近年注目を集めている「SAP Fiori」。名前は聞いたことがあっても、その詳細を知らない方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、SAP Fiori が注目を集めている理由や、SAP Fioriに関する基本情報をわかりやすく紹介します。
SAP Fioriについて今知るべき理由
そもそもSAP ERPとは、SAP社が提供しているERP製品のことを指します。ERPとは、企業内における販売管理システム・製造管理システム・経理システムなど、さまざまなシステムを1つに統合したものです。
実はこのSAP ERP、2027年にサポートを終了することが決まっています。これにより、SAPを利用する国内2,000社以上の企業が、新たなERPを探さなければなりません。これを「2027年問題」といいます。
SAP社は、現在のSAPのサービスを終了した後に、「SAP S/4HANA」と呼ばれる新しい基幹システムの提供を発表しています。このSAP S/4HANAに実装されているのが「SAP Fiori」なのです。
SAP Fioriとは
では、SAP Fioriとはいったいどのような製品なのでしょうか?
SAP Fiori は、2013年にSAP社より発表されたインターフェイス(UI)です。SAPは美しいインターフェイスと、よりシンプルでエレガントなユーザー体験を顧客に提供する意味で、このUIをイタリア語で「花」とネーミングしました。
FioriではHR、製造、財務など、1万以上のアプリケーションが提供されています。またPCやスマートフォン、タブレットなどさまざまなデバイスで使用できるマルチデバイス対応です。さらにGoogle ChromeやMicrosoft IE、Mozilla Firefoxなどデバイスを問わないマルチデバイス対応でもあるため、近年のビジネス環境に対応したインターフェイスといえるでしょう。
SAP Fioriの特徴
SAP Fioriが発表される前は、「SAP GUI」がメインインターフェイスとして使用されていました。このGUIは機能をベースにした画面であったため、画面情報が複雑で、使いこなすには時間がかかるものでした。
一方で、SAP Fioriはユーザー目線の画面設計がされているのが特徴です。直感的でわかりやすく、業務の流れに沿った画面配置となっています。ソフトウェア開発のプロセスとしても、最初に画面設計を行うというこだわりぶりです。
SAP Fioriの技術的ポイント
では、SAP Fioriの技術面での特徴を紹介します。
レスポンシブデザイン
レスポンシブデザインとは、単一のコードで異なるサイズのデバイスでも画面が自動対応される技術です。パソコンはもちろん、タブレットやスマートフォンの画面にも対応しているため、リモートワークの際に便利です。また、画面開発をする際にも1つ作ればさまざまなデバイスで利用できるため、生産性の面でメリットがあります。
オープンな技術の活用
SAP Fioriは、技術者にはおなじみのHTML5・JavaScript・CSSといった言語を使用しています。そのため、技術者による画面開発ができます。自社企業にとって使いやすいよう、画面をカスタマイズできるのが嬉しいポイントです。
画面とサーバー側で分かれたプログラム
SAP Fioriは、画面とサーバー側でプログラムが分かれているのが特徴です。画面には、前述したようにオープン系のWeb技術が使われているのに対し、バックエンドサーバー側のSAP ERPのプログラムにはABAPが使われています。このようにあえてプログラムを分けることで、バックエンドの技術や知識がなくても、画面開発が可能です。ちなみに、画面とサーバー側間の通信はODataを利用しています。
開発に利用するライブラリと開発環境
SAP Fioriでは、開発をするためのツールとして、ライブラリと開発環境が提供されています。ライブラリに使用できるのは「SAPUI5」です。アプリケーションの迅速な開発に役立ちます。
開発環境としては「SAP WebIDE」を利用できます。これを利用すれば、各種サービスのインストールが不要です。さらにテンプレートを使った開発も行えるため、アプリケーションの開発から実装までの期間を大幅に短縮させられます。
SAP Fioriのアプリケーション
SAP Fioriには、現在4種類のアプリケーションがあります。それぞれの概要は以下の通りです。
- Transactional apps
伝票を更新・参照したり、休暇申請などの承認を行ったりするためのアプリケーション
- Fact sheets
情報を検索、閲覧するためのアプリケーション
- Smart Business
KPIを分析、評価するためのアプリケーション
- Analytical apps
グラフなどを用いて分析するためのアプリケーション
※Smart BusinessがAnalytical appsに含まれる場合もあります。
SAP Fioriのアプリケーションは、もともと「休暇申請の承認」や「給与明細」など、基本的なTransactional appsが25種類あるだけでした。しかし近年その数は増えており、今では1万以上のアプリケーションがあります。
アプリケーションは以下のライブラリから確認・検索ができます。
まとめ
ユーザーにとって利便性の高いインターフェイスである「SAP Fiori」。今後SAPのメインストリーム刷新とともに、利用者が増えると予想されます。今後もSAPを利用するなら、早めにSAP Fioriの導入を検討することをおすすめします。