人口減少の時代を迎えた日本社会において、一人ひとりの生産性向上が鍵となっています。その実現のために、政府は「働き方改革」を推進しており、テレワークも注目を集めています。本記事では、テレワークの概要や、企業側と働き手側の双方から見たメリット・デメリットを解説します。また、テレワーク導入に役立つ「AVD」を紹介します。
「テレワーク」とは?
まずは「テレワーク(telework)」について説明します。"tele"は「離れた」という意味で、自宅やサテライトオフィスなどの離れた場所で仕事をすることを指します。新型コロナウィルスの感染拡大で「在宅勤務」が注目されていますが、テレワークは在宅勤務よりも広い概念で、情報通信技術(ICT)を活用することで場所にとらわれない働き方を実現します。
テレワークには種類があり、「雇用型」と「自営型」、「モバイル型」と「在宅型」の2つの観点から分けられます。「雇用型」は会社に勤める形態、「自営型」は会社に属さず自営で働くこと、「在宅型」は家で仕事をこなすこと、「モバイル型」は自宅に限らず移動しながら働くことを意味します。2つの観点の掛け合わせで、それぞれ「雇用型×モバイル型」「雇用型×在宅型」「自営型×モバイル型「自営型×在宅型」の4つのタイプに分類できます。
働き方改革の一環として政府も推進
少子高齢化が進んでいく日本において生産性の向上が鍵になっていますが、それに対する取り組みとして政府はテレワークをはじめとした「働き方改革」を打ち出しています。特に、時間や場所に関わらず仕事をできる「テレワーク」は、働き方改革を推進する切り札のひとつとして企業への浸透を促進しています。助成金の交付などにより、業界を問わずテレワークを取り入れる動きが広がっています。導入する際、必要なハードウェアやコミュニケーションツールなどの初期投資が負担になるケースがあるため、助成金によってそのハードルを低くする試みです。
また、総務省は働き方改革の実現に向けてガイドラインを公表しています。企業にとって前例のない取り組みであるケースがほとんどであるため、総務省が先進的企業の具体的な事例や知見などについて情報発信を行ったり、セキュリティに関するガイドラインを出したりしています。
テレワーク導入のメリット
テレワークの導入によってどのようなメリットがあるのか、企業側と働き手側、両方の視点から解説します。
企業側のメリット
まず、企業側にとって大きなメリットは「コスト」です。社員が自宅などで業務を行えば、通勤に関する費用は発生しません。また、テレワークが浸透すれば従来の広さのオフィスが不要になり、固定費の削減につながります。テレワーク中心になった場合、契約書なども電子保管が基本になってくるため、紙の保管や印刷といったコストも削減できます。
また、雇用面でもメリットがあります。テレワークの場合、通勤が不要になるため、子育てや介護などと仕事を両立している社員の負担が減ります。従来であれば子育てや介護が理由で退職する社員も、時短制度などを併用しながら就業を継続できる可能性が高くなります。また、本来はオフィスからある程度近いエリアに住んでいる社員しか雇用できなかったのが、場所の制約がなくなることで、多様な人材を雇用でき、優秀な人材を採用しやすくなります。
さらに、緊急時における対応の幅も広がります。特に日本は自然災害が多く、事業における災害対策も重要性が増しています。テレワークで場所を問わず業務を継続できるようになれば、緊急時の事業継続性が確保しやすくなります。
働き手側のメリット
働き手側として、やはり通勤が不要である点が大きいでしょう。特に、満員電車はストレスの大きな要因になります。通勤にかかる時間を他のことに充てることができ、満員電車そのものがなくなるメリットは生産性に好影響をもたらします。また、会社側のメリットとも重なりますが、働き手として選択肢が増えます。子育て中でも仕事を続けられたり、地方や海外からでも入社する会社の選択肢が広がったりします。
さらに、業務そのものの生産性も上がる可能性があります。オフィスでの仕事では、予定外の社内打ち合わせなど、ほかのメンバーに左右される部分も多くなりがちです。しかし、テレワークの場合、できるだけチャットなどでコミュニケーションを済ませることで、打ち合わせも最低限になり、自身の業務に集中しやすくなります。
テレワーク導入のデメリット
一方で、テレワーク導入によるデメリットについても目を向けておく必要があります。メリットと同様、会社側と働き手側、双方の視点で解説します。
会社側のデメリット
会社側としては、まず勤怠管理が複雑になります。オフィスでの勤務の場合、入退出の時間などで勤務実態を把握しやすいのですが、テレワークの場合はそれが難しくなります。テレワークを前提とした勤怠管理ルールを定め、各社員に共有することが大切です。
セキュリティ面も対策が必要です。オフィス外に端末を持ち出して業務を行う分、オフィス勤務と比較してリスクは高くなります。また、外部からネットワークに接続するため、その対策や周知が不足すると思わぬトラブルを引き起こす可能性もあります。
メンバー間のコミュニケーションが減る可能性もあります。直接オフィスで顔を合わせていれば、仕事のこと、あるいはプライベートのことで自然とコミュニケーションが発生しますが、テレワークではそれが難しくなり、意思疎通がうまくいかなくなる可能性もあります。チャットで気軽にコミュニケーションを行えるよう設計するとよいでしょう。
働き手側のデメリット
働き手側としては、自己管理が難しくなります。特に時間管理が雑になりがちです。休憩をしっかりと取ってだらだらと残業しないよう、時間管理が重要となります。健康面でも、通勤がなくなることで運動不足が懸念されます。テレワークで浮いた時間は自発的にジョギングや散歩などを行うなどの対策が必要となります。
また、テレワークとITの各ツールは切り離せません。若い世代は慣れている人が多いですが、中間層以上のメンバーにとって、これらのツールを使いこなすハードルが高く感じる可能性があります。ただ、専門的な知識は不要なツールが多く、慣れの問題でもあるので、導入時に使い方などのレクチャーを根気よく行いましょう。
テレワークの環境構築に役立つ「AVD」とは?
テレワーク導入において、その環境構築が重要なポイントのひとつです。その環境構築に役立つ「AVD」についてご紹介します。
AVDは「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)」の略で、クラウド上でデスクトップやアプリを仮想的に実行するサービスです。クラウドの活用によりセキュアなインターネット環境を実現しており、テレワークを導入する企業で人気が高まっているサービスです。企業向けのサービスで実績が豊富なマイクロソフトのサービスであるため、その信頼性も高いです。
AVDを導入する5つのメリット
AVDを導入することでどのようなメリットがあるかをご紹介します。
Windows10のマルチセッションが可能
AVDはWindows10のマルチセッション接続が可能です。1台の仮想マシンに対して複数のユーザーが接続できるため、どのデバイスでも最新の状態で利用できます。また、ユーザーごとに仮想環境を構築する必要がないため、コストの削減にもつながります。
Microsoft 365が快適に使えるキャッシュテクノロジー
「Microsoft 365」は、OutlookやWord、Excelなどの業務に欠かせないソフトや、テレワークに便利なTeamsなどのツールを包括したサービスです。AVDでは、そのMicrosoft 365をより快適に利用できます。キャッシュテクノロジーが実装されており、ログイン速度やパフォーマンスが向上します。
Azureだから瞬時にVDI環境を拡張
「Microsoft Azure」はマイクロソフトが提供するクラウドプラットフォームで、多くの企業や自治体に採用されています。AVDはAzureを基盤としているので、拠点に合わせた最適なVDI(Virtual Desktop Infrastructure、デスクトップ仮想化)環境の構築にかかる期間を短縮できるのも特徴のひとつです。
リモート接続環境を整え、働き方改革を促進
VDIにより、各ユーザーはいつもの使い慣れたパソコンから、Windows環境が画面のみ転送されるため、場所が変わっても同じ作業環境を確保できます。また、実際のデータは各端末には転送されないため、漏洩などの安全上の脅威も取り除くことができます。
多層型の組み込みセキュリティコントロール
AVDはセキュリティコントロールが多層型で組み込まれているAzureによって提供されるため、企業が重視する「セキュリティ」を高い水準で実現しています。
まとめ
テレワークは、自宅やサテライトオフィスなどで、場所にとらわれず仕事をする働き方です。企業としてはコスト面や人材採用などの面でメリットがあり、社員にとっても生産性の向上や多様な働き方が可能になります。テレワーク環境の構築が重要なポイントとなりますが、AVDは有力な選択肢のひとつとしておすすめです。