ARやDXの活用は建設業界に役立つと言われています。ARやDXに興味のある方や導入を検討中の建設関係の方も多いと思います。この記事ではARが建設業界に与える影響について導入例を提示して紹介します。ARやDXへの理解を深めたい担当者の方はぜひ読んでみてください。
ARとは
ARとは、Augmented Realityを省略した言葉で、拡張現実の意味です。
コンピューターの画面上に現実の風景や建物を再現し仮想や別の情報を重ね、視覚的に現実を拡張します。実際には見えない映像がコンピューターに表示される技術です。位置情報タイプと画像認識タイプの2種類があります。
ARは、近年は建設分野など産業界で実用化されています。
VRとの違い
どちらもクロスリアリティと呼ばれる技術ですが、ARは現実社会に別の情報を加えて表現するのに対し、VRは作り上げた仮想空間を現実のように体感させる点が違いです。
VRとはVirtual Realityを省略した言葉で、仮想現実と訳されます。利用するためにはヘッドマウントディスプレイの装着が一般的です。
VRは没入感を高めた仮想空間の体験、ARは現実世界にCGなどの情報付加など目的に応じて使い分けます。
建設業界でのARの活用例5つ
建設業界では、ARを活用して営業活動や施工管理に活用されています。
ARは専用ゴーグルやタブレット、スマートフォンを利用して、現実の風景にCGで完成図や設計図を重ねて表示可能です。クライアントへの説明や施工中の進捗状況の確認などに適しています。
ARは建設業界と相性が良く、完成後の保守点検にも導入可能です。
1:計画時点での外観の確認
ARを利用すると、完成イメージを基にした映像を実際の現場に重ねて、立地イメージや周辺の景観とのマッチングを視覚的に確認できます。
建設業界では従来から3次元CADやビルディングインフォメーションモデリング(BIM)が活用されていました。計画段階で外観や周辺とのマッチングの確認できることで地域との融合性を高め、より良い構造物建設に役立ちます。
施工開始後はやり直しできない建設業界の損失低減に貢献します。
クライアントや関係者との共有にも活用できる
ARによって映像化された完成イメージは、クライアントや外部関係者への確認に利用してイメージの食い違いなどトラブル防止に効果を発揮します。
景観とのマッチングを不動産会社や住宅会社などに事前に確認してもらうことで、イメージの共有が可能になります。完成後に「イメージと違った」などのクライアントからの不満も避けられます。
コンペのプレゼンや購入予定者への営業活動にも導入でき、自社の発信力向上に効果を発揮します。
2:施工時点での設計図や進捗状況の確認
ARは施工中の設計図との照合や進捗状況を、現在の建設現場に重ねて確認できます。
建設作業は、設計図通りが原則です。電工や配管、構造などが干渉しないように注意し、指定した材料の使用が求められます。ARを利用すると設計図を建設中の現場に重ねて簡単に照合できるため早期に施工不良を発見し、早期の修正が可能になります。
進捗状況の確認も瞬時に終了し、施工管理の負担を軽減します。
3:作業の安全性の向上
建設作業中に画像解析やセンサーとARを組み合わせると、視覚情報だけでは把握できない現場環境の危険を察知し、警告を発することも可能です。
作業現場は安全確保が求められます。熱中症対策は健康管理と作業環境への配慮が必要です。あらかじめ条件設定すると、現場では気づかない環境変化や危険な状況も警告音などで知らせます。
AR導入は、健康的に作業に集中できる環境を整備し、安全管理と工程管理にも貢献します。
4:保守点検の支援
パーツサイズや空間を自動計測して実際の映像に重ね、不整合を警告するなど、ARは建設作業終了後の保守点検の支援にも活用できます。
BIMを組み合わせると、壁の内側の透視も可能です。不具合が表面化する前に点検段階で察知して、早期の対策により被害を抑えます。大規模修繕工事が不要になり、利便性と稼働率を高め、収益増加が見込めます。
保守点検の簡略化は人件費を抑制し、メンテナンス業務の効率化を支援します。
5:オフィスにいるスタッフとの連携
視野の共有は、オフィスのスタッフによる複数の現場支援も可能にします。
ARを活用して現場の映像を重ねて表示すると、現場の作業員にはわからない周囲の状況を、オフィスで把握できます。緊急事態への対処にも効力を発揮し、急な作業手順の変更も容易に連絡可能です。
視野の共有は経験の浅い作業員への的確なアドバイスにも使えます。人手不足が深刻な建設業界にとって、遠隔支援は人材育成に欠かせないツールです。
建設業界でARを使うメリット4つ
ARは人の目では見えないものを現実の映像に重ねることで、目標の視覚化と意識の共有化などのメリットを生み出します。
目標の視覚化は課題の把握を容易にし、解決方法の具体化を促進します。情報の共有化により設計段階から多角的な検討が可能です。
施工管理や保守点検では、構造物の透視化によりトラブルを未然に防ぎます。
1:現場での目標・工程を視覚的に確認できる
建設中の現場に作業目標や今後の工程を映像で重ねてみると、視覚的な確認が可能になります。
目標や工程の視覚化は、今後のスケジュールも視覚化します。施工管理者と作業員それぞれの立場で具体化でき、作業意欲を高めます。能動的な作業により現場の効率化も促進します。
現場の効率化は、工期の短縮につながります。人件費の抑制による建設工事の黒字化や企業経営の効率アップなど好循環を引き出します。
2:情報の共有が進む
ARによる映像で設計図や計画に基づく情報などを視覚的に確認でき、個々の作業員が情報を理解し共有できます。
BIMとの組み合わせによって、設計で指示された資材の品番やサイズなども視覚で表示し、共有可能です。今までは施工管理者だけが仕様書などで確認していた情報を現場全員が共有し、作業できます。コミュニケーションが活発になり、現場の一体感を高めます。
施工ミスの防止につながり、仕様変更も容易に対応できます。
3:より多角的に検討・確認しながら設計ができる
計画段階から紙面や画面、模型だけでなく、現場の映像と重ねて計画を確認できるため、多角的な視点から検討しながら設計が行えます。
景観に建築物を合成してシミュレーションでき、机上では把握できない建物の及ぼす影響を把握できます。建物内部からの景観も視覚化し、利用者目線も設計段階から取り込めます。
視覚化による意見交換の活発化は、それぞれの立場で満足度の高い結果を生み出します。
4:BIMの活用の幅が広がる
ARは設計段階からBIMを活用しますが、施工中の確認や保守点検でも役立ち、活用範囲を広げます。
BIM情報はコンピューター上の3D空間に建築物を作る技術です。資材や設備のパーツを実寸大で確認でき、建設現場での不整合を未然に防止します。施工前に設計の不具合を発見し、資材の無駄を省き作業の待ち時間を低減させます。
建設後の保守点検では、壁の内側のパーツの変化を熟練者以外でも早期発見を可能にします。
まとめ
AR導入は建設現場に映像を重ねて視覚的に表現し、多くのメリットをもたらします。
情報共有を可能にし、計画段階から関係者の議論を活発化させ、それぞれの意見を設計に反映して完成時の満足度を高めます。施工中の安全確保や施工ミス防止、保守点検で早期の異常把握に役立ち、遠隔操作の導入や新人教育など幅広く利用できます。
建設業界でのAR活用には、Vuforia StudioまたはVuforia Engineがおすすめです。