クラウド化の波はどれくらい大きなものなのか?経済産業省が発表した『令和元年版 情報通信白書』によれば、クラウドを一部でも利用している企業の割合は58.7%です。また、その中で「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と回答した企業は83.2%であり、多くの企業がクラウドに対して一定のビジネス効果があると認めています。
では、具体的にどのようなメリットがあるのか?本記事では、クラウド化のメリットとその流れについてご紹介します。
クラウド化のメリット
クラウド化とは、既存のシステムやインフラをインターネット上で提供されているモノに置き換えることを指します。これまで社内の閉じられていたネットワーク環境から、オープンなネットワーク環境へと変換されるということです。
メリット1. システム利便性や開発容易性の向上
クラウド化されたシステムは社外のインターネット環境からもアクセスできるようになり、社員はいつでも好きな時に好きな場所から同じ仕事環境へアクセスすることができます。営業が客先からSFA(Sales Force Automation)を利用して見積書をその場で発行することも可能です。また、クラウドストレージを利用すれば外出先からファイルを自由に扱うことも可能になります。そして、リモートワーク環境においてのクラウドで提供されるWeb会議システムなどにもアクセスして対面と同等の会議を実現することも可能になります。このようにいつでもどこでも利用できるシステムは、大幅に利便性が向上するため生産性の大幅アップが期待できます。
さらに、システムやアプリケーションの開発環境もインターネット上で調達できるため、開発に必要な環境を瞬時に整えられます。開発用サーバーを用意するためにOSやミドルウェアをインストールするなどの作業も不要なので、開発容易性も著しく向上できます。また、用意した環境を削除するのも簡単です。
メリット2. データの集約管理によるセキュリティ性向上
基幹系システムをクラウド化すると、企業にとって重要なデータの多くはインターネット上で管理されることになります。機密情報や個人情報が社外で管理されることに不安を覚える方も多いでしょうが、実際は多くのケースでセキュリティ性が向上します。
というのも、信頼性の高いクラウドプラットフォームは論理的・物理的なセキュリティを強化しており、非常に堅固なものです。一般的な企業が同等のセキュリティ対策を講じるとなるとコストや労力は計り知れないものになることを考慮すると非常にリーズナブルに強固なセキュリティを手に入れることが可能と言えるでしょう。
また、データがインターネット上で管理されることで、大地震でオフィスが被災した際もデータは安全な場所に保管されています。BCP(事業継続計画)として速やかにリモートワークへと切り替えることも可能なので、セキュリティ面のみならず可用性も向上します。
メリット3. 物理的な運用/メンテナンスの負担削減
基幹系システムや開発環境等をクラウド化すると、情報システム部門は物理的な運用/メンテナンスの負担から解放されます。クラウドプラットフォームでは、サーバーの物理メンテナンスなどをすべてベンダーが実施しています。ユーザーは運用/メンテナンスに関わる工数を大幅に削減できるのです。これにより運用/メンテナンスにかかる人件費と、情報システムの業務負担を低減できます。余ったリソースやコストは新しいテクノロジーへの対応や企画などに投資したりと、「攻めのIT投資」が行えるようになるのも大きなメリットです。
メリット4. ビジネス変化への対応力向上
企業を取り巻くビジネス環境は刻一刻と変化します。新しいテクノロジーの登場や顧客ニーズの変化、そうしたさまざまな変化へ対応するためには、柔軟性の高いシステム環境や開発環境を構築する必要があります。
クラウドプラットフォームは柔軟性の高いリソースコントロールが魅力の1つです。ユーザー企業はビジネス環境などの変化に応じて、基幹系システムに割くリソースを柔軟に変更したり、常に進化するテクノロジーを採り入れながらのアプリケーション利用が容易になります。
ビジネス変化への対応力が向上することで、競争優位な環境を整えることが可能になるのです。
メリット5. 新しいワークスタイルの導入
最近ではリモートワークなど新しいワークスタイルの導入がトレンドになっています。そのためにはクラウドは必須要素と言えるでしょう。新しいワークスタイルを取り入れることで利便性の高いシステムを実践することが可能となるため、優秀な人材確保や生産性の向上、コスト削減などに貢献します。
クラウド化の流れ
以上のように、クラウド化には非常に多くのメリットがあります。各メリットを最大限に高めながらクラウド化を目指すことで、既存のシステム環境よりも柔軟性が高く、多くの付加価値を生み出せる環境へと変貌できるでしょう。では、クラウド化を進めるにはどういった流れに沿っていけばよいのでしょうか?
ステップ1. クラウド化する理由や目的、具体的な目標の明確化
一口にクラウド化といっても、企業によってさまざまな理由や目的があります。「クラウド化がトレンドだから」といった理由ではなく、自社ならではの理由や目的をしっかりと明確にしましょう。さらに、クラウド化によって達成したい目標(システムの維持・運用コストを20%削減、社員の満足度向上など)を具体性を持って決めていきます。
ステップ2. クラウド化の範囲を決める
先に決定した目標から、クラウド化すべき範囲を決めます。基幹システム全体をクラウド化するケースもあれば、重要なシステムはオンプレミスのまま残して情報系システムだけをクラウド化するケースもあります。企業が目指す目標や、既存業務とシステムの依存性などによってクラウド化すべき範囲は異なるので、慎重に見極めましょう。
ステップ3. クラウド化すべきデータを決める
システムをクラウド化するということは、それに伴ってデータも移行することになります。しかし、セキュリティポリシーによっては重要データを社外に持ち出せない可能性があります。セキュリティポリシーを改めて見直し、必要に応じてポリシー改訂を加えながら移行するデータについて検討しましょう。
ステップ4. 一部でのクラウド化をスタートする
まずはスモールスタートということで、一部でのクラウド化をスタートさせます。その中で効果検証を実施して、どのようにクラウド化を拡大していくのが効率的かつ効果的なのか?という情報を整理します。
ステップ5. クラウド化後の効果検証/改善を継続的に実施する
スモールスタートに始まりクラウド化を全社的に拡大したら、継続的に効果検証/改善を繰り返します。PDCAサイクルを回し続けることで、より良いクラウド環境の構築を目指しましょう。
いかがでしょうか?クラウド化に興味がある方は、ぜひより深くクラウドの魅力や移行の流れについて知っていただければと思います。