エンジニアによる開発やサーバー管理用途で使われるOSに「Linux」があります。IT担当者であれば、名前を聞いたことがあるかもしれません。ですが、一般的な家庭や企業で使用する機会は少なく、詳細を知らないという場合もあるでしょう。
そこで、LinuxがどのようなOSなのかについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。
OS(オペレーティングシステム)とは?
OS(オペレーティングシステム)とは、PCの利用者が簡単にシステムを使いやすくするためのソフトウェアです。「基本ソフトウェア」とも呼ばれ、WindowsやMacが有名です。CPU、メモリ、外部機器、ネットワーク、ストレージなどを統括しており、インターネット接続やアプリケーションの動作を実現します。
たとえば、業務で使用するExcelやWord、Photoshopといったアプリケーションは「応用ソフト」と呼ばれ、OSがインストールされていることを前提として動作するようになっています。そのため、基本ソフトウェアであるOSがなければ、応用ソフトを動作させられません。PCを利用する上でOSは欠かせないソフトウェアと言えるでしょう。
現在では、上記で挙げた2つのOS以外にも「Linux」「Unix」「BSD」などさまざまなものがあり、スマートフォン用の「iOS」や「Android」もOSに含まれます。
Linuxとは?
Linuxとは、前述している通りOSの一種です。1991年に開発されたため、1980年代に登場したWindowsやMacよりも少し後に登場したOSです。Linuxは無料で配布されており、利用したい人がネット上からダウンロードして使用するのが基本となっています。
また、WindowsやMacとの大きな違いは、基本操作をCUI(Character User Interface)上で行うという点です。CUIとは、真っ暗な画面にテキストデータだけが表示されている画面を指します。
Linuxでの基本操作は、このCUI上でコマンドを入力して行います。GUI(Graphical User Interface)と呼ばれるデスクトップ画面もあるのですが、CUIでの操作が基本となっているため、操作コマンドを理解していないと使用しづらいという点があります。なお、GUIとは表示されるアイコンなどをクリック・タップして利用できることを示すもので、WindowsやiOSなどがこれに該当します。
普及度、受け入れ状況について
日本でのLinuxの使用状況は、デスクトップOSとサーバーOSによって違いがあります。Net Applicationsによると、2020年5月のデスクトップOSのLinuxシェア率は約3%です。トップシェアがWindowsで約85%、MacOSが約9%となっています。反対にサーバーOSの分野では、2017年と少し古いデータですが、Windowsのシェアが約52%、Linuxが約24%となっており、サーバーに利用されている割合が高いです。
Linuxは無駄なGUIが少なく、CUIのみで動かせるため動作が軽いソフトウェアとなっています。サーバー利用に最適なOSとも言われているため、実際に利用されているのもサーバーの方が多くなっているのです。
その反面、直感的な操作には向いていないため、MicrosoftやAppleのOSと比べると日本の一般家庭においては普及しづらい面があります。ですが、大企業や公的機関のシステムに採用されることもありますし、無料であることも後押しとなり、世界でも一定のシェアを保っています。
実際にLinuxを導入している場面とは?
Linuxは無駄な機能がほとんどなく、動作が軽いという点と自由度が高いという特徴があります。そのため、日本では、これらの利点を活かして使用されています。
たとえば、Linuxが多く導入されているのは、前述したサーバー運用管理向けです。Linux自体がサーバーでの利用を目的の1つとして作られているため、安全性も高くなっています。さらに無償かつ動作が軽く要求スペックが低いので、全体的に導入コストが安価ですみます。つまり、大規模サーバー運用に適しているのです。
また、組み込みシステムでもLinuxが活用されています。組み込みシステムとは、車、テレビ、掃除ロボットなど、製品の内部に組み込まれているシステムのことです。Linuxは利用料がかからず、自由度も高いので組み込みシステムに使われることが多くなっています。
Linuxを運用していく上でのメリットについて
ここからは、Linuxを使用するメリットについて解説します。
無料ソフトである
Linuxは、無料のソフトウェアです。インターネット上でダウンロードすれば誰でも気軽に使えるので、利用にお金がかかりません。そのため、低コストでPCを利用するなら、Linuxが選択肢の1つに挙げられます。
新しいPCにインストールするには、USBメモリやCD・DVDなどにLinuxをダウンロードして、使用したいPCに挿入します。PCを立ち上げる時にBIOS設定でLinuxの入ったデバイスで起動するように指定すれば、簡単にインストールが可能です。
ソフトウェアもローコストで導入できる
Linuxには、関連するさまざまなソフトウェアもネット上で配布されています。詳しくは後述しますが、多くの機能が付属した「Linuxディストリビューション」と言われるソフトウェアを企業や団体が作成しており、使いたい方は無償で、もしくは有償で購入し、インストールして利用可能です。これを活用すれば、GUIのあるわかりやすいOSとしてLinuxを使用できます。
また、Microsoft Azureなどのクラウド製品との連携もできます。これを使えば、ローコストの開発プラットフォームの作成も実現できるでしょう。
低スペックのPCでも運用可能である
高いスペックが必要であれば相応のコストがかかるのがPCです。たとえば、大規模なサーバーを組み上げる際には、機器の導入規模に応じて高額な初期費用が必要です。このため、コスト削減のためにLinuxを選ぶ企業も多いです。
低スペックで動かせてハードウェアの自由度が高いことから、個人でもLinuxサーバーを好む方も多くいます。また、他OSでは重くて動かない一昔前のパソコンでも、Linuxであれば用途に応じて現役で利用できる可能性があります。必要な機能を持つソフトウェアを選択的にインストールして最小構成でシステムを構築できるので、無駄がありません。高いスペックがなくても十分に使えるというのは、大きな魅力なのです。
OSの中身を改良できる
Linuxは、OSの中身がオープンソース化しており自由に改良可能です。商業用途から個人利用でのカスタマイズまで、さまざまな方が好きなようにアレンジできます。
Linux単体では基本的な機能に限られるため、他の機能を自分で作成したりアレンジしたりできるのです。また、前述したオープンソースのディストリビューションを改良して、新しいOSの作成もできます。このような自由度の高さがLinuxの持ち味であり、エンジニアに人気がある所以なのです。
Linuxを運用していく上でのデメリットについて
ここからは、Linuxを運用する上でのデメリットについて解説します。
初心者には不向きである
CUIでシステムを動かすというのは、初心者には難しいものがあります。もちろん利点があるのですが、使いこなせるようになるためには多くのコマンドを覚える必要があるのです。
GUIを利用できるディストリビューションもありますが、WindowsやMacに馴染みのある方ですと戸惑うこともあるでしょう。同じGUIでも、OSによって操作性が異なるからです。基本的にLinuxは家庭などでの一般利用における使いやすさを追求していないため、初心者にとってはこの点がデメリットになります。
他OSで使用するソフトウェアが使用できない
Linuxの大きなデメリットは、メジャーOSで動く一般的なソフトウェアとの互換性がないことです。中でも特に有名なのがMicrosoftの一般ユーザー向け製品です。企業での業務においてExcel、Wordなどは欠かせませんが、互換性がないためインストールできません。
とはいえ100%使用できないわけではなく、仮想マシンとしてWindowsを実行したり、ネットワークに接続してブラウザで利用できるOfficeを使用したりするという手もあります。しかし、これらはOSから直接開いて操作するよりも手間がかかり、作業効率が下がるという問題があります。
Linuxディストリビューションについて
先述したように、Linuxにはディストリビューションと呼ばれる、アプリケーションやライブラリをパッケージ化し、より使いやすくカスタマイズしたものがネット上で配布されています。これらを活用することで、よりLinuxを快適に使用できます。ここではいくつか、主要なディストリビューションをご紹介します。
- RedHad社系列
RedHad社が配布しているLinuxディストリビューションで基本は有償の製品です。商用利用として業界のスタンダードとなっています。 - Debian系列
Ubuntuなど、無料で利用できるLinuxディストリビューションで、ボランティアによって開発が進められています。ここで紹介する3つのなかでは、最も初心者向きです。 - Slackware系列
Linuxのディストリビューションとしては、古くから存在しているものです。上記2つと比べると作りが非常に簡素で、細部のカスタイズはユーザーに委ねられています。その分、利用する際のハードルが高いのが特徴です。
まとめ
Linuxは、低スペックのデバイスでも動作し、かつ無料でも利用できます。また、自由度が高いという利点もあるため、ソフトウェア開発やサーバー管理などで主に使われています。Microsoft Azureとの連携もできるため、開発プラットフォームとしての利用も可能です。上手く活用すれば、商用OSに基づくサービスとは異なる価値を持つ製品を生み出せるでしょう。