クラウド移行(インフラ・DB)

Azure Kinect DKとは?いまモーションキャプチャの技術が必要とされる理由

Kinect(キネクト)はMicrosoftのデバイスです。「Kinetics(動力学)」+「Connection(接続)」の組み合わせからネーミングされました。Kinectを使うと、身体の動きや音声によってPCを操作し、センサーから人間の動きや音声のデータなどを収集できます。

2010年にKinectはXbox用の周辺機器として登場しました。その後、2012年にはWindowsのPCに接続が可能となり、現在はHoloLens 2とともにビジネスや医療の現場で使われています。

Azure Kinect DKは、Kinectから送信されたデータをAzureのクラウド上で解析し、さまざまなソリューションに利用するための開発キットです。ここではAzure Kinect DKについて、開発キットの概要、活用事例について取り上げます。

Azure Kinect DKとは?いまモーションキャプチャの技術が必要とされる理由

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Azure Kinect DKの概要

2020年5月、Windows Mixed Realityに関する研究開発型の企業である株式会社ホロラボと、「働く」をデザインする株式会社イトーキは、HoloLens 2とAzure Kinect DKによる遠隔3Dコミュニケーションシステム「HOLO-COMMUNICATION」をリリースしました。リモートワークなどでビデオ会議をする機会が増えましたが、近い未来には複合現実の立体画像で打ち合わせするようになるかもしれません。

Azure Kinect DKの「DK」はJDKなどでよく知られているように「Development Kit」の略です。開発に必要なプログラムやドキュメントをパッケージにして、配布や販売をします。Azure Kinect DKは有料で提供されています。

Azure Kinect DKのKinectは、現在、Xbox360でゲームをするための製品ではないことに注意が必要です。消費者向けではなく開発者向けのツールになります。

消費者向けのKinectは、2017年に製造中止になりました。しかし、Kinectで培われた技術は、ウェラブルデバイスであるHoloLens、音声対話型人工知能のCortana、Windows 10から搭載された指紋認証機能のWindows Helloなどに活用されています。

Kinect登場の背景を踏まえて、Azure Kinect DKが提供する開発環境、ハードウェアのスペックの概要を解説していきましょう。

Azure Kinect DKが登場した背景と技術の位置づけ

プレイヤーの動きからゲームを操作する3Dトラッキングの技術は、ゲームはもちろんAR(Augmented Reality:拡張現実)でCGを合成するために使われています。Kinectは、その先駆けとなったデバイスです。

Xbox用の周辺機器であるKinectは、2010年に発売されました。Wiiより先にコントローラーを不要とするコンセプトを実現するものでした。時代を先取りしたこのデバイスは医療などの領域においても使われるようになり、「The Kinect Effect」のムーブメントを生み出しました。

世界的には一定のシェアがあるXboxですが、任天堂やソニーのゲームマシンの勢力のため、日本ではあまり普及しませんでした。グローバルなゲーム市場でも、次第に他のゲームマシンによって淘汰されていきます。2020年の現在もXbox Oneとして存続していますが、熾烈なゲーム機器の競争によってコンシューマー向けのKinectは生産を終了します。

ところで、実はKinectの技術はイスラエルのPrimaSenseという企業で開発されました。PrimaSenseはAppleによって買収され、その技術は「Face ID」に使われました。

Kinectの技術はBtoCの領域ではiPhoneに引き継がれましたが、BtoBで切り拓いた3Dトラッキングや音声認識に需要がありました。そこで2017年のMobile World Congress(MWC)でMicrosoftはAzure Kinect DKを発表し、Kinectを復活させます。HoloLens 2のウェアラブルデバイスとともに、複合現実(MR)の業務領域に対するMicrosoftの意気込みを示しました。

このようにKinectは革新的なゲームの周辺機器から、ビジネスにおける3Dモーショントラッキングを活用したソリューションに推移した背景があります。

Azure Kinect DKの機能

Kinectは人物やモノを立体として認識する深度センサーに特長があり、センサーから得たデータをリアルタイムで分析することにより、さまざまなソリューションを実現します。

Azure Kinect SDKのパッケージに含まれるSensor SDK はオープンソースで提供され、GitHubから多様なツールを利用できます。センサーのハードウェアはコンパクトで、汎用性が高い仕様に設計されています。

クラウド上のAzure Cognitive Services、Azure Machine Learning、Azure IoT Edgeと組み合わせて、Kinect を核としたAIによる最先端の空間コンピューティングを構築することが可能です。

Azure Kinect DKが提供する開発環境

Azure Kinect DKのパッケージは、以下の開発環境の構成を提供します。

Azure Kinect Sensor SDK

ハードウェアセンサーの制御やデータを扱うためのSDKです。深度カメラへのアクセスおよびモード制御、RGBカメラへのアクセス制御、加速度計とジャイロスコープによるモーションセンサーへのアクセス、外部デバイスの同期制御、カメラフレームのメタデータやデバイス較正データへのアクセスのための機能を備えています。WindowsまたはLinuxのOSを搭載したPCで作動します。

Azure Kinect Body Tracking SDK

人間の身体を認識する3Dトラッキング関連のSDKで、Windowsライブラリおよびランタイムが含まれます。身体のセグメント化と各部位の認識、解剖学の観点から正しい骨格の認識、身体ごとのID、時間の経過にともなうトラッキングを提供します。WindowsまたはLinuxのOSを搭載したPCで作動します。NVIDIA GPUが必要です。

Speech Cognitive Services SDK

Azureに接続して音声サービスを有効にします。音声テキストの変換、音声の翻訳、テキストの読み上げを利用できます。

Azure Cognitive Vision Services

センサーで検知した画像や映像を特定して分析できるサービスを提供します。Computer Vision、顔画像の認識、ビデオインデクサー、コンテンツモデレーター、カスタムビジョンの機能があります。

Azure Kinect DKのハードウェア

AIセンサーをコンパクトにまとめ、従来のKinect for Windows v2の半分以下のサイズです。2種類の視野角(FOV:Field Of View)を持つ1メガピクセルの深度センサー、遠距離の音声をとらえる7つのマイクアレイ、12メガピクセルのRGBビデオカメラ、加速度計とジャイロスコープなどで構成されています。

本体仕様の概要は、以下の通りです。

大きさ:103 x 39 x 126 mm 重さ:440g

電力:最大5.9 W

※ユースケースによって異なります。付属の電源装置を使用(データはUSB Type-CからType-Aにケーブルで接続)もしくは電源とデータの両方にType-C からType-C ケーブルを使用して電源を供給。※Azure Kinect DKには、Type-Cケーブルは付属しません。

モーションセンサー:加速度計、ジャイロスコープ

マイク:7台を円形配列、USB 2.0 デバイスとして識別、感度は-22 dBFS (94 dB SPL1 kHz)、信号対雑音比65 dB未満

動作環境:温度10~25°C、湿度8 ~90%(相対湿度、結露がないこと)

システム要件: CPUは第7世代Intel Core i3プロセッサ(HD620 GPU 以上のDual Core 2.4 GHz)搭載、OSはWindows10(SモードのWindows10では使用不可)またはLinuxのUbuntu18.04 LTS、USB 3.0 ポートとRAM 4 GBが必要

※3Dボディトラッキングの用途などの場合、高度なPCスペックが求められる場合があります。 

Azure Kinect DKの価格

Microsoftストアでの販売価格は、47,025円(税込、2020年7月14日現在)です。学生と家族、教育機関向けには42,322円(税込)で提供されていますが、この割引は他と併用できません。いずれも返金対象外です。

大量の注文などに関しては、電話連絡で問い合わせることができます。Microsoftの公式サイトで確認するとよいでしょう。

Azure Kinect DKの導入事例

Microsoftの公式サイトに掲載されているコンテンツから、海外の医療とヘルスケアにおけるAzure Kinect DKの導入事例を2つ紹介します。

患者の転倒防止を見守るソリューション(Ocuvera)

ヘルスケアテクノロジー企業のOcuveraは、Azure Kinect DKを使って患者の転倒を予測して警告するソリューションを開発しました。Azure Kinect DK を選択した理由は、カメラ機能の信頼性が高いことでした。200,000時間を超える患者のビデオから機械学習のモデルを構築して学習させ、ベッドから起き上がって転倒するまでに看護師が病室に到着して安全にケアできるシステムを完成。患者のプライバシーを保護し、個人を特定できないような細心の注意を払っています。

モーションキャプチャで自宅のフィットネス体験を向上(Tempo)

フィットネス関連企業のTempoでは、Azure Kinect DKのモーションセンサーとAI機能を駆使して、自宅のリモート環境でジムの対面式レベルと同等のトレーニングを受けられるシステムを開発しました。ライブとオンデマンドクラスの会員をモーションキャプチャのカメラで監視し、的確な指示を送信します。

Azure Kinect DKを選択した理由は、深度センサーによる正確な情報、使いやすさなどの点で他のシステムよりも優れていたからです。Tempoが展開するサービスに付加価値を与えることができるようになりました。

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まとめ

ウィズコロナの時代、遠隔医療やリモートワークの分野でデジタルトランスフォーメーションが加速しつつあります。Azure Kinect DKは、リモート環境のソリューションを開発するツールとして、ますます需要が高まることでしょう。

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