プロジェクトを成功へと導くためには、プロジェクト管理のためのフレームワーク活用が欠かせません。その種類や手法は多様ですので、プロジェクトの特徴、会社の方向性に合わせて、適切なフレームワークが必要です。
本稿では、多様なプロジェクト管理手法の中から、「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」について解説しています。事実上、プロジェクト管理の世界標準にもなっているので、ぜひこの機会に理解を深めていただきたいと思います。
ちなみにプロジェクト管理フレームワークには以下のようなものが存在します。
プロジェクト管理フレームワークの一例
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)
プロジェクトの最終目標となるQ・C・Dをそれぞれ1つのエリアとして、そこに「スコープ管理」「要員管理」「コミュニケーション管理」「リスク管理」「調達管理」「ステークホルダー管理」という6つの項目を追加し、全体を管理する「統合管理」を含めた10の知識エリアと、5つのプロセス、それと3つのパートで分けられたプロジェクト管理の教本のような存在。
CCPM(Critical Chain Project Management)
プロジェクトにおける各工程の締め切りをギリギリに設定し、さらに余分な時間を「プロジェクトバッファ」として管理し、必要に応じてプロジェクトバッファから時間を調達するプロジェクト管理手法。
WBS(Work Breakdown Structure)
「作業分解構図」と呼ばれ、プロジェクト全体を細かい作業で分断し、構成図を作成してプロジェクト全体の概要を掴んだり、作業の流れを確認したりするためのプロジェクト管理手法。
PPM(Project Portfolio Management)
組織内で進行している複数のプロジェクトを総括管理し、全体の状況管理や分析を行った上で、組織全体のプロジェクトを効率良く進行させるためのプロジェクト管理手法。複数のプロジェクト情報を総括管理することで、追加での人員投下・予算投下といった判断が迅速に行え、プロジェクト全体のスピードがアップする。
P2M(Project & Program Management)
プロジェクト管理に加えて「プログラム管理」の思想を取り入れ、複数のプロジェクトを統合的に捉えて全体管理を決行するためにプロジェクト管理手法。PPMに近い概念を持つ
PMBOKとは?
PMBOKは日本語で「プロジェクト管理のための知識体系」と訳されます。1987年、米国の非営利団体であるPMI(Project Management Institute:プロジェクト管理協会)が発表した「A Guide to the Project Management Body of Knowledge(プロジェクト管理のための知識体系実践ガイド)」というガイドブックでPMBOKが登場してから、世界的に徐々に浸透し、現在でも4年に1度のペースで改訂されています。現在の最新版は、2017年に発行された第6版です。
ちなみに、1998年にはPMI日本支部(PMIJ)が設置され、PMBOKの普及促進やPMPというPMBOKに関連する資格認定および交流等を行っています。
PMP(Project Management Professional:プロジェクト管理プロフェッショナル)とはPMIが認定している、プロジェクト管理に関する国家資格です。PMP試験ではPMBOKガイドにもとづいて実施され、プロジェクト管理に関する一定水準のスキルを有することを、PMIが認定します。
PMP資格を取得するメリットは、単純にプロジェクト管理のための知識だけではなく、その取り組み方や経験などの実務的内容を重視している点です。さらに、PMP資格は1度取得して終わりではなく、一定期間ごとにCCR(Continuing Certification Requirements:継続認定要件)というプログラム履行が義務付けられているため、これをパスしないと認定は抹消されてしまいます。
PMBOK、10個の知識エリアと5つのプロセス
前述のように、PMBOKは10個の知識エリアと5つのプロセス、最後に3つのパートに分かれます。1つ1つ、改めて整理していきましょう。
10個の知識エリア
- 品質管理
- コスト管理
- 納期管理
- スコープ管理
- 要員管理
- コミュニケーション管理
- リスク管理
- 調達管理
- ステークホルダー管理
- 統合管理
5つのプロセス
- 立ち上げ
- 計画
- 実行
- 監視・管理
- 集結
3つのパート
- 入力
- ツールと実践
- 出力
10個の知識エリアというのは、プロジェクトを成功させるために欠かせない管理項目のことであり、各知識エリアを適切に管理し、かつ統合的な管理まで実践することで、プロジェクト全体の流れや状況等を可視化し、成功に向けて進むことができます。各知識エリアにはそれぞれ5つのプロセスが存在し、どのプロセスで何を作成し、何を管理すべきかが明確に決まっています。そして、各知識エリアと各プロセスは「入力」「ツールと実践」「出力」という3つのパートに分かれ「何をもとにして、どんなツールや方法で、何を作成するか」という内容まで定義されています。
プロジェクトの成功というものは、主にQ(Quality:品質)・C(Cost:コスト)・D(Delivery:納期)の3つの指標で決まると言われています。各指標の達成を最終目標とする場合、そこに至るまでの経過も管理することに意義があるとし、PMBOKでは他7つの知識エリアを設けています。このため、PMBOKは「モダンプロジェクトマネジメント(現代的プロジェクト管理)」と呼ばれることもります。
PMBOKにある限界とは?
PMBOKは、プロジェクト管理に関する手法は細かく、大々的にまとめた知識体系ですので、PMBOKさえ学べば正しくプロジェクト管理が実施できると考えられがちです。しかし、PMBOKにも限界があります。
1つ目の限界は、PMBOKはあくまで「プロジェクト管理に関する知識を体系的に取りまとめたガイド」なので、そのまま現場では使えないということです。現場でPMBOKを実践するにはツールが必要であり、PMBOKを理解した上で、効率的なプロジェクト管理ツールを活用するという行為が求められます。
もう1つの限界は、PMBOKはあくまで「単一プロジェクトを管理することに焦点を絞っている」ということです。組織には常に複数のプロジェクトが並行しており、それらを串刺し的にチェックしたり、複数プロジェクトと束ねて情報を集計してみたりといった作業が必要になります。組織全体のプロジェクト管理向上という点に関しては、PMBOKでは触れられていないのです。
このように、PMBOKは実践的な手段ではなくあくまで知識集なので、実践にはプロジェクト管理を効率良く行うためのツールが必要です。PMBOKについて理解しながらも、実践的な方法を模索し、適切なツールを活用してプロジェクト管理を実施していきましょう。