SAP on Azure

SAP surrounding system on Azure | ERP と周辺システム統合とデータ活⽤の最適解

生産から人事まで自社のシステムを一元管理し効率化するERPの導入が世界中の企業で進められています。MicrosoftはMicrosoft Azure上で稼働するSAP社ERPシステムへの移行支援を行い、顧客企業の業務効率化に貢献しています。今回はSAP社ERP製品の特徴や、クラウド運用の利点について解説します。

SAP surrounding system on Azureとは?
SAP on Azure総合カタログ

SAPとデータ統合で実現するビジネスの加速

変化の激しい現代で、企業が自らの価値を最大化して勝ち抜くためには、自社が保有するあらゆるデータを統合して活用することが必須です。

企業が保有するデータは、次の4系統に大別できます。1つ目は生産管理や在庫管理を行う業務系のデータ、2つ目はPOSデータやeコマースなどのCRM(顧客管理システム)から取得するマーケティングデータ、3つ目は各種のセンサーなどIoT機器が計測し収集する情報系データ、4つ目は旧来のシステムなどに蓄積されている過去のデータです。

これからのビジネスでは、これらのデータを一元化し、データから正しいインサイトを得て潜在ニーズを読み取り、経営戦略に反映することが非常に重要です。

そこで威力を発揮するのが、すべてのデータを統合し分析して可視化する基盤となる強⼒なERP(統合基幹業務システム、Enterprise Resource Planning)サービスです。Microsoftの「Microsoft Azure」では独SAP社と提携し、高機能のクラウドERP「SAP HANA on Azure」を提供しています。

データ利活用を阻む要因とは

ERPでデータを利活用するためには越えなければならない障壁があります。利活用を阻む主な要因は「セキュリティ」「開発スピード」「導入コスト」です。では、それぞれの問題について見てみましょう。

SAPのデータ利活用を阻む要因

セキュリティの課題

真っ先に挙げられるのはセキュリティの問題です。クラウドサービスの利用で最も注意しなければならないリスクとして、アカウントの「乗っ取り(ハッキング)」があります。

これを防ぐ手段として、最近では、パスワード以外に指紋などの生体情報や携帯電話の所持情報など、複数の要素を組み合わせて認証する「多要素認証」が求められるようになっています。

また、ひとつのIDとパスワードの使い回しで起きる漏洩リスクを回避するため、1回の認証で複数のサービスを使える「シングルサインオン(SSO) 」方式も普及しつつあります。システム運用では、このようなセキュリティ対策を行った上で、各ユーザーに対して適切なアクセス権限を付与し管理しなければなりません。

Azureの「Azure Active Directory(Azure AD) 」は多要素認証とシングルサインオンを提供するツールで、管理コストを削減しつつサイバーセキュリティ攻撃の大半からシステムを保護することができます。

開発スピード

次に、システム開発や初期導入に要する「開発スピード」の問題が挙げられます。時間がかかりすぎると、コストがかさむ原因にもなります。

これも、Microsoft Azureパッケージに含まれる「Azure Data Factory(ADF) 」、「Power BI」の利用で開発期間を⼤きく短縮することができます。Azure内に取り込んだあらゆるデータのフォーマット統一とデータ統合はADFで行うことができますし、Power BIでデータのビジュアル化ができるので、新たにアプリを開発する必要はありません。ADFとPower BIで処理したデータはAzureの他のアプリケーションとも連携しやすく、開発や導入のスピードアップを図ることができます。

コスト

初期導入コストも大きな課題の一つです。この点でも、クラウドサービスであるAzureのパッケージの利用で初期導⼊コストを大幅に削減することが可能になります。導入後のメンテナンスも、Azureに標準装備されているバックアップシステムやアップデートの適用を受けられるので大幅な省力化が可能です。Azureを利用することで管理コストの削減も可能になるのです。

SAPと周辺データ統合が生むメリット

SAP HANA on AzureではERP内のデータのほか、ビッグデータなどERP以外から取り込むデータなど、ERPを取り巻くすべてのデータをAzure 上で統合して、さらなる収益の拡⼤を目指すことができます。データ統合がもたらすメリットを順に見ていきましょう。

Azure 上でのSAP 統合でビジネス収益を促進

Security

AzureのクラウドベースのID ・アクセス権管理サービスが「Azure Active Directory (Azure AD) 」 です。Azure ADを利用して、シングルサインオンで、SAP社提供の各種アプリケーションと「Microsoft Office 365」などSAP社以外のアプリの両方をシームレスに使うことができます。もちろん、多要素認証ができるので、堅牢なセキュリティを確保できます。

Azure ADには利⽤者のアクセス情報のログ管理や追跡を行う機能もあり、退職者の権限を管理したり社外ネットワークを制御したりすることも容易で、効率的で確実なユーザー管理が実現できます。

Office Apps

各種Officeアプリが抱える課題に、データの統合や同期に関するものがあります。旧来のシステムが保有するデータは、データ形式や格納方法がそれぞれ異なっているなどの理由で、連係コストが肥⼤化する傾向にあります。

また、日々集まるデータの統合も課題です。ERPには業務終了後などのタイミングで一斉処理を行ってデータの連係を取る製品もありますが、このような処理方式では「販売可能在庫の実数が翌日にならないと判明しない」などの事態が起こり、現場が必要とする「常に変化する最新データ」を追うことが難しくなります。

その点、SAP HANA on AzureではSAPのOffice系アプリやMicrosoft Officeの各アプリなどから入力された複数のソースからなるデータを、リアルタイムで収集し統合しながら扱えるのが大きな強みです。

加えて、これらのデータを自動処理できる独自のアプリを手軽に開発するツール「Power Apps」もあり、容易にカスタマイズできるようになっています。
もちろん、ビジネスコミュニケーションアプリ「Microsoft Teams」で作業レポートを共有することで、リモートワークによる業務も問題なく行うことができます。

Analytics

データの分析・解析において課題となるのは、データが各種システムの各段階に分断してしまう「サイロ化」によるタイムラグ発生で、これが重要なインサイトを見落とす原因になることがあります。また、分析にコストがかけられず、データから得られるインサイトをユーザーがスピーディーに活用できる状況を構築しづらいことも課題として挙がることが多くなっています。

Microsoft Azureにはこうしたデータ分析や可視化を支援するツールがあります。Power BI はSAP HANA on Azureに集まるデータをグラフや図表などの見やすい形にしてリアルタイムで可視化することができます。このPower BIを使えば、現場のユーザーもデータ分析をビジュアル化したダッシュボードを手軽に作成できるので、スピード感あふれる分析と活用が可能になるのです。

Business Apps & Streaming

データのサイロ化も共通する悩みです。データはオンプレミスやクラウドの各種アプリ、IoTデバイスの内部などに分断しがちであり、データへのアクセスに⼿間がかかるためにリアルタイムで情報を得られなかったり、データの統合と連携に膨大な手間と⼤な⼿間とコストがかかったりすることが利活用のネックになっています。

こういったサイロ化したデータの統合作業をサポートするサービスが「Azure Logic Apps」 です。このサービスでは各システム間のタスクやビジネスプロセス、ワークフローのスケジュール設定や自動化などの調整を行ってくれるため、統合作業を大幅に簡略化できます。もちろん、IoT デバイスからのデータは「Azure IoT Central」によってリアルタイムで統合して業務プロセスの改善につなげることができます。

System

企業内に存在するデータは、オンプレミスとクラウド、整理済み、未整理など、さまざまな形式や状態で存在しています。これらを統合して一元化するには、それぞれのデータソースからデータを移動するための「仕組み」を一つ一つ構築しなければならず、これには大変な手間がかかる場合があります。

中には、データのソースが不明だったり、データの作成・管理プロセスが複雑だったりするなどの理由で、データの取り出しに時間がかかる場合もあります。

「Azure Data Catalog(ADF)」は、こういった雑多なデータ群の統合を支援するサービスで、オンプレミス型のSAP 従来製品のデータベース形式や、広く使われているMySQLなど70種類 以上のデータソースに対応しており、これらのデータを取り込んだり変換したりすることが可能です。

ADFは完全クラウド型のサービスであるため、データ移行時など必要な時に必要なだけ利用することが可能で、コスト節約につながります。

Data

データそれ自体の規模が引き起こす問題もあります。ERPで扱うデータは複雑かつ大規模にならざるを得ず、統合作業に膨大な手間とコストがかかるのが難点でした。また、データソースの多様化やデータ量の増加に伴うサイロ化なども手伝って、日々蓄積するデータの処理が追いつかないのも悩みの種になっていました。

Azureに含まれる「Azure Synapse Analytics」は自社が保有するデータはもちろん、ビッグデータの分析も行い、両方を統合して高度な分析を行うサービスです。Azure Synapse Analyticsで各種データの取り込み、準備、管理を行い、取り込んだデータをPower BIで素早くビジュアル化したり、抽出したデータからAzureの機械学習サービス「Azure Machine Learning」で使う学習データを生成したりするなどの利活用をすばやく行うこともできるのです。

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まとめ

ICT技術によるビジネス変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に欠かせないのが、企業が持つ全てのデータを分析して経営に生かすデータ主導型の「データドリブン経営」です。Microsoft Azureを利用してデータに隠された潜在的な需要を掘り起こし、ビジネスの加速度的発展を実現しましょう。

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