デジタル化社会に向けた動きが加速する中、多種多様なIT用語が続々登場し、それぞれの区別が曖昧になっている方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、BIとAIの基本概要とその違いについての解説から、BIツールの機能やメリット、そしてAIとBIの両立方法について紹介します。
BIとAIの違いについて解説
BIとAIは言葉としては似ていますが、いったい両者は何を意味し、どこが異なるのでしょうか。以下では、BIとAIそれぞれの概要と違いについて解説します。
BI(ビジネスインテリジェンス)とは
BIとは、「ビジネスインテリジェンス」(英:Business Intelligence)の略です。BIは、企業が収集・蓄積・分析したデータを、経営戦略における意思決定において、積極的に役立てる経営手法を意味します。さらに、そのデータ処理の部分において役立てられる技術ないしはシステムを「BIツール」と言います。近年の企業では、システムの高度化に伴い、扱うデータ量も膨大になっています。BIツールは、膨大なデータベースに対する即時性のある分析とアクセスを可能にし、それらのデータが示す指標を「見える化」して経営判断を助けます。
AI(人工知能)とは
AIは”Artificial Intelligence”の略称で、日本語で「人工知能」を意味します。AIとは簡潔に言えば、「人間と同じように考えられる知能を持ったコンピューターシステム、あるいはそれを作るための技術」を指します。AIの機能は、大量のデータを学習し、そのデータを分類して、そこからアルゴリズムを組んで予測を立てる機械学習によって成立しています。AIはすでにさまざまな分野において活用されており、今後さらなる少子高齢化が懸念される日本において、働き手不足を解消するひとつのソリューションとしても注目されているのです。
BIとAIの決定的な違い
上記ではBIとAIそれぞれについて簡単に解説しましたが、この両者の共通点と違いはどこにあるのでしょうか。まず前提として押さえたいのは、「BI」と「BIツール」は正確に言えば同義ではないということです。つまり、BIはデータ分析を重視するという「経営上の思考方法」を指し、BIツールはその経営手法を可能にするための補助ツールに過ぎないということです。したがって、コンピューターシステムとしてAIと比較すべきなのは、正確に言えば「BIツール」を指します。
BIツールもAIも、どちらもコンピューターシステムとして、多くのデータを収集・解析する機能を備えているという点では共通しています。しかし両者の間での決定的な違いは、そのデータ分析の結果を受けてどのように活かすかという点です。AIはその意思決定までコンピューターが担うのに対して、BIツールはその決定権を人間に投げ返すというところが両者の大きな違いでしょう。
AIはその高度な演算処理能力によって、ときには人間では見通せない正確な未来さえ予測できます。そして、ビジネスにおいてAIに期待されるのは、こうした分析結果を基に、AIそのものが人間の代理として方針決定し、結果を出してくれることです。たとえば、株式投資の売買をAIに一任するなどはその典型だと言えます。そこにおいては基本的に、人間の意思決定は必要とされません。
他方でBIツールの役割は、あくまで補佐的です。たとえばデータを解析して視覚的に分かりやすいグラフや図表に示したり、経営判断に役立つシミュレーション結果を示したりはできても、それを請けてどうするかは人間の判断に依存します。BIツールは、あくまでも人間の意思決定を助ける支援システムの範疇を超えないのです。つまり、AIは「人間の代わり」の役割そのものを求められるのに対し、BIツールはその名のとおり「私達の仕事道具」として役立てられるところに違いがあるのです。
BIツールの代表的な機能
BIは人間の主体的な意思決定を残す経営手法ですが、その意思決定の基盤となるデータ処理段階においてはBIツールが力を発揮します。以下ではBIツールの代表的な機能を4つ紹介します。
レポート作成機能
レポート作成機能とは、社内外の収集・集計したデータの解析結果を、レポートの形にして報告してくれる機能です。レポートの機能の中には、月次報告のような同じフォーマットの「定型レポート」を作成する機能のほか、特定のイベントや時期、商品、部署、場所など、条件を指定してピックアップした「アドホック・レポート」の作成機能などがあります。
BIツールが作成したレポートは、たとえば企業の長期的な業績レポートや、重要業績評価指標(KPI)の策定においても役立ちます。最近では、視覚的な分かりやすさが重視され、インフォグラフィック機能を搭載したBIツールも増えています。
多次元分析機能
多次元分析機能は、OLAP(英:Online Analytical Processing)、日本語にすると「オンライン分析処理」とも言われます。多次元分析機能は、企業のデータベースに蓄積された膨大なデータを複数の観点から、複雑な集計や分析を行い、こちらが求めた情報の結果を素早く返してくれます。OLAPの「オンライン」とは、ネットワークのオンラインではなく、リアルタイムに結果を返してくれるという、「即時性」を意味しています。
多次元分析機能は、特定の問題について、その結果に至った原因を深く掘り下げて検証する際に役立ちます。たとえば売上報告・市場分析・経営報告・予算の作成といった業務において活用できるでしょう。
データマイニング機能
データマイニング機能の「マイニング」とは、日本語で「発掘すること」を意味します。BIツールのデータマイニング機能は、データベースに何層にも渡って蓄積されたデータを、統計学をはじめとした高度な情報処理技術を駆使して分析にかけ、それらのデータの間にある隠れた相関関係やパターンを「発掘」します。データマイニングが従来の統計解析と異なる点は、ノイズの多い雑多な大容量データに対しても分析がきくことです。
国家間・企業間の関係が複雑に絡み合った現代において、高度な経営戦略を立てるためには、企業内外を問わず膨大なビッグデータの構築とその分析が不可欠であり、データマイニングはまさに現代社会において求められる機能だと言えるでしょう。たとえば金融状況の変動の原因分析や、製品の故障原因の発見、病気の発症原因の傾向分析など、さまざまな分野で活用できます。
プランニング機能
プランニング機能はシミュレーション機能とも言い、その名の示すとおり、過去の実績データの分析や、それを活用した将来のシミュレーションを予測・提示してくれる機能です。プランニング機能は、過去のデータを参考に予算計画を策定したいときなど、再現性が高そうな事案について意思決定をする際にとりわけ活躍します。為替変動や需要予測などもシミュレーションに組み込むことで、変動する状況の中にあっても具体的な根拠を確保し、適正な予算編成を可能にします。
BIツール導入するメリット
上記では、BIツールの主な機能を紹介しました。続いては、BIツールを導入することで、企業がどのようなメリットを得られるかを改めて整理します。
データ管理(分析・集計)の効率化
多次元分析機能やデータマイニング機能からも示されるように、BIツールは膨大なデータの分析・集計などの活用に役立てられます。現代の企業システムにおいてデータは肥大化・多様化して分散し、人の手では全体像の把握さえ困難になりつつあります。
こういったときに、BIツールを活用すれば、企業は自社のシステム内に散らばったデータをまとめて管理することが可能です。これによって、必要な情報を探したり、分析にかけたりする作業は、人力で行うよりも遥かにすばやく効率的に行えるようになるのです。
データの可視化
レポート作成機能やプランニング機能で説明したとおり、BIツールはそのデータの分析結果をビジュアル的にも分かりやすく示すことが可能です。BIツールによるデータの可視化は、普通なら理解しにくい複雑な状況も直感的に分かりやすく示してくれるため、的確な経営判断にもつながります。
また、BIツールによるデータの可視化は、前述のデータマイニングでも挙げたとおり、データ間の隠れた相関関係の「見える化」にも寄与します。
AIを導入するメリット
BIとAIがそれぞれ異なる役割を持つことはすでに解説しましたが、続いては企業活動においてAIを導入するメリットについて紹介します。
円滑な情報処理
AIはその高度な演算能力により、複雑かつ膨大なデータも円滑に情報処理できます。この点はBIとも共通しますが、AIの場合は機械学習や後述のディープラーニングを通して、AI自体が学習・成長し、より高度で専門性に特化した情報処理が可能となる拡張性の高さが魅力です。
ディープラーニング
日本語で「深層学習」を意味するディープラーニングは、人間の脳をコンピューターにおいて模倣する「ニューラル・ネットワーク」をベースにしたAIの新たな学習機構です。ディープラーニングによって、AIは学習に必要な特徴量を自力で判別・学習することができ、従来の機械学習では不可能だった高精細なデータ分析も可能になりました。それに加えて、「画像認識」、「音声認識」、「自然言語処理」、「事象予測」といった、多くの領域で劇的に能力を伸ばし、ビジネスにおいても様々な活用が期待されています。
BIとAIを連携して活用することが重要
これまでBIとAI、あるいはBIツールとAIの違いについて述べてきましたが、重要なのはどちらが優れているかということではなく、両者の特性の違いを把握し、相互補完的に用いることです。
たとえば、AIは特定の分野においてBI以上に精度の高い予測能力を有していますが、それを人間に分かりやすく示す能力においてはBIツールに劣ります。
したがって、AIに予測させ、その予測データをBIツールが加工して人間に提供するという連携を構築すれば、経営者はAIの能力の恩恵も受けつつ、意思決定を自分自身で下すBIの要素を保持することが可能なのです。
あるいは、人間が行うまでもない判断はAIに任せ、重要な判断はBIで人間が行うという、一種の業務分担も今後の経営手法としては考えられます。
このようにBIとAIを企業経営において適切に組み合わせることで、さらなる経営効率化が実現できるでしょう。
まとめ
社会においてDXがさらに加速する中、企業経営に必要な情報データはますます肥大化していくことでしょう。そのような状況下で重要度を増してくるのが、これまで紹介したAIとBIツールの適切な活用です。本記事を参考にして、AIとBIツールをどのように企業経営に活かしていくべきかを、ぜひ考えてみてはいかがでしょうか。