ビジネスチーム、開発チーム、運用チームのコミュニケーションで悩む社内担当者は数多くいます。近年よく使われる言葉にBizOpsやDevOpsがありますが、どちらがどのような意味で使われ、どのように役立つのか理解しづらいかもしれません。
本記事では、BizOpsとDevOpsの概要やそれぞれの違い、BizDevOpsとのつながりについて詳しく解説します。
BizOpsとは
BizOpsとは、ビジネスサイド(Biz)とオペレーションサイド(Ops)の2部署間の障壁を取り除き、双方がビジネスに積極的に関与する方法論のことです。ビジネスと運用の2部署が協力し合うことで、顧客のカスタマージャーニーに関わるそれぞれのチームのプロセスを協調させることが期待できます。
ビジネスサイドとオペレーションサイドがサイロ化し、十分なコミュニケーションが取れなくなると、ビジネスの最適化は叶いません。BizOpsによってビジネスサイドと運用サイドの交流が進めば、様々なビジネスの優先順位付けやその後の開発・運用を迅速かつ効率的に行えます。
BizOpsのメリット
BizOpsの概念を導入するメリットは、各部署間でデータを共有し、定量的・定性的な視点からデータ分析ができることです。運用部門とビジネス部門が持つデータをまとめ上げ、ビジネスの持続的・拡張的・戦略的な進展を助けます。
データを共有する中で発見したことを、オペレーション改善のための意思決定に役立てることもできます。BizOpsの導入によって各部署間のプロセス調整が行われ、ビジネスに高い戦略性や柔軟性が備わっていくのです。
BizOpsによって、プロジェクトの構想から実装に至るまでの全体を見て意思決定をすることができるようになります。特にビジネス上の新しい課題に挑む上では、ビジネスサイドとオペレーションサイドが協力し、早期に開発から製品リリースまでのサイクルを回していくことが望ましいです。
DevOpsとは
DevOpsに明確な定義はありませんが、簡単に言えば開発チームと運用チームが協力することでビジネスの価値を高める概念のことです。
ここではDevOpsに関して以下の3つの観点で整理し、解説します。
- DevOpsの生い立ち
- DevOpsの主な方法論
- DevOpsのメリット
DevOpsは開発サイクルを短縮する流れの中で生まれた概念であり、理解するためにはその流れを知る必要があります。
DevOpsの生い立ち
開発に関する概念は、以下のような流れで変遷してきました。
1.一般的開発
要件定義→設計→開発→テストのサイクルで、リリースまでに1~2年程度かかります。
2.アジャイル開発
一般的開発の開発サイクルをより短くし、リリースまでの期間を半年程度に短縮しました。開発したモジュールを早期に確認でき、仕様変更にも対応しやすくなっています。
3.継続的デリバリー
開発プロセスの後にテストをする必要があるアジャイル開発の問題点を解消すべく、開発とテストを並行して行うようにしたのが継続デリバリーです。ただし、製品がインフラに渡った後の対応にかかる時間は、上手く短縮することができませんでした。
4.DevOps
DevOpsはこれまでの流れの中で解決できていない問題を解消するため、オライリー主催の「Velocity2009」で登場した概念です。
DevOpsの主な方法論
DevOpsには、主に以下の3つの方法論があります。
スクラム
アジャイルの一種であり、協力するチームのメンバー数を定義して開発プロジェクトを高速化する手法です。作業を管理可能なタスクに分解することで、急な要件変更にも柔軟に対応できます。
カンバン
トヨタの製造現場で効率を上げるために用いられた手法です。ソフトウェアプロジェクトの仕掛品の状態をボードで追跡します。
アジャイル
「俊敏」という意味を持つアジャイルは、21世紀に入って浸透し始めた手法です。システムの要件定義で決められた機能ごとに開発サイクルである「イテレーション」を設け、その中で開発とテストを繰り返します。
DevOpsのメリット
DevOpsを採用すると、様々なメリットを得られます。具体的には以下のようなメリットを期待できます。
生産性が上がる
DevOpsによって様々な作業の生産性を大幅に向上させることができます。
サービスをリリースするまでの期間を短縮できれば、ユーザーの声を早く収集できるため、システムの不備や改善点に気付きやすくなります。それによって修正や開発における無駄を省くことができるという好循環が生まれます。
開発のスピード感が増す
DevOpsの採用によって開発チームと運用チームが連携することで、新たな開発や変更を行う際もスムーズに進めることができます。
システムの信頼性が高まる
DevOpsの採用によって連携ツールなどによる作業の自動化を進めることで、ヒューマンエラーを防止できます。
BizDevOpsを阻む組織の壁
ここまでBizOpsとDevOpsについて概要を解説してきましたが、それぞれの要素を組み合わせたものとして「BizDevOps」と呼ばれる概念があります。
ここからはBizDevOpsの概要や実現するにはどうすればよいのか解説していきます。
BizDevOpsとは
BizDevOpsとは、DevOpsをベースにしてBizOpsの要素を取り入れた概念です。
企画・営業部門(Biz)と開発部門(Dev)と運用部門(Ops)が協調し合い,変化に適応した強いサービスを生み出す手法です。
DevOpsの採用によって開発部門と運用部門との連携は強まりましたが、ビジネスを速く回すにはそれだけでは不十分であり、ビジネス部門との連携も不可欠です。
BizDevOpsでは、顧客と直接関わるビジネスチームが顧客の声から得られたニーズを開発チームに伝え、開発チームが実装し、運用チームがシステム稼働を保証します。
顧客のニーズに直結した開発が進められるため無駄を省くことができ、頻繁に要求変更が行われる開発などにも十分対応できます。
BizDevOpsの実現には組織改革が必要
BizDevOpsを実現するためには従来の組織では難しく、組織のあり方自体を見直す必要があります。ビジネスにかかる時間が大幅に短縮され、劇的な変化が起きやすい現代のビジネスに対応していくためには、新しい製品やサービスのリードタイムを短縮することが重要です。
そしてBizDevOpsが目指すスピード感とクオリティの実現には、ビジネスとテクノロジーの両方に知見・スキルを持つ人材を組織横断的に配置することが求められるのです。
局所的にではなく全体的にビジネス部門と技術部門の融合するための人材配置・組織構造を実現しなければ、今後ビジネスを育てて戦っていくことは難しいでしょう。
まとめ
BizDevOpsは、開発チームと運用チームが協調するDevOpsをベースにして、ビジネスサイドとオペレーションサイドの障壁を取り除くBizOpsを取り入れた概念です。つまり、ビジネス部門(Biz)と開発部門(Dev)、運用部門(Ops)が協調し合い,変化に適応できる骨太なサービスを生み出す手法と言えます。BizDevOpsを実現するために組織のあり方自体を見直し、自社環境に活用してみてはいかがでしょうか。