経営/グローバル

製造業がおさえておきたいトレンド。変革のために何を備えなければいけないのか

この10年間、急速な技術革新によって製造業は大きな変化の渦中にありました。業界への参入コストが年々低下し、競合他社はどんどん増え、変化に対応できない者は衰退していくという厳然たる現実に直面しています。そして現在、多くの製造業者は、IoTやビッグデータなど膨大なデータがもたらす大きなリスクと大きなチャンスに直面し、新しい環境に対応して飛躍を迎える日を目指しています。

本稿では、そんな製造業者がおさえておくべき製造業のトレンドについてご紹介します。

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製造業5つのトレンド

製造業は今日、消費者ニーズの多様化や細分化など、これまでにない要求に直面し顧客は個々のニーズに対応した「マスカスタマイゼーション」を強く求めています。新製品のサイクルは加速し、間違いやミスは許容されない時代です。しかも、インターネットとスマートフォンの普及によって、顧客はかつてないほどの情報を武装し、選択肢を持っています。こうした時代を生き残るためには、製造業者はいっそうと卓越した業務プロセスを備えて変化に対応できる必要があります。例えばフルフィルメント(商品受注から決済/納品にいたるまでのプロセス全般)を手に入れるために、製造現場をよりアジャイル(俊敏)にし、あらゆる製造工程/開発工程を加速させる必要があるのです。こうした新しい環境を手に入れるために、製造業にはおさえておきたい5つのトレンドがあります。

1.IoT(Internet of Things)

製造業および情報通信業では長年、パソコンなどのデバイスから家電、建物の空調設備にいたるまで、各製品をネットワークでつないで統合したエコシステム(ITにおける生態系)を目指してきました。そして現在、そのビジョンはIoT(Internet of Things)によってすでに現実のものとなっています。

どこでも利用可能なインターネットへのアクセス、センサーの小型化、クラウドコンピューティングの普及を通じて、複数のセンサーを備えたIoTデバイスが日々生まれているのです。そして、すでに数百万ものIoTデバイスがインターネットに接続され、データのやり取りを行っています。米Gaertnerによれば、2020年までに260億個ものIoTデバイスがネットワークで接続されると予測されています。

製造業者にとってのIoTは、製造工程を監視し、改善するための多くのデータを取得するために役立ちます。これによって安全性管理をリモートで監視したり、製造プロセスの自動化を図ったりと、すでに製造業者におけるあらゆる工程に大きなインパクトをもたらしています。

さらに、IoTは製品自体がスマートデバイスとしての機能を備えるためにも大きな役割を果たしています。従来製品がIoT化することで、リアルタイムなシステム監視を可能にし、顧客のためのリモートサービスやさまざまなサポートなど、多くのビジネスソリューションが提供可能になります。

もちろん、IoTデバイスが増加することによるセキュリティリスクが大きくなるという懸念点もあります。しかしながら、IoTはそれ以上に良い影響をもたらすものであり、サイバー攻撃への対策もすでに整っています。

2.B2BからB2B2Cへ

消費者は製品を購入する場合、単にその製品を購入しているのではなくエクスペリエンス(体験)も同時に購入しています。そこには製品を使用するにあたってのエクスペリエンスが含まれており、その他購入のプロセス、店頭での印象、セットアップの容易さ、問題があった場合のサポートなども含まれています。今日の消費者は「どれだけストレスが少ないか」「友人にどう思われるか」「壊れやすくないか」などをより複雑に考えています。

こうした中で大きく求められている変化が「B2B企業はB2B2C企業への変貌」です。たとえば自動車の送風ファンが何度も故障した場合、消費者はその部品メーカーではなく自動車メーカーと悪いエクスペリエンスを紐づけます。そのため近年のB2C企業の多くは、サプライヤーを細かく制御しているのです。

その結果、B2B企業はよりエンドユーザーに焦点を当てる必要があり、B企業はB2B2C企業への変貌が求められているのです。

3.バリューチェーンの進化

多くの製造業者は消費者志向のビジネスモデルを推進していることから、研究開発から販売後のサポートまでのバリューチェーン全体を見直す必要に迫られています。高水準での透明性を確保し、消費者から求められるサービスを提供するためには、バリューチェーンのパートナーとより密接に協業する必要があります。Deloitteのレポートによると、64%の企業がバリューチェーンパートナーとの交渉と協業がより重要になると回答しています。

このバリューチェーンに大きなインパクトを与えているのがシェアリングエコノミーです。PwCのレポートによるとシェアリングエコノミー市場は2025年までに3,350憶ドルに成長すると予測されています。Amazonなどいくつかの企業では、コミュニティメンバーが製品や材料を顧客に配送し、運送時間や運送コストを低減するという試みがすでに始まっています。

4.より高い可視性

IBMによると、日々2.5EB(エクサバイト)ものデータが生成されており、世界のすべてのデータの9割は、直近の2年間で生成されたものであるとされています。そのため、データを活用するためには優れた可視化ツールが必要であり、それはクラウドコンピューティングによってすでに実現しています。

優れたデータ可視化ツールがあることでトレンドの把握はより容易になり、リアルタイムなデータ可視化は品質管理など製造プロセスにも大きな影響を与えます。

5.エマージングテクノロジー

製造業者の中で最も期待されているエマージングテクノロジーの1つが3Dプリンティングです。積層処理により、あらゆる3Dデジタルイメージを物理形状で成形することができ、現在では米国製造業者の66.7%がなんらかの形で3Dプリンターを導入済みです。さらに15.5%は今後3年以内に使い始める予定だと報告されています。

3Dプリンティングは決して新しいものではありませんが、多くの製造業者にとってより実用的なものとなってきたおり、パーソナライズされた製品やパッケージに製造、カスタマイズされた医療機器の製造など広範囲にわたっています。

もう1つのエマージングテクノロジーといえばAI(Artificial Intelligence)です。自律的なロボットの登場により、機械がより独立した作業を行うようになり、プログラムされた自律型ドローンが自分で部品や材料を見つけ、共同作業を行ってビルや橋を組み立てるといった取り組みがすでに始まっています。

製造業のトレンドは日々変化している

10年前、これらのトレンドが製造業に大きなインパクトを与えることを、誰が予想したでしょうか?新しいトレンドは日々生まれ続け、製造業はもちろん経済界全体に大きな恩恵とリスクをもたらしています。変化を続ける製造業のトレンドを常に追い、その変化に対応することが、今の製造業者にもとめられる姿です。もちろん、自社にとって必要なテクノロジーを常に取捨選択する必要があります。その選球眼を極めるためにも、日常的に製造業のトレンドをチェックしていきましょう。

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