近年、多くの企業でデジタル技術の活用による経営改革、「DX」の実現が重要な経営課題となっています。そんなDXの実現に不可欠なのが「データドリブン」です。本記事では、データドリブンの概要やメリットを解説するとともに、具体的な活用方法をご紹介します。データ分析に基づくロジカルな経営体制を構築する際の参考にしてください。
DX時代に注目されている「データドリブン」とは
「データドリブン」とは、経験や勘といった右脳的な直感的思考に頼るのではなく、定量的なデータ分析と左脳的な論理的思考に基づき、意思決定を実行するプロセスを意味する用語です。「Data Driven」を直訳すると「データに基づく」「データを起点にした」といった意味合いになり、ビジネスの領域ではマネジメントやマーケティングの領域にデータ分析を活用する取り組みを意味します。
現代はデジタル技術やテクノロジーの発展によって情報爆発時代へと突入しており、さらにスマートフォンの爆発的な普及によって、一般消費者が多様な情報に触れる機会が向上していることもあり、顧客ニーズは年々高度化かつ多角化しています。また、情報通信技術の進歩に伴って、企業が取り扱うデータ量も指数関数的に増大しており、いかにして蓄積された膨大なデータをマネジメントの領域に活用するかが問われています。
このような社会的背景のなか、企業が新たな付加価値を創出し、市場における競争優位性を確立するためには、主観や思い込みを排除した、定量的なデータ分析に基づくロジカルな経営体制を構築しなくてはなりません。そのためには、優れたデジタル技術の活用によるDXの推進が不可欠であり、その実現をデータ分析によって支援するのが、データドリブンの目的とするところです。
データドリブンのメリットとは
データドリブンの実行によって得られるメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。
- リアルタイムのデータを素早く集計できる
- 顧客満足度向上につながる
- 定量的に意思決定ができる
リアルタイムのデータを素早く集計できる
高度化・多様化する顧客ニーズや、変化の加速する市場に対応するためには、リアルタイムでの全社的なデータ分析が不可欠です。組織の業務システムやデータがサイロ化しており、生産管理や在庫管理、販売管理など、各部門が異なる情報に基づいて業務に取り組んでいる企業は少なくありません。このようなデータが分断された状態では、部門を横断した情報共有は困難です。
ファイル共有基盤やデータ統合基盤を構築し、データドリブンを実行できるシステム環境を整備できれば、組織内のあらゆるデータのリアルタイムな集計が実現し、迅速な意思決定や的確な経営判断が可能になります。
また、全社横断的な情報共有や業務連携も行えるようになるため、リアルタイムな在庫状況に基づいて生産計画を立案したり、製造ラインの稼働状況に応じて購買計画を策定したりといったマネジメントが実現します。
顧客満足度向上につながる
組織に収集・蓄積されているデータを定量的に分析できれば、顧客の潜在的な需要に基づく製品・サービスの開発が可能です。たとえば、ERPに保管されている在庫管理や販売管理といった基幹データ、CRMで管理されている顧客情報や商談データ、市場動向の調査や需要予測など、組織内のさまざまなデータを統合的に分析することで、マーケティング戦略の立案や行動計画の策定に役立てられます。
販売管理情報や顧客情報などを多角的かつ定量的に分析できれば、顧客ニーズを的確に捉えた製品・サービスの開発が可能となり、顧客満足度の向上に寄与します。また、コンタクトセンターに寄せられた意見やクレームを収集し、テキストマイニングを用いることで、市場や顧客のリアルな声の見える化が可能です。
データドリブンは顧客の潜在的な需要や意見を可視化し、より優れた顧客体験を提供するために欠かせない手法といえます。
定量的に意思決定ができる
モノやサービスが飽和している現代では、「優れた製品や商品を提供すれば売れる」という時代は終わりを迎えつつあります。また、インターネットの爆発的な普及に伴って、若年層のテレビ・新聞離れも進んでおり、マスマーケティングによる販売促進も従来のような効果は期待できません。このような時代のなかで顧客ニーズを的確に捉えるためには、定量的なデータ分析に基づく意思決定が不可欠です。
具体的な施策としては、組織内に蓄積されている膨大な販売情報や顧客情報を統合的に分析し、セグメントした層の需要をデータから探ることで、勘や経験といった不確実な要素に頼らない、定量的かつ論理的な意思決定が可能となるでしょう。
データドリブンは、定量的なデータ分析に基づく意思決定を促すと同時に、顧客一人ひとりやセグメントされた層に最適化されたアプローチの実行にも貢献します。
DX時代の経営手法「データドリブン経営」とは
「データドリブン経営」とは、定量的なデータ分析に基づく意思決定を、経営戦略の立案や組織体制の構築に活用するマネジメント手法です。冒頭で述べたように、データドリブンとは経験や勘といった直感的要素を排除し、定量的なデータ分析と論理的思考によって意思決定を下すことであり、その概念や戦略を企業経営の領域に活用したものがデータドリブン経営といえます。
たとえば、各部門の基幹システムに管理されている、財務会計・人事・購買・生産・物流・販売などの業務データを一元化し可視化・分析できれば、俯瞰的な視点から経営状況を客観的に評価可能です。経営状況を客観的に評価できれば、経営課題が可視化され、収益構造の改善や生産体制の再整備など、具体的なアクションや必要な施策を把握できます。
BIツールやETLツール、Machine Learningなどデータ分析に特化したソリューションを用いて、定量的な意思決定と経営判断を支援し、経営基盤の総合的な強化を図ることがデータドリブン経営の本質です。
データドリブンをマーケティング領域に活用するメリット
データ分析を市場調査や需要予測、販売促進やリード獲得などの領域に活用する戦略を「データドリブンマーケティング」と呼びます。データドリブンの概念や施策をマーケティング領域に活用することで、以下のようなメリットを得られます。
- 顧客ニーズを定量的に可視化する
- クロスセルやアップセルが可能
- CRMツールと連携できる
顧客ニーズを定量的に可視化する
先述したように、情報通信技術の発展やスマートフォンの爆発的な普及によって、一般消費者が多様な情報に触れる機会が増え、顧客ニーズは年々高度化しています。このような時代のなかで優れた顧客体験を提供するためには、顧客の潜在的な需要を捉えた製品・サービスの創出が不可欠です。
顧客の購買履歴や問い合わせ履歴、商談データやクレーム情報などの顧客情報を多角的に分析することで、顧客ニーズを可視化し、サービス品質の改善や製品の設計・開発といった分野に活用できます。
クロスセルやアップセルが可能
アメリカの経営コンサルタントのジェイ・エイブラハム氏は、事業を拡大する方法は「新規顧客を獲得する」「客単価を上げる」「購買頻度を高める」の3つしかないと述べました。新規顧客の獲得は最もコストを要するため、上位の製品やサービスを購入してもらい客単価を上げる「アップセル」か、関連商品を購入してもらうことで購買頻度を高める「クロスセル」に注力しなくてはなりません。顧客情報を多角的に分析することで、アップセルやクロスセルの成功率が向上します。
CRMツールと連携できる
データドリブンをマーケティング領域に活用するためには、蓄積された顧客情報や基幹業務データの可視化・分析が不可欠です。顧客情報を管理するCRMや、基幹業務を統合的に管理するERPをデータ分析基盤と連携することで、組織の経営状況と営業部門やマーケティング部門の業務データが一元化され、定量的なデータ分析に基づくマーケティング戦略や経営戦略の立案・策定が実現します。
まとめ
DXを実現するためには、定量的なデータ分析に基づく経営体制の構築が欠かせません。データドリブンは意思決定や経営判断を支援し、経験や勘に依存しない論理的な経営体制の実現に寄与します。データドリブン経営の実現には、Azureが提供する分析サービス「Azure Synapse Analytics」の活用がおすすめです。