そんな基幹産業といえる物流業界でDX化を推進するためには、以下に挙げる5つの要素が必要となります。

  1. 自動化・機械化
  2. 現場の状況をリアルタイムに把握
  3. 人件費削減
  4. 安全性の確保
  5. 環境の変化に対応

自動化・機械化

人材不足や就業者の高齢化といった課題を解決するためには、自動ピッキングやロボティクス、AI技術やIoTなどを活用し、業務プロセスを自動化・機械化する仕組みを構築しなくてはなりません。これまで物流領域の自動化は莫大なIT投資が必要でしたが、テクノロジーの進歩・発展に伴って導入コストは下降傾向にあり、大企業のように多様な資金調達手段をもたない中小企業でも導入が進みつつあります。自社の事業形態やシステム環境に適したソリューションを選定することで、物流業務全般を省人化しつつ生産性の向上が期待できます。

現場の状況をリアルタイムに把握

労働力不足が慢性化するなかで拡大し続ける配送需要に対応するためには、いかにして配送ルートを最適化し、業務負荷を軽減するかが重要な課題です。たとえば、AI技術の機械学習を活用し、道路の混雑状況や事故情報、天候などをリアルタイムに分析できれば、複数車両での複雑な配送ルートに対応できるため、配送プロセスの大幅な効率化に寄与します。また、配送ルートを最適化することは、業務負荷を軽減するだけでなく、配送時間短縮による顧客満足度の向上やCO2排出量の削減につながります。

人件費削減

デジタル技術の活用によって物流業務の省人化が進めば、より少ない労働投入量で従来と同等以上の成果を創出できます。それにより、人件費の大幅な削減につながるのはもちろん、人的資源を業績向上に直結するコア業務に投入する、あるいは余剰資金をさらなるDX化につなげるといったことが可能です。ただし、IoT基盤や産業用ロボットなどのデジタル技術は相応の導入コストを要するため、小さな領域から段階的にステップアップしていき、IT投資に伴うリスクを最小限に抑える必要があります。

安全性の確保

物流業界は取り扱う対象物のサイズが大きく、荷役作業や運転業務における労働災害が起こり得るため、危険な労働環境になりやすい傾向にあります。どのような事業領域においても同様ですが、とくに物流業界に携わる企業は絶えず輸送の安全性向上に努めなくてなりません。したがって、デジタル技術を業務効率化や生産性向上のみだけではなく、危険性を把握し対応につなげるリスクアセスメントの鍵として活用する必要があります。また、衝突被害軽減ブレーキや注意喚起装置などのセーフティ機能を導入するなど、輸送や荷役の安全性向上を目的としたリスクマネジメントも求められます。

環境の変化に対応

現代は情報通信技術の発展に伴って市場のグローバル化が進展し、世の中の流れが目まぐるしく変化しています。このような時代のなかで、物流業界に携わる企業が市場の競争優位性を確立するためには、急速に変化する市場に対して柔軟に対応できる経営基盤を構築しなくてはなりません。そのためには、人間の勘や経験などの不確定要素に依存しない、データドリブンな経営体制が必要であり、AI技術やビッグデータ分析基盤、クラウドコンピューティングなどの戦略的な活用が求められます。

物流業界におけるDX化の例

DX化を推進する企業は、どのような業務領域にデジタル技術を活用しているのでしょうか。具体的な事例を知れば、DXを導入するイメージが浮かびやすいでしょう。

単純作業を自動化し作業時間を短縮

業務プロセスの自動化・機械化を推進する上で欠かせないシステムのひとつが「RPA(Robotic Process Automation)」です。RPAは定形業務やルーティンワークなど、一定の形式に則って実行されるPC業務を自動化するソリューションです。たとえば、受発注業務やピッキングリストの発行、ドライバーログの取得、納品書の作成、注文や在庫の追跡など、いわゆる単純作業の自動化・機械化に特化しています。このような特性をもつことからRPAは「デジタルレイバー」とも呼ばれており、作業時間や業務負荷の大幅な軽減に寄与します。

交通の経路検索や混雑状況をリアルタイムで提供

近年はECサイトの爆発的な普及によって輸送効率の悪い小口配送が増加し、物流コストが上昇傾向にあります。小口配送の多品種小ロットや多頻度納入に対応していくためには、交通状況をリアルタイムで把握し、最短かつ的確な配送ルートを選択しなくてはなりません。このようなシーンで活用されるのが、輸送情報をリアルタイムに収集し、混雑状況や事故情報などを共有するアプリケーションです。運行管理者とドライバーが運行ステータスや位置情報、案件情報などを把握できるため、輸送業務の効率化と納品リードタイムの大幅な短縮につながります。

ドローン配送を導入し生活の利便性をアップ

小口物流量の増加に伴って大きな注目を集めているのが、小型の無人航空機ドローンを用いた配送です。ドローンは軍事目的で開発されたものですが、物流業界での実用化が推進されており、交通渋滞の緩和やスピーディーな輸送、山岳部や離島における物流課題の解決、輸送コストの削減などにつながる技術として期待されています。ドローン配送の実用化は「空の産業革命」とも呼ばれており、物流業界の行末を左右する最も注目すべき技術といえるかもしれません。

まとめ

物流業界におけるDX化とは、AI技術や無人航空機などを用いた輸送・荷役・流通加工などの抜本的な変革を指します。物流は企業と消費者をつなぐ重要な架け橋であり、デジタル社会を支える基幹産業です。イノベーティブな物流サービスを開発するためには、まず小さな領域からDXを進め、自社にあったツールを導入することが重要です。

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