クラウド移行(インフラ・DB)

クラウド移行ツールとは?選び方やメリットも解説

近年クラウドを活用する企業が増えています。クラウドの利用に前向きであるにもかかわらず、クラウド移行ツールの選定に悩む企業担当者も少なくないかもしれません。

本記事では、クラウド移行ツールの概要と選定法について詳しく解説します。自社の規模や目的に合うツールを見極め、あらゆる最適化に向けた取り組みを実行しましょう。

クラウド移行ツールとは?選び方やメリットも解説

クラウド移行 まるわかりガイド

クラウド移行ツールとは

クラウド移行ツールとは、オンプレミスで利用しているシステムをクラウドへ移行させるために有用なツールです。クラウドへの切り替えを検討していても、データの移行がハードルとなってなかなか踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。クラウド移行ツールは、このような企業の悩みを解決に導くサービスです。

クラウド移行ツールは、クラウド事業者が提供しているツールとサードパーティー製との2種類があります。クラウド事業者が提供するツールは、提供元企業のクラウド移行に特化しています。一方、サードパーティー製の場合は、複数サービスへの移行をサポートしているのが特長です。

クラウド移行ツールの選び方

クラウド移行ツールの中には、移行元・移行先のシステムやその規模により、相性の良し悪しがあります。ここでは、自社のシステムに合う移行ツールを選定する際のポイントについて紹介します。

マルチクラウドが可能なシステムか

オンプレミスとクラウドの双方を両立できるシステムであるかどうかは、非常に重要なポイントです。いくつかのクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」の運用形態を採用して最適化を図る企業は近年多くなっています。今後はさらにクラウドの活用が促進していくと予測されるため、マルチクラウドを前提としてツールを選ぶとよいでしょう。

どのシステムを移行するか明確にする

クラウドを導入する際には、クラウドでどのデータを扱うのか、どこまでのシステムをクラウド化するのかといったように、あらかじめ導入範囲を明確にしておく必要があります。特に重要度の高いデータについては、セキュリティの問題も含めてどちらで扱うのかを入念に検討しなければなりません。

このような移行戦略を考える際には、現在企業が抱えている課題がクラウド化により解消されるのかどうかで判断します。なお、社内規定に関するコンプライアンスで決定するケースもあるでしょう。どのアーキテクチャを採用するかについては、AWSがいくつかの概念を示しています。

既存するオンプレミスのアーキテクチャを変更せずそのまま移行するリホスト、既存の機能を残してクラウド上で実行できるようアップデートするリプラットフォームなどです。また、最も効果が見込めるとされているリファクターは、既存システムのアーキテクチャに変更を加えず、クラウド事業者のサービスが使えるように修正を加えるものです。

カスタムできないアプリケーションは移行時に購入する必要があり、これをリパーチェスと呼んでいます。これらのパターンを適切に組み合わせながら、クラウド環境の最適化を目指すことでさまざまなメリットが得られるのです。

長時間の停止が許容できるシステムか

移行プロジェクトの規模やパターンによっても最適な手法は異なります。たとえば、数台程度の移行で長時間にわたる停止時間が許容できる場合には、仮想マシンをOVF(Open Virtualization Format)へ変換してからクラウドで展開する方法が適しています。この方法を選択すれば、クラウド側でシステムを別建てする手間が必要ありません。ただし、OVFにエクスポートする時間がかかり、その間は作業の停止時間が発生します。

また、数十台規模の移行でダウンタイムを最小限に抑えたいのならば、リアルタイムでデータを複製するデータレプリケーション方式の移行が有効です。クラウド上にシステムを別建てする手間はかかりますが、サードパーティー移行ツールを活用することで手間が軽減できます。さらに長時間の移行作業を要する大規模なシステムの場合、作業の負荷を軽減するハイパーバイザー(hypervisor)の機能を用いるとスムーズな移行が実現できます。

ハイパーバイザーとは、サーバーを仮想化する方法のひとつで、メンテナンス時にもよく活用される技術です。システムの整合性を維持しながら、業務を停止することなくクラウドへの移行を完了できます。ただし、ハイパーバイザーの移行機能は制約の多さがネックとなるケースもあるため、高速なネットワーク回線が確保できるかどうか、事前に確認しておきましょう。

クラウド移行のメリット

クラウドへの移行は、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。既存のオンプレミス環境からクラウドへ移行するには相応の準備が必要であり、少なからずリソースに負担がかかります。しかし、多くの企業がクラウドへの移行を進めている理由は、それなりのメリットが得られるからにほかなりません。

ハイブリッドクラウドが可能

プライベートクラウドパブリッククラウドを併用するハイブリッドクラウドの構築が可能になります。クラウドへの移行が加速する一方で、オンプレミスの重要性も見直されてきています。そこで誕生したのが、オンプレミスとクラウドの両方を利用してシステムを構築するハイブリッドクラウドという手法です。

ハイブリッドクラウドのメリットは、コストを抑えながらセキュアな環境を実現できる点です。たとえば、重要度の高いデータはプライベートクラウドへ、優先順の低いデータはパブリッククラウドで保管するといったように分けると、安全性を確保しながらコストの削減も実現できます。

現在オンプレミスで運用している企業であれば、パブリッククラウドを災害対策として活用するのも有効な手段です。地震や火災といった自然災害だけでなく、マルウェア感染でシステムが打撃を受けた場合でも、物理的に異なる地域でデータのバックアップが取られていれば、早急な回復を目指せます。このように、用途に合わせて使い分けられるようになるのも大きなメリットです。

ランニングコスト削減につながる

オンプレミスの採用は、サーバーの構築に費用がかかるだけでなく、運用・管理のために知識のある人材確保を確保する必要があり、その人件費もランニングコストとして含まれます。一方クラウドの場合は、システム構築のために必要な費用を抑えられ、メンテナンス作業を自社で担う必要もなくなります。

ただし、単にクラウドへ移行したからといってコスト削減が実現するわけではありません。移行を検討する際には、現在のシステムの要件の洗い出しを行い、導入するクラウドとマッチしているかどうかを検証する必要があります。また、利用状況に合わせてシステムを変更できたり、必要に応じたサーバーのスケールアップ・ダウンがしやすかったりする点などもチェックしておけば、あらゆるコスト削減につながるはずです。

障害発生した際の復旧対応が不要

オンプレミス環境では、システム障害などの発生時にサービスが停止するリスクが高まります。トラブルが起きた際には、迅速な復旧を目指してリソースを投入しなければならないため、生産性の低下も免れません。クラウドサービスを活用すれば、事業者側で復旧作業を行ってくれるため、情報システム部門は通常業務に注力できます。

災害時のデータの保全やBCP対策においてもクラウドの活用は有効です。自社が何らかの災害により被害を受けてしまっても、離れた場所にサーバーがあることで、復旧までの時間を大幅に短縮できます。また、クラウド事業者の設置するデータセンターは、防災設備が非常に強固であるため、災害時の安全性が確保されています。

なお、データセンターと自社の距離が物理的に離れているほど地域的なリスク分散に効果的です。自社でBCP対策に取り組むには、膨大な労力を要するとともに、必要なシステム導入のためのコストもかかります。このような理由から、近年クラウドの活用がBCP対策としても注目を集めているようです。

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まとめ

クラウド移行ツールを活用すれば、企業のデータ移行が素早く行えます。移行作業の前には、システム要件の洗い出しを行うとともに、どのシステムをクラウドに移行させると効果的なのかを検証する必要があります。クラウドのメリットをうまく活かしながら、可用性の向上を目指しましょう。

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