クラウド移行(インフラ・DB)

IaaSの代表例を紹介! 意味やメリット・SaaS, PaaSとの違いとは

近年、さまざまな分野でDXの実現が重要課題となっており、それに伴ってITインフラのクラウドシフトを推進する企業が増加傾向にあります。そしてクラウド市場の拡大に伴って注目度が高まっているのがIaaSです。本記事では、IaaSが注目される背景や導入時のポイント、セキュリティ上の懸念点などについて解説します。

IaaSの代表例を紹介! 意味やメリット・SaaS, PaaSとの違いとは

クラウド移行 まるわかりガイド

IaaS(Infrastructure as a Service)とはデジタルインフラをインターネットサービスで提供すること

IaaSとは「イアース」や「アイアース」と呼ばれるクラウドサービスで、「Infrastructure as a Service」という英語の頭文字を表しています。IaaSはサーバーやストレージ、ネットワークなどのインフラストラクチャをインターネットサービスとして提供します。オンプレミス環境にITインフラを構築する場合、自社のデータセンターにサーバーやネットワーク機器といった物理的なハードウェアを導入しなくてはなりません。IaaSはこうした物理的なハードウェアや設置環境を必要とせず、ITインフラを構築するためのコンピュータリソースをオンライン環境によって利用できるという特徴を備えています。

SaaS(Software as a Service)との違い

「SaaS」はクラウド上でソフトウェアやアプリケーションを提供するサービスを指し、「サース」または「サーズ」と呼ばれます。オンラインストレージやメーラー、Web会議システム、ビジネスチャットなど、主にエンドユーザーが利用するパッケージ製品を提供するのが大きな特徴です。ユーザー側でインフラ周りを管理する必要がなく、インターネット環境さえあれば時間や場所に縛られることなくアプリケーションを利用できます。しかし、SaaSはアプリケーションをクラウド上で提供するのみで、IaaSのようにITインフラを自由に設計・構築することはできません。

PaaS(Platform as a Service)との違い

「PaaS」は「パース」と呼ばれるクラウドサービスで、OSやデータベース、ミドルウェア、ランタイムなど、アプリケーション開発に必要なプラットフォーム一式をオンライン環境で提供します。サーバーの設置やOSのインストール、ネットワーク設定など、アプリケーション開発の前段階における複雑な工程を大幅に省略できる点がPaaSの特徴です。PaaSはアプリケーションのみを提供するSaaSより自由度が高いものの、基本的に開発言語やデータベースはクラウドサービス事業者が提供しているものに限られるため、IaaSほどの柔軟性や拡張性はありません。

【関連記事】クラウドコンピューティング登場の背景と歴史とは
【関連記事】IaaS, PaaS, SaaSそれぞれの違いをわかりやすく解説

その他のService

  • XaaS(X as a service)
    「XaaS」は「ザース」と読み、オンライン環境を通してコンピュータリソースを提供するサービスの総称です。「X」は未知数や変数を意味するため、XaaSは「サービスとして提供される〇〇」といった意味合いとなり、SaaSやPaaS、IaaSといった「〇aaS」系のクラウドサービス全般を指します。
  • DaaS(Desktop as a service)
    「DaaS」は仮想デスクトップの構築に必要なコンピュータリソースをオンライン上で提供するサービスであり、「ダース」と呼ばれます。仮想デスクトップはクライアント端末にデータやファイルが残らないという性質を備えているため、DaaSはリモート型のワークスタイルに適したクラウドサービスです。
  • BaaS(Backend as a service)
    「BaaS」は「バース」と呼ばれるクラウドサービスであり、オンライン環境を通してモバイルアプリケーションのバックエンドサーバー機能を提供します。BaaSはアプリケーション開発におけるバックエンド領域をサーバー側に任せられるため、フロントエンドの開発に注力できる点が大きな特徴です。
  • IDaaS(Identity as a service)
    「IDaaS」はID認証やパスワード管理、アクセス権限の制御、シングルサインオンなどを提供するクラウドサービスで、「アイダース」または「アイディアース」と呼ばれます。ユーザーの認証に関する情報を一元化し、セキュリティの強化と管理の効率化を同時に実現するサービスです。

IaaSが注目される背景

IaaSが注目を集めている背景にあるのはDXの推進です。経済産業省は「DXレポート」のなかで、現在多くの企業がブラックボックス化したレガシーシステムを抱えており、2025年までにシステム環境の変革を実現できなければ、最大12兆円規模の経済的損失が生じ得ると指摘しています。この「2025年問題」を背景として、さまざまな分野でデジタル技術の活用による経営改革が求められており、その実現にはクラウドコンピューティングをベースとしたITインフラのモダナイゼーションが欠かせません。また、働き方改革の推進によってワークスタイルの多様化が加速しており、新しい時代に即したデジタルワークプレイスを構築して業務効率化を実現するためにもIaaSの戦略的活用が重要な経営課題となっています。

IaaSのメリット

IaaSの導入によって得られる代表的なメリットとして挙げられるのが以下の3点です。

サーバー作成の自由度が高い

IaaSは自社のデータセンターとして物理的なITインフラを構築する必要がなく、スケールアップやスケールダウンが容易に実行できるという利点を備えています。自社が要求するシステムの開発・構築に必要最小限のITインフラのみを選択でき、事業内容の変更にも柔軟に対応できます。たとえば、オンプレミス環境で運用しているファイルサーバーの容量を増加するためには、物理的なハードウェアを増設しなくてはなりません。IaaSはサーバーやネットワークなどのインフラ周りをクラウド環境に構築できるため、物理的なハードウェアを導入することなくスケーラビリティに優れるITインフラを構築できます。

導入コストが低い

IaaSは物理的なハードウェアの導入が不要のため、サーバーやネットワーク機器といったハードウェアの導入コストを大幅に削減できる点が大きなメリットです。IaaSは基本的に従量課金制のサービスが多く、自社の組織体制やビジネスモデルに適したコストモデルを整備しやすい点も利点です。また、物理的なITインフラの保守・運用といった管理業務が不要となり、システム管理部門の業務負荷を軽減するとともにランニングコストの削減につながるというメリットもあります。

運用はクラウド提供者に

IaaSの導入による非常に大きなメリットのひとつは事業継続性の向上です。日本は地震大国と呼ばれる国であり、事業継続性を確保するためにはサーバーの冗長化やバックアップ環境の整備など、ITシステムの可用性を高める施策が欠かせません。IaaSはインフラストラクチャをクラウドサービス事業者のサーバーで運用・管理するため、万が一自社のデータセンターが地震や火災などの災害に見舞われてもBCP対策として機能するというメリットがあります。

【関連記事】IaaSのメリットとデメリットについて

IaaSのデメリット

さまざまな利点をもつIaaSですが、メリットの裏には相応のデメリットが潜んでいます。IaaSのデメリットといえる主な要素は以下の3点です。

専門的なIT知識が必要

IaaSは基本的にサーバーやストレージ、ネットワークといったインフラ周り以外は、利用者の責任によって管理しなくてはなりません。したがって、OSのインストールや開発環境の構築、セキュリティ要件の整備などを自社のリソースで実施する必要があります。そのため、IaaSを自社の事業領域において適切に運用するためには、クラウドコンピューティングやシステム開発などの専門的な知見を有する人材が必要です。

インターネット接続が必須

クラウドサービスはオンライン環境に仮想的なITインフラを構築するというその性質上、インターネット接続が必須です。先述したように地震や火災時などのBCP対策として機能するものの、仮に災害によって自社がインターネット環境に接続できなくなった場合、データやファイルへのアクセスはできません。インターネット環境はさまざまな要因で接続トラブルが発生しうるため、本当の意味で事業継続性を確保するためには、インターネット接続に関するトラブルを想定した対策の立案・策定が必要です。

セキュリティ体制への危惧

クラウドサービスのインターネット環境に依存するという性質は、そのままセキュリティの脆弱性へとつながります。オンプレミス環境に構築された物理的なITインフラとは異なり、クラウドサービスはオンライン上にリソースを構築するため、常にセキュリティインシデントの脅威に晒されているといっても過言ではありません。これはIaaSのみの問題ではなく、クラウドコンピューティングを事業領域で活用するためには、ID認証やアクセス権限設定といったセキュリティ体制の整備が求められます。

IaaSの代表例

IaaS型のクラウドサービスとしてさまざまな製品がリリースされていますが、代表的なソリューションとして挙げられるのは以下の3つです。

AWS(Amazon Web Services)

「AWS(Amazon Web Services)」は、世界最大級のECサイトを運営するAmazonが提供しているクラウドサービスを指します。100種類以上のIaaS・PaaSを提供するクラウドサービスであり、クラウドインフラのグローバル市場でトップシェアを誇るソリューションです。AWSの代表的なIaaSとして挙げられるのが「Amazon EC2」で、このソリューションを活用することで物理的なハードウェアを用意することなくクラウド環境に仮想サーバーを構築できます。

Microsoft Azure

「Microsoft Azure」は、米国の大手ソフトウェア企業Microsoftが提供するIaaS・PaaS型のクラウドサービスです。AzureにおけるIaaS型の製品としては、ビッグデータ分析に特化したストレージサービスの「Azure Data Lake Storage」や、仮想ネットワークを構築する「Azure Virtual Network」などが挙げられます。こうしたIaaS型のクラウドサービスはストレージやネットワークなどのインフラ周りはAzure側が管理し、OSやアプリケーションなどの領域はユーザー側が管理します。

★詳しくはこちら:
Microsoft Azureとは|何ができる?入門内容からわかりやすく解説

Google Compute Engine

「Google Compute Engine」は、Googleが提供するIaaS・PaaSの「Google Cloud」に含まれるIaaS型のクラウドサービスです。「Google Cloud」はクラウドインフラのグローバル市場で第3位の市場占有率を誇るサービスであり、そのなかの仮想マシンサービスがGoogle Compute Engineとなっています。Google Compute Engineはクラウド環境のインフラストラクチャに仮想マシンを立ち上げるとともに、Googleが提供する他のサービスとの連携や統合が可能なソリューションです。

SaaSの代表例

SaaS型の代表的なクラウドサービスとしては「Microsoft 365」や「Adobe Photoshop」などが挙げられます。Microsoft 365はOffice系のアプリケーションやMicrosoft Teamsなどをクラウド環境で提供するサービスで、Adobe Photoshopは世界中のデザイナーが愛用している画像編集ソフトです。また、会計ソフトの「freee」や名刺管理の「Sansan」などもSaaS型のクラウドサービスとして知られています。

PaaSの代表例

PaaS型のクラウドサービスは、Amazonの「AWS Elastic Beanstalk」、またはGoogleの「Google App Engine」などが代表的なソリューションとして挙げられます。AWS Elastic BeanstalkはAWSのサーバー上でアプリケーションを稼働する環境を構築するクラウドサービスです。Google App EngineはGoogle Cloudのサーバー環境でプログラムの実行やWebアプリケーションの公開ができるクラウドサービスとなっています。

IaaS導入時のポイント

IaaSを導入する際はいくつかの押さえるべきポイントが存在します。とくに重要度の高いポイントといえるのが以下に挙げる3点です。

システムの拡張性

IaaSの大きなメリットは物理的なハードウェアを導入することなくITインフラを構築できる点であり、その利点を最大限に活かすためにはシステムの拡張性に着目しなくてはなりません。環境や状況の変化に応じて即座にスペックを変更できるか否かについて、インフラ周りの管理範囲が広いIaaSだからこそ確認する必要があります。

クラウド提供者のサポート体制

IaaSはインフラストラクチャの運用は基本的にクラウドサービス事業者の管理領域となるため、ソリューションの導入前にサポート体制の充実度を確認するプロセスが大切です。そのため、システムの導入前にバックアップ要件やサーバーの可用性、あるいはセキュリティ対策などのサポート体制を調査しなくてはなりません。

自社に合ったIaaSの選択

現代はクラウドファーストの推進が一般化しつつあり、クラウドコンピューティングの市場は年々拡大していく傾向にあります。このような背景のなかで自社に適したIaaSを選定するためには、導入前に解決すべき課題を明確化し、導入を支援するベンダーと実装後の運用を見据えた打ち合わせをする必要があります。

IaaSのセキュリティリスク

IaaSのインフラ周りはクラウドサービス事業者がセキュリティを担保するものの、構築したプラットフォームやアプリケーションなどの領域は自社で管理しなくてはなりません。そのため、以下に挙げる施策を継続的に実践し、セキュリティ体制の強化を推進する必要があります。

アカウント管理の徹底

クラウドサービスのセキュリティリスクを最小化するためには、「多要素認証」や「シングルサインオン」といったアカウント管理の徹底が必要です。多要素認証はパスワードやID、デバイス、指紋、声紋といった複数の要素によってユーザーの真正性を確かめる認証方式です。シングルサインオンは一度の認証で連携しているシステムにアクセスできる認証方法で、セキュリティを高めつつアクセス管理の効率化を図ります。

定期的なOSの更新

現代はデジタル技術の進歩と発展に伴い、マルウェアや不正アクセスといったサイバー攻撃の脅威も高度化かつ多角化しています。とくにクラウドサービスはインターネット環境に依存するため、オンプレミス環境に構築されたITインフラと比較してセキュリティの脆弱性を懸念する声が少なくありません。IaaSを基盤とするITインフラはOS層やミドルウェア層の脆弱性を突く攻撃も少なくないため、定期的にOSの更新を実施してセキュリティの強度を高める必要があります。

社員のIT教育

IaaSの戦略的な活用を推進する上で重要な経営課題のひとつは、セキュリティの重要性を理解する組織風土や企業文化の醸成です。優れたITインフラを構築しても、社員が間違った使用を続ければ情報漏洩などの問題につながります。情報漏洩インシデントは企業の社会的信用を失墜させ、ブランドイメージや売上機会の損失、損害賠償請求といった損害を招く可能性があります。そのため、情報通信技術に関する教育・育成を推進し、人材のITリテラシーを高めるとともにヒューマンエラーを最小化する仕組みを構築しなくてはなりません。

今後のクラウドコンピューティングの課題

クラウドコンピューティングはリソースをパブリック環境で共有するという性質上、オンプレミス環境のITインフラと比較して自社でできるセキュリティ向上施策に限度があるため、脆弱性が懸念されます。IaaSの導入を検討する際は、Azureのように国際標準のセキュリティ認証を得ているサービスを選定するという意識が大切です。また、現代は少子高齢化に伴ってさまざまな分野でIT人材が不足しているため、いかにして情報通信技術に精通する人材を確保するのか、そしてクラウドコンピューティングに関するナレッジをどのようにして蓄積していくかが重要な経営課題となるでしょう。

まとめ

IaaSはITインフラの構築に必要なコンピュータリソースを提供するクラウドサービスです。ITインフラの構築に物理的なハードウェアが不要で、導入費用と管理コストを大幅に削減できます。クラウドサービス事業者がインフラ周りを運用・管理するため、有事の際におけるBCP対策として機能する点もメリットのひとつです。

  • fb-button
  • line-button
  • linkedin-button

無料メルマガ

RELATED SITES

関連サイト

CONTACT

マイクロソフト関連ソリューションの掲載を
希望される企業様はこちら

TOP