社内外のデータを活用し、業務効率化やビジネスの成長に役立てるには、データ収集業務が欠かせない時代になりました。データ収集は、データの種類や用途に応じて適切なツールを活用することが大切です。ここでは、データ収集の基礎知識とそこで役立つツールについて解説しています。
データ収集とは?その目的と重要性
まず、データ収集の目的と重要性について解説します。
データ収集の目的
データ収集とは、データの発生源から情報を集めることです。データの発生源としては、社内のITインフラ、営業・カスタマーサポート・店舗といった顧客接点に集約される情報、製造ラインのIoTデバイスなどが挙げられます。
また、データ収集の目的もさまざまです。社内のITインフラの場合は「社内システムのパフォーマンス改善」が目的になるでしょう。顧客接点であれば「マーケティング施策の立案」「顧客満足度の向上」、IoTデバイスでは「生産ラインの効率化」などが目的である場合が多いです。
データ収集はなぜ重要なのか
データ収集が重視される理由としては、「データからビジネスの成長に役立つさまざまな知見を効率よく得られる」という点が挙げられます。近年、経営効率を高めるためのノウハウとしてデータドリブン経営が普及し始めています。データドリブン経営では、定量的なデータを基礎とした意思決定が基本です。この意思決定の材料を得るために、データ収集が欠かせないとされています。具体的には以下のようなものです。
社内のITインフラ
一般的に社内のITインフラは、業務の正確性や効率性を高めるために活用されます。そのため、常に最適なパフォーマンスで稼働し続けなくてはなりません。最適なパフォーマンスの維持のためには、システムのリソース状況や、障害が予測されるポイントを把握しておく必要があります。これらをデータ収集によってリアルタイムに可視化しておくことで、障害発生時の早期復旧が可能になったり、適切なパフォーマンスチューニングが可能になったりと、さまざまなメリットを生み出します。
顧客接点から得られる情報
データ収集によって、営業やカスタマーサポート・店舗といった顧客接点からマーケティング施策の立案や製品・サービス開発のヒントを得ることができます。近年、顧客体験を高めるためには、顧客ごとに細分化されたニーズを満たすことが大切だとされています。顧客体験の向上のためには、顧客属性や顧客行動・購買履歴といったデータを収集し、適宜分析していくことが求められるでしょう。また、収集されたデータを分析することで、顧客すら気づいていない欲求「顧客インサイト」を得られる可能性も高まるはずです。
IoTセンサー情報
製造業では、高品質な製品を安定して造り続けるために、生産ラインの効率化が進められてきました。その一環として、IoTデバイスによるデータ収集が注目されています。IoTデバイスからは、温度・湿度・天候といった環境情報のほか、稼働状況や停止時間・生産数量なども得ることができます。これら種々のデータによって、生産量の最適化やボトルネック分析が可能になり、生産ラインの効率化につながるのです。
データ収集におけるコツや役立つツール
次に、データ収集のコツやツールについて紹介します。
データ収集のコツ
データ収集では、鮮度が高い情報を一定量確保することが大切です。そこで、データカタログの活用を検討してみてください。データカタログとは、データの辞書とも言えるもので、ビジネスに役立つデータが集約されています。例えば、日本政府が提供しているe-statは、公的な統計情報のデータカタログと言えるでしょう。データカタログをデータ収集元に含めることで、質の高い情報を継続的に確保することができます。
また、データ収集業務では可能な限り手動業務の割合を減らし、自動化・効率化に努めることも意識したいところです。
監視ツール、可視化ツールの活用
社内のITインフラに対しては、監視ツールなどに付属するデータ収集ツールの活用がおすすめです。監視項目から一定間隔で不可状況や閾値を取得できるほか、グラフや図による可視化が可能なためです。
自動化ツールの活用
Web上からのデータ収集の場合は、APIやスクレイピングの活用がおすすめです。データカタログやWebサイトには、情報取得のための口としてWeb APIが設置されていることがあります。APIとは、端的に言えばアプリケーション同士を連結するためのポイントです。Web APIと自社のデータ収集ツールを接続することで、大量のデータを自動的に収集することができます。
また、スクレイピングは、WebサイトやSNSなどを周回して、必要な情報を自動的に抽出する技術です。こちらはプログラミング言語やライブラリに関する知識が必要ですが、Web APIが提供されていない場所からも効率よくデータを収集することができます。
データ収集環境の整備
IoTデバイスからデータ収集を行う場合は、ネットワークの整備も視野に入れていきましょう。一般的には、IoTデバイスと無線通信を組み合わせ、自社環境へとデータを送信する形態が多いです。また、低コストで運用負荷も低いクラウド型が採用されるケースが増えています。
Azureによるデータ収集業務の効率化
これらデータ収集のためのツール・環境を構築するためには、初期投資が必要です。また、データ収集は分析とセットであり、分析業務も考慮した構築が求められます。そのため、オンプレミス型システムとしての構築には、多額の費用と時間が必要になることも少なくありません。
そこで、クラウドプラットフォームが持つデータ収集機能に目を向けてみましょう。Microsoftが提供するクラウドプラットフォーム「Azure」の機能を活用することで、初期構築にかかる費用と時間を省きつつ、迅速にデータ収集業務を始めることができます。
Azure Monitor
Azure Monitorは、Azure環境及びオンプレミス環境に対応したデータ収集ツールです。アプリケーションやITインフラの稼働状況データの収集に適しています。複数の言語とフレームワークに対応しているほか、仮想マシンやコンテナ環境からのデータ収集にも対応可能です。
Azure Time Series Insights
IoTデバイスからのデータ収集にはAzure Time Series Insightsが適しています。IoT向けにカスタマイズされており、大量のIoTデバイスから収集したデータをリアルタイムに分析し、潜在的な問題がないかをチェックすることができます。
Azure Synapse Analyticsでのデータ分析も
Azureにはデータ分析機能として、「Azure Synapse Analytics」も用意されています。データウェアハウスと分析機能(AI、BI)が一体となっており、独自に収集したデータを有効活用しつつ、効率よく分析を進めることができます。
まとめ
今回は、データ収集の目的と重要性、コツやツールなどについて解説しました。データ収集では分析までを視野に入れて環境を構築することがポイントです。また、データの発生源や量の増加に対応できるよう、スケーラビリティも考慮しておく必要があるでしょう。クラウドプラットフォームであるAzureならば、こうしたデータ収集の課題にも柔軟に対応できます。本記事の内容を参考に、データ収集環境の構築を進めてみてはいかがでしょうか。