企業のIT担当者や経営者にとって、クラウドアプリとは何なのか気になるところでしょう。ここでは、クラウドアプリケーションとはどのようなものか、企業においてどのように活用されているのか、Webアプリケーションとはどう違うのか、などについて解説します。クラウドアプリケーションは大企業の業務効率化のための重要なツールとして活用されているので、有名なサービスは確実に把握しておきましょう。
クラウドアプリケーションとは
クラウドアプリケーションとは、オンラインで使用するアプリケーションのことです。具体的には、Evernote、Dropbox、Zoomなどがあります。また、クラウドアプリケーションと同じようなアプリケーションとして、Webアプリケーションがあります。
クラウドアプリケーションは基本的な機能がオンラインサーバー上にあり、なおかつデータもオンラインサーバー上に保存されます。そのためオンライン環境での使用が大前提になっていますが、一部の機能はオフライン環境でも使用が可能、という点が大きな特徴です。
Webアプリケーションとの違い
Webアプリケーションとクラウドアプリケーションは、オンライン環境で使用するという点では共通しています。どちらもオンライン上にあるサーバーに機能、データが存在し、個々の端末からネットを介してサーバーにアクセスすることでアプリケーションを利用します。
そして、クラウドアプリケーションは一部の機能をオフライン環境でも使用できるという特徴があります。しかしWebアプリケーションも、クラウドアプリケーションと同じように一部の機能をオフライン環境で使用することができます。
それでは、クラウドアプリケーションとWebアプリケーションでは何が異なるのでしょうか。それは、WebアプリケーションはWebブラウザを介してアプリケーションを使用するというところにあります。
Webブラウザとは、例えばGoogle Chrome、Internet Explorer、Microsoft Edge、Firefoxのように、インターネットにアクセスするためのツールのことを指します。このツールを使って利用するアプリケーションがWebアプリケーションです。
Webブラウザはインターネットにアクセスするためのツールなので、Webアプリケーションもオンラインが前提になっているということです。しかしオフライン環境でも、Webアプリケーションの一部の機能は使用可能なので、結果的にWebアプリケーションもオフライン環境で一部使用できることになります。
クラウドアプリケーションはWebブラウザを介して使用するアプリケーションではなく、クラウドアプリケーション用のプログラムがそれぞれ存在します。多くの場合、クラウドアプリケーションを操作するためのプログラムを個々の端末にインストールして、そこからオンライン環境にアクセスする形で使用します。
クラウドアプリケーションが普及した背景
クラウドアプリケーションが普及した背景には、以下が挙げられます。
- システム構築の主流がオンプレミスからクラウドへと移行している
- SaaS系サービスの増加
まず、システム構築の主流がオンプレミスからクラウドへと移行しているため、クラウドアプリケーションが普及したと考えられます。
オンプレミスとは、すべての機能を個々の端末にインストールして利用するアプリケーションのことです。クラウドアプリケーションもアプリケーションを使用するためのプログラムを個々の端末にインストールすると説明しました。しかしクラウドアプリケーションの場合は、「多くの機能・データ自体が、オンラインサーバー上にある」という点で大きな違いがあります。
つまりクラウドアプリケーションは、オンプレミスのように「機能のすべて」を個々の端末にインストールしなくてよいのです。そのため自社内で大きな容量を用意する必要がなく、バージョンアップも簡単に済みます。こうしたメリットにより、現在はクラウドアプリケーションの普及が進んでいるのです。
また、SaaS系サービスの増加もクラウドアプリケーションの普及を後押ししています。SaaSとは、「Software as a Service」の略で、パッケージ製品として提供されていたソフトウェアを、インターネット経由でサービスとして提供・利用する形態のことを指します。このように、オンプレミスをクラウド化する動きが加速したことも、クラウドアプリケーション普及の大きな要因でしょう。
クラウドアプリケーション開発が企業にもたらすメリット
クラウドアプリケーション開発が企業にもたらすメリットとして、以下が挙げられます。
- コストの削減につながる
- 開発期間が短縮できる
- 社内での開発環境整備が不要になる
- 実務的な機能が仮想環境上に搭載されている
- 状況に応じて柔軟にスケールできる
それぞれについて解説していきます。
コストの削減につながる
オンプレミスのアプリケーションはすべての機能を個々の端末にインストールしなければならないので、その分コストがかかります。クラウドアプリケーションは一部の機能を端末にインストールするだけで、あとの機能はオンラインサーバー上に存在します。
そのため初期費用が安く済み、毎月クラウドサービスに料金を支払うような形で対応できます。初期費用が安く済むのはもちろん、結果的に管理、維持費もクラウドアプリケーションの方が安く済むケースが多いと言えます。
開発期間が短縮できる
オンプレミスのサービスは、ゼロから設計して使用するので開発に時間がかかります。一方でクラウドアプリケーションの場合は、オンライン上に既にあるサービスを利用すればよいので、サービスを利用するまでの期間が短く済みます。
社内での開発環境整備が不要になる
オンプレミスの場合は、開発環境の整備も含めてすべて社内で行う、もしくは外注化して行う必要があります。一方で、クラウドアプリケーションならそもそも開発が不要、もしくは開発を行う場合もその環境がオンライン上に存在します。環境構築の手間もないということです。
実務的な機能が仮想環境上に搭載されている
クラウドアプリケーションの利用に必要な機能は、仮想環境上に搭載されています。仮想環境とは、オンライン上にあるサーバーの上に、あたかも端末が存在するかのように機能する環境のことです。
平たくいえば、オンラインサーバー上に機能があって、個々の端末からそこにアクセスすることで機能を利用するというイメージです。
状況に応じて柔軟にスケールできる
オンプレミスの場合、例えばアプリケーションの機能を拡大するためには物理的なハードウェアの容量が必要になります。一方で、クラウドアプリケーションの場合はオンライン上でアプリケーションを拡大するので、物理的な環境もクラウドで完結します。
サービス提供しているサーバーは大容量なので、物理的な容量を気にする必要がありません。
クラウドアプリケーションを開発するには?
クラウドアプリケーションを開発するには開発環境が必要で、以下3つが3大クラウドと呼ばれています。
- Amazon Web Services
- Microsoft Azure
- Google Cloud Platform
それぞれどのようなツールなのか紹介します。
AWS(Amazon Web Services)
AWS(Amazon Web Services)はAmazon.com社が提供するクラウドサービスで、世界でもっとも広く採用されているクラウドプラットフォームです。EC2・Lambda・S3など大きく分けて90以上のサービスが提供されています。従量課金制という特徴もあり、料金がわかりやすいこともあって、最初のクラウドアプリケーション開発環境として導入する企業が多いです。
GCP(Google Cloud Platform)
GCP(Google Cloud Platform)はGoogle社が提供するクラウドサービスで、Googleが独自に開発したネットワーク機器を利用しており、ネットワークのスピードが速いのが特徴です。代表的なサービスとして、BigQuery、Google App Engine、Cloud Machine Learning Engineなどがあります。
BigQueryはビッグデータを解析するプラットフォームで、データ解析に活用できます。Google App Engineは、Googleのインフラ上でウェブアプリケーションの作成、実行、管理等が行えます。
また、Cloud Machine Learning Engineでは、機械学習モデルを簡単に構築できます。GCP(Google Cloud Platform)も従量課金制で、料金体系がわかりやすいと言えます。
Microsoft Azure
Microsoft AzureはMicrosoftサービスとの連携が豊富です。具体的な機能としては、Azure DevOps、Azure Functions、Azure Storage、Azure Virtual Machinesが挙げられます。
概要としては、Azure DevOpsは開発(Dev)と運用(Ops)を組み合わせたサービスです。サービスの開発からリリースまで、ソフトウェア開発を支援するものです。
Azure Functionsは、サーバーの構築なしでプログラムを実行できるサービスで、Azure Storageは、Azure用のストレージサービスです。またAzure Virtual Machinesは、仮想マシンを提供するサービスです。
Microsoft AzureではほかにもAIやブロックチェーン、IoTなどに関する多数のクラウドサービスを提供しています。
クラウドアプリケーションの活用事例
クラウドアプリケーションの活用事例として、富士フイルム「IMAGE WORKS」、東京証券取引所「CONNEQTOR」、Francfranc(フランフラン)データ分析が挙げられます。それぞれ紹介していきます。
富士フイルム「IMAGE WORKS」
富士フイルム「IMAGE WORKS」は、画像や動画などのデジタル資産管理に強みを持つ、クラウド型のファイル管理・共有サービスです。利用者の要望にスピード感を持って適応できていないことが課題と捉え、オンプレミスからクラウドへ移行しました。
東京証券取引所「CONNEQTOR」
東京証券取引所「CONNEQTOR」は、安価で素早いETF(上場投資信託)取引を可能にするプラットフォームです。Microsoftや富士通など4社が参画し、8ヶ月で試験運用を開始しました。
Francfranc(フランフラン)データ分析
Francfranc(フランフラン)データ分析は、日本Microsoftの特別支援サービス「Data Hack」を活用し、データ集約やデータ整理、データ加工、クラスタリングといった一連のデータ分析を推進しています。
ヤマトホールディングス「クロネコ・ビッグデータ基盤」
ヤマトホールディングス「クロネコ・ビッグデータ基盤」は、国内最大規模の配送データを活用した、既存ビジネスの効率化、および新しいデータビジネスを創出しました。また運用管理の負荷軽減や顧客需要に応じたクラウド資源の拡張、MLOps(機械学習開発運用)による現場業務の予測精度向上を実現しています。
まとめ
クラウドアプリケーションは、オンラインサーバー上に機能、データがあるアプリケーションです。Webアプリケーションもクラウドアプリケーションと類似するのですが、Webブラウザを媒体とするという違いがあります。
クラウドアプリケーションは無数にあり、代表的なものは有名企業で業務に活用されていて、業務効率化に大きく貢献しています。