IoT・自動運転・5Gは、いずれも自動車の未来を大きく変革するキーワードです。この記事では、各キーワードの基本的な意味と、IoTと自動運転によって自動車の未来がどう変わっていくのか、そしてこれら技術の課題までを紹介します。さらに5Gが自動運転や自動車のIoT化にどう関わるかも解説します。
IoTについて
IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語は「モノのインターネット」と訳すことができます。従来、インターネットに接続する通信機器といえば、パソコンやスマートフォンのようなIT機器に限られました。一方、IoTではさまざまなモノがインターネットに接続したり、相互通信したりすることで、機器の制御・監視・分析・遠隔操作が可能となるのです。家電操作といった個人の生活レベルに限らず、製造業・運輸・エンタメ・医療などさまざまな分野でIoTの活用が期待されています。
自動運転技術とは?
自動運転技術とは、機械が自律的に乗り物の操縦を行う技術です。ただ、一口に自動運転と言っても「人間が一切ハンドルを握らず、機械が100%運転する技術」だけを指すわけではありません。日本では内閣府が、自動運転を以下の5レベルへ段階分けしています。
- レベル0(運転自動化なし):運転者がすべての操縦を行う
- レベル1(運転支援):機械が縦・横いずれかの方向の操縦を限定的に行う
- レベル2(部分運転自動化):機械が縦・横両方向の操縦を限定的に行う
- レベル3(条件付運転自動化):機械がすべての操縦を行う。機械からの要請を受けたときのみ、人間が運転を行う
- レベル4(高度運転自動化):機械が基本的にすべての操縦を行うが、狭い住宅地に入る場合など、特定の状況下でのみ人が運転を行う
- レベル5(完全運転自動化):いかなる状況においても機械がすべての操縦を無制限に行う
このうち運転の主体となるのはレベル2までは人間、レベル3以降は機械です。現時点で日本の市販車は、レベル2にあたる自動運転までが可能となっています。
また自動運転においては、IoTやAI(人工知能)の役割も重要です。IoTの技術により、自動車の位置情報・走行情報といったデータは随時、クラウドへアップロードされます。今度はAIが、そのデータを解析し、その結果を自動車へ送信し返します。そうして、AIから返ってきたデータに基づくことで、より厳密に状況に応じた自動運転がなされるわけです。自動運転では、そのほかにも画像処理やセキュリティに関わる技術も活用されています。
IoTによる自動運転技術への期待
それではIoTや自動運転には、具体的にどんなメリットや課題があるのでしょうか。1つずつみていきましょう。
自動運転技術のメリット
自動運転によるメリットはさまざま考えられます。例えば自動運転が実現すれば、ドライバーの負担や事故のリスクは大幅に軽減されるでしょう。
昨今、高齢者による事故が社会問題化されていますが、自動運転さえ実現すればその不安も最小限に抑えられるでしょう。公共交通の手段が乏しい地方で暮らす高齢者の方々にとっても、自動運転は安定した移動手段となるはずです。そうした、誰もが安心感を持てる、便利な車社会の到来を期待できます。
またIoTとAIによる渋滞緩和システムも、実現が目指されています。まず、道路の渋滞・工事中等の情報をリアルタイムで収集・分析し、各地を走る自動車へ送信します。それぞれの車は、受け取ったデータを基にすることで、より最適化された自動運転が可能です。その結果、一定地域での交通の流れ全体がスムーズにコントロールされる、という仕組みです。
そして、さまざまに走行されている車からデータを収集・解析することにより、事故を防ぐためのノウハウの発見や共有も促進されます。交通事故が多発しているような場所で、事前にドライバーへ注意喚起を促すといったこともできるでしょう。
そのほか、自動車の状況をモニタリングし適宜点検・通知する機能や、商用車を無人で配車する機能等も想定されます。IoT活用によって自動車盗難を未然に防いだり、事故が発生した場合には、病院や消防へ自動通知したりすることも可能です。
自動運転技術実現にむけての課題
自動運転やIoT活用には期待も多いですが、その実現には課題も少なくありません。
IoTを活用する自動運転は、インターネットを経由してさまざまな機器やクラウドへ接続するため、セキュリティリスクが常につきまといます。
例えばサイバー攻撃を受けた自動車が制御不能となり、事故を起こした場合を想定してみましょう。このとき、事故の原因が「ドライバーにあるのか、自動車の故障なのか、あるいは外部からの攻撃によるものか」特定できない恐れもあります。サイバー攻撃の痕跡を、犯人が消していることがあるからです。こうした事態を防ぐために、IoT活用には、強固なセキュリティシステムの構築が必須となります。
サイバー攻撃などがなくても、万が一事故が発生した際には、責任の所在をめぐり議論が起こることは避けられません。責任はドライバーにあるのか、機械にあるのか。これを決めるためには、先述した自動運転レベルも大きく影響します。
さらに、レベル4やレベル5の高度な自動運転システムを搭載した車両が事故を起こした場合、その責任はメーカーとドライバーのどちらにあるか。この迅速で明確な判断のためには、やはり法整備を、時間をかけて行っておく必要があります。
5Gによって加速するIoT化
IoTによる自動運転技術の促進には、5G技術の登場も欠かせません。5Gがなければ自動運転車が公道を走ることはできないでしょう。それではここからは、5Gとは何かといった基本から、5Gが自動運転やIoT活用にどう関わるか解説します。
5Gとはなにか?
5Gとは「5th Generation」の略で、これまでの4Gにかわる新世代の通信技術を指します。5Gによる通信は、2020年から商用化が開始されました。4Gでは周波数が3.6GHz以下の帯域のみ利用していましたが、5Gでは3.6GHz~6GHz帯、さらには28GHz帯も利用しています。こうした高周波数帯を活かすことが、通信技術の進歩によって可能となったことで、5Gは大きな進化を遂げているのです。
5Gの主な特徴を表すキーワードとして、よく言われるのが「高速・大容量」「低遅延」「多数接続」の3つです。まず「高速・大容量」とは、通信速度がこれまでと比べ劇的に向上することを示します。最大通信速度でみると4Gでは最大1Gbpsであったところ、5Gでは最大20Gbpsにまで高速化すると言われています。5Gなら大容量の動画も、あっという間にダウンロードできるようになるのです。
次の「低遅延」とは、通信における遅延の少なさを示します。5Gなら通信遅延を、これまでの10分の1程度に抑えられます。通信のタイムラグがほぼ生じなくなるため、ミスの許されない、極めて精密な遠隔操作も実行可能になるのです。例えば、都市にいる医師が、地方にいる患者の手術をロボットにより行うことも、珍しくはなくなるでしょう。
最後の「多数接続」とは、大量の機器を同時に接続できるようになることを示します。5Gを活用することにより、例えば工場において数百・数千に上るセンサーを同時に1つの基地局に接続し活用することも可能になるのです。
多数接続が実現すれば、数ある家電や、家電以外にもセンサーをつけられたモノまでもインターネットに接続して遠隔操作が可能となります。外出先から家電の操作ができるようになるのはもちろんですが、それだけではありません。朝になったらセンサーが反応してカーテンが自動的に開き、コーヒーがカップに注がれるといった未来も夢物語ではありません。
5Gと自動運転技術の未来
こうした5Gは、IoT活用による自動運転の実現にとっても、なくてはならない技術です。例えば自動運転には従来のカーナビより格段に詳細な3Dマップデータのダウンロード・アップデートが必要となります。このような大容量データも、5Gによる通信ならスピーディーに処理が可能です。
また高速移動中にリアルタイムで、クラウドとデータをやり取りする必要があります。これには遅延が許されません。データ受信がコンマ1秒遅れただけで、事故につながることもあるからです。そのため5Gの低遅延という特徴が重要となります。
総務省は5Gにより、「車車間通信」・「路車間通信」・「歩車間通信」等の技術開発に取り組むことを掲げています。これは、道路を走っている各自動車と、歩行者や自転車などに、それぞれの情報をリアルタイムで交換させることで、交通全体の流れを安全に最適化しようとする構想です。こうした構想と共に、ネットワークに接続されている自動車(Connected Car)が当たり前に走っている社会の実現が、目指されているのです。
まとめ
IoT化により自動運転が実用化されれば、ドライバーの負担が大幅に軽減されます。事故を防ぐためのノウハウの共有も進み、渋滞緩和も期待されます。その実用化には、高速・大容量・低遅延で、多数同時接続を可能とする5G通信が必須です。こうした通信技術と共に、強固なセキュリティ構築や法整備と並行し、自動運転は実現へと進んでいます。