製造業

製造業における代表的な現場課題とは?解決策7つも紹介

人手不足解消、生産性向上、品質管理、コスト削減、納期遅延防止、環境問題など日本の製造業が抱える課題は多岐にわたります。さらに、IT化やDXが叫ばれている現在、新たな技術やビジネスモデルを取り入れることで、これらの課題を克服しながら成長していく力が製造業には求められています。

製造業の生産性が下がる原因は何か、具体的にどのように改善していけばよいのか考えてみましょう。

日本における製造業の現状

日本における製造業の現状

日本の製造業は、かつて世界をリードしていましたが、現在は新たな課題に直面しています。国際的な競争の激化やデジタル技術の進展、さらには原材料価格の高騰など、その要因は多岐にわたります。

新興国の台頭による国際競争力の低下

日本の製造業は、かつて世界的に高い評価を受け、その品質や技術力でトップの座を築いていました。しかし、近年では新興国の成長が顕著であり、これが日本の国際競争力の低下につながっています。

新興国の企業は、安価な労働力を背景に低コストで製品を生産し、国際市場に進出しています。例えば、中国やインドの製造業は急速に成長し、日本のシェアが奪われている状況です。

このような状況下で、日本企業は価格競争に苦しむことが多くなっています。技術力では依然として日本に強みがありますが、新興国の企業も技術力を急速に向上させており、かつてのような技術的な優位性を維持するのは容易ではありません。また、労働コストの上昇や環境規制の強化も、日本の製造業にとって厳しい現実です。

DXによる自動化の遅れ

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、世界中で急速に進んでいる重要な取り組みです。しかし、日本の製造業では、他国に比べて自動化の導入が遅れているのが現状です。これは、従来の手法や慣習に依存する傾向が強いためであり、特に中小企業では新しい技術への移行が進みにくいとされています。

一方、DXを積極的に導入している一部の企業では、生産性の向上が著しく進んでいます。例えば、AIやIoT技術を駆使した生産ラインの自動化や、ビッグデータを活用した最適化などが成果を上げているケースも見られます。しかし、日本全体としてはこのような取り組みがまだ限定的であり、他国に遅れを取っていることは否めません。

原材料価格の高騰や物価高の影響

近年の世界的な原材料価格の高騰は、日本の製造業に大きな影響を与えています。特に、鉄鋼やプラスチックなどの主要な原材料の価格が急激に上昇しており、これが製造コストを押し上げています。また、エネルギーコストの上昇も企業にとって大きな負担となっています。これにより、企業は利益を圧迫され、価格転嫁が難しい状況に直面しています。

例えば、輸送コストや電力コストの上昇は、製品の価格に直接影響を与えますが、消費者にその負担を全て転嫁することは簡単ではありません。このため、企業はコスト削減のための効率化や、より安価な代替材料の活用を検討する必要があります。しかし、代替材料の使用は品質に影響を与える可能性があり、慎重な対応が求められます。

製造業における現場の課題7つ

実際に製造現場で浮き彫りとなっている課題について考えてみましょう。

さまざまな課題に直面していても生産を止めることはできません。どのように時代に合わせた製品づくりをしていかなくてはならないのか、現場の課題について解説します。

1:人材が不足している

いざ生産が増えたとしても各工程で必要な人材を確保できないことがあります。日本では少子高齢化に伴い現場作業員の高齢化も大きな問題です。今後、定年を迎える予定の人数をカバーできる人材を確保できない可能性もあるでしょう。

また、部門・工程間での人員バランスを考えたときに、どうしても人員が確保できないこともあります。その結果、一部の部門で残業が増え、社員の不満となり、退職につながってしまうなどのケースがあります。

2:部門間の情報共有

製造業では、1つの製品が完成するまでのプロセスが多いです。当然そのプロセスごとに部門が分かれており、作業内容も大きく異なります。

部門が違うことで不具合データの引継ぎやメンテナンス予定の連絡などが予想以上にうまく連携できないことがあります。不具合の連絡が1つ遅れるだけで生産には大きなダメージを与えかねません。

3:作業をする上でのミス

繰り返される毎日の作業の中でイレギュラーが起こったとき、人的ミスが発生することがあります。

ほんのささいなミスが製造業にとっては致命的なクレームにつながることもあるでしょう。ミスが多くなると生産は圧迫され、生産効率を大きく下げてしまうこともあります。

4:標準化が進まない

製造業においては当たり前に求められる標準化ですが、実際の製造現場では必ずしも標準化が進んでいないケースがあります。ベテランと作業初心者ではどうしても作業にばらつきが発生しやすく、品質においても必ずしも一定とはいえない現場もあるでしょう。

新人教育の時間が取れない製造現場は生産に追われ、新人教育もままならずノウハウの継承ができないままベテランが退職してしまうケースもあります。

5:部品の管理

通常生産業務を行うためには、資材や部品が必要不可欠です。日々の生産の中で突発的に発生したトラブル対応で専用部品が必要になることもあるでしょう。もし必要な部品がない場合生産は停止し、生産に大きなダメージを与える可能性があります。

逆に必要だと思っていた部品が必要なくなり、大量に余りその結果経費を圧迫してしまうことも想定されます。

6:設備の老朽化

製造現場において、設備の老朽化はますます深刻な問題となっています。多くの企業が長年同じ設備を使用し続けており、故障やメンテナンスの頻度が増加しているため、生産効率が低下しているのが現状です。これにより、生産ラインの停止や修理コストの増加が避けられません。

また、古い設備は最新の技術に対応できず、自動化やDXの導入が難しいケースも見られます。新しい技術を取り入れることで生産性の向上が可能ですが、設備投資には多額の資金が必要です。そのため、設備更新のタイミングや資金計画の立案が重要になります。

7:原材料費の高騰

前述したように近年、原材料費の高騰が製造業に深刻な影響を与えている状況です。さらに円安の影響もあり、輸入に頼らざるを得ない原材料の価格高騰が顕著になっています。原材料費の高騰は、円安だけでなくウクライナやイスラエルでの戦争や、原油高、新興国での需要拡大などさまざまな要因があり、すぐに解決する問題ではないでしょう。

政府は、この原材料費の高騰に対して、企業の価格転嫁を促進していますが、値上がり分全てを価格に転嫁するのは難しいといえるでしょう。

製造業における現場改善方法7つ

製造業において、生産を向上させるためにはさまざまな現場改善が必要になってきます。

ここからは、5Sを徹底することや工程を見直すことなどをはじめとした、生産性を向上させるために必要な7つの改善方法を紹介します。

1:5Sを徹底する

製造業の生産現場では、5Sという言葉が当たり前に使われており、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」のそれぞれの文字Sを合わせて5Sと呼んでいます。

「整理」で必要なものと不必要なものを分け、不必要なものは処分します。そして必要なものをすぐに取り出せるようにするため「整頓」します。製造現場にとっては非常に有効です。

そして生産設備を維持するためには「清掃」「清潔」が常に必要であり、それを当たり前にできるように「しつけ」が必要ということです。このように、現場改善には5Sの徹底が必要不可欠になります。

2:工程の見直し

製造業においては、1つの製品が出荷できるようになるまでにいくつもの工程を通過します。当然それぞれにスケジュールがあり、社内で納期目標をもって生産を繰り返しますが、工程内でトラブルがあったり、生産が滞ったりすると後工程に直に影響が出ます。

そのため、各工程でしっかりとした生産計画を練ることが重要になってきます。特にメンテナンス時は生産が停止することもあるので、後工程との密な連携が大切です。

3:段取り替えの見直し

製造業の工場内ではさまざまな製品が製造されることがあります。その際必ず必要となってくるのが段取り替え作業です。1日の間に何回も段取り替えが発生する場合もあり、それにかかる時間が適正かどうか見極めることも重要となってきます。

この段取り替え作業の間は当然生産も止まります。しかし絶対に間違いがあってはなりません。どうやったら時間をかけずに段取り替えできるかは、現状把握をもとにデータ取りをする必要があります。

4:動作チェックをする

各工程、各作業において1サイクルの作業動作に無駄がないかチェックが必要です。繰り返しの作業になるため、1回人が振り向いたり、製品を置いたりするだけで一連動作のサイクルタイムが長くなります。

正しい作業をするためにそれぞれの動作が必要な動きか、適正な時間で作業できているかチェックしなければなりません。

5:導線を考える

製造業の工場内は人の動きを考えて機械を設置しなくてはなりません。限られたスペースに設備を設置することばかりに気を取られていると、いざ生産を開始したときに作業効率の低下を招いてしまいます。

製品や原料の流れ、人の動きを考えたレイアウトづくりは製造業においては必須です。レイアウトは後からでも変更できますが、生産を始める前に実際に現場の声を取り入れながら、よりスムーズなものの流れ方を考えていかなくてはなりません。

6:採用方法を見直す

採用方法の見直しは、製造業における人材不足を解決するための重要な改善策です。新しい人材を確保するためには、採用条件を緩和したり、外国人労働者の雇用を積極的に進めることが有効です。

また、3K(きつい・汚い・危険)という製造業のネガティブなイメージを払拭するために、労働環境を整備する取り組みも求められています。例えば、VR技術を使った工場見学を実施し、働きやすい職場環境をアピールすることで、求職者への訴求力を高められるでしょう。

しかし、新しい人材の採用だけでは不十分であり、次世代の人材育成も同様に重要です。製造現場のデジタル化が進む中で、デジタル技術やITスキルを持つ人材の確保が急務となっています。

7:デジタル化・DXを進める

製造業において、デジタル化やDXの推進は今後の競争力を左右する重要な課題です。DXによって、従来のアナログな業務をデジタル化し、データの活用や生産プロセスの自動化を進めることで、生産性を大幅に向上させることが可能になります。

例えば、AIやIoTを活用したスマートファクトリーの導入は、リアルタイムでのデータ分析や設備の予防保全を実現し、効率化を図れます。

デジタル化が進むことで、人的ミスを削減し、品質の安定性を高める効果も期待されています。また、DXを通じて製造現場のスムーズな情報共有が可能となり、部門間の連携が強化されるでしょう。これにより、生産計画の精度が向上し、納期やコストの管理が容易になります。

現場課題を解決に導く具体的な4STEP

改善活動では生産ラインを止めることなくできることを抽出し、トライアンドエラーを繰り返しながら生産性そのものを向上させていかなくてはなりません。

ここからは、現場課題解決のためのポイントを4段階に分けて紹介します。

1:現状把握をする

一つひとつのプロセスの中で、今どういう状態であるのかなど事実や数値にもとづいて明確にしていかなければなりません。

作業する中でなんとなく前はこうだった、最近のほうがなんとなくよいような気がするというような曖昧なものが現状把握ではありません。現状の分析や点検をすることで、課題の特定につなげます。

2:課題を明確にする

現状把握を継続することで必然的に数値として、現在の状況をとらえることができるようになります。そしてその状況になってしまっていることを理解した上で、何が問題なのかを明確にしなければなりません。

現状把握から、その要因が人なのか、装置なのか、環境なのか、コストなのかなど一つひとつの課題が浮き彫りになってきます。

3:改善策を立てて実践する

現状把握から課題が明確になった後は、その問題に対して具体的に何をしていくのかという改善策候補をいくつか選んで優先順位をつけていく必要があります。

現場改善するためには実現性を考えて、1番効果があるのは何か、取り組みやすいかなどを考えて実際に実践していかなくてはなりません。

4:結果の評価と活動の定着

具体的に改善策を立てて実践したら、現状把握したときの数値と照らし合わせてみる必要があります。現場改善したことで具体的に数値がよくなったか、反対に悪くなったか、その結果に対して評価することもまた改善にとって重要なことです。

またこの改善活動は一定期間継続し定着化させることが大事です。継続的に現場改善を繰り返すことで生産性は向上していきます。

製造業におけるDXとは

製造業におけるDXとは

DXは、製造業において、デジタル技術を活用して業務プロセスや生産方法を根本的に見直す動きのことです。

これまでの製造業では、手作業や経験にもとづいた管理が多く見られましたが、DXによりデータを中心とした効率的で自動化された運営が可能となります。このように、デジタル技術の導入は、従来の製造プロセスや業務の進め方を大きく変革します。

DXの導入が進むことで、製造ラインや業務の効率化が期待され、従来の働き方も変わっていくでしょう。例えば、これまで多くの人手を要していた工程も、技術の導入により少人数で対応できるようになる可能性があります。

製造工程にデジタル技術を導入しDXを進めるメリット

製造工程にデジタル技術を導入しDXを進めるメリット

製造業においてDXを進めることで、生産性の向上や作業工程の最適化、技術の蓄積など多くのメリットが生まれます。デジタル技術の活用は、効率化と品質向上の両面で製造現場に大きな変革をもたらすでしょう。

生産性が向上する

DXを進めることで、製造業の生産性は大幅に向上します。デジタル技術の活用により、製造プロセスが効率化され、従来よりも少ない人員でより多くの製品を生産できます。例えば、AIを使った自動化ラインやロボット技術の導入によって、単純作業が自動化されるため、人的作業が大幅に削減されるのです。

また、データ分析によって生産計画が最適化され、需要に応じた生産スケジュールの構築が可能です。その結果、無駄な生産や在庫の過剰を防ぎ、生産効率がさらに高まります。DXにより、リアルタイムでのデータ管理や生産の進捗状況の可視化が進むため、迅速な判断も可能になり、全体の生産性が飛躍的に向上します。

作業工程の最適化につながる

DXを導入することにより、作業工程の最適化が進みます。製造現場では複数の工程が連携して製品がつくられますが、デジタル技術の導入によって各工程の動きをリアルタイムで監視し、効率化することが可能です。

例えば、IoT技術を使って各設備の稼働状況をデータ化し、ボトルネックとなっている部分を特定して改善できます。

これにより、作業のムダを削減し、製造全体の流れがスムーズになります。また、従来の手作業では管理が難しかった微細な工程も、デジタル化によって最適なタイミングで制御可能です。こうした最適化の進展は、品質の向上や納期の短縮にも直結し、企業全体の競争力強化につながるでしょう。

技術やノウハウを可視化・蓄積できる

製造業におけるDXは、現場での技術やノウハウの可視化と蓄積を可能にします。従来の製造業では、ベテランの技術者の経験や知識が個人に依存するケースが多く、これが退職や異動に伴って失われるリスクがありました。しかし、デジタル技術を活用することで、製造工程や技術的な知見をデータとして一元管理が可能です。

例えば、IoTやセンサー技術を使って生産過程の各ステップを記録し、それを分析することで、ベストプラクティスを標準化できます。さらに、そのデータをAIによって分析することで、将来的な予測や改善策の提案が可能です。

このように、DX化を通じて技術やノウハウが蓄積されることで、企業全体の生産性や技術力が強化され、長期的な競争力の向上につながります。

製造業における現場改善で知っておきたい言葉4つ

製造業の現場改善においては、生産の異常事態に備えてさまざまな面から作業内容やデータを見える化していく必要があります。

ここからは、製造業における現場改善で知っておきたい4つの言葉について解説します。

1:4M

4Mとは生産において必要要因となる、Man(人)Method(方法)Material(材料)Machine(機械)の4つの項目をひとまとめにした言葉です。

顧客との契約上、生産者側では勝手に変更できないことも当然存在するため、これらを見える化していくことが非常に重要です。

2:QCDS

QCDSとは4Mが生産の必要要因であるのに対し、結果要因であるQuality(品質)Cost(コスト)Delivery(納期)Safety(安全)のことを指します。

これらを見える化しておくことで、品質不良や原価の増減、納期の遅延、労働災害を未然に防止できます。

3:KMK

生産においては当たり前のことを当たり前にさせるルール作りが重要です。このルールづくりとルールの遵守がおろそかになると品質は低下していきます。

K(ルールを決める)M(ルールを守る、守らせる)K(ルールが守られているか観察し、できていなければ改善する)ことをKMKと呼んでいます。

4:7つのムダ

7つのムダとは「もの」が見えないことで発生する無駄な状態を指します。ここでいう「もの」とは、材料・製品・仕掛品・不良・工具・治具・ゲージなどを指します。

これらがしっかり見える化されていないと、つくりすぎの無駄、手待ち時間の無駄、運搬の無駄、加工の無駄、在庫の無駄、動作の無駄、不良を作る無駄など7つの無駄を招く結果となってしまいます。

まとめ

製造業において現場改善を行うことは日常であり、生産性を向上していくためには現状把握をしっかり行い、継続していくことが何より大事です。問題点をしっかり把握していなければ対策を打つこともできません。

毎日の生産の中で現場の見える化をすすめ、現場改善方法を必要に応じて展開していくことで生産性を高めていきましょう。

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