RPA/ワークフロー

RPAと生成AIで何が出来る?組み合わせ事例と導入ポイントを紹介

RPAと生成AIで何が出来る?組み合わせ事例と導入ポイントを紹介

RPAとは定型業務を自動化する技術です。一方、生成AIは膨大なデータの学習により新たなデータを生成できます。定型業務しかできないRPAに、生成AIによる識別・判断が加わり、大幅な業務効率化が期待できます。本記事ではRPAと生成AIの組み合わせで何ができるか、導入のポイントや課題を紹介します。

RPAと生成AIの違い

RPAと生成AIの違い

RPA(Robotic Process Automation)と生成AIは、いずれも業務効率化に役立つ技術です。しかし、その用途には明確な違いがあります。それぞれの特性を理解すれば、適切な場面で効果的に活用できるでしょう。

ここでは、RPAと生成AIの概要と、双方の違いを解説します。

RPAとは

RPAとは、定型業務をロボットにより自動化する技術です。

あらかじめルールを定め、それに従って行動します。RPAは業務効率化や人手不足の解消、業務改善といった目的で利用されます。

例えば、送られた請求書を元にデータを抽出しシステムへ入力することや、売上データを自動集計し関係各所へメールで通知することなどが可能です。

RPAは24時間365日休まずミスなく作業ができるため、業務の効率化やミスの低減が期待できます。RPAについては、以下の記事で詳しく説明しています。参考にしてください。

RPAで何ができる?仕組みやツール、導入するメリットも解説

生成AIとは

生成AIとは、大量のテキスト、画像、音声などのデータを学習し、新しい文章、画像、音楽、コードなどを生成する人工知能です。

自然言語処理や画像解析技術、音声解析技術といったさまざまな分野で利用されています。
OpenAIのChatGPTや、GoogleのGeminiといった生成AIが有名です。

生成AIは、チャットボットによる顧客対応の自動化、画像生成によるイラスト作成、音声認識による議事録作成など、さまざまな分野で活用されています。

このように生成AIは新たなコンテンツを作成し、生産性向上や業務効率化に欠かせない技術になっています。

RPAと生成AIの違い

RPAと生成AIには以下の違いがあります。

比較項目 RPA 生成AI
動作 決められたルールに沿って動作 学習したデータをもとに自律的に動作
対象業務 定型業務 非定型業務
柔軟性 低い 高い
学習能力 なし あり
実装の難易度 比較的容易 専門知識が必要

RPAは定められたルールにそって動くため、業務の変更に対する柔軟性は低く、業務変更時には必ずルールを修正する必要があります。その代わり、活用するためにはRPAツールを利用したワークフローの作成により、比較的容易に実装することが可能です。また、結果が安定していることも特徴です。

一方、生成AIは学習データをもとに動作するため、入力データに対して柔軟に対応できます。

しかし、学習させるデータによっては誤った結果を生成(ハルシネーション)する場合があります。そのため、生成結果をチェックするといった工夫が必要です。

生成AIとRPAの連携でできること

生成AIとRPAの連携でできること

生成AIはデータ生成や分析、非定型業務の支援、RPAは定型作業の自動化といったように、得意分野が異なります。両者を組み合わせることで、複雑な業務フローを統合的に自動化できます。

例えば、メールでの問い合わせ内容をRPAで検知、問い合わせ内容に応じた回答を生成AIが作成、RPAが回答メールを返信するといった自動化です。

このように、RPAに生成AIを組み合わせ、業務効率化や作業時間の短縮、ミスの低減といった課題の解決が期待されています。

主に活用されているRPAは以下の通りです。

生成AIとRPAの組み合わせ事例

生成AIとRPAの組み合わせ事例

生成AIとRPAの組み合わせにより、業務効率の向上やミスの低減が可能です。

現在は、文書だけでなく画像データや音声データも活用し業務改善が行われています。ここでは生成AIとRPAをどのように組み合わせているのか、事例を3つ紹介します。

音声データの自動文字起こし

生成AIによる自然言語処理技術や音声解析技術とRPAを組み合わせて、自動文字起こしが可能です。

これを利用すれば、Web会議の議事録を自動的に生成可能です。

例えば、以下のように設定します。

  • Power AutomateなどのRPAで、TeamsやZoomのWeb会議の録画を自動的に保存するフローを作成
  • RPAと音声認識サービスを連携させ、録画データから会議内容をテキストで出力
  • 会議内容を、ChatGPTなどの生成AIによるa自然言語処理技術を利用して、会議内容を議事録として整理
  • RPAが所定の場所に議事録を保存し関係者に通知

音声認識サービスには、Azure AI Speech ServiceやGoogle Cloud Speech-to-Textといったサービスがあります。

自然言語処理技術もChatGPTやMicrosoft Copilotといった製品がそろっています。予算やライセンス数、ニーズに合わせて選択するとよいでしょう。

カスタマーサポートの自動化

生成AIによる自然言語処理技術とRPAの連携はカスタマーサポートの自動化にも有効です。

例えば、以下のように設定します。

  • Power AutomateなどのPRAで、メールを受信したらフローが起動するように設定
  • ChatGPTなどの生成AIによる事前言語処理技術でメールの件名、内容を解析し問い合わせの内容を分類
  • FAQや事前に登録された問い合わせ内容であれば、RPAが所定の回答を自動的に返信。新たな問い合わせ内容であれば、人にエスカレーションしカスタマーサポートが対応
  • 問い合わせ件数や、応答時間といったレポートをRPAで作成し報告

よくある問い合わせや、簡単な問い合わせを自動化することで、カスタマーサポートはより難しい案件に集中できるでしょう。

これは、顧客満足度向上と業務効率化、顧客への回答時間短縮を達成します。

請求書の会計システム登録を自動化

請求書処理は経理部門にとって重要な業務ですが、手作業では効率が悪くヒューマンエラーが発生しやすい作業です。

この業務を、生成AIの画像解析技術とRPAを活用することで自動化できます。

例えば、以下のように設定します。

  • ChatGPTなどの生成AIにスキャンデータのサンプルを読み込ませ、画像解析技術を用いて、さまざまな請求書を学習
  • Power AutomateなどのPRAで、請求書のスキャンや、請求書がメールで送付されたらフローが起動するように設定
  • 生成AIによる画像解析技術でスキャンデータを解析し、件名や金額といった記載内容を読み出す
  • RPAが読み出したデータを元に、会計システムに入力

メリットは手入力の手間を削減できるだけでなく、請求処理自体の時間短縮や、ヒューマンエラーの防止といった点です。

代表的な生成AI

代表的な生成AI

生成AIは、自然言語処理や画像解析、音声解析など幅広い分野で利用されています。

ここでは、代表的な生成AIである「GPT」「Gemini」「Claude」について、それぞれの特徴や活用事例を詳しく解説します。

GPT

GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAI社が開発した生成AIです。その特徴は、高精度な自然言語処理能力を持ち、多様な用途に利用できる点にあります。

このGPTを利用した代表的なサービスは、「ChatGPT」と「Microsoft Copilot」です。

GPTは膨大なデータをもとに学習しており、人間のように自然な文章を生成する能力があります。質問応答、文章要約、翻訳、文章作成などで、あたかも人が作成したような文章を作成可能です。

企業では、カスタマーサポートのチャットボットとして顧客対応を自動化したり、広告文や記事の草稿を作成したりしています。

Gemini

Geminiは、Google社が開発した生成AIで、特に自然言語処理だけでなく音声認識や画像認識など、異なる形式のデータを組み合わせて処理できます。

また、Googleの検索エンジン技術が利用できるため、他の生成AIに比べてより新しい情報を利用して回答を生成可能です。

Geminiは画像付きの提案資料作成や、音声データの要約などに活用されています。特に、創造的な業務やプレゼンテーション資料の自動生成で注目されています。

Claude

ClaudeはAnthropic社が開発した生成AIで、人間中心の設計思想にもとづいています。そのため、安全性と倫理性を重視した設計が特徴です。

Claudeは、倫理的な行動規範を組み込んだ「憲法」にもとづいて学習しており、誤った情報や不適切なコンテンツを生成しにくいよう設計されています。そのため、ハルシネーションを起こしにくい点が強みです。

Claudeは、カスタマーサービス、コンテンツ作成、研究など、幅広い分野で活用されています。

例えば、カスタマーサービスではチャットボットによる顧客対応、コンテンツ作成ではブログ記事や記事の要約に利用されています。

生成AIと組み合わせたRPA導入のポイント

生成AIと組み合わせたRPA導入のポイント

RPAを導入する際は、事前準備が重要です。ここでは、具体的なポイントを5つ挙げ、それぞれの重要性と実践方法を説明します。

目的、範囲の明確化

RPA導入を成功させるためには、まず目的と範囲を明確にすることが重要です。この2つが明確でない場合、目的が途中でそれたり、導入後に必要な範囲が含まれていなかったりする場合があります。

また、頻度が高い業務でなければ、対費用効果が高くありません。自動化するのはデータ入力やメールの返信といった頻度の高い業務がよいでしょう。

例えば、請求書処理や報告書・議事録の作成、サポートデスクの自動化といった業務も該当します。

現在の業務の流れを整理することも重要です。RPA導入部門が、業務の流れを分析すると、自動化できる項目か人が判断すべき項目か整理されます。この整理の結果が、RPA化の対象を判断する材料となるのです。

目的と範囲を明確にすることで、進む方向が定まるでしょう。

体制の整備

RPA導入時には体制構築が欠かせません。RPA導入推進部門、RPA開発部門、ユーザー部門といった体制を整備して役割分担を明確にする必要があります。この役割分担が明確でなければ、責任の所在が曖昧になりRPA導入が進まないおそれがあります。

RPA導入後の体制も整備が必要です。これは、RPAは導入して終わりではなく、自動化の範囲を拡張したり、生成AIで判断する範囲を拡張したりする場合があるためです。

業務改善と同じく、導入後もPDCAサイクルを回し継続的な改善が必要になるでしょう。

また、体制の決定はスキルや資格の取得にも影響を及ぼします。RPAや生成AIの運用者には必要な教育や資格の取得をおすすめします。人材が不足しているのであれば、専門家の支援を受けるのもよいでしょう。

このようにRPA導入前に体制を整備することで、RPA導入に対する環境面が整備されます。

運用ルールの整備

運用ルールの整備も重要な項目です。RPAを有効に活用し続けるためには、継続的な改善が必要です。

しかし、RPAの構成管理や変更記録といった運用ルールが守られなければ、属人性が残りトラブルになるおそれがあります。

例えば、RPAによる自動化フローを変更し設計書に反映しなかった場合、設計書と実際のRPAの動きが合わなくなります。この状態でRPA設計者が異動になった場合、後任は設計書と実際のRPAが違っていることが分かりません。

結果、RPAに誤った改修を施し、誤った結果やエラーになる場合があります。

そのため、RPAを変更するための申請や承認、構成管理、リリースといった運用ルールを整備し、確実に守れるようにしなければなりません。

スモールスタート

RPA導入をいきなり全社で導入すると、運用が大きく変わり混乱を招くおそれがあります。

社内で問い合わせが殺到し、業務効率化のために導入したRPAが逆に業務効率を悪化させる場合もあります。

まずはスモールスタートでの開始がよいでしょう。少数の業務を対象としてRPAを導入します。例えば、総務部で請求書処理を試験運用し、結果を分析します。

その分析結果を元に、ノウハウの蓄積、改善すべき点や運用体制を整えましょう。RPAについての問い合わせをFAQという形でまとめ、社員教育の資料とするのも有効です。また、小規模な成功事例が社内で広まれば、他部署が導入を要望してくることも期待できます。

まずは、スモールスタートによりノウハウと成功事例を蓄積することが重要です。

全社へ展開

スモールスタートで得たノウハウをもとに、全社規模でRPAを展開します。

まずは試験運用で得たデータを分析し、導入可能な他部門を特定します。1度に全体へ拡張するのではなく、段階的に進めることでリスクを軽減できるでしょう。

続いてRPAや生成AIの導入によるメリットを全社員に共有し、導入への理解を深めます。研修の実施や導入成功事例の発表も効果的です。運用ルールの周知や教育も、全社への展開直前に行うとよいでしょう。

このように、安全に全社へ展開するためには、周到な準備が必要となります。

生成AIとRPAの課題

生成AIとRPAの課題

RPAと生成AIの組み合わせは業務効率を向上させる可能性がありますが、課題も存在します。特に生成AIについては、総務省の情報通信白書において課題が提起されており、対応が必要です。
出典:総務省 令和6年版 情報通信白書

ここでは、生成AIとRPAが持つ主な課題を4つ挙げ、それぞれの詳細と対応策を説明します。

ハルシネーション

ハルシネーションとは「幻覚」を意味する言葉で、生成AIが事実にもとづかない情報を生成する事象です。

生成AIはインターネットなどで学習した内容をもとに回答を生成します。現在では使われていない情報を学習している場合があり、ハルシネーションと呼ばれる、誤った情報の生成が行われます。

ハルシネーションが発生すると、トラブルに発展する可能性が高いです。

例えば、生成AIを使って顧客対応用のメールを自動生成する際、AIが誤った情報をもとに回答を作成してしまうケースです。結果、顧客に誤解を与え、信頼性が損なわれます。

現時点ではハルシネーションの完全防止は困難です。人が判断する体制を整えたり、生成AIの学習データを厳選したりする必要があります。

個人情報の流出

生成AIは取り扱ったデータを学習データとして利用する場合があります。この場合、個人情報が誤って学習され、別の生成AIの回答で出力されるおそれがあります。

例えば、社内で取り扱った個人名やメールアドレスが学習され、他社の生成AIの結果で出力される場合です。

対策としては2つあります。

  1. 運用ルールで、生成AIに個人情報を取り扱わないこととする。もしくは個人情報をマスキングしての利用を徹底する。
  2. 学習対象とならない生成AIのサービスを利用する。

2については、Microsoftのビジネスアカウントを利用すれば、Microsoft Copilotに学習させない設定が可能です。

このように、ニーズに応じた対策を講じる必要があります。

著作権の侵害

生成AIが学習データとして使用する情報には、著作権が存在する場合があります。これが不適切に利用されると、法的問題が発生する可能性があります。

例えば、生成AIが著作権で保護された文章や画像をもとに結果を生成し、それを商業利用して著作権侵害とみなされるケースです。

しかし、生成AIは学習データの著作権を判断できません。そのため使用する生成AIの学習データを透明化し、著作権で保護された情報の使用を避ける対策が必要です。

著作権の侵害は、生成AI全体の課題として社会問題となっています。著作権が必要なデータを取り扱う場合は、慎重な判断が求められます。

人材不足

RPAはプログラムの知識がなくても、構築したり導入したりできます。しかし、何らかのトラブルが発生した場合、対応するためには相応のスキルが必要です。

運用する人材がいなければ、導入したRPAや生成AIが十分に活用されず、システムが有効に機能しないケースがあります。

例えば、エラーが発生しても適切に対処できる担当者がいない場合、業務が滞り納期の遅延や機会の損失を招くおそれがあります。また、RPAや生成AIは技術の進化が早いため、知識のアップデートが追いつかないことも起こりえます。

解決方法としては、講習や教育プログラムの受講、外部から専門家を招いて支援してもらう方法が有効です。

まとめ

RPAと生成AIを組み合わせた自動化は、企業の業務効率化や人手不足の解消といったさまざまな課題を解消できる技術です。

ハルシネーションや個人情報の取り扱いといった課題がありますが、適切な対策を講じることでリスクの低減が可能です。特に、Microsoft社のサービスであれば、RPAのPower Automate、生成AIのCopilotを利用でき、ハルシネーションの対策や個人情報の取り扱いにも対応できます。

自社の業務効率を向上させるために、RPAと生成AIを活用してみてはいかがでしょうか。

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