近年プラント操業において、サイロ化されたデータの統合が喫緊の課題となっています。蓄積されたデータを分析して利活用するには、データ基盤が不可欠です。本記事では、データ基盤の種類と構築する際に押さえておきたいポイントを解説します。また、日揮ホールディングスの「Cognite Data Fusion」導入事例を紹介します。
データ基盤とは?
データ基盤とは、組織の保有するビッグデータをビジネスで活用するために必要な技術基盤です。ビッグデータを活用するためには、収集したデータを蓄積し、分析の目的に適した加工を行わなければなりません。ビッグデータを扱う際に、留意しておきたいのがその複雑性です。
ひと言にデータといっても、テキスト・画像・音声・システムのログといったように多種多様な形式があります。データ基盤は、複雑なデータを統合して分析作業の効率化を図るのに有用なシステムです。分析したデータをビジネスの成果に結びつけるには、その特徴をよく理解したうえでデータをどのように活用するのかが重要です。
データ基盤の種類には「データレイク」「データウェアハウス」「データマート」の3つがあります。データレイクは、多様なデータをそのまま保管できるのが特徴です。データのフォーマットや種類に関係なく蓄積されていくため、将来的に現在とは異なるデータが必要になった場合も柔軟に対応できます。
データウェアハウスは、定義に基づいて処理されたデータを格納するシステムです。分析しやすいフォーマットでデータを保管するため、分析する際にはスムーズにデータが抽出できます。データマートは、小さなデータセットを全体から分離して保管するシステムです。
データウェアハウスが、大規模なデータ群から分析する度にデータを加工するのに対して、データマートではすぐに分析結果を確認できます。近年では、データウェアハウスとデータマートを組み合わせる「ハイブリッド型データマート」を採用する企業も増えています。
データ基盤を導入しただけでは、その有用性は十分に発揮されません。データを蓄積するだけで満足せず、分析しやすい環境を整備してビジネスの意思決定に役立てましょう。いくつかのデータ基盤を組み合わせると、分析の精度向上が期待できます。
なぜデータ基盤が必要なのか
近年、データ基盤を導入する企業は増加傾向にあります。データ基盤の導入は、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。これまで多くの企業において、部門ごとのシステム最適化を図るのが一般的でした。データを分析するには、異なるシステムで保管されたデータを統一する必要があるため、サイロ化を解消しなければなりません。
マーケティングで扱う顧客情報は常に変化し続けます。そのような変化に追い付き、常に最新の情報を把握するためには、データ管理の効率化が求められます。迅速な意思決定を実現するには、バラバラに管理されたデータを統一するデータ基盤が有用です。これまでのデータ分析では、過去や現在に起こったことを分析し、進捗の予測に役立てるなどが一般的でした。
しかし、より高度なデータ分析技術を用いれば、将来の予測に役立つ重要なデータが得られる可能性もあるのです。膨大な量を処理するにはそれなりの時間を要します。しかし現在では、ビッグデータの分析を迅速かつ簡単に行える技術も登場するなど、さまざまなビジネスで活用の幅が広がっています。
データ基盤構築のポイント
データの統合を行う前には、情報を整理しなければなりません。使えるデータと使えないデータを見極めながら整理していくと、足りないデータを取得する仕組みも考えられるはずです。データ基盤を適切に運用するには、データの扱いに慣れた人材の確保も必要です。
効率のよいデータ活用を実現に導くために、データ基盤を構築する際に押さえるべきポイントについて解説します。
効率的なデータの再利用を実現させるために、ユースケースを確保しましょう。複雑な構造をしたデータの加工や集計など、幅広いデータの活用を目指して、現在の担当者がどのようにデータを活用しているのかなども把握しておきます。初めはスモールスタートで構築したシステムでも、蓄積したデータが増えれば将来的なスケールアウトが予測されます。
効率的なデータ収集の継続には、時代の変化に合わせてニーズに適したシステムを取り込んでいく姿勢も求められるでしょう。データフローの統一も重要です。安定してデータを活用するには、更新するデータの流れを単一方向にするなどルールを策定し、処理のタイミングによりデータの相違が起こらないようにしてください。データの扱いにミスが生じると、a企業にとって深刻な事態を招く可能性もあります。
データ活用を次のレベルに導く「Cognite Data Fusion」
Cognite(コグナイト)の提供する「Cognite Data Fusion」は、製造業における生産量の最大化とスピーディーな意思決定を支援するAIプラットフォームです。海外のエネルギー産業で導入が進んでいるCognite Data Fusionは、近年日本でも導入に向けた動きが本格化しています。
Cognite Data Fusion最大の特長は、分断された大量のデータを統合・紐づけするコンテキスト化の実行です。コンテキスト化でサイロ化を解消することにより、単一では意味をなさないデータも有効活用できるようになり、より精度の高い分析が実現します。ITデータからOTデータまで、あらゆる情報をリアルタイムでコンテキスト化することで、メンテナンスや生産、保守に関して、より適切な判断が行われる環境がつくり上げられるのです。
Cognite Data Fusionを活用すれば、3Dの設計図と運転時のデータのほか、メンテナンスの記録なども紐づけられます。これによりユーザは、3D設計図を見ながら機器や配管の記録を確認したり、運転データを閲覧したりすることが可能です。
「Cognite Data Fusion」を活用した日揮ホールディングスの事例
プラントエンジニアリング業界の第一線で活躍する「日揮ホールディングス」は、独自の保全サービスである「INTEGNANCE(インテグナンス)」を手掛けるなど、DXに積極的な取り組みを見せている大手企業です。プラント操業には、紙ベースでの受注・発注といったアナログ作業も少なくありません。組織間ではサイロ化による情報の分断が引き起こされ、起こり、情報の二重化や正しい情報にアクセスしづらいなどの課題を抱えていました。
DXの本格化を目指して日揮ホールディングスの掲げたビジョンは、ソリューションを活用した遠隔での監視や自動化を実現するサービスの提供でした。そして、このビジョンを実現させるために採用したのが、Cognite Data Fusionです。図面や3Dモデル、運転データや保全履歴など、あらゆるデータの効率的な統合を実現させ、将来的なビジョンを見据えています。
コンテキスト化されたデータは検索の効率化にも有用です。従来のサービスでは、数十秒ほどかかっていた検索もCognite Data Fusionでは、ミリセコンドレベルで完了できます。コンテキスト化されたデータを活用して、機械学習を適用することも可能です。継続的に活用しやすいデータの蓄積は、企業にとって、今後の大きなアドバンテージとなるはずです。
まとめ
日揮ホールディングスを支えるCognite Data Fusionは、近年日本の製造業においても注目が高まっています。企業にとって最適な分析基盤は、その業態や目的によって異なります。自社のニーズや目的を正しく理解したうえで、最適なデータ基盤を導入し、ビジネスの拡大を目指してください。