「Azure NetApp Files(ANF)」は、マイクロソフト社が提供するクラウドサービスのひとつです。ANFはストレージサービスであり、新型コロナウイルスの波紋が広がる近年、テレワークやリモートワークにおける活躍が話題となっています。そこで本記事では、ANFの概要やメリット、費用について解説します。
Azure NetApp Files(ANF)とは
「Azure NetApp Files(以下ANF)」とは、マイクロソフト社が手掛けるクラウドサービスのひとつ、「Microsoft Azure」の中で提供されるストレージサービスのことです。名前にある「NetApp」とは、世界中で提供されている大手ストレージベンダーです。
NetAppのサービスでは、「ONTAP」というストレージ用OSをベースとしており、ANFもまたONTAPを使用しています。これにより、オンプレミス用であるNetAppとの互換性が向上し、クラウドサービスながらオンプレミスと遜色ない性能を実現できます。
ANFはサーバーの構築から運用、トラブル・セキュリティ監視に至るまで、あらゆる機能を一括して担うフルマネージドストレージサービスとして機能しています。
Azure NetApp Files(ANF)の特長
サーバー構築から監視まで一貫して行えるANFですが、このほかにもさまざまな特長があります。
まずプロトコルに関する内容です。ANFでは複数のプロトコルを同時にサポートできるため、LinuxとWindowsそれぞれのアプリケーションを移行し、Azureで実行することが可能です。
次に、パフォーマンスレベルの設定においても特長があります。ANFでは、状況に応じたパフォーマンスレベルを設定できるため、あらゆる作業量に対応させることが可能です。
さらに、ANFはAzureと統合することにより、学習機能なしでストレージでのデータ作成や管理・保護が行えます。そのため、シームレスでセキュアなAzureエクスペリエンスを実現できます。
そのほか認証も充実しており、「SAP HANA」「GDPR」「HIPAA」「FedRAMP」などの認定によって、Azureへの移行を支援しているのも特長です。
Azure NetApp Files(ANF)のメリット
複数プロトコルの同時サポートやパフォーマンスレベルの設定など、さまざまな特長をもつANFですが、これを導入することで具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。以下では、ANFの主なメリットである「ハイパフォーマンス」「ストレージ管理の簡素化」「確実な移行」の3点について詳しく見ていきましょう。
ハイパフォーマンス
ANFでは業界トップレベルのNetAppの高性能テクノロジーを活用しているため、高いパフォーマンスが期待できます。
ANFであれば、Azureの中でも特に要求の厳しいLinuxや、Windowsのファイルワークロードを移行して実行できるでしょう。また「HPC」「SAP S/4 HANA」「LOBアプリケーション」「AVS」「AVD」「VDI環境」など、ありとあらゆる作業に対し、短い待機時間での統合データ管理も可能です。
近年では新型コロナウイルスの影響により、多くの企業でテレワークやリモートワークが普及しています。こうした新しい働き方が中心となりつつある中、ANFのハイパフォーマンスはオフィスワーカーたちの業務環境改善に大きく貢献します。VDI環境では十分でなかった環境を改善できる点で、ANFには大きなメリットがあるといえるでしょう。
ストレージ管理の簡素化
ANFを導入することにより、ストレージ管理が簡素化されます。多くのユーザーが普段使っている「Azureポータルエクスペリエンス」「CLI」「PowerShell」「REST API」などを使用することで、数分で設定が完了し、管理することが可能です。
また「NFSv3」「NFSv 4.1」「SMB 3.1.x」などのように、ひとつのサービスで複数のファイルストレージプロトコルがサポートされているため、アプリケーションとそれに関連するデータを、コードを変更することなく簡単に移動できます。
さらにANFでは、「Standard」「Premium」「Ultra」の3つのパフォーマンスレベルが用意されているため、自社に合わせた柔軟な運用が可能です。
確実な移行
ANFを活用することで、クラウド移行がより確実なものとなります。
一般的なパフォーマンスに依存したファイルワークロードの場合、待機時間が長期化するケースが多く、クラウドで実行することが難しい傾向にあります。その点ANFであれば、コードを変更することなくアプリケーションや関連データを移行できるため、従来型よりも確実かつ容易に移行できるのです。
また、保存する際のFIPS 140-2準拠のデータ暗号化や、ロールベースのアクセス制御(RBAC)、Active Directory認証などにより、高レベルなセキュリティを確保しつつ移行できる点もメリットといえるでしょう。
さらにANFは、「HIPPA」や「GDPR」など業界トップクラスの認定に準拠しているため、99.99%の可用性が提供されます。このため、企業アプリケーションを確実に移行し実行することが可能です。
Azure NetApp Files(ANF)の価格表
先にも少し触れましたが、ANFには「Standard」「Premium」「Ultra」という3つのプランがあります。最後に、それぞれのプランの価格と主な用途についてご紹介します。
- Standard
価格:¥19.78592/GiB/月
用途:主にWebコンテンツやファイル共有などに適しています。 - Premium
価格:¥39.49008/GiB/月
用途:データベースやエンタープライズアプリケーション、分析などに適しています。 - Ultra
価格:¥52.7352/GiB/月
用途:高いパフォーマンスを求められるアプリやコンピューティングが主となります。
なお、上記は東日本リージョンにおける価格です。地域によって価格が異なりますので、詳しくはMicrosoft Azureの公式HPにてご確認ください。また、請求やサブスクリプション管理サポートは無償で提供されますが、そのほかのサポートを受けたい場合は別途費用が必要です。
まとめ
ANFはハイパフォーマンスを期待できるほか、ストレージ管理の簡素化や移行の支援など、さまざまなメリットをもちます。価格設定が明確な点も、導入しやすい理由のひとつです。しかし、十分な知識を得てから導入しなければ、望む効果が得られる可能性が低くなってしまうでしょう。ANFへの理解を深め、十分な体制を整えてから導入することをおすすめします。