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ITガバナンスの構築に必要な要素とは

ITガバナンスとは、企業のIT環境やシステムへの投資およびその効果を最適化するための取り組みです。企業がIT関連の戦略を立てたり、その効果を最大化したりといったことに活用される手法・考え方を意味し、現代の事業展開に大きな影響を与えると注目されています。
この記事では、こうしたITガバナンスについて、基本的な概要を押さえます。そしてこのガバナンスがどんな要素から構成されているのかについて解説します。

ITガバナンスの構築に必要な要素とは

Microsoft Dynamics 365概要

ITガバナンスの定義・意味とは?

ITガバナンスとは、IT事業における投資の判断、効果の最大化、リスクの最小化などを意味する言葉で、企業が自社のIT環境を正しくマネージメントするための能力やシステムを指します。
一方で、ITガバナンスには明確な定義が定着しておらず、企業や事業内容によって異なる意味合いで使われることもあります。
例えば経済産業省の「システム管理基準(骨子)」を参考にすると、ITガバナンスとはステークホルダー(従業員や顧客などの利害関係者)のニーズを把握し、企業としてより高い価値を創造するために必要な行動や戦略を実施するための組織づくり・能力開発を意味すると捉えられるでしょう。
つまりは「自社の環境や組織にIT投資を行い、その効果やリスクをマネージメント・コントロールすること」を広く意味すると考えられます。
ITガバナンスは「コーポレートガバナンス」から派生した言葉として知られているため、企業のステークホルダーの利益を無視した勝手な行動の監視や明確なルールづくりなども意味に含まれているとも、一般に理解されています。

ITガバナンスが注目される理由

近年ITガバナンスが注目されるようになったのは、「某銀行のシステム障害」が理由に挙げられています。
当時2002年に他銀行を含めた3つのシステムを1つに統合するために、大規模なプロジェクトを進めていました。実際にはプロジェクトの進捗は芳しくなく、システムエラーを多く残していました。
それにもかかわらず、某銀行は予定通りに2002年の4月1日に計画を実行します。結果、初日からATMの不具合や遅延、二重引き落としなどのトラブルを招き、大規模なシステム障害を起こしてしまったのです。そのトラブル数は250万件以上にもなったと言われ、今でも語られる大変な事例として広まっています。
この某銀行の事例は、多くの企業にITガバナンスの重要性を認知させ、自社の環境や考え方を見直すきっかけになりました。何らかのIT化を進める際には、きちんとした計画・戦略を立て、リスクをなくすことの施策を考える必要があると認識されているのです。

ITガバナンスに取り組む企業事例

今日では多くの企業がITガバナンスの重要性を理解し、すでに実際の行動に移しています。例えば携帯電話事業などで知られる大手企業では、5G通信やAI(人工知能)を活用したプロジェクトを展開し、営業利益獲得のためのデジタル事業を進めています。
そのほかにも、スーパーマーケットを運営する企業では、実店舗とネット上の店舗を融合させたり、クラウドオフィスの立ち上げや従業員アプリ開発などの支援を行ったりして、ITによる生産性向上につなげています。

すでにITガバナンスおよびIT戦略を先行して実施している事例は、このように確実に増えてきています。今後も新しい事例は増えていくと考えられるので、最新情報をチェックしていくことがおすすめです。

ITガバナンスを構成する7つの要素

ITガバナンスを自社内に構築・ルール化するのなら、まずは構成するポイントを把握することが重要です。しかしどのような点に気を配り、どんな展開を考えるべきなのかを理解できれば、スムーズにIT化やDX化を進められるのでしょうか。
以下からは、ITガバナンスを構成している7つの要素・項目についてそれぞれ解説します。

① 戦略とシステムの整合性

IT事業の導入や目的達成を目指すために、具体的な戦略の立案と実際のシステムの整合性を取るのがポイントです。
ITの導入目的と実際の導入システムにミスマッチがあると、その効果を正しく引き出すことができません。整合性の取れていない状況の例としては、「コスト削減」を目的にしているのに、システム導入のために膨大なコストがかかる、というケースが想定されます。
また、導入したシステムが自社の環境や従業員の手で使いこなせなければ、意味のない改革になってしまう懸念もあるでしょう。

戦略とシステムの整合性を考えて、事業目的を達成できる環境の構築がポイントです。

② 組織体制

IT環境やシステムの新たな導入を行うのなら、組織体制を見直すのも重要です。
旧式の組織体制ではITのシステムを効率良く扱えず、機能を持て余す可能性があります。そのため改めて情報システムを統括する組織づくりを行い、最適化を進めるのがポイントです。
また、組織内での作業分担や役割分担も、IT技術を活用する際の重要項目です。新しく必要になる業務などに合わせて分担を決めることで、システムの有効活用が行えるでしょう。

③ 業務の把握

ITガバナンスにおいては、今後必要になる業務内容の把握が求められます。
業務内容が理解できていなければ、ただシステムを動かすだけになり、作業量を増やすだけといった結果にもなりかねません。業務内容を明確化し、実際にITシステムを事業にどうやって応用していくのかを考えましょう。
業務内容を明確化したら、それを周知することも重要です。従業員や担当者への共有方法を決めて、全員が確実に新規業務内容を把握できるようにサポートしましょう。

④ 費用対効果

費用対効果の計算やコストの算出も、ITガバナンスにおけるポイントです。
例えば必要なフレームワークの導入やガイドラインの作成には、コストが発生します。得られる成果に対してコストが高くなりすぎると、IT化が逆効果になる可能性もあるのです。費用対効果のバランスを考慮して、マイナスにならないように注意しましょう。

⑤ 運用体系

ITガバナンスを効率化するには、運用体系の構築にも工夫が必要です。
導入後に継続して運用していくためには、そのための組織体系を定着させることが重要となっています。システムを効率良く動かすためのワークフローや、トラブル時の対処法などを考案し、スムーズに運用するための組織づくり・体系構築を目指しましょう。

⑥ ガイドラインの設定

ITガバナンスを設定する際には、ガイドラインを設ける必要もあります。
旧体制からの改善・再設定を行うために、既存の法律や社内規定などを見直し、新たなガイドラインを定めましょう。もちろんガイドラインは作成して終わりではなく、社内全体に新しいルールとして表明する必要もあります。共有するための時間や施策を設けて、ガイドラインの周知を徹底しましょう。

⑦ リスク管理

ITシステムの導入時には、何らかのエラーが起きる可能性も考慮しなければなりません。
外部からの攻撃などを防ぐためのセキュリティも必要となるので、あらゆるリスク管理の準備を行いましょう。リスク管理とはシステムそのものを強化・改善するだけでなく、それを使う従業員のネットリテラシーの育成なども含まれます。
ここでも周知は非常に肝要です。少しでもリスクの回避や低減につながるように、従業員へセキュリティ意識やリスク管理の重要性を伝えておきましょう。

まとめ

ITガバナンスの構築は、多くの企業で必要とされつつあります。
これからのIT化の流れを考慮するのなら、ITガバナンスの理解と具体的な施策の実施は早めに行うべきだと言えるでしょう。この機会に基本的な情報と構成要素を確認し、自社に専用のIT環境を作り上げてみることがおすすめです。

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