セキュリティとガバナンス

多要素認証と二段階認証の違いとは?例を交えて分かりやすく解説

多要素認証と二段階認証の違いとは?例を交えて分かりやすく解説

サイバー攻撃がますます巧妙化する中、多要素認証や二段階認証といったアカウントのセキュリティ対策は欠かせません。これらの認証方法は、単一の認証に比べて、アカウントやシステムへの不正アクセスを防ぐために重要です。本記事では、多要素認証と二段階認証の具体的な違いやメリットについて解説します。

多要素認証・二段階認証とは?分かりやすく解説

多要素認証・二段階認証とは?分かりやすく解説

デジタル化が進む中、推測可能なパスワードだけでは、アカウントの乗っ取りや情報流出のリスクが高いのが現状です。システムへの不正アクセスを防ぐために、多要素認証と二段階認証などのセキュリティ対策が重要視されています。

多要素認証の基本情報

多要素認証(MFA)は、ユーザーの本人確認をより厳密に行うため、認証の3要素(「知識情報」「生体情報」「所持情報」)のうち2つ以上の異なる認証要素を組み合わせるセキュリティ手法です。

サイバー攻撃の激化、ビジネス環境や働き方の多様化、パスワード管理の複雑化など、単一の要素だけではセキュリティが十分ではありません。従来のIDとパスワードなどの知識情報のみに頼るよりも、多要素認証を利用することで、より強力なセキュリティを実現可能です。

多要素認証は、特に効果的な認証手法として注目されており、例えば、金融、医療、教育、政府機関など幅広い分野で導入が進んでいます。機密情報や個人情報を守るため、不正アクセスやアカウント乗っ取りを防止することが目的です。

多要素認証の背景とは

近年、サイバー攻撃がますます巧妙化し、IDとパスワードのみの認証ではセキュリティ対策が不十分とされるようになりました。この状況に対応するため、より強固な認証方法として多要素認証が注目されています。

  • サイバー攻撃の増加
  • リモートワークなど働き方の多様化
  • 規制や基準の厳格化

単一認証ではフィッシング攻撃などに弱く、アカウント情報が簡単に漏えいするリスクがあります。また、社外からシステムにアクセスするケースが増えたことで、セキュリティ対策の強化が必要となりました。

多要素認証の3つの要素とは

多要素認証は、主に、知識情報、生体情報、所持情報の3つの異なる要素を組み合わせて本人確認を行う認証方法です。これにより、1つの認証手段だけでは防げないリスクを軽減します。特徴を理解し、適切に選択することが重要です。

知識情報

知識情報は、ユーザー本人のみが知っている情報を用いた認証要素です。一般的な例として、PINコードや秘密の質問(例:「あなたの最初のペットの名前は?」)などが知識情報に該当します。

メリット

入力しやすく、簡単に設定できる

簡単に導入しやすい
デメリット パスワードの使い回しや単純な文字列など推測が容易
フィッシングや辞書攻撃、情報漏えいなどのリスクが高い

知識情報は、他の要素と組み合わせることでセキュリティ効果を強化します。単体で利用する場合は、複雑な文字列や定期的な更新がおすすめです。

生体情報

生体情報は、ユーザー固有の身体的特徴を用いた認証要素です。具体的には、指紋、静脈、顔、虹彩、声などが挙げられます。生体情報は複製が困難であるため、高いセキュリティを提供するものです。

メリット 偽造が難しく、認証の信頼性が高い
デメリット 認証デバイスと生体情報の登録機器などが必要
身体変化などの際に技術的な誤作動が問題

生体情報は、スマートフォンやセキュリティシステムで多く採用されており、利便性とセキュリティの両立が可能です。生体情報は固有のため、複製が難しい一方、認証機器の故障や、生体情報が誤認されるケースもあります。

所持情報

所持情報は、ユーザーが所有している物理的なデバイスやデジタルキーを利用した認証要素です。代表例は、スマートフォン、セキュリティトークン、ICカードなどです。

メリット 所有物が必要なため、セキュリティが高い
第三者による直接的なアクセスを防ぎやすい
デメリット 紛失や盗難のリスク

所持情報は、ワンタイムパスコードや認証アプリと組み合わせることで、利便性とセキュリティを両立させた運用ができます。盗難や紛失のリスクがある一方で、セキュリティが高いことも特徴です。

二段階認証の基本情報

二段階認証 は、2つの異なる認証プロセスを2段階に分けることでセキュリティを強化する手法です。パスワードを入力する従来の認証方法に加え、二段階に分けて別の認証を要求することで、セキュリティを強化します。具体的には、IDとパスワードによる第一段階の認証に加え、秘密の質問やスマートフォンへのワンタイムパスワードの送信など、二段階で確認を行う認証です。

二段階認証の導入は比較的シンプルで、簡易的に導入できる点がメリットの反面、追加の認証ステップが必要となり、時間がかかるため、ユーザーの負担でもあります。

二段階認証は、個人アカウントだけでなく、企業のシステムや金融機関でも広く利用されています。

多要素認証・二要素認証・二段階認証の違い

多要素認証・二要素認証・二段階認証の違い

多要素認証・二要素認証・二段階認証は、セキュリティ対策として広く利用されており、類似した認証手法です。厳密には、それぞれ異なる概念、特徴、適用範囲を持っています。これら3つの認証手法の違いと具体例を詳しく解説します。

それぞれの違いを解説

違いとしては、より機密度の高い個人情報を扱う場合は多要素認証、一般的なセキュリティは二段階認証など、目的や利用シーンが異なります。

多要素認証は、知識情報、生体情報、所持情報から、複数の異なる要素を組み合わせて認証を行い、セキュリティを強化する方法です。高度なセキュリティを実現するため、政府機関や医療などで利用されています。

二要素認証は、2つの異なる要素を用いて認証を行う多要素認証の一種です。例えば、パスワードとセキュリティトークン(所持情報)の組み合わせは二要素認証に該当します。

二段階認証は、認証要素を複数回に分けて段階的に使用する認証方式です。異なる認証要素を組み合わせる場合と、同じ認証要素を二段階で使用する場合があります。

多要素認証・二要素認証・二段階認証|それぞれの実例

多要素認証、二要素認証、二段階認証は、規模やセキュリティレベルに応じたセキュリティ対策に利用されています。これらの違いを理解し、適切な認証方式を採用することで、セキュリティリスクの効果的な低減が可能です。

多要素認証・二要素認証の実例

多要素認証と二要素認証は、利便性とセキュリティのバランスが取れています。一般的な方法は、パスワードを入力した後、スマートフォンによるワンタイムパスワード、静脈認証、セキュリティトークンなどです。

認証方法の実例としては、以下の利用シーンが挙げられます。

利用シーン 要素
銀行 キャッシュカード(所持情報)+暗証番号(知識情報)
オフィスセキュリティ IDカード(所持情報)+静脈認証(生体情報)
Eメールログイン メールアドレスとパスワード(知識情報)+
ワンタイムパスコード(所持情報)

二段階認証の実例

二段階認証は、簡易的に導入できるため、日常的なオンラインサービスなどで広く利用されています。二段階認証の例としては、パスワードの入力後、登録済みの電話番号に認証コードが送られるケースなどです。

認証方法の実例としては、以下の利用シーンが挙げられます。

利用シーン 要素
SNSのログイン パスワード(知識情報)+ 別のパスワード(知識情報)
ECサイト アカウントパスワード(知識情報)+
登録メールアドレスに送信されたURL(所持情報)

多要素認証と二段階認証のメリット

多要素認証と二段階認証のメリット

多要素認証と二段階認証は、サイバー攻撃のリスクを低減し、より高いセキュリティの対策として重要です。ここでは、業務の効率化や法的要件への対応を支援する、多要素認証と二段階認証の主要なメリットを詳しく解説します。

セキュリティ強化

多要素認証と二段階認証は、複数の認証要素を組み合わせたり二段階に分けて認証を行ったりするため、パスワードを盗まれただけでは不正アクセスが不可能です。パスワードのみの認証に比べて、1つの要素が侵害されても、他の要素を突破できないため、不正アクセスを困難にします。特に、生体認証やセキュリティトークンを用いることで、なりすましのリスクを大幅に低減することに有効です。

多要素認証と二段階認証で、シンプルながら効果的な多層防御をすることで、以下のセキュリティ強化が期待できます。

  • 不正アクセス防止
  • データ漏えい防止
  • アカウント乗っ取り防止
  • 高度な攻撃への対応

特に多要素認証では複数の認証要素を組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減し、セキュリティを強化します。

ユーザーのパスワード管理のコスト軽減

多要素認証は、生体情報やSMS認証などの所持情報を活用するため、パスワード依存の低減などパスワード管理のコストが軽減します。

二段階認証はパスワードと秘密の質問を利用し、専用機器や高度な技術を必要としないため、導入コストが低く抑えることが可能です。これにより、複数のパスワード管理負荷によるパスワード忘れやパスワード更新管理、パスワード流出の懸念を減少させます。

リセットリクエストの頻度が低下し、ヘルプデスク対応のコストも削減されるため、管理負担を減らすことが可能です。

コンプライアンス強化

重要なシステムや個人データなどの機密情報へのアクセスをする場合、多要素認証・二段階認証により、コンプライアンス強化へ貢献します。セキュリティ事故が発生した場合でも、単一の認証方式に比べて、不正なアクセス防止や責任証明が容易です。これにより、法的リスクを最小限に抑えることができます。

また、顧客データを保護する取り組みとしてこれらの認証方式を導入することで、企業のセキュリティ姿勢のアピールに効果的です。二段階認証は、よりシンプルな認証方法であり、規制や基準の遵守で求められる最低限のセキュリティ基準をクリアできる場合があります。

  • 不正アクセス防止などのリスク軽減
  • 企業の信用度向上
  • セキュリティ規制への対応

重要なデータを扱う場合は、よりセキュリティの高い多要素認証の導入がよいでしょう。

多要素認証と二段階認証のデメリット

多要素認証と二段階認証のデメリット

多要素認証と二段階認証は、セキュリティ強化に有効な手段である一方、導入と運用に関していくつかのデメリットが伴います。ここでは、主に多要素認証と二段階認証の2つの課題について詳しく解説します。

導入や運用コストが高い

特に、多要素認証は、高度なセキュリティを提供する一方で、以下のようなコストが発生します。

  • 専用デバイスの購入
  • ソフトウェアライセンス購入
  • システムの設定やメンテナンス
  • 導入トレーニング
  • ユーザーサポート

生体認証を導入する場合は、指紋スキャナーや顔認証カメラなどの専用ハードウェアが必要です。ハードウェアトークンを利用する場合も同じように、保守費用やサポート費用がかかります。

また、ソフトウェアの場合も、既存のシステムに多要素認証を組み込むために、改修費用や認証システムの導入・構築費用が必要です。システムの設定や操作方法の教育など、サポートに時間とリソースがかかります。ユーザー数に応じてライセンス費用などのコストが増大する可能性も考えなければなりません。

認証に時間がかかる

多要素認証は、最低2回の認証をパスする必要があるため、認証に時間がかかる場合があります。インターネット接続が不安定な環境やユーザーによる入力エラーなども、遅延の原因です。

具体的には、パスワード(知識情報)を入力後、ワンタイムパスコード(所持情報)の入力が求められるため、ログインにかかる時間が延びます。指紋や顔認証(生体情報)が正確に認識されない場合も同様に、再試行が必要になり、さらに時間がかかる想定です。

このように、多要素認証では、複数の要素による認証を行うため、認証に時間がかかります。二段階認証は、多要素認証に比べて簡素化されているものの、やはり認証プロセスが滞る可能性は高い傾向です。

多要素認証によるアクセス管理ならMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)がおすすめ

Microsoft Entra ID(旧 Azure AD) は、多要素認証を効果的に運用しながら、セキュリティを強化するためのツールです。高度なセキュリティが求められる現代のIT環境では、特に、多要素認証を活用した柔軟なアクセス管理を実現できます。

Microsoft Entra IDとは

Microsoft Entra IDは、Microsoftが提供するクラウドベースのSSO(シングルサインオン)認証を取り入れたID管理サービスです。ハイブリッドワークに適しており、ユーザー、デバイス、アプリケーションに対する包括的なID管理を提供します。多様な認証方法に対応しており、中でも多要素認証を標準装備し、不正アクセスの防止に効果的です。

Microsoft Entra IDは、多要素認証とアプリケーション管理によるセキュリティの高さが特徴であり、以下のメリットがあります。

  • 柔軟な認証方法
  • 高度なセキュリティ機能
  • Microsoft製品とのスムーズな統合
  • リソースの一元管理

業務環境に適応した柔軟な運用が可能で、クラウドによる導入負担軽減と作業効率の向上が期待できます。

Microsoft Entra IDでできること

Microsoft Entra IDは、多要素認証をはじめとするさまざまな機能を提供し、セキュリティの高いアクセス管理を実現します。

SSO認証

Microsoft Entra IDでは、SSO認証機能を提供します。SSO認証とは、ユーザーが1度の認証で複数のシステムやアプリケーションにアクセスできる仕組みです。つまり、各システムごとにログイン情報を入力する必要がなく、効率的で利便性の高い認証方式です。これにより、1つのIDとパスワードで、Microsoft 365のアプリケーションやサービスにアクセスでき、業務効率を大幅に向上させます。

  • パスワード管理負担の軽減
  • セキュリティ強化
  • 利便性の向上

Microsoft Entra IDのSSO認証により、パスワードを複数覚える必要がなくなり、ログインにかかる手間なども削減が可能です。

アクセス制御

Microsoft Entra IDは、多要素認証と連携したきめ細やかなアクセス制御を提供します。ユーザーのデバイス、場所、アプリケーションにもとづいてアクセスを管理する機能で、不正アクセスの防止が可能です。組織内の役割に応じてアクセス権限を付与し、業務に必要な範囲だけアクセスを許可する機能もあり、管理の効率化とセキュリティの向上に貢献します。

例えば、特定のデバイスや時間帯のみアクセスを許可する、といった条件付きアクセス設定が可能です。また、アクセスログをとることで、ユーザー行動やデバイスの状態を分析し、異常を検知した場合に適切に対応できます。

オンプレミスと連携

Microsoft Entra IDは、オンプレミスと連携することで、ハイブリッド環境における認証管理を実現します。ハイブリッド環境は、必要に応じてオンプレミスとクラウドで同じ資格情報を使用して、両方の環境にスムーズにアクセス可能です。これにより、規模の拡大・縮小も柔軟に対応でき、オンプレミスとクラウドリソースに一貫したポリシーを適用できます。

Microsoft Entra IDの主な連携ポイントは、以下です。

  • ハイブリッドID
  • パスワード同期

既存のオンプレミスシステムを活用しつつ、クラウド移行をスムーズに実現できます。

まとめ

多要素認証は複数の異なる認証要素(知識情報、生体情報、所持情報)による高度なセキュリティを提供します。また、二段階認証は、認証を段階的に行うことでセキュリティを確保し、比較的シンプルな設定で導入できるメリットがあります。

セキュリティ対策を検討する際には、両者の特性やメリット・デメリットを理解し、用途や要件に応じて適切な方法を採用することが重要です。サイバー攻撃は日々進化しており、その被害の大きさからも、新しい防御方法を取り入れなければなりません。

セキュリティ強化と管理の効率性を考え、多要素認証がおすすめです。

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