昨今、ビジネスの世界で普及しつつあるDXを用いて、顧客体験を高めることが重要視されています。本記事では、まず顧客体験やDXの概要を解説し、DXを活用して顧客体験を向上させるためのポイント、実際に顧客体験向上に成功した事例を紹介します。ぜひ取り組みの参考にしてみてください。
顧客体験(CX)とDXの違いとは
デジタル社会と呼ばれる現在、DX推進に取り組む企業が増えています。他方で、顧客体験を表すCXも同様に重要視されるようになっています。ここでは、両者にどのような関わりがあり、また違いがあるのかについて解説します。
顧客体験とは?
CXは、「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」の略称で、「顧客体験」と訳されます。これは顧客が商品やサービスを購入し利用した際に感じた、心理的な「満足感」や「心地よさ」「喜び」などの体験価値を表す言葉です。つまり、単純に商品やサービスそのものの機能や性能、価格といった客観的に共有される価値だけを表す概念ではありません。
アメリカの経営学者バーンド・H.シュミットは、CXは以下のように5つの心理的な価値を提供するものである、と提唱しました。具体的には、人の五感によって経験する「Sense(感覚的)」、心を揺さぶられるような「Feel(情緒的)」、知的好奇心をくすぐる「Think(知的)」、ライフスタイルに訴えかける「Act(行動的)」、特定の集団などに所属することで得られる「Relate(社会的)」といった価値です。
DXとは?
一方、DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、2004年、スウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。デジタル技術の恩恵を受けることで、人々の生活をより良いものに変化させるといった意味合いがあります。
日本においても、平成30年12月に経済産業省が公表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(引用元:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx_guideline.pdf)
当初は学問的な概念として誕生したDXですが、やがてビジネスの世界にも広く浸透してきました。DXは、ただアナログからデジタル化を進めるだけではなく、ビジネスモデルを根底から変革させることで他社との差別化を進め、市場での企業価値を高めることが目的です。
DXで顧客体験(CX)を向上させるポイント
DXと顧客体験(CX)は、一見あまり関係性がないように見えるかも知れません。しかしDXは、デジタル技術を活用して顧客体験を高めることと考えられ、相互に深い関わりがあります。
では、DXで顧客体験を高めるためには、どのようなポイントを押さえればよいのかについて、解説しましょう。
デジタル化を進める
まず、アナログ業務のデジタル化は不可欠です。
例えばカスタマーサービスでは、顧客との接点となる窓口において、従来の電話に限らず、WebチャットやSNSなど、複数のチャネルを用意することが増えています。近年はFAQやチャットボットを提供し、顧客自身が問題解決を図れるようにサポートする事例もよく見られるようになりました。すべてのコミュニケーションチャネルをシームレスに連携させることでオムニチャネル化すれば、顧客に関するデータ活用も最適化できます。オペレーションシステムのプロセスも、デジタルに移行するよう検討するとよいでしょう。
このようなデジタル化によって、人件費を削減できるほかヒューマンエラーを防ぎ、生産性向上が期待できます。顧客一人ひとりのニーズに合わせた商品やサービスを提案すれば、顧客満足度はおのずと上がり、自社のファンを増やすことも可能です。
顧客情報を収集・分析する
また、顧客一人ひとりのニーズはさまざまであり、最適な商品やサービスを提供するためには、顧客にまつわる情報の収集や分析といった取り組みがキーポイントになります。
顧客の属性から購買履歴など、必要な情報は膨大な量にわたるため、業務系システムやMA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客管理システム)などを活用するとスムーズに管理できておすすめです。昨今、このようなツールやアプリケーションは多くの種類が提供されていることから、必要な機能を洗い出し、自社に合ったツールを選択するとよいでしょう。
カスタマージャーニーマップを作成する
顧客体験価値を向上させるため、企業は顧客とのタッチポイント(接点)において、顧客がどのような感情を持ち、それによってどう行動するのかといった感情と行動の変遷、つまり「カスタマージャーニー」を理解することが大切です。また、それをわかりやすく図式化したカスタマージャーニーマップを作成すれば、時系列に沿って最適な顧客体験を検討できます。
例えば、デジタル化することで顧客体験価値の向上が見込めるタッチポイントはどこなのかを考える際にも役立つでしょう。
顧客視点のDX活用を意識する
DXと顧客体験は密接な関係性があるものの、DXは目的ではなく、あくまで手段にほかなりません。本来の目的は顧客体験の向上であることをしっかり意識した上で、DXを推進し、活用していくことが必要です。そのため、常に顧客視点に立ち、顧客一人ひとりのニーズがそれぞれどこにあり、どう実現していくのか探っていくことが、企業の課題だと考えられます。
顧客体験(CX)向上のためのDX活用事例
では、ここからは顧客体験向上を目的としたDXの活用事例について紹介します。ぜひ取り組みの参考にしてみてください。
顧客とのコミュニケーションにAIを活用
かつて、商品やサービスなどに関する、顧客からの問い合わせ窓口の手段といえば、電話が主流でした。しかし現在は、AIなど最新のデジタル技術を用いて、コミュニケーションチャネルを増やす企業が増えています。例えば、チャットボットの場合、顧客は画面上のチャットで問い合わせれば、リアルタイムに適切な回答を得られるようになります。また、「よくある質問」としてFAQのページを用意すれば、顧客はスピーディーに自己解決できる可能性が高まるでしょう。
さらに、こうした複数の分散したチャネルをシームレスに連携させ、いわゆる「オムニチャネル化」することもおすすめです。顧客にとっては利便性が高く、満足度につながりやすい一方で、企業にとっても顧客情報を一元管理することで、データ収集や分析をしやすくなるメリットがあります。
「待ち時間が長い」という顧客の声をDXで解消
顧客のニーズを探るために、ユーザーアンケートを実施することも有効な方法です。あるコーヒーショップでは、「並ぶ時間が長い」といったマイナスのコメントに注目し、スマートフォンのアプリ上で、注文から決済まで済ませられる独自システムを導入しました。結果、顧客は自分の好きなときに好きな場所で、並ぶことなく注文し、店頭でスムーズに受け取れるようになりました。また、コーヒーショップにとっても、顧客の購買履歴などを蓄積することで、顧客それぞれにおすすめのカスタマイズ商品を提案できるなど、データ活用にも役立っています。
このように、DXを活用し顧客が「不便だ」と感じていることなど、生の声を収集、徹底的に分析できれば、効率よく改善につなげられ、自社のファンを順調に増やせるようになるでしょう。
DXを活用した顧客体験(CX)の向上には Microsoft Dynamics 365 がおすすめ
さまざまな業種の市場が飽和しつつある現代社会において、他社との差別化を図るためにも、顧客体験を向上させることが企業の課題となっています。それには顧客に関する情報を把握し、管理することが不可欠です。「Microsoft Dynamics 365」は、マーケティングや営業支援(CRM)、カスタマーサービスなどさまざまな機能から必要なものを選び、包括的に顧客体験価値向上をサポートできるようになっているためおすすめです。効率よく最適な顧客体験を提供したいといった課題をお持ちであれば、ぜひ導入をご検討ください。