DXが加速するのに伴い、社内システムの刷新や業務の見直しを行う企業が増えてきています。業務の自動化を図ることでさまざまな恩恵を受けられますが、そこで登場するのが「ワークフローシステム」です。本記事では、ワークフローの基本的な概念や重要性、業務フローとの違い、システムを導入するメリットなどについて解説していきます。
ワークフローとは
ワークフローは特定の業務の一連の流れのことを指しますが、ここではその概念や業務フローとの違いについてそれぞれの項目で解説していきます。
ワークフローの基礎知識と重要性
ワークフローは、申請や承認などの業務から最終決裁にいたるまでの一連の流れのことです。それぞれの企業や部署に合ったワークフローを採用することで、業務全体の見える化やミスの抑制、業務スピードの改善が見込めるので、従来は1つの申請を承認するまでに数日かかっていたものが、数時間で完了させることができます。
特に申請書や承認書などの書類を通して行っていた業務をデジタル化できれば、情報を全て一括で管理できるため、将来的なナレッジ強化にもつながります。
そして、ワークフローのもう1つの重要な役割は、業務の透明性を高めることです。全ての申請過程、承認過程などが記録され、誰がどの段階でどのような判断を下したのかが明確になるため、責任の所在が明らかとなり不正やミスを防ぐことができます。
ワークフローと業務フローの違い
ワークフローと業務フローは似た言葉ですが、異なる場面で使われます。業務フローは業務全体の流れを見える化するためのもので、業務の全体像を示すものです。一方ワークフローは、特定のタスクや業務の過程に焦点を当てており、それをどのように進めるかという点に注目しています。
また、業務フローは複数の部門やチームにまたがる可能性があるのに対し、基本的にワークフローは特定の部門やプロジェクトに限定されることが多いのも特徴です。
このように、ワークフローと業務フローはそれぞれ異なるレベルでの業務管理を目的として使用されている言葉といえます。
ワークフローシステムとは
ワークフローを自動化するワークフローシステムについて、その概要や機能などについてそれぞれの項目で解説していきます。
ワークフローシステムの概要と基本機能
ワークフローシステムは、各業務における申請作業や承認作業などのワークフローを電子化して1つのシステムとして仕組み化するものです。
ワークフローシステムの主な役割は、業務の工程をシステムによって一元管理し、あらゆる手間を減らすことにあります。このワークフローシステムによって企業内のさまざまなフローを電子化すれば、手作業によるミスや遅延を防ぐことができます。
ワークフローシステムの基本的な機能は、承認・決裁機能に加え、申請書のフォーマット作成機能、承認ルートの設定機能など多岐にわたります。また、システム化させることで、管理者がリアルタイムで進捗状況を把握できるのも1つの魅力といえるでしょう。
アナログのワークフローとの違い
アナログのワークフローは、紙ベースの書類や口頭でのコミュニケーションを中心に行われるため、手間がかかったりミスが起こるリスクが高くなったりします。
紙の申請書を使用すると、申請書の紛失や承認者が不在のために処理が遅延する可能性もあり、セキュリティや所要時間の面で影響が出てしまうことも懸念材料の1つでした。しかし、ワークフローシステムを導入することでこれらの問題は大幅に改善可能です。
デジタル化されたワークフローでは、全てのプロセスがシステム上で管理されるため、申請から承認、決裁までの流れが自動化され、書類の紛失や承認の遅延といった問題が解消されます。さらに、システムは進捗状況をリアルタイムで追跡できるため、どの段階で業務が滞っているのかを一目で確認できるようになります。
ワークフローシステムの機能紹介
ワークフローシステムには、業務効率化をサポートするためのさまざまな機能が搭載されています。
まず、申請書のフォーマット作成機能では企業独自の申請書式を簡単に作成できるようになっており、初めてでも安心して利用が可能です。また、承認ルートの設定機能では申請書の種類や条件に応じて適切な承認ルートをシステム内で自動的に設定できるため、誰に承認をもらえばよいのかを間違えずに一目で理解できるようになります。
さらに承認・決裁機能では、システム上で承認や決裁を行うことができるので、いつ誰が承認したかという履歴も残り、後からのトラブルに対応しやすくなります。他にも、書類の手渡しや押印のための出社がなくなるため、パソコンがあれば場所を選ばずにフローを更新できるのもポイントです。
BPMSとの違い
ワークフローシステムとBPMS(ビジネスプロセスマネジメントシステム)は、どちらも業務プロセスの管理と効率化を目指していますが、その適用範囲と目的には違いがあります。
ワークフローシステムは、主に特定の一連の業務の効率化に焦点を当てており、日常業務のスピードアップを図っています。一方BPMSは、企業全体の業務プロセスを管理・最適化するためのシステムで、業務の計画、実行、監視、改善という一連のビジネスプロセス全体の業務改善を目的とした仕組みです。
BPMSを導入することで、営業活動から受注、製造、配送までの工程全体を一元管理して、どの部分にボトルネックがあるのかを分析して改善できます。
ワークフローシステムの導入で得られる5つのメリット
ここでは、ワークフローシステムを導入することで得られる5つのメリットについてそれぞれ解説していきます。
業務の負担軽減
ワークフローシステムを導入することで、企業内における業務負担が大幅に軽減できます。
従来の紙ベースでの作業は、申請書の作成や承認ルートの確認、承認後の書類管理まで手作業に頼る部分が多く、時間と手間がかかるものでした。しかし、ワークフローシステムを導入することでこれらの作業が自動化されるため、申請のたびに発生するルーティン作業が不要となり、確認・管理・調整などのあらゆる手間を省けるようになります。
決裁時間の短縮化
ワークフローシステムの導入は、意思決定の迅速化にもつながります。
従来のように紙の申請書を使用していた場合、申請から確認、そして決裁に至るまでに多くの時間がかかることが課題となっていました。しかし、ワークフローシステムを使用することで、申請書はシステム上で自動的に承認者へ送信され、リアルタイムで進捗が管理されます。そのため業務用のパソコンやスマートフォンがあれば、自宅でも出張先でもインターネットを介して承認を行えるので、決裁にかかる時間を短縮化させることができます。
ペーパーレス化の促進
ワークフローシステムの導入は、企業のペーパーレス化にも大きく貢献することとなるでしょう。
紙による書類管理は、物理的な保管スペースの確保や書類の紛失リスクといった問題を抱えていました。
しかしワークフローシステムを導入することで、全ての申請や確認、決裁がデジタルデータで管理できるため、紙の使用が大幅に削減されます。これによって保管スペースの確保にかかるコストや紙の紛失リスクが解消されるだけでなく、いつでもどこでも該当の書類を検索できるなど管理面でも業務が楽になります。
ナレッジの蓄積・活用
ワークフローシステムは、企業内で蓄積されたナレッジを有効に活用するための土台ともなります。
従来の紙ベースでは、過去の申請書や承認記録を探し出すのに多くの時間がかかり、過去の知見を活用することが難しいケースが多々ありました。しかし、ワークフローシステムでは、すべての業務プロセスがデジタルデータとして保存されるので、過去のデータを簡単に検索・参照することが可能となります。
また、システム上で得られたデータを再度分析していくことで、業務改善のための新たなナレッジを蓄えることも可能です。
内部統制の強化
ワークフローシステムは、企業の内部統制の強化にも役立ちます。
従来、紙の申請書による業務プロセスは、承認ルートの不明確さや書類の改ざんリスクなど、内部統制の面で多くの課題がありました。しかし、ワークフローシステムを導入することで、全ての業務プロセスがシステム上で管理され、承認ルートや承認者の変更が制限されるため、プロセスの透明性が確保できます。具体的には、システム管理者や部署・役職ごとの閲覧権限を設けることで、不正リスクを回避できるようになります。
さらに、監査対応の際も必要な情報をすぐに提示できるため、監査業務が効率化され、企業のガバナンス強化にもつながります。
ワークフローシステム導入におけるデメリットとリスク
ワークフローシステムは、業務効率化やテレワーク対応を目的に導入されることが多い一方で、導入に伴うリスクやデメリットもあります。
ここでは、ワークフローシステムの導入における主なデメリットとリスクについて、具体的な例を交えながら詳しく解説していきます。
業務フローの再構築が必要
ワークフローシステムの導入において最も大きなハードルとなるのが、業務フローの再構築です。多くの企業では既存の業務フローが長年にわたり形成されています。その中には非効率な部分も含まれますが、慣れ親しんだ方法であるため変えることへの抵抗感が強い人が多いです。
しかし、ワークフローシステムを効果的に導入するためには、既存のフローを見直して最適化する必要があります。
例えば、従来エクセルで管理していた申請書をシステムに移行する際、単純にエクセルの内容をシステムに移すだけでは不十分です。
システムが持つ機能性に応じて承認ルートを設定し直す必要があり、場合によっては承認者の休暇時の対応や組織変更に伴うフローの変更も考慮しなければなりません。この再構築には、関係者の合意を得るための調整やフロー変更に伴う業務の停止期間など、予想以上に多くのリソースが必要となるため、システム導入が逆に業務の停滞を招くリスクもあります。
初期コストの負担
ワークフローシステムの導入には、初期コストが大きな負担となる場合があります。
オンプレミス型のシステムでは、サーバの設置や保守、システムのカスタマイズに大きな初期投資が必要です。一方でクラウド型システムは初期コストを抑えられるものの、月額費用がかかるため長期的なコストパフォーマンスまで考慮しておく必要があります。
また、初期設定においてはシステム導入の専門知識が必要です。内部リソースでは対応できない場合は外部の専門業者に依頼する必要があるため、さらにコストがかかってしまう可能性があります。
ワークフローシステム導入の注意点
ワークフローシステムの導入にはいくつか注意点もあり、無計画にシステムを導入してしまうと、むしろ業務が複雑化して作業効率が低下してしまう可能性があります。
ここでは、ワークフローシステム導入時の注意点について解説していきます。
ワークフローの再検討
ワークフローシステム導入の初期段階では、現在の業務フローをどのようにシステム化するかを明確にする必要があります。ここで重要なのは、どの部分をシステムに任せ、どの作業を効率化したいのかを明確にすることです。
業務フローの複雑化を避けるために不要な承認ステップを省略したり、承認者の代替ルートを設定したりするなど、システム化する範囲とその理由を十分に検討していきましょう。
検討の結果、フロー全体を見直さないといけない場合があるかもしれませんが、システム導入後に発覚するよりは改善しやすいため十分な検討をおすすめします。
従業員への研修・サポートが必要
新しいワークフローシステムを導入しても、従業員が操作に不慣れな状態のままにしてしまうと、導入前よりも作業効率が低下してしまう可能性があります。そのため、システムの効果を最大限に引き出すためには、従業員への研修とサポート体制の整備が不可欠です。
システムの導入時には、詳細なマニュアルの作成や各部門のメンバーに対する研修、動画での使い方講座など多くのサポート体制を整えておく必要があります。
また、困ったときにすぐに相談できるサポート体制として、チャットサポートや電話サポートを提供しているベンダーを選べば、よりシステムの利用に対する不安を払拭できるでしょう。
メンテナンス性とカスタマイズ性
ワークフローシステムは導入後も継続的なメンテナンスが必要で、特に組織変更や業務フローの変化への対応が求められます。システムが適切にカスタマイズできない場合やメンテナンスに過度な労力がかかってしまう場合、長期的な運用が難しくなる可能性があります。
また、システムの設定変更が複雑で、頻繁にベンダーに依頼しなければならないような状況も避けるべきです。そのためシステムを選定する際には、カスタマイズの自由度が高く、社内でもメンテナンスができるような製品を選ぶことが重要です。
無料トライアルがある場合は実際に活用してみて、自社の業務フローにどれだけ適応できるかを確認しておくとよいかもしれません。
クラウド型もあり|ワークフローシステムの選び方
ワークフローシステムにはクラウド型とオンプレミス型という2つの選択肢がありますが、どのような観点で選べばよいのでしょうか?
ここでは、ワークフローシステムの選び方について解説していきます。
必要な機能が搭載されているか
クラウド型ワークフローシステムには、申請フォーマット作成機能や承認ルート設定機能、コメント機能や権限付与機能など、さまざまな機能が搭載されています。しかし、これら全ての機能を十分に活用できる企業は多くはないため、導入を検討する際には、まず自社にとって「最低限必要な機能」が何かを明確にし、それにもとづいてシステムを選定することが重要といえます。
できるだけシンプルな機能にしたいという場合もあれば、社内のコミュニケーションを円滑にするためにコメント機能を求めるような場合もあります。このように、必要な機能を洗い出してオプション機能がどの程度必要かを判断することで、無駄なコストを抑えられます。
利用するシステムの規模感が見合っているか
ワークフローシステムを選ぶ際には、自社の規模感に見合ったシステムであるかどうかも大切です。
従業員数が少ない中小企業では、申請フローがシンプルで複雑な管理が不要な場合が多いため、簡単で分かりやすいシステムの導入が適しています。それに対し、大企業や組織が多層構造になっている場合には、複雑な承認ルートを管理できるシステムが求められることが多いため、カスタマイズ性の高いクラウド型ワークフローシステムなどが適しています。
このように、自社の業務フローや規模に合ったシステムを選定することで、無駄な機能を避けつつ、運用しやすいシステム環境を整えることができます。
専門知識がなくてもシステム自体が扱いやすいか
システムの扱いやすさも、ワークフローシステムを選ぶ際に重視すべきポイントです。どれだけ高機能なシステムであっても、操作が複雑であれば現場で活用されなくなる可能性があります。特に、ITリテラシーが高くない従業員が多い場合、システムが導入されたことで業務効率が低下してしまっては本末転倒です。こうした問題を防ぐためには、システムがシンプルで誰にとっても使いやすいかを確認することが大切です。
また、サービスによっては導入前に無料トライアルを活用することができるので、実際の業務でどの程度使いやすいかを現場で試してみることをおすすめします。
ワークフローを自動化できるツール
ワークフローの自動化は、繰り返し発生する定型業務やタスクを解決するための1つの手段です。ここでは、ワークフローを自動化できる各ツールについてそれぞれ解説していきます。
Power Automateで自動化
Power AutomateはMicrosoftが提供しているワークフローを自動化するツールです。定型業務の自動化に優れており、ルールに基づいてメールの自動返信、ファイル更新の通知、データ入力の自動化など、幅広いタスクを簡単に自動化できます。
また、ExcelやOutlookなどのMicrosoft製品との連携が非常にスムーズな点が他の自動化ツールとの差別化ポイントとなっています。
さらにノーコードやローコードで構築可能なため、専門的なプログラミング知識がなくてもドラッグ&ドロップでフローを作成できる点も魅力です。
Slackで自動化
Slackは一般的にはコミュニケーションツールとして知られていますが、ワークフロービルダーを利用することで、業務プロセスの自動化も可能となっています。チームメンバーの進捗状況を自動で収集して共有したり、定期的にリマインダーを送信して業務の抜け漏れを防止するなどが可能です。
また、Slackは外部ツールとの連携にも優れており、GoogleドキュメントやTrelloなどのアプリケーションと簡単に統合できるため、複数のツールを活用しているチームやプロジェクトにも適しています。
さらに、テンプレートを利用して簡単に自動化プロセスを作成できる点も、Slackの大きな魅力といえるでしょう。
Teamsで自動化
Teamsもコミュニケーションツールとして広く利用されていますが、Power Automateと連携することで自動化が可能となります。定例会議のリマインダーを自動的に送信したり、プロジェクトの進捗状況を定期的に通知したりする機能などが簡単に設定でき、TeamsとSharePointを組み合わせてドキュメントの管理を自動化することも可能です。
また、ここ数年でリモートワークが増え、ビデオ通話機能としても優秀なTeamsの利用率は高くなっているため、ワークフローを自動化させるメリットは大きいでしょう。
Power Automateでワークフローを効率化
企業のDXが進む中、特に注目されているのがMicrosoftが提供する「Power Automate」です。手動で行っていたタスクを簡単にワークフローとして構築・運用できるため、ヒューマンエラーを防ぎ、より生産性の高い業務が実現できる点で優れています。
さらにPower Automateは、SharePoint、Dynamics 365、OneDrive for Businessなど、さまざまなMicrosoft製品や外部サービスと連携可能であり、複数のシステム間でデータをシームレスに統合・移行することができます。
まとめ
ワークフローシステムは、申請・承認その他書類作成作業など特定の一連の業務を簡便化できるシステムです。
導入するにあたって業務フローを再構築する必要があったり初期コストがかかってしまうなどのデメリットもありますが、作業の負担軽減や時間短縮だけでなくペーパーレス化の促進や不正の抑制にもつながります。
ワークフローを導入するならMicrosoft社が提供するPower Automateがおすすめです。
Power Automateは30日の無料トライアルから体験可能となっているため、システムの導入によるメリットを事前に把握することができます。
導入に迷っている場合は、ぜひPower Automateを利用してみてください。