近年、さまざまな業界において業務のデジタル化が進んでいます。製造業界も例外ではなく、画像による異常検知を導入する企業が増えており、今後さらに普及が進むと考えられます。そこで本記事では、異常検知の概要や画像を用いた異常検知の手法、ディープラーニングとの相性がよい理由などについて詳しく解説します。
異常検知とは?
「異常検知」とは、定義されていないパターンを識別して検知する技術のことです。さまざまな分野で活躍している技術であり、クレジットカードの不正利用防止や機械のトラブル予知、製造過程で発生した不良品の検知などで用いられています。いずれにおいても、後々生じ得るトラブルを未然に回避するため、異常検知の技術が活用されています。
例えば、製造業の製造ラインで不良品が発生し、そのまま市場に流通してしまうと、クレームの原因となってしまうでしょう。また、人力で異常を発見するとなると、手間と時間がかかるうえに、ムラまで生じてしまう恐れもあります。従業員のスキルや経験に差があるほど、この傾向はより顕著となり、安定した品質を維持できません。
異常検知の技術を投入すれば、作業の効率化や標準化が進み、このようなさまざまなトラブルの回避に役立ちます。
画像による異常検知の手法とは
近年の製造現場においては、画像による異常検知が注目を集めています。具体的には、製造ラインを通過する製品をモニタリングし、画像から異常を発見して通知する技術です。従業員のスキルや経験に左右されないため、高度な異常検知を実現できるため、探知業務を大幅に効率化します。
画像を用いた異常検知の手法としては、大きく3つ挙げられます。以下、代表的な3つの手法について、仕組みやメリットを紹介します。
敵対的生成ネットワーク
「敵対的生成ネットワーク」は、AIアルゴリズムの一種です。「生成ネットワークと識別ネットワークの2つが競い合うことで、検知の精度を高めていける」という特徴を持っています。
一方がデータの生成を、もう一方が識別を担当します。データの精度が低いと、識別ネットワークが偽物と判断するため、生成ネットワークは偽物と判定されないよう精度を高めます。これが繰り返されることによって、異常検知の精度そのものが向上していくのです。
製造業で用いる場合は、良品の画像を学習させます。これにより、良品以外の製品を異常ありと判定でき、排除が可能です。さらに不良品の画像もデータとして学習させれば、より精度の高い識別が行えます。
自己符号化(オートエンコーダー)
「自己符号化(オートエンコーダー)」では、与えられたデータを基に復元を行い、生じる誤差で異常検知を行います。2006年に提唱されたアルゴリズムであり、異常検知以外にもノイズ除去やデータの生成、クラスタリングなどにも活用されています。
異常検知で用いる場合は、事前に正常なデータを学習させます。学習させるのは正常なデータだけなので、異常のあるデータを入力しても正確に復元できません。つまり、そこに誤差が生じるわけです。
この誤差の数値をチェックすることで、どこにトラブルが発生しているのかを検知できます。大きな誤差が生じていれば、そこに異常が生じていると判断可能となるのです。
ハイブリッドモデル
近年、主流となりつつあるのが「ハイブリッドモデル」の異常検知です。大量のデータからルールを学習し、予測を行う従来の機械学習と、より高度な分析が可能となるディープラーニングを組み合わせたモデルです。
従来の機械学習も優れた技術でしたが、精度には若干の課題がありました。そのため、そのまま異常検知の現場へ導入することは難しいとされていましたが、ディープラーニングの登場により状況が一変したのです。
従来の機械学習では、画像のような高次元データに対応できなかったのですが、ディープラーニングの登場により可能となりました。ハイブリッドモデルの異常検知では、ディープラーニングが特徴を絞り込み、それらの分析を機械学習モデルが行います。
画像による異常検知はディープランニングと相性がいい理由
大量の画像データを用意できれば、ディープラーニングにより特徴を抽出でき、より高度な異常検知が可能です。生産性の向上や業務の標準化を実現し得るなど、さまざまなメリットを得られます。以下では、画像による異常検知とディープランニングを組み合わせるメリットについて見ていきましょう。
ヒューマンエラーの防止になる
異常検知を人力で行う場合、どうしてもヒューマンエラー発生の恐れがあります。個々のスキルや経験には差があるため、不良を見過ごしてしまうことがあるのです。
特に、十分なリソースを投入できていないケースでは、個々の従業員に大きな負担がかかってしまいます。その結果、精神的なプレッシャーや疲労による集中力の低下を招いてしまうかもしれません。このような状況では、正確に異常をピックアップするのは困難と言えるでしょう。
画像+ディープラーニングの技術なら、このようなリスクの回避が可能です。学習したデータに基づき不良を発見するため、正確に異常を抽出できるからです。従業員のスキルや経験にも左右されず、ヒューマンエラーの発生を防げます。
また、異常検知システムは人間のように疲労することもなければ、集中力が途切れるといったこともありません。従来よりも少ない人員での対応が可能となり、リソースを有効活用できるメリットもあります。
業務効率化につながる
画像+ディープラーニングの技術により、検査スピードの高速化が期待できます。画像から瞬時に異常の有無を検知するため、速やかに検査が行えるのです。これにより、時間あたりに検査可能な数は大幅に増え、生産性の向上につながります。
精密な部品を製造しているようなケースでは、目視での検査に多くの時間を要してしまうこともあるでしょう。画像+ディープラーニングなら、精密な製品であってもスピーディーな異常の検知が可能です。
また、高速かつ高精度な異常検知を実現できるため、ヒューマンエラーを回避しつつ、業務効率化も可能です。ミスが発生すると、原因の究明や対策に追われてしまい、多くの時間を費やしてしまうでしょう。
とりわけ製造業であれば、1つのミスでラインが停止してしまい、生産計画に狂いが生じる恐れもあります。大量生産の現場であれば、わずかな時間ラインが停止しただけでも、相当な損失が発生しかねません。画像+ディープラーニングであれば、未然にミスを回避可能となるので、このような心配は無用です。トータルで業務を効率化でき、生産性の向上効果が期待されるでしょう。
HOYAの異常検知ソリューションとは?
HOYAデジタルソリューションズ株式会社では、AIを活用した異常検知ソリューションを提供しています。AIを用いた画像の分類や物体の検出などが可能で、導入により精度の高い不良品判定システムを構築でき、検査の大幅な効率化が見込めます。
HOYAなら、あらゆるケースに応じた導入を実行していけます。異常検知の導入ソリューションも提供しており、リスクを抑えつつスモールスタートが可能です。
例えば、同社のワンストップ・ソリューションであれば、シーンに応じた最適なAIエンジンやモデルを提案してもらえます。検査に要する画像の収集から、装置の導入・制御まで、ワンストップでサービスを提供しており、AIや画像による異常検知の知識がまったくない状態でも安心して導入できます。
また、運用を強力にサポートしてもらえるのもメリットと言えるでしょう。検査の要件や製品が変わると、AIモデルもそれに対応しなくてはなりません。HOYAでは、AIモデルの更新やバージョンの管理など、日々の運用を円滑にできる充実したサービスを提供しているため、そうした変化にも柔軟に対応可能です。
まとめ
画像とディープラーニングを用いた異常検知であれば、ヒューマンエラーの防止や業務効率化、それに伴う生産性の向上など、さまざまなメリットを得られます。今後さらなる普及が予測されるため、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。またその際は、本記事で紹介した異常検知ソリューションも、併せて検討してみましょう。