「IoTがはやっていると聞くが、どういう仕組みなのかわからない」「IoTシステムの開発の進め方が分からない」
当記事をお読みのあなたは、上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。当記事ではIoTシステムの構成やIoTシステムでできること、開発の流れ、活用事例などを解説します。IoTシステムについて学びたい方のための試験である「IoTシステム技術検定」についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
IoTとIoTシステム
IoT(Internet of Things)とは、デバイスやセンサーがインターネットを介して通信し、データ収集や共有を行う技術のことです。近年家庭向けに発売されているスマート家電も、IoT技術を用いた製品となります。
IoTシステムはその名の通り、IoT技術を利用したシステムのことです。工場だけでなく自動販売機や家電にも利用されており、データを収集、分析することでより快適な生活や、効率的な業務へ活かすことが期待されています。
IoTシステムの構成要素
IoTシステムは以下の要素で構成されています。
- デバイス
- ネットワーク
- アプリケーション
- ストレージ
デバイス
デバイスは主にアクチュエーター、温度センサー、湿度センサー、カメラ、スマートメーターなどのハードウェアのことです。デバイスの役割として、以下のデータ収集を行います。
- 温度
- 湿度
- 人間やペットがいるかどうか
- 電力使用状況
また「モノ」に対する操作も可能です。例えば、以下のアクションを実施します。
- 音声を発する
- リモコンの操作をする
- ドアの開閉
- ペットに与えるエサの排出
またIoTにおけるデバイスは、インターネットと接続し、データの送受信を行う役割もあります。
ネットワーク
IoTシステムではデバイス間や、デバイスとアプリケーション間でデータの送受信を行うためのネットワークが必要です。IoTシステムで用いられるネットワーク技術としては以下があります。
- Wi-Fi
- Bluetooth
- 3G、4G、5G
- M2M通信(デバイス間通信)
デバイスが収集した情報を処理するためには、データの送受信が必要です。IoTシステムにおけるデータの送受信経路として、上記に挙げた無線やモバイルのネットワークが構成要素となります。
アプリケーション
IoTシステムにおいて、アプリケーションはデータの処理、分析に用いられます。収集したデータを活用する役割を担当している、と考えると理解しやすいのではないでしょうか。
またアプリケーションは、分析した情報を元にデバイスに対して指示を出す役割もあります。エアコンのIoTシステムの場合、「センサーが収集しているデータによると、今は人がいないから電源をオフにさせよう」と指示を出すことで省エネが実現される、といったものです。
ストレージ
ストレージは収集したデータの保存場所として利用されます。多くのケースでは、クラウド上のストレージが利用されるでしょう。IoTシステムでは、デバイスが収集するデータは、利用時間が長くなるほど膨大になります。
データが多くなることで、アプリケーションはより効果的な分析を行う可能性が高いです。しかし「最適なデータ量は○GB」といった数値はなく、データが多ければ多いほどよいというものでもありません。よってデータは収集し、しばらくの間保存をしておく必要があるのです。収集できる上限値が大きいストレージを用いることで、必要なデータの蓄積や分析が実現します。
IoTシステムが普及した背景
IoTシステムは近年急速に普及しているといえるでしょう。普及した背景には以下があります。
- ネットワークの高速化
- サイズが小さいデバイスの普及
- 高度な技術の発展による製造コストのダウン
ネットワークの高速化
IoTシステムの普及における重要な背景の1つとして、ネットワークの高速化が挙げられます。最近では、高速で安定したインターネット接続の普及や、モバイル通信技術の発展が続いています。これらのネットワーク技術の進化により、大量のデバイスが同時にデータを送受信できるようになりました。高速なネットワークを用いることで、通信遅延が少ないリアルタイムな情報のやり取りを実現しています。
先述の通り、IoTシステムにはネットワークが欠かせません。そのネットワーク技術が進化し、IoTシステム内のデータ送受信が速くなったことで、利便性が向上しました。結果として、IoTシステムを利用したいと考える人が増え続けたと考えられます。
サイズが小さいデバイスの普及
IoTシステムが普及した背景として、サイズが小さく、かつ省電力なデバイスの普及が挙げられます。IoTシステムの構成要素のうち、デバイス面の発展です。
工業技術、科学技術の進歩により、センサーやコントローラーなどのデバイスは、小型でも高性能なものを作れるようになりました。小型デバイスであれば、大型よりも省エネが可能となり、家庭用の製品でも利用しやすいメリットがあります。デバイスの小型化が進んだことで、さまざまな製品に対してデバイスの組み込みが実現しました。
小型のデバイスでも、データをリアルタイムにデータ収集が可能です。IoTデバイスの小型化かつ高性能化を実現が向上したことが、IoTシステムの普及に直結したといえます。
高度な技術の発展による製造コストダウン
IoTシステムが普及した背景として、高度な技術の発展による製造コストの低下が挙げられます。こちらもIoTシステムの構成要素のうちデバイスの話です。半導体技術やマイクロプロセッサの進歩、省エネルギーのデバイス設計など、多数の関連技術が発展したことで、IoTデバイスも製造コストが低下しました。
また高度な技術として、IoTシステムの構成要素のうち、アプリケーション面でも進化を遂げています。クラウドコンピューティングやビッグデータ技術が発展したことで、データの収集や処理にかかるコストも減ってきました。
上記の2つの技術から、低コストで高性能なIoTデバイスを製造できるようになり、IoTシステム全体としても利便性が向上したため、IoTシステムの普及が進んでいるのです。
IoTシステムでできること
IoTシステムでできることの例として、以下を紹介します。
- モノに対する操作
- モノの状態や動作のモニタリング
- モノ同士の通信
モノに対する操作
IoTシステムを用いると、ユーザー(人間)がリモートでモノを操作できます。
例えばスマートハウスでは、スマートフォンやタブレットを利用して、自宅のエアコンの温度調節や、照明のON・OFF操作、ペットの餌やりが可能です。またスマートカーでは、モバイルアプリを利用することで車のドアロックの解除や、エンジンを起動します。
IoTシステムを利用することで、ユーザーがその場にいなくても、ネットワークを介したモノの操作が実現できます。
モノの状態や動作のモニタリング
IoTシステムは、モノの状態や動作をリアルタイムでモニタリングできます。センサーやアクチュエーターなどのデバイスが製品に組み込まれ、データを収集し、アプリケーションとストレージに送信します。
例として、温度センサーが組み込まれた冷蔵庫は冷蔵庫内の温度を監視し、温度に異常がある場合にはユーザーに対して異常を通知します。これによりユーザーは冷蔵庫内の異常に気付けるだけでなく、早く気がついたことで食べ物の劣化防止にもつながります。
電力メーターとして設置されているスマートメーターの例も考えてみましょう。スマートメーターは電力使用量を監視し、電力会社に通知するだけでなく、収集したデータ分析の結果から、ユーザーに電力使用について改善策を提案できます。
IoTシステムを介してモノの状態や動作のモニタリングをすることで、効率化や安全性の向上や、トラブルの早期発見が可能です。
モノ同士の通信
IoTシステムでは、モノ(製品)同士の通信が可能です。
例えば、スマートホームではセンサーとスマートフォンが通信をすることで、データ共有や操作を行います。また工場では、IoTシステムを利用した製造ラインとすることで、機械同士のデータ共有が可能です。その結果、前後の工程の詳細や進捗の把握ができるため、業務効率化や異常検知につながりやすくなるでしょう。
IoTシステムの利用によりモノ同士が通信できることで、生活や業務の効率化や利便性も向上します。
IoTシステム開発の流れ
IoTシステムの一般的なウォーターフォール開発の流れは、以下の通りです。
- 要件定義と設計
- 実装
- 品質試験
- リリースと保守運用
要件定義と設計
IoTシステムの開発の最初に要件定義を行います。システムの目的と機能を明確化し、ユーザーが求めていることから逆算して、要件やビジネス上のニーズの把握をする工程です。
要件定義では、どのようなデバイスやセンサーが必要か、データの取得や処理方法、ネットワーク接続、セキュリティ要件などを明確にします。また必要な予算や開発部隊の人数、期間なども要件定義段階で決定する内容です。
設計は要件定義の後に行います。要件定義で文書化した内容に対して、技術的に詳細化します。具体的な内容としてはデバイスのアーキテクチャ、データフロー(ネットワーク)、ユーザーインターフェースなどです。
実装
要件定義と設計が完了したら、実装を行います。事前に設計されたシステムを実際にプログラムとして作成を進めます。IoTシステムにおいて実装する具体的な内容は、デバイスやセンサーの設定、ネットワーク接続の構築、データ処理などです。もし、アプリケーションやクラウドサービスとの連携など設計まで行っている内容があれば、それらに対しても実装してください。
実装の際には、事前に適切なプログラミング言語やフレームワークを選定しておき、プログラミング自体も安全性とパフォーマンスの観点から最適化を行います。
品質試験
実装完了後、品質試験を行います。品質試験の具体例として、機能試験、パフォーマンス試験、単体試験、連携試験などがあります。
機能試験:要件通りの動作ができるかどうかを確認
パフォーマンス試験:一定の負荷に耐えられるかどうか、また通信速度や処理速度などを評価
単体試験:1機能が想定通りの動作となっているかを確認
連携試験:仕様通りであることはもちろん、複数の機能を組み合わせた際に単体試験で問題がなかった箇所にも異常がないことを確認
品質試験によって基準に満たない品質と判断した場合は、設計や実装へフィードバックします。
リリースと保守運用
品質試験に合格したら、IoTシステムをリリースしましょう。リリース時には、システムのインストールや設定、ユーザー向けのドキュメントの作成を行います。
リリース後は、システムの保守運用が始まります。保守運用の目標は、システムの安定性とパフォーマンスの維持、ユーザー満足度の向上です。具体的には、システム全体の定期的なバグの修正やトラブルシューティングなどを実施します。
また、カスタマーサポートの充実も必要です。実際のお客様の声をもとにして、新機能の開発に取り組むことになるかもしれません。
IoTシステム導入の事例
IoTシステムを導入した事例を3つ紹介します。
- シニアを見守るマンション
- ごみ箱の状況を確認できる
- 最適な歯の磨き方を教えてくれる
シニアを見守るマンション
サンミットひたち野東ステーションフロントでは、IoTシステムを用いて高齢者世帯専用のマンションを販売しています。
高齢者と離れて暮らす家族の場合、定期的に訪問して様子を確認することに負担を覚えることが少なくありません。このマンションはIoTシステムを組み込んだ家電を利用してもらうことで、利用頻度や利用状況のデータを取得しています。
もしデータから異常が検知されれば、マンションの管理室に通知が届き、万一の事故を防ぐことができるでしょう。IoTシステムを用いることで、介護を必要とする家族にはもちろん、介護業界への貢献にもつながっています。
ごみ箱の状況を確認できる
日本システムウエアは、IoTを導入したごみ箱である「BigBelly Solar」を開発しました。ごみ箱内にたまったごみの収集状況が可視化されるため、効率的なごみ収集を実現しています。またごみの自動圧縮機能も付いているため、蓄積状況が確認でき、ごみ箱からごみがあふれにくくなるメリットもあります。
ごみ箱の収集状況がごみ箱ごとに可視化されることで、利用頻度が高いごみ箱と低いごみ箱が分かり、ごみ箱を増減すべきエリアの検討も効率化できるでしょう。
身近な問題にもIoTデバイスを用いることで、解消につながりやすくなることが分かる事例です。
最適な歯の磨き方を教えてくれる
サンスターは、スマートフォンと連動して歯磨きの状況を記録するデバイス「G・U・M PLAY」を開発しました。歯ブラシにセンサーを組み込むことで、歯ブラシの動きや磨いている時間などから歯磨きを採点します。
ユーザーはスマートフォンのアプリを利用して歯ブラシが収集したデータを見ることで、自身の歯磨き状況が把握できます。アプリでは歯磨きのデータが分析され、最適な歯磨きのためのアドバイスをもらうことも可能です。
自分でやっても分からないことを、IoTシステムを用いることで可視化できる事例でしょう。
IoTシステム検定の紹介
ここからは「IoTシステム技術検定試験」という、IoTシステムの開発や知識を確認できる試験について、以下の2つの内容を解説します。
- IoTシステム検定の概要と受験のメリット
- IoTシステム検定で得られるスキルと知識
IoTシステム検定の概要と受験のメリット
試験には上級・中級・基礎の3つのレベルが用意されています。上級だけは受験資格が必要で、中級に合格しているか、認定プログラムの受講が必要です。受験方式も基礎、中級はCBT試験(選択問題制)ですが、上級は講習の受講と受講内容を踏まえた論述試験となっています。
IoTシステムの初心者や初めて受験する方は、基礎レベルから受験するとよいでしょう。IoTシステム検定はIoT技術者の育成を目的としており、各試験で相応の知識レベルが求められます。
検定に合格することのメリットとしては、IoTシステム開発に関わるビジネス(営業なども含む)の活躍の場が広がることです。資格を持っていることで知識があることのアピールになり、転職活動にも活かせます。
IoTシステム検定で得られるスキルと知識
IoTシステム検定で得られるスキルは、各試験のレベルに応じた知識が定着することです。例えば、基礎レベルであれば以下の内容となります。
- IoTシステムの構成と構築技術
- センサ・アクチュエータ技術と通信方式
- IoTデータ活用技術(AI)
- IoT情報セキュリティ対策技術
- IoTシステムのプロトタイピング技術
当記事で解説している内容と重なる部分もあります。試験ではより詳しい内容を問われることになるので、問題集などで対策して受験するとよいでしょう。
まとめ
IoTシステムの概要から構成要素、普及の背景、できること、開発の流れ、導入事例、IoTシステム検定について解説しました。
日々生活家電の中にもIoTシステムが利用される製品が増えてきており、今後もこの流れが継続すると思われます。IoTシステムと共存して生活していくためにも、当記事で解説した基礎的な内容を把握しておきましょう。