今や働き方改革やテレワークを実践する企業において注目度の高いVDI(Virtual Desktop Infrastructure/仮想デスクトップ基盤)、そのメリットは多く、エンドユーザーやシステム管理者共に様々なビジネス効果が期待できます。
<VDIの一般的なメリット>
- 自身のデスクトップ環境をどこからでも利用できる
- 集約管理によりソフトウェアアップデートなど管理が容易に行える
- エンドポイントデバイスにデータが残らないため情報漏洩対策に有効
- どこでも働けるようになるため企業のBCP対策としても有効
- デスクトップPC、ノートPC、タブレットなど端末を選ばない 他
しかし、いざ導入してみると思わぬところでVDIの落とし穴にハマり「こんなはずではなかった!」と失敗を痛感している企業も少なくないのが実情です。VDIは、東日本大震災を機に多くの企業が導入してきたと言われています。また、そのアーキテクチャーから情報漏洩が起きにくくセキュアな環境を保ちながら事業の効率的な運用ができることから銀行や政府などセキュリティが重要な大規模組織での実績を多数存在します。
このような豊富な実績から、失敗するケースも明るみになっており今ではその経験から導入支援を行うパートナーの知見も高まってきています。企業は、VDI導入で起きやすい過去の記録を理解しながら失敗を回避するための対策を取らなければいけません。本記事ではVDI導入に失敗する代表的な理由をご紹介します。
VDI失敗の代表的な理由
失敗1. VDIのレスポンスが遅くて仕事が進まない…
VDI導入の失敗理由として最も多いのがレスポンスに対する不満です。サーバーへのアクセスが集中する朝や昼食後に関しては、レスポンスが遅すぎて仕事にならないという声がサポートデスクで鳴り止まないケースも少なくありません。一極集中でデスクトップ環境を管理するVDIですから、多くの人がアクセスすることで遅くなることは理解できるはずです。
原因は「サイジング」にあります。
サイジングとは、これから本格稼働に入るシステムに適した規模のサーバーリソースなどを見積り、準備することをいいます。理想はエンドユーザー個別の利用状況を詳細に調査し、リソースを見積もることですが、実際にはそうは行きません。以前は10人くらいだからこれくらいのリソースと決め打ちのケースも多々ありました。つまり、推論や一般論を頼りにサイジングを行うケースで失敗が起きていたのです。
これらの失敗を回避するためには、エンドユーザーが消費するリソース(CPUやメモリ、HDDなどの使用量)の実態を調査し、実測値から十分なリソースを算出した上でサーバーのサイジングを行います。
失敗2. 周辺機器や他のサーバーへのアクセスが遅くなった…
VDIによってレスポンスが低下する恐れがあるのは端末だけでなく、VDIを構成するサーバー以外へのアクセスも検討する必要があります。ファイルサーバーへのアクセスやプリンタなど周辺環境へのアクセスが遅くなったという話はよくあります。
失敗の原因は、サイジングの段階でVDI基盤ばかりに目が奪われ、ユーザーが日々本当に何をしているのかを把握していなかったことにあります。サイジングの段階でシステムの運用管理者を含めて、周辺機器との接続性など事前調査を行った上でVDI導入に踏み切るのが適切です。
失敗3. 必要なアプリケーションが使えなくなった…
日々、仕事を実践する上でアプリケーションは欠かせません。このアプリケーションは、大企業になればなるほど多くなりがちで時には数百に及ぶケースもあります。VDI環境に移行するということは、これらのアプリケーションもサーバー環境に移行することになります。そして、問題なく動いていたアプリケーションがサーバーサイドの関係で動作しなくなることもあるのです。
このことはエンドユーザーが使用するアプリケーションの中には、VDI環境で利用できないものもあることを意味します。そのため、VDI導入前にアプリケーションの利用状況を把握しながら本当に移行しても問題ないのかなどを把握しておく必要があります。
失敗4. 革新的と思って採用した最新機能がほとんど使われていない…
VDIは現在、多くの企業にとってトレンドとなっているIT技術であり、VDIベンダーの多くが多彩な機能を搭載することで付加価値を高めています。しかし、そうした革新的な機能に惹かれてVDI環境を構築したは良いものの、実際にそれらの機能がほとんど使われていないという状況は決して少なくありません。VDI製品を選定する際にはしっかりとした要件定義を実施することが重要です。
失敗5. トラブル発生時に問題の切り分けができない
今まで従業員のデスクトップPCがトラブルを起こした時には、そのほとんどがデスクトップPC内の何かが原因でした。しかし、VDIでは仮想化技術や複数人によるアクセス、ネットワークのリソース消費など確認すべき箇所が膨大に増えてしまいます。そのため、問題の特定や切り分けがVDIになったことで難しくなるのです。
例えばあるユーザーからデスクトップPCが遅いという連絡があったとします。その際には、おそらくデスクトップPCのスペックが悪いということを最初に考えるでしょう。しかし、VDIの場合には誰かが大量にリソースを消費しているから遅くなることなど色々なケースが考えられるのです。VDI環境を円滑に運営するためには、既存のサポート体制とは違うスキルが求められるのです。
失敗6. デフォルト設定スタートで問題が多く発生…
今まで大企業に導入されていたようなVDIは、高機能なものが多くポリシー設定やチューニング要素が多数存在します。そのためデフォルトの設定などで運用するとパフォーマンス問題が発生したりするケースがあります。やはり、このようなチューニングができる製品に関しては経験豊富な事業者と連携しながら導入を推進するのが良いでしょう。
VDI導入に失敗しないための注意点
今回は、VDI導入後によくある代表的な失敗をご紹介しました。多くの企業において、VDIの導入は事業の継続性を左右するほど重要なプロジェクトと言えます。特に現代のようなコロナ渦においてはVDIの動作が生産性に直結します。
このような背景も踏まえながら、しっかりとアセスメントを行いVDIのメリットを最大限に引き出すことが重要と言えます。幸い、VDIは数多くの日本企業に導入されてきたものであり一般化されています。そのため、サービス提供事業者であるシステムインテグレーターには多くの知見やノウハウが溜まっています。企業が成功するVDIを導入するためには、このような実績豊富なシステムインテグレーターに連絡することが必須と言えるのではないでしょうか。