日本は諸外国に比べてテロや大規模サイバー攻撃による事業停止リスクが少ないと言われています。しかし自然災害による事業停止リスクは世界トップクラスです。2011年3月11日に発生した東日本大震災は日本国民の記憶に強く刻み込まれており、2019年10月に上陸した超大型台風の被害もまた記憶に新しいでしょう。
そんな日本においてビジネスを展開する企業は、自然災害の発生を想定したBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策が重視されています。多くの企業にとって事業を運営する上で情報システムは必要不可欠であり、さらに、事業継続を考える上で選択肢として重視されているのがクラウドです。本記事では、BCP対策になぜクラウドが選ばれるのか?をご紹介します。
BCP対策はなぜ必要なのか?
BCP対策とは、さまざまな要因によって事業継続が困難な状況に陥った場合でも、復旧作業を進めて素早く事業を回復させ、平常通りに事業活動が行えるような施策を講じることです。東日本大震災発生以来、BCP対策といえば自然災害を想定した施策を指すことが多くなっていますが、実際はあらゆるリスクを想定します。
例えば直近の話題で言えば、新型コロナウイルス蔓延が原因となり中国生産部門の停止を受けて、製造業における生産が大幅に低下し、下請けとなっている中小製造業への影響が拡大しています。また、在宅勤務を採用するにあたり事業を継続させることも検討する必要がありました。こうした事態においてもBCP対策は重要です。
本記事では、BCP対策を自然災害の発生を想定した施策として話を進めます。
BCP対策が強く求められている理由は、ほとんどの企業は事業活動をITシステムに依存していることです。自然災害により社内データセンターが被災すれば、サーバーで管理されているデータの一部・全部損失は免れません。そうなれば事業継続はかなり困難になります。万が一の状況に対応するために、BCP対策を講じる必要があります。
BCP対策にはなぜクラウドなのか?
企業ビジネスを支えているITシステムは多種多様に存在しています。その中でも、ビジネスの根幹を支える基幹システムを止めてしまうことは致命的なダメージを意味します。基幹システムには重要な顧客データはもとより、過去から現在までの売上データや業務データなどが保管されているため、システムが停止しデータが損失すれば、事業継続はほぼ不可能です。復旧に時間がかかりすぎると、顧客からの信頼を失うことになるでしょう。
そこで、BCP対策として注目されているのがクラウドです。自然災害等が万が一発生しても、クラウドを活用しておくことで事業継続を早め、素早い操業開始で企業の利益と信頼を守ります。では、なぜクラウドがBCP対策に効くのでしょうか?
理由1. 遠隔管理でデータの安全性が確保される
クラウドはいわば、クラウド事業者が運用しているプラットフォームやシステムをインターネット経由で使用するサービスです。当然のことながら、システム上で管理されるデータは企業の足元ではなく、ベンダーが運用するデータセンターで管理されます。
Microsoft Azureなどのクラウドプラットフォームサービスは、データセンターの所在地をユーザー自ら選択できるため、データを社外・国外に管理してデータの安全性を確保できます。Dynamics 365などシステムをクラウドで提供するサービスに関しても、国内の安全な場所に設置されたデータセンターでデータが管理されます。このためもし企業およびシステムを管理している場所が被災しても、データはそこに管理されていないので自然と保全されるというわけです。
理由2. バックアップデータを自動的に取得する
もしも、クラウドを提供するソフトウェアベンダーのデータセンターが被災したら?と心配する方も多いでしょう。そうした場合でも大手のクラウドベンダーは、ざまざまな対策を講じています。そのため企業は複数のデータセンターにデータを分散配置したりバックアップを取得したりといったことで事業継続の仕組みを実現できます。
このため、万が一クラウドプロバイダーのデータセンターが被災しても、企業のデータが失われるようなことはありません。ただし、クラウドによってデータセンターの数や所在地、データ分散処理やバックアップデータ取得の有無は異なりますので事前にご確認ください。
理由3. リモートワークを可能にし事業継続を助ける
自然災害が発生し、会社が被災してもクラウドによってデータは保護されます。しかし、被災状況によっては会社に出社できずに、業務を遂行するために従業員は仕事ができない状況に陥ってしまいます。そうすれば事業継続は難しいでしょう。
そこで、クラウド環境で利用できるアプリケーションなどを導入しておくことでインターネットさえ繋がっていれば通常の業務を実施することが可能になります。
例えば、マイクロソフトでは、普段のバックオフィス業務を実現したいのであればクラウド環境で提供されるERPやCRMなどを実現可能なMicrosoft Dynamics、Web会議であればMicrosoft Teams、文書管理であればMicrosoft Office 365などが有効であり、ホスティング先としてMicrosoft Azureを提供しています。これらによりリモートワークを推進して会社が被災した場合でも事業継続が可能になります。
理由4. 大きなコストをかけずにBCP対策が取れる
クラウドによるBCP対策が注目されている大きな理由が、特別なコストをかけずに対策が取れることです。クラウドは本来BCP対策を取るものだけでなく、今まで社内で運用していたデータセンターをインターネット上に移行し、システムの拡張性と柔軟性、それとコスト適正化を図るためのものとして注目されていました。
このため、クラウド特有のメリットを狙ったクラウド移行でも自然とBCP対策が取りやすくなるのです。企業は、大きなコストをかけずにBCP対策が取れるため、大企業だけでなく中小企業にとっても有効的な選択肢になるでしょう。
BCP対策を考慮したクラウドの選び方
BCP対策が講じられるクラウドの条件は、複数のデータセンターを運用していること、データの分散処理・保護処理を行っていること、高度なセキュリティ対策を有していることの3つです。これらの条件に該当するクラウドの多くは、世界的な大手プロバイダーのサービスになります。
ITシステムのビジネスにおける重要性が高まった今、日本企業の多くは自然災害等を意識したBCP対策が必要とされています。皆さんの企業では、どういったBCP対策を講じているでしょうか?もしも、まだ講じていない、またはBCP対策が不十分と感じているのであれば、クラウドを活用したBCP対策をご検討ください。自社のITシステム環境と保管しているデータを考慮しながらクラウド化を進めれば、BCP対策の実行だけでなくさまざまなメリットを享受しながらクラウドを活用していくことができるでしょう。