電子カルテに関心がある、または導入を検討している医療関係者の方も多くいるでしょう。この記事では、電子カルテとは何かをはじめ、導入のメリットやデメリット、さらには導入時にしっかり把握しておきたいポイントについて解説していきます。
電子カルテとは
電子カルテとは、患者情報が載った紙のカルテを電子化したもので、患者の氏名や住所、既往歴など、一人ひとり異なる情報が記載されています。電子カルテは、これらを電子情報として管理や編集ができ、データベースに記録するシステムを指します。また、医療会計や薬剤システムなどをオンラインで連携することで、治療経過などの情報を更新し、記録の検索や分析を担う役割も果たします。
なお、一口に電子カルテといっても、種類は大きく分けて病院向けとクリニック向けの2つがあります。また、メーカーもさまざまあり、医療会計システムの有無や機能の差など、両者で異なる部分があるので、必要な機能に応じて選ぶことがポイントです。
普及率については、厚生労働省の調査結果をみると、平成29年には400床以上もの大規模な医療機関では85.4%導入されていることが分かります。一方、200床未満の病院では37.0%にとどまっていますが、平成20年には8.9%であったことと比較すると、大幅な増加傾向にあるといえるでしょう。
ちなみに導入する場合は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」にも記載されている真正性・見読性・保存性という「電子保存の3原則」を守らなくてはいけません。
電子カルテのメリット
電子カルテを導入した場合、どのようなメリットがあるかについて解説します。
業務効率が上がる
紙のカルテの場合、該当患者の分を探したり、棚から出したりする手間がかかりますが、電子カルテではそのような動作が必要なくなります。受付や会計業務の効率化が図れることで、スタッフの業務負担が減らせるのです。そのほか、カルテや処方箋の記入時間を短縮することもできるでしょう。また、電子カルテの機能の中には、診断書や紹介状などの書類のテンプレートが搭載されているため、医師の手間も減らせます。
これらにより、医療スタッフの作業時間や負担の削減になるだけでなく、会計や診療などの業務がスムーズにおこなえることで、業務効率が上がり、結果的には患者の待ち時間を短縮できるメリットが期待できるのです。短縮した分の時間で患者一人ひとりの診療時間により多くの時間を割いたり、患者の受け入れ人数を増やしたりすることにも繋がります。
情報の共有や確認がスムーズにおこなえる
電子カルテに情報を入力すると、ほぼリアルタイムで反映されます。紙のように、まわってくるまで情報確認できないという問題が起こらないため、関係者との情報共有や、確認側の作業がスムーズになる点が魅力です。また、入力情報の編集もすぐにできます。紙の場合は、まずカルテを探さなくてはいけないなど、編集するまでにも時間がかかることが難点ですが、電子化することで該当患者を検索し、すぐにカルテを見つけられるため時間も手間もかからずに済みます。
ミスを防止できる
紙のカルテでは、書き間違いや読み間違いなど、ヒューマンエラーによるトラブルが起こりやすくなります。手書きだと、読みにくい字で書かれてしまうことで、受付スタッフや薬剤師に正しい情報が伝わらない恐れも出てきます。また、医師も患者の話を聞きながら走り書きするため、どうしても丁寧に記載できない場合や、つい書き間違いも起こってしまいます。スタッフはその度に確認に行かなくてはならず、必然的に業務効率も下がります。
電子カルテであれば、文字が読みにくい心配はまずないでしょう。そのおかげでスタッフの確認作業に対する負担の軽減やミスの防止になるだけでなく、意思疎通を図りやすくなるというメリットも生まれます。また、入力情報の整合性をチェックする機能が備わっているものもあるので、間違った情報伝達を防ぐことが可能です。これにより処方ミスも防げるため、患者側から病院への信頼も高まるでしょう。
管理スペースの削減になる
電子カルテのデータはサーバー内に蓄積され、保存できるため、紙のカルテのような保管場所は必要ありません。紙の場合、患者数が多ければ多いほど、カルテが増えてしまうため広い保管場所が必要ですが、電子化すれば患者数が多くても心配ありません。スペースの確保が不要になることで、部屋を効率的に使うこともできます。
電子カルテのデメリット
続いては電子カルテのデメリットについて解説します。
操作に慣れが必要
電子カルテはパソコンで管理できる便利な側面がありますが、その分、担当者が操作を覚える必要があります。電子カルテには、さまざまな機能が備わっていますが、そのすべてを使いこなすには、それぞれの使い方を把握する必要があります。
導入した場合、スタッフ全員で使い方を覚えなくてはならず、パソコン操作が不慣れな方にとっては負担になってしまう可能性もあります。特に、これまで紙カルテを活用していた医療機関で電子カルテを導入する場合は、慣れるまでに時間を要するでしょう。
電力に依存する
電子カルテは電子機器のため、停電やトラブルが起こるとシステムが停止し、使用できなくなってしまいます。医療機関によっては、自家発電設備があるかもしれませんが、断線などでシステムダウンする可能性も否めません。もちろん、停電が起きた場合は電子カルテだけでなく、その他設備も停止してしまいますが、このような事態に備えて一時的に紙カルテを使用できるようにしておくことも対策として挙げられます。
コストがかかる
電子カルテの導入には、ハードウェアを揃えるなどの初期費用だけでなく、維持費やサーバー更新料などの運用費が毎月かかってしまいます。中には無料で使用できるものもありますが、有料タイプの方が機能面なども充実しているため、導入する場合はコストがかかると考えておく方がよいでしょう。
セキュリティリスクがある
患者情報を一元管理できるというメリットがある一方、院内のどこからでもアクセスできるために、情報漏洩の危険性が高くなるデメリットがあります。たとえば、自分の担当ではない科の患者情報も閲覧できてしまったり、外部への持ち出しも容易におこなえたりすることが懸念事項として挙げられます。また、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃を受ける可能性もあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、職員への教育を徹底したり、クラウド型の電子カルテを導入したりする必要があります。クラウド型はサーバーを院内に設置する必要がなく、インターネット回線を通してデータセンターにアクセスし、情報を取得するシステムで、セキュリティレベルが高いのが魅力です。導入する場合は必ずセキュリティ対策に力を入れているものを選ぶようにしましょう。
電子カルテ導入時に考えたいポイント
導入の際は、まず施設に合ったシステムかどうかを確認しましょう。機能やスペックが適切かどうか、他システムとの連携性もチェックが必要です。きちんと使いたい機能が備わっているものや、他システムとの連携ができるものだと、より業務の効率化が図れます。
また、現在政府が医療情報連携ネットワークの普及促進をおこなっているため、地域にあったものかどうかも選定のポイントです。 さらに、使いやすさの確認も重要になります。製品にはさまざまな種類があり、操作性が悪いものだとスタッフのヒューマンエラーや処理時間が増えてしまうといったストレスも発生します。特にITリテラシーには個人差があるため、なるべく多くのスタッフが使いやすいものを選ぶことが大切です。
ほかにも、保守、サポート費用など、導入コストだけでなく維持コストもかかるため、トータルで考えて導入するメリットがあるかどうか検討する必要があるでしょう。
まとめ
電子カルテには作業効率向上などのメリットがある一方、デメリットもあるので、導入すべきかどうか、しっかり検討することが大切です。導入する際は紹介したポイントを参考にしながら、ぜひそれぞれの病院やクリニックに最適なものを選ぶとよいでしょう。