ウェブ経由で外国とEC(Electronic Commerce:電子商取引)を行うのが越境ECです。現在、越境ECへの注目度が非常に高まっており、各国市場の中でもとくに中国・米国が日本にとって大きな越境ECマーケットとなっています。本記事では、最も大きな市場を形成している中国越境ECの魅力と始め方をご紹介していきます。
中国越境ECの市場規模とは?
中国は広大な草原、砂漠、山、湖、川、1万4,000キロメートルを超える海岸線を擁し、人口14億弱という世界最大の国家です。また、中国では電子マネー主義が文化として根付いていることから、EC事業が非常に盛んに展開されています。この中国市場において、日本からのEC事業が拡大したのは至極当然のことと言えます。では、中国越境EC市場は具体的にどれくらいの規模なのでしょうか?
<日本・中国・米国、3国間の越境EC市場規模>
上図は、経済産業省が毎年発表しているEC市場に関する調査報告書に掲載されているもので、日本・中国・米国の3国間の越境EC市場規模を表しています。中国が日本と米国から越境ECを通じて購入している商品の合計金額は3兆2,623億円です。
同資料によると日本のEC市場全体の規模は18兆円とされているので、中国越境EC市場だけでその6分の1以上の水準に達しているのです。
一方、中国越境EC市場における日本からの購入金額は1兆5,345億円と、米国からの購入金額に匹敵するほど大きなマーケットになっています。これが、中国越境EC市場が日本企業から人気を集めている最大の理由です。また、中国のウェブ利用者は6億人を超えているものの、利用率は国民の半数程度にとどまっています。そのため、今後も継続的に成長する可能性が非常に高く、越境ECを展開するにおいて決して無視できない存在です。
中国人の品質に対する意識が変化している
日本のニュースでも度々報道されていましたが、中国ではブランド商品のコピーが多く流通していたり、食品の偽装表示により安全性が阻害されていたりと、深刻な品質問題を抱えています。これは日本人だけでなく、中国人にとっても重大な問題となっており、中国最大のCtoCネット通販で最大シェアを持つ「タオバオ:淘宝(日本のメルカリのようなもの)」に流通している商品の6割以上が偽物という調査結果を、中国政府が発表しています。
こうした中、中国でも品質に対する意識変化が起きており、特に食品や化粧品など人体に直接的な影響与えるような商品に関しては、より多くの出費をしてでも品質の高いものを購入したいというニーズが高まっています。となれば、目当てになるマーケットは近隣の日本や世界最大の経済大国である米国です。
特に、日本製商品は品質の高さが強みであるため、食品や家電製品など多数の分野で中国越境EC市場が拡大しています。
中国EC市場のシェア率
世界中で最もシェア率の高いECサービスと言えばAmazon.comです。しかしながら、中国においてはわずか1%程度のシェアしかありません。実は、中国では独自のEC文化が根付いており、日本や諸外国で常識とされているモノは中国で通用しないことが多いのです。
<中国EC市場におけるシェア率>
- アリババグループ「天猫(Tmall)」52.5%
- 京東商城「JD.com」31.3%
- 唯品会「vip.com」5.7%
- 蘇寧易購「Suning」3.7%
- 国美在線「Gome」1.2%
以上のように、中国市場において最も高いシェア率を誇るECサービスが天猫(Tmall)です。ただし、EC店舗出店に関する注意点が1つあります。中国では大手ECモールである天猫(Tmall)やJD.comへ出店するにあたり、中国本土での法人格を獲得する必要があります。中国法人を持たない企業の出店は認めていないのです。そのため、日本企業の多くが越境EC専門のECモールへ出店しており、天猫国際(Tmall Global)やJD.worldwideなどが挙げられます。
中国ECモールへの出店に必要なステップ
では、天猫国際(Tmall Global)やJD.worldwideなど越境EC向けのモールに出店するには、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか?
ステップ1. ECモールへの契約書提出
日本語と中国語で記載されたECモール契約書を手出し、ECモールとの契約を結ぶ。
ステップ2. ECモールと取引する決済用口座開設
ECモールに付随した決済サービスを使用するための銀行口座を用意。ちなみに、中国ではクレジットカードよりも独自の電子マネーが普及している。
ステップ3. カスタマーサポートの構築
中国では、電話ではなくチャットでのカスタマーサポートが主流。そのため、チャットツールの導入や中国語で対応できる人材の確保が必要。また、中国EC市場では事業者との直接的な値引き交渉などが当たり前に行われる。
ステップ4. ECモール内店舗や商品ページの制作
ECモール制作や商品の写真撮影、それに紐づくクリエイティブ制作業務など。
ステップ5. 集客・販売促進のための広告運用
モール内での広告運用が中心になるが、時にウェブを通じて広告運用が必要。ただし、中国ではGoogleではなく百度(Baidu)が検索エンジンとしてのシェアを占めている。
ステップ6. 商品の配送網整備
商品をどこに保管し、どうやって消費者の元に届けるか?などの配送網を整備。ECモールによっては指定の配送事業者を持っている場合もある。
ステップ7. 日本のECサイトや実店舗との在庫連携
日本のECサイトや実店舗と在庫連携するために、WMS(Warehouse Management System)連携やデータベース設計などを状況に合わせて行う。
ステップ8. ECモールへの販売許可証
ECモール側に販売権を委託する契約書を整備する。
ステップ9. 販売する商品情報や店舗情報の翻訳
商品ページ等で使用する情報などの翻訳。日本語を単に翻訳するのではなく、中国人が興味を持つような翻訳が必要になる。
中国越境ECへの出店を検討してみましょう!
いかがでしょうか?多くの日本企業にとって中国越境EC市場は、魅力が満載です。出店にかかる手間やコストも決して安くありませんが、中国市場において人気の高い店舗として展開できれば、非常に大きな利益が獲得できます。これから越境ECに取り組もうという場合は、ぜひ中国市場を視野に入れた事業展開を検討してみましょう。また、中国越境EC展開では信頼のおけるパートナーの存在が重要なので、さまざまなコンサルタントを比較して自社にとって最適な一社を選択しましょう。