過去から現在までに蓄積したデータの分析が、以前にも増して重視されています。多様化する顧客のニーズや、劇的に変化する市場需要の予測、それらを可能にしながら適切な経営判断を下すためにはデータ分析を基にした判断材料を用意しなければいけないからです。同時に重要性が増しているのがBIツールです。本記事では、企業がBIツールを導入するメリットと憂慮すべきポイントをお伝えします。
そもそもBIツールとは何か?
BIはBusiness Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)の略であり、インテリジェンスとは何らかの目的をもって出力されたまとめられた情報体系を意味します。つまり、BIツールは多種多様なデータを取り込み、それらをビジネスに活用できる状態に分析・レポーティングするためのツールです。
BIツールを理解する上でもう1つ重要なのが、非データサイエンティストでも能動的にデータ分析を行い、ビジネス価値の高い知見を導き出せることです。多くのBIツールはデータ分析とレポーティングの自動化に特化しており、特別な知識・技術を必要としません。
データサイエンティスト不在の企業においてもデータ分析による戦略的な経営が実現でき、なおかつ事業部門単位でのデータ分析も可能なため個々に最適化されたデータ分析基盤を構築できます。
BIツールのメリット
それでは、BIツールを導入することで具体的にどのようなメリットがあるかを確認していきましょう。
メリット1. 社内に散在するデータの収集と分析
企業では日々のビジネスをスムーズに遂行するために、さまざまな業務システムが稼働しています。各システムと繋がったデータベースにはビジネスに欠かせない価値あるデータが管理されており、それらを分析することで新しい付加価値を生み出すことも可能です。
しかし、社内に散在しているデータを分析のために収集するのは決して簡単ではありません。必要なデータを抽出するだけでも時間はかかりますし、異なるフォーマットを持つデータを分析するためには加工作業も必要です。
一方、BIツールがある環境では各システムのデータベースと連携して必要なデータをダイナミックに収集できます。分析作業に関しても高度なデータ分析を瞬時に完了させられるため、データ活用が大幅に促進するでしょう。
メリット2. 部署単位、事業単位、グループ単位での経営可視化
ビジネス上の意思決定をスピードアップするには、あらゆる情報を可視化しなければいけません。BIツールの利点は部署単位、事業単位、グループ単位での経営可視化も可能なことです。
各システムから収集したデータを分析すれば、部署ごとの実績や事業単位の実績、グループ単位でのビジネス戦略に対する進捗などあらゆる情報を可視化できます。ビジネス上の意思決定を促す判断材料を色々と用意し、後は情報を基にした意思決定を下すだけです。
メリット3. 問題の早期発見による速やかな対応
ビジネス上の問題は事後対応がほとんどです。しかし、問題が起きてからでは遅いものも中には多く、企業に致命的なダメージを与えるケースがあります。たとえば情報漏えいなどのセキュリティリスクはその代表例です。
BIツールが提供する分析機能は多種多様であり、目的に応じたツールを選択することで経営可視化だけでなく予測分析も可能です。社内のあらゆるデータを分析してセキュリティリスクとその発生確率を予測し、問題の早期発見に努めることで速やかな対応が実現できるでしょう。
メリット4. レポート作成の手間と時間を大幅に削減
データ分析活動では、分析結果をグラフや図にまとめて視認性の高い状態でレポーティングしなければいけません。上層部はこのレポート作成を簡単に依頼しますが、実際に作成するのは簡単ではありません。
レポート作成に手間と時間を取られると、タイムリーな経営分析などが行えずにデータ分析の意義が失われます。かとってレポート作成を疎かにすると、議論するための材料が整わないためそれもまた問題です。
BIツールは分析した結果を魅力的なレポートにまとめて、作成の手間と時間を大幅に短縮してくれます。これならタイムリーな経営可視化はもちろん、マーケティング施策最適化のための効果検証も素早く行えます。
メリット5. 事業部門主体でのデータ分析活動
BIツールの多くは非データサイエンティストでも扱えるような機能を搭載しています。中にはExcelの操作感を覚えるようなインターフェースのツールもあります。それは意味するところは、事業部門主体でのデータ分析活動です。
事業部門がデータサイエンティストやエンジニアにデータ分析を依頼するのではなく、自らがデータ分析を実施して事業活動に必要な情報を見つけ出し、ビジネスに適用するというサイクルを短縮化できます。
BIツール導入の憂慮ポイント
それでは、実際にBIツールを導入する際に企業が憂慮すべきポイントをご紹介します。
ポイント1. BIツール導入の目的を明確に
考えるまでもないと思われるかもしれませんが。BIツール導入の目的を改めて明確にすることはとても大切です。データが散在しているから見えるかしたいと単に望むだけでは、BIツール導入の意義がありません。データ分析作業の手間や時間を省略できるメリットは得られても、BIツール本来の意義であるビジネス上の意思決定迅速化と精度向上が失われてしまいます。
ポイント2. 何が問題で何のために分析するのか?
BIツールでデータ分析を行うにあたり、そこにはどのような問題があり、何のために分析するのでしょうか?1回1回のデータ分析作業では問題とゴールを明確にすることが大きなポイントです。分析したい問題と解決したい課題を決めて初めて、BIツールがビジネス上のデータ分析ツールとして機能します。
ポイント3. 分析のためのデータは揃っているか?
当然のことですが、肝心のデータが無ければ分析はできません。しかし、BIツールを導入してから必要なデータが揃っていないことに気づいたというケースは少なくありません。BIツール導入を急ぐよりもまず、分析のために必要なデータは揃っているかどうかを確認しましょう。その上でデータ同士の連携が可能かどうかを精査して、導入すべきBIツールを選定します。
ポイント4. 誰が使うBIツールなのかを想定する
そのBIツールは誰が使うものなのでしょうか?導入の担当者と実際のユーザーが異なるケースでは、常にユーザーを想定しながらBIツール導入に取り組まないと、実態と乖離したツールを導入することになります。
BIツール導入を積極的に検討しよう!
いかがでしょうか?まだBIツールを導入していないという方は、この機会にぜひ検討してみてください。初心者向けBIツールなどは通常のパソコン操作と同様の感覚でデータ分析に取り組めます。蓄積されたデータさえあれば誰もが分析可能な時代です。デジタル時代のビジネスに取り残されないように、BIツールを視野に入れた事業戦略を組んでみましょう。