企業のデータには、業務改善や新しいサービスを生み出すチャンスが眠っています。しかし、さまざまな業務ツールを活用して作業を行うことで、貴重な多くのデータはあらゆるところに散乱しています。
そこでこれらのデータを利用できるように統合することで、業務に活かそうという試みが行われています。
データの統合とは?
データの統合とは、社内に散らばっているさまざまなデータを1つに集約することを指します。データ統合を行うことで業務効率が向上するだけでなく、経営者の意思決定やマーケティングなど業務に活かすことも可能です。
よくある問題として、必要なデータはすべて揃っているにもかかわらず、各部門間で別々のツールを使用することで、データが分散されるといったことが挙げられます。また、エクセルやクラウドツールなど、ローカル上とネットワーク上で別々にデータを収集している場合もあるでしょう。
データが全てネットワーク上にある場合は、それらを統合するツールの利用が必要です。一方、Excelなどのローカルにもデータがある場合は、Excelからデータを抽出しなければいけません。
いずれの場合も、統合プラットフォームの利用が一般的ですが、データをどのように活用するか、よく考えることが大切です。
データの統合を導入する目的
データ統合は闇雲に行えばいいというものではありません。そこには明確な目的が必要です。ここでは、3つの観点から統合の目的について解説します。
データ分析
データを統合して分析することでさまざまな情報が得られます。これにより業務効率や売り上げの向上、コスト最適化など、さまざまな業務改善を促すことが可能です。データ分析の分野では、近年ビッグデータが特に注目を浴びています。
ビッグデータとは、膨大な数と種類、リアルタイム性の3要素を持ったデータ群を指します。たとえば、医療業界です。数百万人の患者データや、ある1つの病の同時発生数、発生原因など、多くの情報が取得できます。これらを利用することで、より新しい治療法の確立や流行病の確認、病気の原因特定など、さまざまな結果が得られます。
問題は、これらのデータをどのように収集して利用するかということです。これらを別々に管理していては、見つかるものも見つかりません。1つに集約することで初めて法則性を見出せるのです。
AIや機械学習の利用
データ統合した膨大なデータベースにAIや機械学習を組み込むことで、人間では気づけないデータの法則性を発見したり、効率のよいデータ分析をしたりできます。
中でも、この技術を有効的に活用しているのが自動車業界です。近年、自動運転が話題ですが、ここでも道路・走行・交通に関するデータをAIで分析して自動運転に役立てています。ナビゲーションシステムで利用されている渋滞の発生予測も、渋滞が発生しやすい箇所と時間帯・曜日を機械学習させることで得られるデータです。
このようにデータ解析にAIや機械学習を用いることで、新しいサービスを生み出すことができます。これらはすべてデータ統合によって土台を整えた結果できることなのです。
業務の効率化
データを統合すると、別々に分散していたデータが1つに集約されます。これは言い換えれば、欲しいデータ群が1箇所に集まっている状態です。そのため、データを取り出したいときには、すぐに該当のデータが見つけられ、かつ芋づる式に取り出せます。
また、他部署のデータベースなどまで取り入れ、前述しているビッグデータ分析やAI・機械学習を活用すれば、業務効率化をさらに促せます。
たとえば、営業が顧客へアプローチをかけるとき、闇雲に当たっていては時間がかかるだけです。そこで顧客情報やこれまでの履歴を集めることで、どの顧客にアプローチすれば成功確率が高いかを予測できます。これを元にアプローチすれば、無駄なアプローチをする必要がありません。
もう一つ例を挙げると、農業やインフラ整備などでもセンサーを取り付けてデータを収集しながら作業することがあります。現場での確認作業は外せませんが、いつでも農作物の状態など、最新のデータを収集できます。このようなデータの蓄積により、目視による見逃しを防止でき、大規模管理も一括で行えるのです。
コスト削減
データを別々の部署などで管理する場合、異なるツールで運用していることがよくあります。その分、ツールの使用料がかかり、けっして効率的とは言えません。また、管理のみならず、横断的にデータベースを操作する必要もあり、そのたびに人的コストもかかり、さらに業務効率の低下が懸念されます。これを1つのサービスにまとめて運用するだけでも、これらのコストが削減できます。
製造業では、製造ラインのデータを収集することで、製品の不良が発生する箇所や原因を特定できます。これにより、不良品の発生回数や原因となる部品が判明すれば、対処することで良品が作れ、それに伴いコスト削減につながります。
データを統合するメリット・デメリット
データ統合を行うことによるメリットとデメリットについて解説します。
メリット
データ統合のメリットは、「業務効率化」「コスト削減」「データ精度向上」「ミスの防止」などさまざまです。その他にも、前述したように収集したデータで新しいサービスを開発したり、データから知見を得てそれに合わせた対応策を決めたりするなど多くのメリットが考えられます。
すでに多くの業種で、データ統合によって業務改善がうまくいった例が報告されています。自社と同じ業種において、どのような手法があるのかHPなどで確認するのも良いでしょう。
デメリット
データ統合は無理矢理行っても利用しづらくなることがあります。その場合には、統合するデータと個別データを分けて管理しなくてはいけません。
膨大なデータを取得していた場合は、構造が複雑化して管理が難しくなる可能性もあります。この場合、データ統合で得られるメリットと統合後の管理で発生するデメリットを考慮しつつ、導入を判断しましょう。
また、統合には、統合システムを導入しなければいけません。新しいシステムの場合には、使用方法をトレーニングする必要もあるため、人的リソースもさかれます。さらに導入コストだけでなく、サブスクリプションやサポート契約をする場合には毎月料金も発生します。
業種別データの統合の活用事例
業種別に見るデータ統合の活用例をご紹介します。
製造業における活用事例
製造業では、業務データが分散化していることが多い業種の1つです。
収集データは、製造ラインに活かすことが一般的です。IoTを導入することで、設備の稼働状況をセンサーでデータ化(可視化)します。このデータにより、「製品の改善」「設備異常の早期発見」「コスト最適化」「生産性の向上」などに役立てられます。
また、製造状況を外出先でも把握できるようにしておけば、営業が顧客との対応に苦慮することもありません。すぐに状況を確認して、適切に顧客へ回答できるでしょう。
小売業における活用事例
小売業では、市場の予測にデータを活用することが多くあります。リアルタイム性の高い顧客の関心や需要の変動予測を行うことで、最適なタイミングでの商品の販売が可能になります。
また、商品ごとの売れ行きデータを収集することで、在庫調整も可能です。売れている商品は規模を拡大して、死に筋商品は在庫数を縮小するなどすれば、在庫の最適化に活用できます。
その他、売上や顧客のデータを収集して特定の分類に分けることで、顧客それぞれにあったマーケティングを行えます。顧客の年代や好み、性別などから、需要予測を立てて、同じパターンに当てはまる顧客に同様のアプローチをかけることも可能です。
まとめ
社内に分散しているデータを一箇所に集約することで、部門間で同じデータを共有できます。それにより新しい知見が得られる他、業務効率の向上、コスト削減など多くのメリットが得られます。
Microsoft Azureにはデータ統合機能も用意されています。実施に踏み切る際には導入を検討してはいかがでしょうか?