アプリケーション開発基盤は、オープンシステムにおいて開発を行う際にプロジェクトを成功させ、高い品質のアプリケーションを構築するのに欠かせない存在です。
本記事では、アプリケーション開発基盤の基礎や、開発するために必要となるタスクについてお伝えします。
アプリケーション開発の基盤とは
アプリケーション開発の基盤とは、開発において手本となるフレームワークを組み合わせ、一斉開発をスムーズに進める「レール」のようなものです。近年では、アプリケーション開発領域が広がったことで、ユーザーにとってよりよい選択肢が取れるようになった反面、開発がより複雑になり、品質が低下し不具合が発生しやすくなっています。
アプリケーション開発の基盤を利用することで、工数を抑えつつ品質を保つことが可能です。そのため、アプリケーション開発の基盤は今や欠かせない存在となりました。
特に大規模な組織で一斉にプログラミングを行う場合には、アプリケーション開発基盤を設けることで大幅な品質向上が見込めるでしょう。詳細については、以下で詳しく説明します。
アプリ開発領域の変化
まず前提として、アプリケーション開発領域がどのように変化しているかをお伝えしましょう。近年、普及が急速に進んでいる「オープンシステム」と「従来型システム」との差を解説します。
①従来型システム
従来型システムは汎用系システムとも呼ばれ、ハードウェアからミドルウェアまでをベンダーが一括して提供している、昔から利用されてきたシステムのことです。ユーザーはアプリケーション領域のみを開発すればよいので、アプリケーション領域の知識のみを持っていれば開発できる手軽さがあります。
ただ、ミドルウェアまでがすべて決まっている分、柔軟性は低くコストも高いので、近年ではオープンシステムに置き換わってきているのが現状です。OSなどが統一されているため安定性やセキュリティ面に優れているので、金融系の基幹システムなどには今でも従来型システムが利用されています。
②オープンシステム
オープンシステムは、アプリケーション領域だけでなく、ハードウェアやOS、ミドルウェアなどのシステム基盤もユーザー側で自由に選択できるシステムのことです。
従来型システムと違って一般的なOSを利用できる分、システム構築にかかるコストが下がりやすいでしょう。使えるプログラム言語も幅広いので、対応できるエンジニアが多く、高品質なコードが手に入りやすいメリットもあります。ユーザーの業務環境に合わせたシステムを選択でき、簡単にアップデートや改善が行えることもあり、従来型システムからの代替が進んでいます。
ただし、その分セキュリティリスクが高くなり、システム改修に伴う運用コストも高くなりやすいデメリットもあるため、オープンシステムを開発する際はミドルウェアに関する知識も必要となるでしょう。
アプリ開発基盤構築までのタスク
ここでは、アプリケーション開発基盤を構築する方法について、5つのタスクに分けてお伝えします。アプリケーション基盤の開発を効率的に進めていくためには、これらのタスクを理解して整理しながら進めることが重要です。
①フレームワークの作成
まず始めに行うのは、フレームワークの作成です。
フレームワークとは「枠組み」や「構造」といった意味を持つ言葉で、プログラミングにおいてはアプリケーションを開発する際に必要な機能をあらかじめ詰め込んだプログラムのことを指します。
フレームワークはプログラミングを始める際に土台として使えるので、共通部分の開発が不要になり、誰でも高品質で統一感のあるプログラムを構築できます。また、プログラムの属人化を排除し、データベースの開発工数を削減できるのもメリットとして挙げられます。
なお、フレームワークはライブラリと混同しがちですが、両者はプログラマーが書くコードとの関係に大きな差があります。ライブラリは再利用可能なクラスを集めたもので、「ライブラリをどう使うか」という判断はプログラマーに委ねられます。
対してフレームワークは、それ自体がメインのプログラムとなるので、プログラマーはあくまでそのテンプレートに肉付けを行うのみです。そのためフレームワークを用いると、「アプリケーションの重要な部分をプログラマーが設計する必要がなくなる」というメリットを得られます。
②開発標準(実装ガイドライン)の作成
次に、実装ガイドラインの作成が必要になります。
実装ガイドラインは、プログラミングを行ううえでのルールや規約、画面の構成などを示した書類のことです。ルールが弱く自由度の高いプログラミング環境では、開発者による記述方法の差も顕著に表れることとなり、プログラミングの質がばらつきやすくなります。あらかじめ開発標準を定めておくことで、システム全体に統一感が生まれ、運用が容易になります。
加えて、フレームワークの使い方がわからないと毎回コードを確認する手間が生まれるので、プログラミングのルールやフレームワークの使い方などが書かれた実装ガイドラインも必要となるでしょう。
③品質に関するサンプルプログラムの設計
実装ガイドラインの次は、品質に関するサンプルプログラムを作ります。
アプリケーション開発基盤の使い方は、実装ガイドラインを見れば理論上は理解できますが、文章だけでは理解しづらいことも多いです。そのため、フレームワークを実際にどう使えばいいかの見本となるサンプルプログラムが必要となります。
サンプルプログラムはアプリケーションのひな型となるので、セキュリティなども含め、アプリケーションとして使える品質のプログラムにしておくことが重要です。
④セキュリティ要件の設定
アプリケーション開発の基盤が完成したら、セキュリティ要件を設定し、対策を行いましょう。主なセキュリティ対策の項目としては、負荷テスト、ウィルス排除、ハッキング対策が挙げられます。
セキュリティ対策においては全体を俯瞰でチェックすることが重要です。チェック漏れをなくしつつ、対策が不要な部分は可能な限り除いて、最適なセキュリティ対策を行うようにしましょう。
⑤開発環境の整備
セキュリティ対策が完了したら、実際にアプリケーション開発基盤を利用していくために、実装ガイドラインに基づいた開発環境の整備や構成管理を始めましょう。最適な開発環境の整備を行わないと、適切にフレームワークが利用できず、結果的に多大な工数を無駄にする可能性があるからです。
アプリケーション開発の工程でいうと、少なくとも基本設計段階で開発環境の整備を完了させましょう。
まとめ
今回は、アプリケーション開発基盤の基礎と、開発するために必要となるタスクについて解説しました。
アプリケーション開発基盤は、開発において手本となるフレームワークを組み合わせたもので、一斉開発において工数を削減し、品質を向上させるうえで欠かせない存在です。
ただ、アプリケーション開発基盤の構築は誰でもすぐに行えるものではないため、社内に経験者がいない場合は、経験豊富なコンサルタントのサポートを受けるようにしましょう。
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