顧客データや営業データといった社内データをいかに有効活用するかがビジネスで重要視されています。特に重要となってくるのが、データ分析やそれに伴うレポート作成などです。
一般的には専門知識を必要としますが、誰でもスピーディに分析できるツールとしてセルフサービスBIがあります。
本記事では、セルフサービスBIに関連する知識が浅いシステム開発者のために、セルフサービスBIの特徴と従来型BIとの違いや導入するメリット・需要などについて解説しています。
また、選び方やおすすめのセルフサービスBIについても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
セルフサービスBIとは
セルフサービスBIは、意思決定の迅速化(現場がリアルタイムで判断できる)やデータドリブンな組織風土をつくる土台作りとして活用されています。DXにも貢献することからITサービスとして社会に浸透し、より高い操作性が認められています。
それでは、セルフサービスBIの特徴や従来型との違いなどについて、詳しくみていきましょう。
セルフサービスBIの特徴
セルフサービスBIとはその名のとおり、セルフ形態でのサービス提供・販売形態を実現したBIツールのことです。一般的なセルフサービスは、商品を自由に選んで、運び、レジで一括して代金を支払う方式の小売店や飲食店が挙げられます。もしくは自ら給油・会計をする方式のガソリンスタンドのような、エンドユーザーが直接商品を手に取って選び、代金の支払いを行うことで低価格・短時間の買い物ができるようにした販売形態のことを意味します。
一方、BIツールの特徴は、企業が持つさまざまなデータファイルに存在する大量のデータを分析・見える化して、経営や業務に役立てるソフトウェアです。ちなみに、BIは「Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)」の略で、ビジネスの意思決定にかかわる情報という意味を持ちます。
近年は企業には膨大な情報が蓄積され、人間では全体を把握することが難しいビックデータのマネジメントが求められるようになりました。蓄積されたデータをビジネスに生かすには、エンジニアリングの他にも、目的に応じて分析し見える化する必要があります。
しかし、データ分析と見える化には、高いシステム開発スキルを所持している専門家の存在が不可欠となります。企業によっては、スキルをもつ人材不足の課題を抱えているケースも少なくありません。
このように、専門的なデータ分析の知識やスキルを伴うビッグデータの解析におすすめのツールがセルフサービスBIです。
セルフサービスBIの全体像として特徴について、詳しくみていきましょう。一般的なセルフサービスBIの特徴は、下記の4つです。
- 専門知識が必要ない
- 視覚的に操作できる
- 操作が簡単な
- メンテナンスが手軽
低価格で短時間、かつ簡単にサービスの提供が受けられるのがセルフサービスの特徴です。つまり、セルフサービスBIの特徴といえば、迅速かつ優れたコストパフォーマンスを実現しながらも、的確なデータ解析ができることが挙げられます。
ビッグデータ分析から導き出された結果に基づいた的確な判断をする指標として、BIという仕組みが活用されてきました。しかし、専門的知識やスキルを要するBIツールは、エンドユーザーには扱いにくく、操作性の面で課題が残されています。ビッグデータの需要が高まりをみせるなか、システム開発におけるデータ解析は重要です。
従来型BIとの違い
現状のセルフサービスBIは、従来型と比較して操作性が抜群に向上しています。
もともとBIツールは、各システムやデータファイルに存在する大量のデータを分析・見える化するのに役立ちます。
もし活用できれば、ビックデータのような膨大な情報を分析・見える化することが可能です。しかし、従来型のBIの課題としては、下記の3つが残されてきました。
- 事前に仕様をきっちり決めてから作らなければいけない
- エンドユーザーだと扱いにくい
- エンドユーザーへは、事前に決められた仕様での抽出・出力が条件付けられやすい
このように、従来型のセルフサービスBIを取り扱う場合、専門知識を持った一部のパワーユーザーしか操作できない課題があり、データ解析における柔軟性が欠けていました。
しかし現状のセルフサービスBIは、従来型と比較して操作性が向上し、メンテナンスが容易になるなど、専門的な知識を持っていないエンドユーザーでも取り扱うことが可能となりました。他にもセルフサービスBIの特徴的な機能は、下記のとおりです。
- エンドユーザーでもさまざまなデータ取込みやデータ結合ができる
- データの連携やグラフのレイアウト修正などのメンテナンス作業もエンドユーザーで行える
- ドラック&ドロップで手軽に項目を選んだりできるなど簡単で視覚的な操作が可能なインターフェイス
- ダッシュボードは社内のあらゆるデータを1箇所にまとめることが可能
- レポーティング機能があり、簡単に作成できて、好みの形式にカスタマイズが可能
- 人工知能を活用したデータ分析も可能なため、ユーザーに専門的な知識がなくても問題ない
上記のように、企業のエンドユーザー側で操作できる現状のセルフサービスBIの存在は、データサイエンスにおいて重要な意味を持ちます。
セルフサービスBIを導入するメリット
セルフサービスBIを導入するメリットとして、下記の内容が挙げられます。
- 閲覧したいデータが即時確認できる
- Excelによる報告データ作成の手間を省ける
- グラフ軸の操作性が高い
- 専門的な知識が必要なく、視覚的に操作が可能
閲覧したいデータが即時確認できる
従来型とは異なり、集計されたデータだけでなく個々の明細データにアクセスできるため、気になって閲覧したいと思った瞬間に即時確認できます。
ユーザーが見たいデータをすぐに確認できるため、データに基づいた判断をよりスムーズに進められます。
Excelによるレポート作成の手間を省ける
上司への報告データに関連するレポートを作成するために、よく利用されるツールといえばExcelです。セルフサービスBIにはレポーティング機能があるので、わざわざExcelで報告データを作成する必要がありません。
また、レポーティング機能はエンドユーザーでも使いやすく、簡単に作成が可能です。Excelの場合は自らグラフの種類を選び、色の加工などを行わなければなりませんが、セルフサービスBIはデータさえ取得してしまえば、簡単にグラフの作成もできます。そのため、報告データ作成を大幅に効率化できるでしょう。
グラフ軸の操作性が高い
グラフの軸とは、グラフ領域の境界を示す線で、測定データの基準値のことです。グラフやデータを理解しやすくするためには、下記の方法でグラフの軸をカスタムする必要があります。
- 軸ラベル (データ値) の表示と非表示を切り替える
- 軸線の表示と非表示を切り替える
- 軸線の色やスタイル・太さを変更する
- 主目盛と補助目盛りの表示と非表示を切り替え、表示場所を指定する
このような操作を行う手順がシンプルなのもセルフサービスBIのメリットの1つです。また、従来型は軸となるデータが限定されていますが、現状のセルフサービスBIはあらゆるデータを軸にすることが可能です。
専門的な知識が必要なく視覚的に操作が可能
エンドユーザーの使い勝手のよさを第1に考えられた仕組みが、セルフサービスBIです。セルフサービスBIの特徴であり、従来型との違いについては前述したとおりですが、視覚的に理解しやすく操作性を簡略化できるという観点で、導入するメリットは大きいです。
セルフサービスBIの需要
世界における市場調査のレポートを提供している、グローバルインフォメーションの「セルフサービスBIの世界市場:業界動向、市場シェア・規模・成長率・機会および予測(2021年~2026年)」によると、セルフサービスBI市場は2021年から2026年にかけて約14%のCAGRで成長見込みと発表しています。
今後、市場の成長が見込まれているのは、グローバル化やインターネットの普及・ソーシャルメディアプラットフォームの利用拡大・Eコマースなどがあり、急成長により世界中で構造化および非構造化データの量が急増しています。
また、そうしたビッグデータ解析に基づく企業戦略が重要性を増していることで、中小企業によるBIツールのようなデータ分析ソリューションの導入が拡大しています。しかし、従来型ではシステム開発のような専門的な知識を持つ人材が必要となるため、既存の労働力を効率的に活用できません。
2000年代から急速に普及した企業のデータファイルに蓄積した膨大な情報を、必要に応じて分析・加工し、業務や経営の意思決定への活用ができる仕組みがBI(ビジネスインテリジェンス)であり、セルフサービスBIであれば、既存の労働力を効率的に活用できるため、今後ますます市場拡大していくと考えられています。
BIに類似した仕組みに、BA(ビジネスアナリティクス)が挙げられます。
BAとは、BIにおける過去の分析結果をベースに、よりよいビジネス成果を導く意思決定を行うために統計的・定量的手法を用いてデータを分析するプロセスのことです。BAの市場も成長を続けており、デロイトトーマツ ミック経済研究所が2月15日に発表した「ビジネス・アナリティクス市場展望2022年版」によると、国内BA市場は、2020年度は前年比113.9%、2021年度は前年度比112.2%と、成長が続いています。2028年度までは、年平均12%は成長すると発表されており、今後ますます需要拡大が見込まれています。
BAのプロセスにも、セルフサービスBIは深く関係しています。このような社会的背景から、セルフサービスBIの需要の伸びが期待できます。
セルフサービスBIの選び方におけるポイント17選
セルフサービスBIを活用するために重要なポイントとして、自社に最適なサービスを選ぶことが挙げられます。
従来型BIの課題を解決するためには、さまざまなセルフサービスBIツールから自社に合ったサービスを選び導入しなければ意味がありません。
自社に合ったセルフサービスBIを選ぶには、下記のポイントを意識しましょう。
- ビッグデータに対する処理性能
- 分析結果の共有機能
- アクセス管理機能
- ユーザーインターフェース
- 接続可能なデータソース
- マルチユーザー利用時の性能
- データマッシュアップ機能
- 解析手法と関数
- セキュリティ機能
- 導入/構築パートナー
- レポート作成機能
- SaaS形式
- テンプレート
- 導入実績
- サポート
- 価格
- 契約形態
数あるセルフサービスBIのなかでも、各種機能について確認しておかなければ、せっかく導入しても使いこなせません。
シンプルに機能を使いこなすためにはアプリケーションサービス選びが、重要なポイントとなります。前述した17の要素をすべて満たすセルフサービスBIは、Azure商品のPowerBIです。次の章では、各セルフサービスBIツールの詳しい説明をしますので、ぜひご覧ください。
セルフサービスBIの実例
自社に合ったセルフサービスBIを選ぶためには、具体的にどのような場面で活用できるのか知っておく必要があります。一般的なBIツールは、主に下記のような職種で活用されています。
- システム開発
- 営業
- 経営企画
- 人事
システム開発や経営企画の職種での活用は理解できても、営業職で活用できる方法をご存じない方もおられるはずです。たとえば、出勤時にモニターからKPIなどの情報を即時に得られたり、いつでもどこでも手軽に売上データの確認ができるなど、さまざまな場面で活用できます。また、リアルタイムなデータを使ってプレゼンテーションができたり、顧客の購買行為が即座に解析できるメリットもあり、工夫次第で幅広い用途があります。
他にも、人事職では給与明細や福利厚生、その他の人事データの履歴分析が可能です。またスキル成長をデータとして記録して追跡できたり、定着率と人事制度・福利厚生の関係性のデータを分析できます。
さらに、就職シーズンのデータを利用して、従業員を雇うのに最適な時期を判断することにも用いられています。
セルフサービスBIのおすすめ商品
セルフサービスBIは、各企業から数多くの商品がリリースされています。続いて、セルフサービスBIの関連商品を紹介します。
厳選!セルフサービスBI
成長傾向にあるセルフサービスBIは、各企業からさまざまな特徴を備えた製品また関連サービスが登場しています。
なかでも、AzureのPowerBIは、データリテラシーの向上だけでなく安全かつ迅速にデータを取り扱えます。
具体的な特徴は、下記のとおりです。
- クラウドによるサーバー購入費やデータセンター利用費などのコスト削減
- 分単位の従量課金制を採用
- 世界各地の54地域にデータセンターが整備されている(日本国内は東日本と西日本に存在)
- 日本円での支払いが可能
AzureのPowerBIは、ExcelやWordなどのMicrosoft製品のデータ、SaaSやクラウド/オンプレミスのデータウェアハウスなどのさまざまなデータと連携が可能です。
またそれぞれのデータを連携・加工し、グラフィカルに表示させることもできるため、社内に散在しているデータファイルから分析したいデータを探す手間なく、一括管理できます。
操作は、最新のMicrosoft AIがサポートしてくれるため、専門知識を必要としません。
さらに、「Power BI Embedded」「Azure Analysis Services」「Azure Synapse Analytics」など、他のAzureのクラウドサービスとも連携可能です。高度なセキュリティ対策を実施できるAzure ADと連携すると、よりセキュリティ体制の強化が実現できます。
おすすめ!セルフサービスBI
Azure以外にも、おすすめのセルフサービスBIが存在します。
各社がリリースするセルフサービスBIを、厳選してご紹介します。
商品名 | 特徴 |
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Yellowfin |
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Dr.Sum |
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Qlik Sense |
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b→dash |
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TIBCO Spotfire |
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Qlik Sense |
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Domo |
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まとめ
今回は、セルフサービスBIの特徴と従来型BIとの違いや導入するメリット、需要などについて解説してきました。
ビッグデータ解析に基づく企業戦略が重要性を増しているなかで、競合他者に勝つためには、データに基づいた判断や意思決定をする必要があります。各企業から提供されているセルフサービスBIは、知識や経験がなくても、簡単に操作・作成することが可能なため、現場や担当者から導入を依頼されて導入が進められています。
またBI市場だけでなくBA市場も成長が見込まれているため、今後新たなセルフサービスBIが登場する可能性もあります。
AzureのPowerBIなら、シンプルな操作でエンドユーザー側で取り扱うことが可能かつAzureのクラウドサービスとの連携が容易で、おすすめです。この機会に、ぜひAzureのPowerBIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。