近年、クラウドファーストが加速しており、SAPをクラウド環境に移行する企業が増加傾向にあります。そんなSAPのクラウド運用基盤として高い評価を得ているのがMicrosoftのAzureです。本記事はSAPをクラウド環境に移行するメリットや、運用基盤にAzureが選ばれる理由について解説します。
SAPをクラウドに移行するメリット
SAP社はERPシステムの世界市場でトップシェアを誇るリーディングカンパニーであり、国内でも多くの企業が同社の「SAP ERP」もしくは「SAP S/4HANA」を統合基幹システムとして採用しています。近年では統合基幹システムそのものを指してSAPと呼称されることもあるほどで、SAP社のERP製品は基幹系システムの代名詞となっています。そんなSAPをクラウド環境へ移行することで、企業はどんなメリットを得られるのでしょうか。
オンプレミス環境からクラウド環境へと移行することで得られる最大のメリットは、システムの導入費用と管理コストの大幅な削減です。オンプレミス型のERPシステムは、自社独自のセキュリティポリシーを適用できたり、カスタマイズがしやすく柔軟性に優れたりと、さまざまなメリットがあります。
しかし、システムを拡張するためにはサーバーやネットワーク機器の増設が必須なため、莫大な導入費用を調達しなくてはなりません。また、サーバーやネットワーク機器を設置する管理スペースや保守業務における管理コストも必要です。
一方でクラウド型のERPシステムは、大規模なサーバーやネットワーク機器を必要としないため、導入費用の大幅な削減につながります。同時にシステムの保守・管理業務が不要になるため、情報システム部門の業務負担の軽減と人件費削減に寄与する点も大きなメリットです。また、SAPの複雑なライセンス体系もクラウド化することで、月額や年額でライセンス料金を支払うサブスクリプションモデルになるため、ランニングコストの算出も容易になります。このような点がSAPをクラウド環境へと移行する代表的なメリットの一例です。
クラウド環境へ移行するべき理由
SAPをクラウド環境へ移行することで導入費用や運用コストの削減、運用負荷の軽減など、さまざまなメリットを享受できます。しかし、それらのメリットとは別に、SAPユーザーがクラウド環境へと移行するべき理由がいくつかあります。なかでも重要となるのが、「SAP ERP」のメインストリームサポートが終了する「2027年問題」です。
現在、SAP社のERPシステムは「SAP S/4HANA」が現行モデルですが、一世代前の「SAP ERP」を利用し続けている企業も少なくありません。「SAP ERP」のメインストリームサポートは2027年で終了するため、それまでに「SAP S/4HANA」へ移行する必要があるのです。しかし、この2027年問題をマイナスの出来事として捉えるのではなく、レガシーシステム脱却の機会と捉え、SAPのクラウド化を推進している企業も多くあります。
クラウド版はパッケージ版と異なり、常に最新バージョンを利用できるため、2027年問題のようなシステムのアップデート問題が解消されます。「SAP S/4HANA」はオンプレミス型とクラウド型があり、さらにそれぞれを組み合わせたハイブリッド環境の構築にも長けているため、自社の事業形態に合わせて柔軟なシステム環境の構築が可能です。結果として、ITインフラの環境整備や属人化している業務の標準化につながる点が、SAPをクラウド環境へ移行するべき理由の1つと言えるでしょう。
SAPマネージドサービス比較
記事冒頭で述べたように、SAP社はERPシステムの世界トップシェアを誇る企業であり、多くのベンダーがさまざまなマネージドサービスを提供しています。例えば、1,000社以上の導入支援実績を誇る大手ベンダーによるフルマネージドサービスや、ソフトウェア企業の低コストでSAPの運用支援を提供するコンサルティングサービスなど、各ベンダーが自社の強みを活かしてSAP環境のマネージメントサービスを展開しています。
そうしたなかでおすすめしたいのが、SoftwareONE社のマネージドサービスです。
SoftwareONEならではの機能とは
SoftwareONE社は、エンタープライズ向けのソフトウェア開発やサポートを提供する企業で、「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services」の導入支援など、企業のDXを推進するサービスを展開しています。
SoftwareONE社が提供するサービスのなかでも特に、SAPのクラウド化を検討している企業に推奨したいのが「SAP向けプラットフォームマネージドサービス」です。
「SAP向けプラットフォームマネージドサービス」は、顧客企業のSAP環境を分析・評価して移行計画を立案し、開発環境・テスト環境・本番環境を構築して、実際に運用開始までをトータルサポートするサービスです。パッケージ化されたプランの提供はもちろん、顧客企業の要望に合わせてテーラーメイドでSAP環境を構築できる点が他社のマネージドサービスとの大きな違いです。
クラウド移行にSAP on Azureが選ばれる理由
SAPをクラウド環境で稼働させるためには、運用基盤となるクラウドプラットフォームが必要になります。そんなSAPのクラウドプラットフォームとして高い評価を得ているのが「SAP on Azure」です。SAP on Azureは、MicrosoftとSAP社によって開発されたクラウドサービスで、Azure上にSAP環境を構築してさまざまなサービスとのシームレスな連携を可能にします。ここからは、なぜSAPのクラウド運用基盤にSAP on Azureが選ばれるのかを見ていきましょう。
コスト最適化
SAPのクラウド移行にSAP on Azureが選ばれる理由の1つが、適正なサイジングによるコスト削減効果です。顧客企業のシステム環境やサービス規模に見合ったリソースを見定め、使用していないシステムは一時停止するなどし、タイトなサイジングを実施することでコストを最適化します。
MSクラウド連携
SAP on Azureの大きなメリットの1つが、Azureに搭載されているMicrosoftのさまざまなサービスと連携可能な点です。例えば、Office製品やTeamsなどとの連携はもちろん、Azure ADと連携してID管理やシングルサインオンといった認証システムを取り入れることもできます。Azureの各種サービスと連携することで、SAPに管理されているデータをより効率的に運用できる点も大きなメリットです。
高い信頼性
Azureは日本セキュリティ監査会が制定した「クラウドセキュリティゴールドマーク」を取得しており、国際的なコンプライアンス基準を満たすソリューションです。SAPとAzureとの親和性の高さと世界レベルのセキュリティ監視サービスによって、ERPシステムのセキュアな運用が実現します。
HANA拡張性
SAP on AzureではHANA専用マシンを提供しており、最大24TBまでスケールアップできるという特徴を備えています。この柔軟性と拡張性の高さもSAP on Azureが選ばれる理由の1つです。これにより、自社のサービス展開や事業戦略に応じて柔軟なシステム環境を構築できます。
パートナーシップ
SAP on Azureのもっとも大きな特徴は、世界最大手のソフトウェア企業であるMicrosoftと、ERPシステムのリーディングカンパニーであるSAP社のパートナーシップによって生まれたサービスという点です。
MicrosoftとSAP社は1993年にパートナーシップを結び、さまざまな製品やサービスの開発において連携を図ってきました。この20年以上続くMicrosoftとSAP社の信頼関係や実績もSAP on Azureが選ばれる理由の1つです。
Azureに移行する際に利用可能なプログラム
オンプレミス環境からクラウド環境へとシステムを移行する際は、ファイルの破損や消失といったリスクが伴います。SAPは「財務」「会計」「調達」「生産」「販売」といった企業の基幹業務を統合管理するERPシステムであるため、データ移行時のトラブルは万が一にもあってはなりません。そこでおすすめしたいのが、SAPのAzure移行における全プロセスを総合的にサポートする「Microsoft Azure Acceleratorプログラム」です。
「Microsoft Azure Acceleratorプログラム」は、システム要件の定義やロードマップの作成、ファイルの移行やランドスケープの最適化など、可能な限りダウンタイムを抑えながらAzure移行をサポートします。これからクラウド版の「SAP S/4HANA」へ移行を検討している企業にとって最適なサービスと言えるでしょう。
まとめ
AzureはSAPのクラウド運用基盤として不可欠な機能を備えるクラウドプラットフォームです。2027年問題の影響もあり、「SAP ERP」ユーザーは「SAP S/4HANA」への移行が急務となっています。クラウド環境への移行を検討している企業はSAP on Azureを導入してみてはいかがでしょうか。