Microsoft PowerAppsは、プログラミングに長けたITエンジニアがいなくとも業務の効率化に使えるツールを自作できる非常に便利なツールです。
しかし、簡単にアプリケーション(以下アプリ)を作成できる反面、誤った使い方をすると多くの時間をかけて使いにくいツールを作ってしまいかねません。
専門家とまではいかない人でも、開発上のポイントは知っておいて損はありません。本記事では、Microsoft PowerAppsの概要や開発を成功に導くためのポイントについて詳しく説明します。
Microsoft PowerAppsとは
Microsoft PowerAppsは、ビジネス用アプリの構築環境を提供するスイート製品です。
アプリ開発に必要な要素や開発用プラットフォーム、データ、コネクタなどが用意されており、開発者はコードの記述をすることなく、アイテムを選びドラッグアンドドロップするだけで簡単にアプリを開発することができます。
また、PowerAppsで作ったアプリは自動的にレスポンシブ対応が施され、ブラウザやモバイルデバイスで動作するため利便性も高いです。業務をよく理解している担当者が直接業務用のアプリを開発することで、現場の実情に合わせたツールを短期間で作ることができます。プログラミングの知識があればより高度なアプリを作成することも当然可能です。
アプリの仕様は厳密な要件定義が鍵となる
PowerAppsはアプリ開発用のツールとしては非常に優秀ですが、だからと言って業務を分析して改善提案をしてくれるわけではありません。
「どの業務を対象に、どんな機能をどのように提供するアプリなのか」。こうした、アプリの仕様自体については、担当者が自身の業務に即して決定する必要があります。仕様が業務内容に沿っていなければ、アプリが動いたとしても、成果につながらなくなるのです。
正しい結果は、正しい業務プロセスに基づいて作成した場合に出ますので、アプリ開発に取りかかる前に、まずはしっかりと業務プロセスを整理し、業務の中でデータの流れを把握しましょう。
また、業務プロセスの内容や成果物がきちんと定義されていない場合、仕様や開発の妨げになりますので事前に明確にしておくことが大切です。
アプリ開発を成功させるポイント
PowerAppsではアイテムを組み合わせるだけで簡単に業務用アプリを開発することができますが、それだけで実務に使えるツールになるとは限りません。
以下では、アプリ開発を成功させるうえで大切な3つのポイントについて詳しく紹介します。
業務プロセスやルールの理解
実際の業務プロセスや業務上のルールが正しく理解できていないと、作成したアプリの行う処理や出力結果にも、間違いが生じてしまいます。そのため、アプリが対象とする業務におけるプロセスやルールを事前に確認することが大切です。
一般的なシステム開発においてもこうした作業は行われており、必要な処理ごとに業務のプロセスを分解したり、内部で利用されるデータの種類などを確認したりします。
こうした現場の業務をアプリの機能にしっかり反映できることがPowerAppsで開発する大きなメリットです。この部分をおろそかにしないよう注意し、わからない点などあればしっかり調べ、理解を深めておくことが大切です。
入出力データの明確な定義
アプリで処理を行うには、データの入力が必要で、処理された結果を人間が利用するためにはデータの出力が必要です。正しい結果を得るためにはプロセスも大事ですが、入力されるデータも同様に大事になります。最終的に出力されるデータに何を求めるかによって、入力が必要なデータも変わり、アプリが行う処理も変わってきます。
自動で処理をしてくれるからと、多くの出力項目を作ってしまうとアプリ作成の手間もかかり、処理も長く、不具合も生じやすくなるため注意しましょう。安全で高速なアプリを目指すなら、入出力データの明確化は必須な項目になります。
法令に遵守した計算式であることの確認
消費税や源泉徴収税の計算など、業務によっては法令で計算方法が定められている場合もありますので、アプリ作成の場合は計算式が法令を遵守したものであるか確認が必要です。
例えば、消費税の計算なら最終的な料金に対して「8%あるいは10%の税率」をかけることになります。この場合計算が、アプリ内で適切に行われていなかったり、税率の設定に間違いがあったりすると企業がペナルティを受ける可能性があります。
思った通りの結果が正しく出力されたときにはうれしいものですが、そうした出力結果が、法令に沿っているかもしっかりとチェックするようにしてください。
アプリの動作テストのポイント
アプリの作成後は動作を確認するためのテストが必要です。一般的な開発ではさまざまな項目をチェックしますが、制限範囲での利用なら最低限の項目で問題ありません。
アプリの動作テストで重要な2項目を以下にて紹介します。
正常なデータと異常なデータの確認
アプリ利用時に間違ったデータが入力されてしまうと、正しく動作しないばかりか、アプリやデータが損傷する原因となります。
そのため、入力データが正常なデータかを確認する仕組みや、異常なデータが入力された場合のエラー出力などを定義しておくことが必要です。
入力時のエラーチェックでは、データを数字や文字列などの「型」で制限したり、特定の文字や数量(0未満の数など)を制限したりする方法が使われます。
異常データ入力時に、エラーメッセージが出力されても内部ではそのまま処理が行われていることもあるため処理の停止やキャッシュのリセットを必ず確認してください。
必ず複数のパターンを想定してテストを行い、正しく動作するかチェックしましょう。
境界値チェックの徹底
アプリが処理する業務によっては、入力された値によって処理の内容が異なる場合もあります。この処理内容が変わる値を「境界値」と呼びます。システムの動作テストにおいて「境界値付近にバグは多い」と言われており、チェックの際に重要なポイントとなるのです。
例えば「10,000円以上の経費申請は上長の承認が必要」なら、10,000円の場合と10,001円の場合、また9,999円の場合で正しく動作するかを確認します。「以下」と「未満」、「以上」と「超える」は間違えやすく特に注意が必要です。
「0~100、200~300、500~600」のように複数の範囲を定めている場合は、それぞれの範囲の境界値や代表値(問題なく動作すると考えられる値)を表にして作成するとテストの抜け漏れを防ぐことができます。
まとめ
ツール開発を外部業者や社内のエンジニアに依頼すると、業務への理解が足りず機能の過不足が生じたり、仕様確定や開発に時間がかかったりすることがあります。業務担当者が必要なツールを手軽に開発できれば、現場のニーズに合ったツールを短期間で作成することも可能。
Microsoft PowerAppsを使えばプログラミング言語の知識がなくとも手軽にアプリを開発することができて便利です。社内の業務効率化に向けて、アプリ開発に挑戦してみたいのであれば、ぜひMicrosoft PowerAppsの導入を検討してみてはいかがでしょうか。