さまざまなお金の情報を扱う経理業務は、ミスが許されない仕事です。限られた業務時間の中で多くの情報を正確に処理することは、手作業では難しいでしょう。正確かつスピーディーな経理業務を実現するために、会計システムの導入をお考えの方も多いのではないでしょうか。
しかし、一般に提供されている会計システムの導入や、社内のIT部門による会計システムの独自開発には、課題も存在します。こうした課題の解決に有力となるのが、「Power Apps」と呼ばれるサービスです。そこで本記事では、経理向け会計システム導入における課題や、その解決策として有力なPower Appsについてご紹介します。
経理向け会計システム導入における課題とは
まずは、経理向け会計システムを導入すべき理由や、導入における課題について解説します。
会計システムを導入する理由
会社のお金に関する情報を収集・管理する経理業務には、高い正確性が求められます。万が一、ミスが発生すれば会社の信頼低下どころか、法律に抵触する恐れさえあるでしょう。
とはいえ経理業務で扱う情報は、交通費や売り上げなど多岐にわたります。正確性を重視しつつ、多くの情報を業務時間内に処理することは困難です。手書きで帳簿を作成するのでは、経理担当者に大きな負担がかかります。
このように、経理業務では正確性・スピードの両立が大きな課題となります。こうした課題を改善するために導入すべきものが、会計システムです。会計システムの導入によって、下記のような効果が期待できます。
- 経理データを効率的に収集・管理できる
- 手計算の負担やミスを減らせる
- 経理データの分析が容易となる
会計システムでは仕訳をパソコンで入力するため、手書きに比べて効率的です。担当者の負担を軽減できるのはもちろん、人件費削減にもつながります。担当者の癖が出やすい手書きに比べて可視性も高く、経理データの管理が容易となります。
また、入力した仕訳から自動で集計作業が行われるため、手計算の労力が不要となるだけでなく計算ミスも防止できます。さらに、会計システムで蓄積した経理データは、グラフ表示などにより容易な分析が可能です。多角的な視点で経理データを分析できるため、経営改善につながるでしょう。
会計システム導入における課題
一般に提供されている会計システムは、大まかに分けると「オンプレミス型」「クラウド型」の2種類です。それぞれの導入における課題について、順番に解説します。
1.オンプレミス型の課題:構築や運用、保守にかかる手間・コストが大きい
オンプレミス型の会計システムは、自社専用のサーバーを用いて経理データを管理します。ネットワーク環境に依存せず利用できる、自社の業務に合わせてカスタマイズしやすい、といったことがメリットです。
その一方で、自社サーバーを構築するためには相当な初期費用や時間がかかります。導入後も、システムの運用・保守のために多くのコストを覚悟しなければなりません。また、税制改正などがあった場合はシステムをアップデートするために、追加の手間やコストが発生する場合もあります。
2.クラウド型の課題:自社の業務に合わせたカスタマイズが難しい
クラウド型の会計システムは、インターネットを経由してクラウドサーバーでデータを管理します。社内サーバーが不要なため初期費用がほとんどかからない、社外でも利用できるなどのメリットがあります。また、税制改正などの際にはベンダーがシステムをアップデートしてくれるので、追加の手間やコストが発生しません。
その反面、オンプレミス型のようにシステムを自社独自にカスタマイズすることは困難です。ベンダーにより提供される機能やインターフェースが自社の業務に合わなかった場合、別の会計システムへ移行する必要があります。経理システムを運用する過程で新たなニーズが発生したケースなどに対応できません。
Power Appsの機能と導入のメリット
このように、オンプレミス型・クラウド型のいずれについても、会計システムの導入には課題が存在します。こうした課題を解決するために有力なのが「Power Apps」です。Power Appsはマイクロソフト社が提供するサービスで、カスタマイズが容易な会計システムを低コストで実現できます。
Power Appsの機能と導入のメリットについて、順番に解説します。
Power Appsの機能
Power Appsを使うことで、ビジネスに合わせた独自のアプリを開発できます。直感的に操作しやすいインターフェースで、特別なプログラミングスキルを必要としません。
またアプリの大部分は、ExcelやCSVなどのファイルを取り込むことで容易に作成可能です。経理業務で使っている帳票をインプットとすれば、短時間で独自の会計システムを構築できます。
Power Apps導入のメリット
Power Appsの導入により得られる大きなメリットは2つです。
①自社の業務に合わせたカスタマイズが容易に行える
社内のIT部門が独自の会計システムを開発する場合、相当な労力やコストが必要です。システム開発会社に発注する場合には、さらに情報漏えいなどのリスクも生じます。
その点Power Appsを使えば、Excelなどの帳票を取り込むことで、自社の経理業務に合った会計システムを社内で作成可能です。Excelの関数を使うような感覚で、入力項目のカスタマイズが行えます。税制改正などがあっても、入力項目のチューニングだけで対応でき、あまり労力がかかりません。
②低コストかつスピーディーに導入できる
Power Appsはクラウドサービスなので、オンプレミス型会計システムのように自社サーバーを構築する必要がありません。初期費用がかからないことに加えて、スピーディーに導入できます。1ヶ月単位で定額料金のサブスクリプション方式なので、比較的コストを抑えつつ利用可能です。
また、会計システムの構築やアップデートが短時間で行える分、人件費削減にもつながります。税制改正にも対応しやすく、オンプレミス型会計システムと比べて導入後の運用・保守コストを抑えやすいでしょう。
Power AppsとExcelで簡単にアプリを作成
経理データをExcelで扱っている会社は多いのではないでしょうか。Power Appsを活用すればExcelを取り込んで簡単にアプリを作成できます。プログラミングスキルが不要なため経理部門の社員でも利用でき、IT部門に負担がかかりません。会計システムを作成する大まかな手順は、下記の4ステップです。
- 経理業務で使うExcelなどの帳票を、クラウド上にアップロードする。
- Power Appsでアプリを新規作成し、アップロードした帳票を取り込む。
- 帳票の入力項目や、アプリのデザインをカスタマイズする。
- アプリを発行(保存)する。
Power Appsで作成したアプリは、クラウド上にアップロードしたファイルを用いてデータ管理します。会計システムを作成する際には、Excelなどの帳票をアップロードして指定すればOKです。OneDriveやSharePoint、Dropboxといった主要なクラウドサービスのほとんどに対応しています。
帳票から自動的に入力項目が抽出されるため、作成者は入力項目やデザインを必要に応じてカスタマイズするだけで済みます。作成者のプログラミングスキルに依存することなく、短時間で会計システムの作成が可能です。
なお、Power Appsは2021年4月のアップデートで、より利便性が向上しました。元の帳票に数式を含んだセルがある場合や、同一アプリ上のデータを複数人が同時編集した場合でも、問題なく動作します。
まとめ
今回は経理向け会計システム導入における課題や、その解決策として有力なPower Appsについてご紹介しました。
一般に提供されている会計システムの導入や、社内のIT部門による会計システムの独自開発には、大きな課題が存在します。こうした課題を解決するうえで、Power Appsの活用が効果的です。
自社の業務に合った会計システムを低コストかつスピーディーに作成でき、IT部門の負担も減らせます。会計システムにより経理部の業務効率化を実現したい方は、ぜひPower Appsの導入を検討してみてはいかがでしょうか。