IoT(Internet of Things:インターネット・オブ・シングス)という言葉を頻繁に耳にするようになった昨今、「IoTって何?」と疑問を持っている方も多いかと思います。我々のビジネスや私生活に広く浸透したIoT。本記事では、その概要を分かりやすく解説します。
IoTってなに?
日本語ではよく「モノのインターネット」と訳されていますが、「モノのインターネット化」とした方が意味合いは通じやすいでしょう。我々の周りにはいろいろなモノで溢れかえっています。そのモノに通信技術を搭載して、インターネットに接続するのがIoTです。
なぜそんなことをするのか?それは単純に「使う人の利便性とモノとしての価値を高め、新しいビジネスとして確立するため、より良い社会を形成するため」です。
身近な例を挙げるとすれば、腕時計に情報通信技術を搭載してインターネットへの接続を可能にした、「スマートウォッチ」が代表的だと言えます。スマートウォッチは時計に搭載したセンターにより、身に着けている人の身体データを取得し。Bluetoothなどの通信規格でスマートフォンにデータを記録します。さらにそれらのデータはインターネットを通じてクラウドプラットフォームに蓄積され、データ分析を通じて様々な付加価値を生み出すことが可能です(健康状態のモニタリングや専門家によるアドバイスなど)。
もちろんIoTと言える製品はスマートウォッチだけではありません。携帯電話にパソコン同様のCPUと情報通信技術を搭載したスマートフォンはもとより、冷蔵庫や電子レンジなどの家電、電気・ガスメーターなどのインフラ機器、自動車、あらゆる工場の機械に至るまであらゆるモノがIoT化している時代です。
IoTが付加価値を生み出す仕組み
腕時計はもともと、移動中でもいつでも手軽に時間を確認するためのツールとして開発されました。持ち運び用の時計として開発された懐中時計の時代から数えると、実に500年以上もの間、時計は時間を知るためのツールとして使われ続けてきたわけです。それ以外の付加価値としては、ブランド時計としてのファッション性、タキメーターを利用した平均走行速度の計算、ストップウォッチ機能くらいのものでした。 しかし近年になり、腕時計に情報通信技術を搭載したことで今までにない画期的な付加価値を多く生み出すことに成功しました。スマートウォッチ以外のIoTデバイスに関しても、従来とはまったく違った新しい付加価値が生まれています。では、その付加価値を生み出す仕組みとはどのようなものでしょうか?
1. センサーがあらゆるデータを取得する
IoTはまず、モノに搭載したセンサーからあらゆるデータを取得するところから始まります。例えばスマートウォッチなら着用者の心拍数、血圧、歩数、移動距離、着席時間などのデータを取得します。スマート冷蔵庫なら庫内の温度と湿度、食材の消費期限、特性の食材の有無などです。サッカーボールをIoT化して、ボールを蹴った際のインパクト、ボールの回転数、ボールの速度をなどのデータを取得するものあります。また、アグリテックやスマートファクトリ、スマートストアなどのIoTでは、温度や湿度、また機械の振動、必要なログ情報などあらゆるデータを取得します。
2. クラウドプラットフォームへ蓄積する
一般的にセンサーによって取得されたデータは、モノに搭載された情報通信技術によりインターネットを介してクラウドプラットフォームへ蓄積されます。なぜクラウドなのか?それば柔軟性と拡張性の高いプラットフォームを採用することで、大量に送信されるデータを蓄積しながら自由な形でデータを活用できるためです。
3. AIがデータを蓄積した価値ある情報へと変換する
クラウドプラットフォームに蓄積されたデータは誰が分析するのか?ここでIoTに並ぶトレンド、AI(人工知能)の登場です。AIはIoTデバイスから送信されたデータを、既定のプログラムに従って処理し、分析してその結果を価値ある情報へと変換します。Microsoft AzureなどのクラウドプラットフォームはIoT向けのAIを搭載しているため、これもIoTにクラウドプラットフォームが採用されやすい理由の1つです。
4. 情報のフィードバックにより付加価値を生み出す
AIにより出された価値ある情報は、さまざまな形でフィードバックされ新しい付加価値を生み出します。例えば、スマートウォッチから取得した心拍数などのデータをAIが総合的に分析し、その人の健康状態を示すことで医師によるメディカルチェックを遠隔で受けることが可能です。時間を確認したりファッション性だったりと限定的だった腕時計の付加価値が、ヘルスケア領域にまで及んだというわけです。
こうしたIoTの仕組みの先にどれくらいの付加価値を生み出せるかは、IoTとそのモノの相性と、開発者のアイディア、企業の戦略によります。最近では、製造業においてIoTを搭載したモノを販売するのではなく、サービスとして提供して新しい付加価値を生み出すサービタイゼーションがトレンドになっています。
いろいろなIoT事例
いかがでしょうか?ここまでの解説を読み、身近な例が頭に浮かんだ方も多いかもしれません。実際に、我々の周囲にはすでに多くのIoTで溢れています。それでは最後に、いろいろなIoT事例をご紹介します。
MAmoria it(マモリア・アイティー)
MAmoria itは震度4以上の地震の揺れを検知して自動点灯する、スマートフォン対応のIoT LEDライトです。ホルダーから外せばハンディライトとして使用できるので、緊急時に停電した時も照明を確保できます。また、スマートフォンを連携することで緊急速報メールがスマートフォンに転送されたり、毎日の天気をお知らせしてくれたりと複数の機能を搭載しています。
Blueair (ブルーエアー)
Blueairは空気の汚れを可視化できる空気清浄機型のIoTデバイスです。PM2.5やCo2、VOCといった空気の汚れを専用センサーが検知して、スマートフォン上にレポートとして表示してくれます。空気の状態が把握できるため、空気清浄や換気のタイミングを把握できます。
HEXOSKIN(ヘクソスキン)
HEXSKINはTシャツ型のウェアラブルIoTデバイスです。HEXSKINを着用することで心拍数や呼吸の数、肺活量などを測ることができます。もちろん衣類として普段から着用でき、運動時や睡眠時など健康状態をリアルタイムに測定できるのが大きな利点です。取得したデータはクラウド上で管理・分析できます。
Amazon Dash Button(アマゾン・ダッシュ・ボタン)
すでに販売は終了しているものの、2015年の販売当初に大きな話題を集めたのがAmazon Dash Buttonです。これは、Dash Buttonを押すだけで特定の商品をAmazon上で購入できるIoTデバイスであり、食料品や洗剤など日常的に欠かせない商品で大きな反響を呼びました。現在では、スマートフォンやパソコンの画面にてバーチャルボタンで商品発注が可能なVirtual Dashや、商品が切れると自動的に発注してくれるAmazon Dash Replenishmentが提供されています。
Azure IoT
マイクロソフトでは、マネージド サービスとプラットフォーム サービスの包括的な Azure IoT ポートフォリオを提供しています。セキュリティで保護されスケーラブルなモノのインターネット (IoT) アプリケーションをすばやく構築し、デプロイできます。
皆さんもこの機会に、身の回りの面白いIoTデバイスを発見してみてください。