クラウド型ワークフローシステムは、繰り返しの多い定型作業を自動化し、業務の効率化や最適化をサポートするツールです。初期導入コストを抑えつつ、スムーズに業務プロセスをデジタル化・自動化できるため、スピーディーに業務効率化を実現できます。各システムの特徴を理解し、業務要件に応じて最適なシステムを選定することが重要です。
ワークフローシステムとは?
ワークフローシステムとは、企業や組織内での業務プロセスを自動化し、効率よく管理するためのシステムです。業務の流れを可視化し、タスクの進行や手続きを自動化することで、業務の効率化と最適化をサポートします。
ワークフローシステムを導入することで、紙ベースで行っていた申請・承認業務を電子化し、システム上で一元管理が可能です。それにより、手作業や俗人的な業務プロセスの進行状況を把握しやすくし、業務のスピードアップやミスの削減につながります。
また、ワークフローシステムは、クラウド型とオンプレミス型の2種類が代表的です。業務の種類や組織の規模によって、最適なワークフローシステムの形態を選択できます。
クラウド型のワークフローとは?
クラウド型のワークフローシステムは、インターネット上のクラウド環境で提供されるワークフローのサービス形態です。以下では、クラウド型とオンプレミス型のワークフローシステムの違いや特徴について解説します。
クラウド型ワークフローとは?
クラウド型ワークフローは、ワークフローシステムをアプリやソフトウェアで操作し、データをクラウド上で管理する形態です。インターネットを通じて利用するため、特定の端末や場所に縛られず、リモートワークにも適応しやすいという特徴があります。
アップデートやセキュリティ対策といったシステムの運用管理は、プロバイダが行います。そのため、自社での運用負担が大幅に軽減されるメリットもクラウド型の特徴です。
また、サーバの購入やシステム構築が不要で、月額料金などのサブスクリプション形式で利用できます。ユーザー数やデータ容量が増えた場合でも、必要に応じてリソースを拡張できるため、柔軟に対応可能です。
このように、クラウド型ワークフローは、コストを抑えて短期間で導入でき、業務の効率化と柔軟な運用管理ができます。
オンプレミス型ワークフローとは?
オンプレミス型ワークフローは、企業や組織がサーバを購入して自社管理をし、システムを構築・運用する形態です。自社のインフラ内で管理するため、業務に合わせたカスタマイズやセキュリティ対策を細かく設定できるメリットがあります。
特に、個人情報や機密データなどを扱う金融業、医療業界などに適しており、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。
デメリットは、初期導入と運用にコストがかかることです。サーバの購入や設置場所、ソフトウェアのライセンス費用があるほか、システムの保守管理、アップデートコストが必要です。
このように、オンプレミス型は高いセキュリティとカスタマイズ性に優れている半面、費用が高くなる傾向があります。
クラウド型稟議システムとワークフローの違い
クラウド型稟議システムは承認プロセスに特化しており、ワークフローシステムは、稟議を含む幅広い業務に対応できます。
稟議システムは、承認を必要とする書類の稟議プロセスを電子化・自動化するためのシステムです。ワークフローシステムの一種で、例えば、経費申請、購買申請、契約書などが稟議の対象となります。
ワークフローは、稟議プロセスだけでなく、タスクやプロジェクト、データ管理を含む業務全般を最適化するシステムです。
このように、どちらも業務プロセスを自動化し、業務進捗をリアルタイムで追跡する機能があります。大きな違いは業務範囲であり、目的によって最適なシステムを選びましょう。
中小企業にクラウド型ワークフローシステムが向いている理由
中小企業にとって、クラウド型のワークフローシステムの導入は、導入の手軽さやコスト面でのメリットが多い傾向です。業務効率化を図るために、中小企業にクラウド型ワークフローシステムが向いている理由を詳しく分析します。
低額で手軽に利用
クラウド型ワークフローシステムは、初期導入コストが低く、月額料金などのサブスクリプション形式で手軽に利用できます。クラウドベースのため、高価なサーバやソフトウェアの購入が不要であり、すぐに利用が可能です。
また、中小企業の規模や予算に合わせたプランを選択できるため、コスト管理がしやすいメリットがあります。利用人数や機能に応じてプランを柔軟に変更でき、アップデートやメンテナンスによるコストも発生しません。
- 初期費用が安い
- 規模に応じて料金調整可能(月額やライセンス料金)
- 大きな追加費用なし
操作が簡単
クラウド型ワークフローシステムは、直感的で使いやすい操作性のインターフェースを提供するものが多く、すぐに利用開始できます。シンプル操作で短期間でシステムに慣れるため、トレーニングの時間や準備が必要ありません。
例えば、クラウド型ワークフローシステムは、ドラッグ&ドロップ設定や、申請テンプレートの用意など、サポートが充実しています。複雑なプログラミング知識は不要であり、テンプレートをカスタマイズするだけで、スムーズに運用開始が可能です。
- シンプルな操作性
- カスタマイズ可能なテンプレート
- 充実のサポート体制
クラウド型ワークフローシステムのメリット
クラウド型ワークフローシステムは、さまざまな企業が手軽に利用できるクラウドベースの業務自動化ツールです。手続きの自動化やミス削減など、業務プロセスを改善するメリットがあります。
ここでは、クラウド型ワークフローシステムのメリットについて解説します。
業務の効率化
クラウド型ワークフローシステムは、手作業の業務プロセスの自動化により、作業時間を短縮し、業務の効率化を図ります。煩雑なワークフローが標準化されることで、業務の手順が統一され、ばらつきや無駄な時間を削減可能です。
また、場所を問わず申請・承認が可能で、自動処理により人的ミスも減るため、テレワークにも最適です。印刷の必要もないため、コストや時間の浪費も防げます。
さらに、システム内に過去の申請データを保存することで、スピーディーな検索と効率的な管理が可能です。
状況の可視化
クラウド型ワークフローシステムは、リアルタイムで進捗を可視化するため、状況を把握しやすく、情報共有やフォローにも最適です。これにより、どこで遅れが発生しているかなどのボトルネックの特定が可能になり、スピーディーな対応ができます。
そして、過去の業務履歴がデジタルで記録されているため、いつ誰がどの作業を行ったかを追跡可能です。この機能により、業務改善のための分析や内部監査が効率的に行えます。
また、業務の進行状況に応じて、タスクの通知やリマインダーが自動的に送信されるため、重要な作業にもすぐに対応可能です。
コスト削減
クラウド型ワークフローシステムは、オンプレミスとは違ってサーバやハードウェアの購入が不要のため、コスト削減に効果的です。初期導入コストを抑えるだけでなく、月額や年額のサブスクリプション形式のプランが多いため、予算に合わせて柔軟に対応できます。
また、システムの運用やメンテナンスはサービスプロバイダーが行うため、管理負担が減る点もポイントです。書類のデジタル化により印刷コストも削減できます。
- 初期導入コストの低減
- 運用・保守コストの削減
- ペーパーレス化
セキュリティ強化
クラウド型ワークフローシステムは、ヒューマンエラーや物理的な損壊に対するリスクを軽減し、セキュリティを強化できます。
例えば、紙の申請書の紛失によるヒューマンエラーの防止が可能です。また、承認フローがシステムに登録されているため、承認先の間違いもありません。それにより、意図しない人物による改ざんや情報漏えいを防止します。
また、オンプレミス型のようにサーバを必要としないため、損壊による物理的なダメージを負うことなく、データを守ることができます。
クラウド型ワークフローシステムのデメリット
クラウド型ワークフローシステムは、手軽な導入などのメリットがある一方で、機能制限などのデメリットも存在します。また、独自の業務プロセスや複雑なフローまではカバーできない場合もあるため、検討が必要です。
以下では、その主なデメリットについて解説します。
カスタマイズ性
クラウド型ワークフローシステムは、オンプレミス型に比べて、カスタマイズ性と柔軟性には限度があります。標準的な基本機能を安価で提供する一方で、プランによって機能に制限があるためです。特定の業務要件に応じたカスタマイズが制限されるなど、柔軟性に欠ける場合が少なくありません。
また、独自のプロセスや複雑な業務フローを導入したい場合には、追加の開発や連携可能なアプリで業務を補わなければなりません。
提供されている範囲でワークフローを対応させるか、プランのレベルを上げるなどの検討が必要です。
セキュリティ対策の必要性
クラウド型システムは、外部のプロバイダの担うセキュリティ対策に依存しており、サポート体制の確認が必要です。万が一システムにセキュリティ問題が発生した場合、データがリスクにさらされる可能性があります。データが漏えいした場合、企業イメージの低下や顧客からの信頼を失うかもしれません。
クラウド型システムでは、インターネット経由でデータを送受信するため、外部からのサイバー攻撃を受けるリスクがあります。ネットワークのセキュリティを強化するなどの対応が必要です。
既存システムと連携性
クラウド型ワークフローシステムは既存のシステムや他のアプリと連携する際に、互換性の問題が発生する可能性があります。インターフェースやデータ形式の違いによって、システム連携が難しくなることがあるためです。既存システムと連携するために、追加の開発や別システムの利用など、追加のコストが発生する場合があります。
また、連携が難しい場合、既存のデータを新しいシステムに移行するなどの作業の検討も必要です。システムを導入する際には、既存システムと連携が可能かどうかを確認しましょう。
クラウドワークフローの導入に適した選び方
クラウド型ワークフローシステムを導入する際には、自社の業務に適したシステムを選定することが重要です。特にクラウドワークフローを導入する目的に沿って、操作性や効率性を基準に選びましょう。
以下では、クラウド型ワークフローシステムを選ぶ上で重要なポイントについて、詳しく説明します。
操作しやすいか
クラウド型ワークフローシステムを導入する際に、ITに詳しくなくてもスムーズに利用できるかどうかを確認しましょう。システム選びには、直感的な操作性やドラッグ&ドロップ操作が可能かなど、短期間で習得できるような視点が必要です。また、業務に合わせて柔軟にカスタマイズできる機能があるかも確認する必要があります。
さらに、モバイル端末でも操作が簡単に行えるかどうかも重要です。リモートワークや外出先での承認業務などをスムーズに行えるシステムを選ぶと、業務効率の向上につながります。
業務の効率が上がるか
クラウド型ワークフローシステムを導入する際には、業務効率の向上に重点を置く必要があります。手作業の削減やボトルネックの特定や解消、データ活用が可能かなどを視野に入れてシステムを選ぶことが重要です。
通知機能やリマインダーのほか、以下を満たす機能があるかどうか、確認しましょう。
- 申請、承認、報告などのルーティンワークを自動化
- ワークフローやタスクの進捗状況を可視化
- 既存のシステムと連携
- レポートや分析機能の有無
既存システムと連携できるか
ワークフローシステムを選ぶ際には、既存のシステムやツールとどの程度連携できるかも重要な選定基準です。例えば、Microsoft 365やGoogle Workspaceなど、他のシステムとの連携に用いられるAPIが提供されているかを確認しましょう。
また、既存のシステムからデータをインポート・エクスポートできるかも重要です。ワークフローシステムをスムーズに導入するために、システムの互換性や追加作業の有無は確認する必要があります。
導入実績のあるシステムとの連携事例があるかも確認しましょう。
クラウド型ワークフローシステム3選
クラウド型ワークフローは、中小企業から大企業まで幅広く利用されており、実績と豊富な機能が特徴です。基本的な機能を持つシステムの中から、代表的なクラウド型ワークフローシステムを3つ紹介します。
楽々ワークフロー
楽々ワークフローは、NTTデータイントラマートが提供するワークフローシステムで、使いやすさと柔軟なカスタマイズ性を両立しています。さらに、豊富なテンプレートを活用することで、短期間での導入が可能です。
機能が多いため、導入初期は学習コストがかかる可能性があります。大企業向けのワークフローシステムです。
特徴 | 業務の規模や複雑さに応じて、ワークフローを柔軟に設計可能 |
メリット | 柔軟なカスタマイズ性、多様な業種に対応したテンプレート、多言語対応 |
URL | https://www.sei-info.co.jp/workflow/ |
ジョブカンワークフロー
ジョブカンワークフローは、経理や人事などのバックオフィス業務を効率化するクラウド型システムで、中小企業向けです。トレーニングなしでも導入しやすいシステムで、スマートフォンやタブレットにも対応しており、リモートワーク環境でも快適に利用できます。
ただし、カスタマイズ性がやや限定的で、複雑な業務フローには対応が難しい可能性があります。
特徴 | シンプルで直感的な操作性、低価格(初期費用が無料) |
メリット | 高い操作性、シンプルなインターフェース、多種類の申請、スマホ対応 |
URL | https://wf.jobcan.ne.jp/ |
ガルーン
ガルーンは、サイボウズが提供する企業向けのグループウェアで、スケジュール管理やコミュニケーションツールとしても活用できます。グループウェアとワークフローを一体化して管理できるため、情報の一元管理が可能です。
導入コストが比較的高めで、設定がやや複雑なため、システム管理に一定のITリテラシーが求められます。
特徴 | 機能が豊富で、情報共有とワークフロー管理を一元化 |
メリット | グループウェアとの連携による情報の一元化、豊富なAPIを提供、Microsoftなどとも連携可能 |
URL | https://garoon.cybozu.co.jp/ |
Power Automateでワークフローを自動化
Power Automateは、Microsoftが提供するクラウドベースの業務自動化ツールです。Power Automateを活用することで、さまざまなアプリケーションやサービスを連携して、ワークフローを自動化できます。
Power Automateを使ったワークフロー自動化のメリット
Power Automateは、ノーコードでワークフローを自動化し、効率化するためのツールです。OneDriveやOutlookなどのMicrosoft製品と親和性があり、幅広い業務に対応できるため、多くの企業で導入されています。
Power Automateは、直感的なドラッグ&ドロップ操作でワークフローを作成できる点が特徴です。イエスノー方式で条件分岐を作成でき、プログラミング知識がなくても自動化を進められます。また、テンプレートが用意されており、基本的なワークフローなら短時間で構築できる点も魅力です。
Power Automateを導入することで、業務効率化、コスト削減、生産性の向上を実現できます。導入を検討する際は、自社の業務内容や既存のシステム環境に合わせて、最適なワークフローを設計することが重要です。
Power Automateによるクラウドワークフロー導入手順
Power Automateには、テンプレートが用意されているため、クラウド型ワークフローを作成するのに最適です。Power Automateの導入には、 まず、Microsoft 365のアカウントでサインインする必要があります。
手順は、大きく分けて以下のステップで進められます。
- Power Automateのインストール
- テンプレートの選択またはフローの新規作成
- 開始するトリガーを設定
- 実行するアクションを追加
- フローのテスト実行
- フローの公開と運用
Power Automateでは、複数アクションの組み合わせや、条件分岐を追加した複雑なフローを構築することも可能です。例えば、Teamsのチャンネルで社内FAQのボットを連携し、質問(トリガー)と答え(アクション)を用意することで、特定部署への問い合わせを減らすことができます。
まとめ
クラウド型ワークフローシステムは、業務効率化、状況の可視化のほか、低コストで手軽に導入でき、操作も簡単という点が大きな魅力です。
クラウド型ワークフローシステムを選ぶ際は、自社の業務内容や規模に合わせて、下記のポイントを参考に比較検討しましょう。
- 操作方法が一目で分かりやすいか
- 業務に合った機能が搭載されているか
- 初期費用、機能ごとの料金が予算内か
- 導入後のサポート体制が充実しているか