自社にクラウドを導入したいと考えるIT部門の担当者は多いでしょう。クラウドの導入では、フレームワークの有無が成功確率を左右します。
本記事では、クラウド導入におすすめのマイクロソフトが提供するフレームワークであるCloud Adoption Frameworkの概要やメリット、注意点について詳しく説明していきます。
Cloud Adoption Frameworkはなぜ注目されている?
Cloud Adoption Frameworkとはクラウド導入による組織への影響をわかりやすくし、導入をサポートする枠組みのことです。多くの組織にあてはまる、計画や準備などの段階分けをし、クラウド導入をよりスムーズにします。
Cloud Adoption Frameworkを利用することで、クラウド導入がもたらす影響を早期に測定することができます。Cloud Adoption Frameworkの活用によって組織の現状と目標のギャップを確認しやすくなるため、クラウド導入全体の意思決定における指針になります。測定がスムーズになれば、技術者をはじめとする社員の負担も減るでしょう。
以上の理由から、近年Cloud Adoption Frameworkは注目されているのです。
Cloud Adoption Frameworkを導入する手順
Cloud Adoption Frameworkを導入する手順は、一般的に以下の4段階に分けられます。
- 計画
- 準備
- クラウド移行の実施
- ガバナンスと管理の形成
Cloud Adoption Frameworkを導入するにあたっては、各段階ですべきことを明確に整理しておくことが重要です。ここでは、それぞれの段階について詳しく解説します。
① 計画
クラウド導入においては、まず適切な計画が非常に重要になります。
クラウドでビジネスを推進するには、企業が置かれた状況を正しく把握することが重要であり、その上でクラウド導入にあたっての優先順位付けを行います。すでに導入している企業内のデジタル資産を把握・整理し、効率的な準備に活かすのです。
クラウド導入における計画の段階では、以下の2つの主要アクションに集中することが重要です。
デジタル資産を合理化する
現在所有している組織内のデジタル資産を把握・整理して各資産を評価し、それぞれの資産をクラウドに移行する方法や、最新技術を導入する方法を決定します。
クラウド導入計画を作成する
クラウド導入後の目標に向けて、特定のクラウド機能とビジネス戦略を記録し、クラウド導入計画のベースとします。
② 準備
クラウド導入の計画作成が完了したら、次は準備に移ります。
準備段階においては、以下の2つに注力することが重要です。
スキルとサポートの準備を定義する
技術担当者とビジネス担当者がクラウド導入による変更点を把握し、新テクノロジーに対する準備を行います。また、必要なサポートを定義する必要もあります。
環境の準備ができていることを確認
クラウド移行を開始して各アプリケーションを利用できるようにする前に、環境の準備ができているか確認します。この段階で完全に機能する環境を準備しておくことが、Cloud Adoption Frameworkにおける重要なポイントです。
③ クラウド移行の実施
計画・準備が完了したら、いよいよクラウド移行を実施します。
クラウド移行とはインフラストラクチャ、アプリ、データなどの資産をクラウドサーバに移し、動作を確認するまでの一連のプロセスです。クラウド移行を完了することで、ユーザーをクラウドソリューションに移行することができるようになります。クラウド移行を実施する上では、現状(as is)と望ましい結果(to be)の2領域に分け、移行に向けたTO DOリストを作成することが重要です。事業成果や変更管理の要件など、これまでの段階で定義された要素を現状と望ましい結果の2領域に分けて整理し、最適なクラウド移行を実施します。
④ ガバナンスと管理の形成
Cloud Adoption Frameworkにおける最終段階が、ガバナンスと管理の形成フェーズです。
クラウドガバナンスは反復プロセスであり、企業内におけるクラウドガバナンスのガイドラインは、そのクラウド資産の変化に応じて変えていく必要があります。
ガバナンスを整えるためには、以下のプロセスを踏むことをおすすめします。
方法論
Cloud Adoption Frameworkでガバナンスを行う基本的な方法を理解する。
ベンチマーク
現状(as is)と望ましい結果(to be)の状態を評価する。
ガバナンスを始めるための基礎
簡便なガバナンスツールセットを用いて、ガバナンスの基礎を構築する。
初期のガバナンス
クラウド導入の最終段階へと進み、ガバナンスコントロールを繰り返して実際のリスクに対処する。
企業がCloud Adoption Frameworkを採用するメリット
企業がCloud Adoption Frameworkを採用すると様々なメリットが期待できます。メリットは、大きく分けて以下の2つに分類できます。
- 適切な段階分けによってスムーズなクラウド移行が実現する
- 社内の技術担当者の負担が削減する
Cloud Adoption Frameworkによってクラウド移行がスムーズになり、社内技術者の負担が減ることで社内リソースを有効利用できるようになります。
ここからは、それぞれのメリットについて説明します。
適切なステップ分けによるスムーズなクラウド移行が実現する
Cloud Adoption Frameworkを利用することで、ほとんどの組織にあてはまる主要な段階分けができます。クラウド移行のプロセスを細分化することで各担当者が理解しやすくなり、スムーズなクラウド導入を実現できます。
多くの組織ではクラウド移行において「戦略」「計画」「準備」「導入」「ガバナンス」「管理」といった6つの要素があり、それぞれの段階ですべきことを明確に整理することで、シンプルにクラウド移行ができます。
実際にクラウド導入を実行する上では、各段階において前進と見直しを繰り返す、反復的かつ周期的なプロセスをたどります。
社内の技術者の負担が軽減する
Cloud Adoption Frameworkの利用は、社内の技術者(特にクラウドアーキテクト)の負担軽減につながります。クラウド導入においては、コア業務の指導者やビジネス面での意思決定者、IT分野における意思決定者などが存在し、それぞれが異なったボキャブラリを使用します。彼らとのやり取りを円滑に行うためには、単一のコンテンツセットでは不十分です。
Cloud Adoption Frameworkを利用すれば、クラウドアーキテクト・指導者・意思決定者のコミュニケーションが円滑になり、意思決定に寄与します。クラウド導入において、進行役を担うクラウドアーキテクトの役割は非常に重要です。また、Cloud Adoption Frameworkを使用してプロセスを細分化することで、クラウドアーキテクトの責任を分散させることもできます。
Cloud Adoption Frameworkを導入する際の注意点
Cloud Adoption Frameworkを導入する際、計画・準備・導入のプロセスは一度行って終わりではなく、何度も再考するべきプロセスであることに留意すべきです。クラウド導入は最終目標ではなく、その後ビジネスの様々な局面で起こるリスクに対処するために、各フェーズを反復する必要があります。
また、Cloud Adoption Framework導入における計画フェーズの中心は、以下3点であることを意識すべきです。
- ビジネスの優先度に合わせてテクノロジー関連の意思決定を調整すること
- クラウド移行による事業成果を明確にすること
- 適切なクラウド合理化手法を定めること
クラウド移行はあくまでもビジネスを効率化する手段であり、その意思決定にあたってはビジネスの状況を鑑みて優先順位を決める必要があります。Cloud Adoption Frameworkの導入よる事業成果を明確にし、合理的なプロセスでクラウド導入を進めていきましょう。
まとめ
クラウド移行の手段として、Cloud Adoption Frameworkが注目を浴びています。Cloud Adoption Frameworkの導入にあたっては、大半の組織にあてはまる段階分けを行い、各段階ですべきことを明確に整理しておくことが重要です。
Cloud Adoption Frameworkによってクラウド移行がスムーズになり、社内技術者の負担軽減が期待できます。ただし、クラウド導入の各段階は反復的プロセスであることを念頭に置き、計画フェーズにおいてはビジネスの優先度に合わせた計画作りが必要になることに留意してください。