新しい働き方としてテレワークに取り組む企業が増えています。自社でテレワークを導入する際には企業が準備することはいくつもあります。従業員が安全に働きやすい環境で業務に取り組めるためには何を準備すればよいのでしょうか。本記事では企業がテレワーク導入に際して準備すべきことをポイントごとに解説します。
企業がテレワーク環境を構築するのにしなければならない5つの整備
テレワークとは、自宅やカフェ、サテライトオフィスなど職場以外の場所で仕事をする働き方です。自社でテレワークを導入するためには、外部から接続できるネットワーク構築や安全なデバイスの貸与、新しい働き方に対応したルール作りなどが必要になります。本記事では、重要度が高い5つの項目について説明します。
インフラシステムの整備
まずは通信・ネットワークの整備を行います。安全な方法で外部環境から職場ネットワークに接続でき、かつ第三者に侵入されない、万が一データを盗聴されてもデータの中身は安全である環境構築が必要です。ネットワークの準備として、大きく分けると自社だけが使う専用の回線を契約する専用線と、仮想の専用線環境を用意するVPNがあります。専用線は安全性が高い一方で運用コストが高いというデメリットがあります。
VPNはインターネット回線を利用するためセキュリティリスクはゼロではないものの、トンネル化によって専用線に近い経路を用意できるため暗号化と組み合わせて多くの企業に利用されています。一般的にはVPN機能を持ったルーターやUTM(Unified Threat Management))といった機器を設定してVPN接続を行う方法や、専用のUSBキーを利用してVPN接続する方法があります。
セキュリティ対策の整備
情報漏えいや不正アクセスを防ぐためにセキュリティ対策についても事前の準備が必要です。利用するPCには事前に必ずウイルス対策ソフトをインストールするようにしたうえで、従業員にはパターンファイルや機能アップデートをきちんと更新するようにルール化します。
また安全性を高めるためには、パスワードを入力させた後に秘密の質問をする二段階認証や、パスワードを入力させた後にワンタイムのトークンを入力する多要素認証などを導入してセキュリティを強化するのも有効です。
デバイスの整備
テレワークで利用するデバイスを準備するにあたっては、ノートPCを貸与する場合と従業員の私用PCの業務利用を認める場合があります。私用PCの場合はデバイスの管理が難しく、また必要なセキュリティ対策が行われていないリスクもあるため、可能な限りノートPCを貸与したほうが安全です。また従業員が仕事をする環境によってはモバイルルーターやスマートフォンを貸し出す必要がある場合もあります。貸出台帳を用意して誰がどのデバイスをどのくらいの期間借りているのか、またPC等のスペックやインストールされているソフトウェア名などを記載するようにすると、利用状況やPCの状況が把握しやすくなります。
自社ですべてを用意するのが難しい場合には、テレワーク用途のレンタルサービスもあるので検討するのもよいでしょう。
コミュニケーションツールの整備
従業員同士のコミュニケーションを行うためのツール準備を行います。代表的なものがチャットツールとWeb会議ツールです。
チャットツールとは、テキストベースでリアルタイムにやりとりをするツールで、Chatwork、Slack、Messengerなどがよく知られています。メールが一方向のやりとりなのと比べ、リアルタイムで双方向のやりとりができるのが特徴です。業務用で利用するものはセキュリティ機能や管理機能を持ったもので、個人で利用しているチャットとは区別してビジネスチャットと呼びます。
Web会議ツールとはインターネット回線を使って画像や音声をやりとりし、遠隔で打ち合せや会話ができるシステムです。専用機器が不要でWebカメラとマイクが使える環境(PCやスマートフォン)があれば利用できるのが特徴です。Microsoft Teams、Skype、Google Meetなどを使用して行います。
チャットツールとWeb会議システムは全く異なるサービスではなく、SkypeやMicrosoft Teamsにはチャット機能がついていたり、ChatworkやSlackには動画でやりとりできる機能がついているなど、両方の機能を持ったサービスもあります。他にも掲示板やタスク管理など、ビジネス用途に特化した機能を一緒に提供しているものが多くあります。
これらのツールを導入することで、離れた場所で仕事をしている相手同士でも手軽にコミュニケーションが取れたり、情報共有がしやすくなったりというメリットが得られます。
多くのサービスがクラウド型で提供されており、必要な期間だけ利用料を毎月(または毎年)支払う形になります。無料で利用できるプランを提供しているものも多く、利用頻度や人数、使いたい機能を検討した上で、必要に応じて契約を行うと良いでしょう。既に自社でMicrosoft 365やG Suiteの契約をしているのであれば、付帯サービスであるMicrosoft TeamsやGoogle Meetを利用するとスムーズです。
運用体制の整備
社内でテレワークを運用するためのルール策定も必要です。どのように上司が部下を評価するのか、また勤務報告はどうするのか、などについて社内の規定を整備する必要があります。厚生労働省が公開している「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では、就業規則に労働条件を明示することや労働時間を適切に把握するための措置、労働災害における留意点などについて解説しています。正式なテレワーク導入に際しては、ほとんどの企業は労働基準関連法令への対応として就業規則を変更する必要があります。自社の就業規則を確認するようにしましょう。
また全ての従業員がテレワークを行える職種ではない場合、社内で不公平感がでないようにすることも重要です。パーソル総合研究所が2020年6月に公表した調査結果によると、テレワークを行っている人と出勤して仕事をしている人が混在する場合、上司は「業務の進捗が分かりにくい」、テレワークをしている従業員は「相手の気持ちが察しにくい」、出社している従業員は「さぼっていると思うことがある」など、社内で不信感や不安感が起きやすくなっています。
どんな立場の従業員も気持ちよく仕事できるようコミュニケーションツールなどを上手に活用しながら、不満や不安を持たせない運用体制を整備できるかどうかがポイントになるでしょう。
テレワークの環境構築にも活用できる「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)」
テレワーク環境で安全に職場データを利用する方法として、シンクライアント方式による接続も増加しています。これはテレワーク先から仮想のデスクトップ環境へアクセスし、そこから社内ネットワークに入る方法です。直接テレワーク先のPCと職場ネットワーク間の接続がないため安全性が高い方法です。
マイクロソフトでは、Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)を提供しています。これはDaaS(Desktop as a Service)と呼ばれるサービス提供形態で、テレワーク先のPCにデータが残らないためセキュリティ面で安全性が高いことに加え、オンプレミス環境で仮想デスクトップを用意するよりも低コストで運用が可能です。
まとめ
テレワーク環境としてはネットワーク環境やセキュリティ対策を行うのはもちろん、従業員が気持ちよく働けるようなコミュニケーションツールの導入なども欠かせません。自宅で仕事をしていても孤独にならず、正しく評価してもらえる仕組みづくりをすることが企業には求められています。