データ分析を実行する際は、何を実現したいのかという目的を設定することが非常に重要です。分析がうまくいかないと感じたときには、データ分析によって何が知りたいのか明確になっていないのかもしれません。本記事ではデータ分析の目的設定や手順について詳しく解説します。
そもそもデータ分析とは
データ分析とは、膨大なデータから情報や数値などを収集して分類や整理などを行い、目的に合わせた情報を抽出することです。
ビジネスにおいては、多くの企業で顧客データや購買データなどに基づいた詳細なデータ分析が行われています。それらは売り上げの向上などに寄与します。膨大な情報がやりとりされるIT社会では、その役割はますます増大するでしょう。
近年、政府主導のもとDX化の推進が行われていますが、まだまだ課題もあります。2018年に経済産業省が発表したDX(デジタルトランスインフォメーション)レポートによると、「さまざまな課題が克服できない場合は、2025年以降、1年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性もある」と示唆されています。
また、少子高齢化による労働力低下などの問題を解決するために、政府は2018年より働き方改革関連法を整備しました。長時間労働の是正や同一労働同一賃金などの問題を解決するため、働き方改革は今後ますます重要になってくることでしょう。働き方改革を進めるうえでは業務の効率化が欠かせません。このようなDX化や働き方改革推進の影響により、データ分析の活用が今まで以上に重要になってきているのです。
データ分析が重要な理由と実現できること
データ分析は、ビジネスの現場で生産性の向上に大きく寄与することが期待されています。前述したDX化を進めるためには、データとデジタル技術の活用が欠かせません。データを可視化して分析を行うというデータ分析は、まさにDX化を支える本質ともいえるのです。
またデータ分析を行うにあたっては、従業員だけではなく経営者を含めた意識改革が必要です。個人の経験や知識といった主観的なものではなく、データに基づいた合理的で第三者にも理解しやすいような判断を優先するという考え方に変化させなければなりません。
データ分析を導入することにより、DX推進の活発化とデータドリブン経営の普及を実現しやすくなるのです。
データ分析を実施する目的設定の例
データ分析を実施する際には、必ず目的設定を行わなければなりません。ここでは、目的設定の例として代表的なものを紹介します。
塩漬けされた顧客データを活用する
明確な目的が設定されず、なんとなく収集しているだけになっている顧客データがあるなら活用しない手はありません。たとえば、販売促進を目的としデータ分析すると、優良顧客は誰なのか、商品が売れやすい組み合わせは何かといった、販売促進のために必要な情報を入手できるようになります。塩漬けされた顧客データを活用することで目的に応じた施策を立てやすくなり、定量的なセールスの実現につなげられるのです。
マーケティング施策のCPAを下げる
広告運用では、顧客獲得単価(CPA)をいかにして下げるのかという課題があります。しかし、収益を最大化するためにはただCPAを最低値に設定すればよいというわけではありません。いくらCPAが低くてもコンバージョン数が少なければ、収益が低くなってしまうからです。効果的なマーケティング施策を実現したいときには、データ分析を用いて最大収益化できるCPAを設定するとよいでしょう。
アップセル・クロスセルを効率化する
既存顧客に対して、より上位であり高価な商品やサービスに移行してもらう営業活動を「アップセル」、組み合わせて購入してもらう営業活動を「クロスセル」と呼びます。「アップセル」、「クロスセル」を効率化するときにはBANT情報を可視化してみましょう。
BANT情報とは、顧客の予算、決裁フロー、ニーズ、サービス導入予定といったものです。これらの把握は、成約までのハードルを知るために重要です。データ分析によってBANT情報を可視化すれば、マネジメントも容易になり、営業戦略を考えるうえでも活用できます。しかし、顧客によってBANT情報の基準は異なっている場合があります。とくに成約に関わる人数が多くなるほどBANT情報を可視化して全員が共有すべきといえるでしょう。
このような取り組みにより「アップセル」や「クロスセル」の効率化が行いやすくなるのです。
データドリブンの風土をつくる
データ分析の実施により、データドリブンの風土をつくるという目的設定も行えます。経営者から現場まで、データ分析で得られた定量的データに基づいた意志決定を心がけるようにすると属人性の排除につながります。とくに大企業では、経営層が変化したとしても現場が能力を発揮しやすい環境に整えるべきでしょう。定量的データによる意志決定が遵守されていると、経営層が変化したとしても、成長し続ける企業を実現しやすくなるのです。
データ分析の代表的な手法5選
ここからは、データ分析の代表的な手法について紹介します。
クラスター分析
異なる性質をもつデータから共通性をもつデータごとに分類し、それぞれのグループで属性を分析する方法です。潜在顧客のニーズを把握できるため、自社商品を開発している企業などで用いられています。
アソシエーション分析
関連がなさそうなデータから類似性を見つけて分析する方法です。スーパーなどの小売業者でよく用いられています。たとえば、ある商品と他の商品を同時購入されていることが分かるなど、人による認識では見落としやすいような情報を把握しやすくなります。結果から予測を立て、販売戦略を決めていく際に役立ちます。
クロス集計分析
複数ある特定の項目における相互関係を分析できる方法です。アンケート集計などによく使われています。顧客のニーズを把握でき、仕入れ数の調整や販売予測などに活用できます。Excelに標準搭載されている機能でもあり、初心者にも扱いやすい基本的な分析方法です。
バスケット分析
顧客の購入商品を対象とした分析方法です。顧客が買い物カゴに入れた商品のデータを把握できるため、同時購入される商品を特定しやすくなります。ECサイトなどで、おすすめとしてレコメンドされるアイテムは、この分析手法を活用した事例です。
ABC分析
在庫や顧客などのデータを重要度別にランク分けする方法です。売れ筋商品を可視化できるため、在庫管理や販売促進に役立ち、改善点を見つけやすいので、コスト削減も容易になります。
失敗しないデータ分析の手順とは
データ分析は、膨大なデータを取り扱うため、何も考えずに取り組んでしまうと失敗しやすくなります。以下のような正しいデータ分析の手順を守ることで、データ分析を成果につなげられます。
1.ゴール設定
明確なゴールを設定しておかなければ、無駄な分析作業を増やしてしまうかもしれません。データ分析をなぜ導入すべきなのかを具体的にしてからデータ分析をはじめるようにしましょう。
2.データ分析計画立案
ゴールを達成するために何が必要か計画を立てます。たとえば「分析方法を定める」「収集すべきデータを決定する」「データの収集方法を決める」「必要な時間やコストを確認する」など、必要となる時間やコスト、課題などを明らかにしていきます。計画がスムーズに行えないときには、ゴール設定が曖昧になっていないか再度見直すことも大切です。
3.データ要素収集
むやみやたらにデータを収集しても無駄が生じます。まずは目的に対して、それを達成するために構成されている要素を細かく分解しましょう。たとえば「売上」の構成要素には、顧客数や単価、購買頻度、購入時間などが考えられます。こうした必要な要素のデータを収集し、分析することで目的に到達するための課題を見つけ出していくのです。
4.データ加工
集めたデータは、そのままの形では分析に使えないことがあります。不要なデータを取り除き、分析に使えるよう加工しましょう。データ加工の時間は、データ分析の8割の時間を占めるともいわれます。表記の統一や粒度の変更など地道な作業が含まれますが、根気強く丁寧に処理しましょう。
5.分析結果からPDCAを回す
さまざまな手法でデータ分析を行ったあとは、得られた結果を必ず評価するようにしましょう。期待していた結果が得られなかったときには、どの時点で誤りがあったのか詳細を把握することが大切です。評価や改善を繰り返してPDCAサイクルを回すことで気がつく問題点もあります。継続的に行うとよいでしょう。
理想的なデータ活用はハイブリッドな仕組み
データ分析におけるさまざまな課題をクリアするために、近年注目されているのがハイブリッド型のデータ運用です。社内外のデータを包括的に検索するエンタープライズ型と、エンドユーザー自らが行うセルフサービス型のメリットをあわせもつハイブリッド型は、データの品質や整合性はもちろんのこと、ニーズに則した活用まで両立できる仕組みです。ハイブリッド型の場合は、IT部門が全社のデータを統合することにより、信頼できる唯一の情報源となりえます。
また、業務部門では現場レベルで正しいデータに基づいた必要なデータを加工しやすくなります。実際のビジネスで価値のあるデータを生成しやすく、幅広いニーズに対しても整合性を保ったまま柔軟な対応が行えるのです。
Microsoft Azureでは、このような課題を解決するためにフルスタックサービスで企業の成長を支援しています。
まとめ
近年DX化や働き方改革推進の影響により、データ分析が重要となっています。実行の際には、適切な手順や段階を踏み、適切な目標設定を行うようにしましょう。データ分析に関する困難なハードルに直面したときには、理想の仕組みを構築するためにMicrosoft Azureのデータソリューションを活用してみてはいかがでしょうか。