自社でMicrosoft Azureを活用したクラウド環境を運用している場合、セキュリティ監視は欠かせません。しかし、多くの企業が適切な監視を行えておらず、Azureのセキュリティ監視のニーズが一層高まっています。そこで本記事では、Azureのセキュリティ監視ソリューションであるElastic Stackについて詳しく解説します。
Azure監視のElastic Stackとは!?
多くの企業でクラウドプラットフォームとして導入されることの多いAzure。企業のニーズに合わせて導入でき、大変便利なサービスです。しかし、適切に利用するにはセキュリティ対策が欠かせません。そんなAzureのセキュリティ対策に役立つのが、「Elastic Stack」です。
Elastic Stackは、Elastic社が提供しているデータ分析サービスです。膨大なデータをたった数秒で、リアルタイムに検索・分析し、可視化します。これまで、検索・分析のおよんでいなかった情報を可視化することで、サイバー攻撃の予兆やマーケティング活動におけるヒントなど、具体的なアクションに移すためのさまざまな情報を得られます。
Elastic Stackは、「Elasticsearch」「Kibana」「Beats」「Logstash」という4つのサービスから成り立っています。以下では、それぞれのサービスについて簡単に説明します。
Elasticsearch
Elasticsearchは、JSONベースの検索・分析エンジンです。Elastic Stackの核となるシステムと言えます。Elasticsearchでは、倒置インデックスを用いてドキュメントをリスト化することで、ほぼリアルタイムにデータ検索ができ、アプリケーションパフォーマンス監視、ログ分析なども行います。
Kibana
Kibanaは、Elasticsearchのデータを可視化したり、分析したりするためのUIを指します。Kibanaを利用すると、手間なくElasticsearchに登録されたデータへアクセスできるようになります。また、ワッフルチャート、ヒートマップ、時系列分析などの機能が利用できます。
Beats
Beatsは、Elasticsearchに取り込む統計情報などのデータを収集するためのツールです。Beatsを利用することで、数多くのシステムからデータを転送できたり、Elasticsearch用のECSという形式でデータを取り込めたりします。取り込んだデータは、ElasticsearchやLogstashに転送できます。
Logstash
Logstashは、データ収集のためのパイプラインのことをいいます。データ収集のほかに、加工や出力を行え、Elasticsearchにデータを取り込むのに使われます。ほかにもさまざまなシステムへデータ出力が可能です。
このように、Elastic Stackでは、4つのプロダクトを組み合わせることによって、膨大な数のデータでも収集や検索、分析、可視化などの処理を簡単に行えます。
Elastic Stackのサービス特徴
では、Elastic Stackでは具体的にどのようなことができるのでしょうか? ここでは、Elastic Stackの特徴について、詳しく解説します。
組織内に存在するデータの収集・分析
Elastic Stackの特徴の1つとして挙げられるのが、組織内に存在するデータの収集・分析に優れている点です。先ほど挙げたElastic Stackのプロダクトの1つ、Elasticsearchでは、数字・テキスト・地理情報・構造化データ・非構造化データなど、さまざまなデータを収集・分析できます。これらのデータを組み合わせて、自社の知るべき情報を導くことも可能です。大規模な検索を行うことで、データの傾向やパターンも捉えやすくなります。
優れたスケーラビリティ
Elastic Stackは、優れたスケーラビリティも特徴の1つです。スケーラビリティとは、システムの規模に応じて柔軟に対応できる度合いのことを指します。Elastic Stackでは、サーバー1台から数百台まで、柔軟に対応してデータ処理を行えます。これが行えるのは、データ処理を行う数に応じてインデックスとクエリが自動的に調整されるためです。この自動調整機能により、スムーズに運用を行えます。
セキュリティリスクの自動検知
Elastic Stackでは、セキュリティリスクについて、機械学習を用いた異常検知機能を搭載しています。モニタリングの対象としているネットワーク機器に、何らかの障害やセキュリティリスクが見られた場合、自動で検知してくれます。そのため、常にクラウドサービスとして利用しているAzureのセキュリティ対策にも最適です。
Elastic Stackの利用料金
Elastic Stackは、SSPLまたはElastic Licenseなどのライセンス所持者であれば、基本的な機能を無料で利用できます。これらのライセンスを所持していない場合、またデータ管理やセキュリティなど幅広い機能を利用したい場合は、サブスクリプションサービス「Elastic Cloud」の契約が必要です。それでは、Elastic Cloudの各プランの概要・料金を紹介します。
スタンダード
Elastic Stackにさまざまな拡張機能やセキュリティ、Webベースのサポートを追加したプランです。利用料金は最低16ドル/月です。
ゴールド
スタンダードプランの内容に加えて、レポート機能や外部アラート、営業時間中のサポートが含まれるプランです。利用料金は最低19ドル/月です。
プラチナ
ゴールドプランの内容に加えて、より高度なセキュリティや機械学習、24時間365日のサポートが含まれるプランです。利用料金は最低22ドル/月です。
エンタープライズ
Elasticが提供するほぼすべてのサービスが含まれるプランです。利用料金は最低30ドル/月です。
なおElastic Cloudは、クラウドサービスによくあるユーザー単位の料金システムではなく、使用したリソースに応じて料金を支払う従量課金システムを採用しています。リソースの内訳は、Webサイトやアプリ、ワークプレイスの検索に重点を置いたり、ログデータの観測を行ったり、セキュリティの強化をしたりなど、自社で自由に使い分け可能です。