AI、機械学習

生成AIの使用におけるリスクとは?対策もあわせて解説

生成AIの使用におけるリスクとは?対策もあわせて解説

近年、生成AI技術の進展により、テキスト・画像・音声などのコンテンツを自動生成することが一般化しつつあります。

しかし、これらの利用・サービス提供に伴う著作権侵害のリスクも増加しており、企業としてこれらのリスクを適切に管理する必要があるでしょう。

本記事では、生成AIで生成したコンテンツに対する責任について、「利用する企業」と「生成AIサービスを提供する企業」の両側面から解説していきます。

AIの効果的な活用方法とは? 製造業の未来を支えるテクノロジー

生成AIとは

生成AIとは

生成AIとは、新しいデータやコンテンツの生成を目的とした人工知能技術の総称です。

生成AIは、大量に与えられた学習データをもとにディープラーニング(深層学習)や機械学習の技術を用いて、新しいデータやコンテンツを生成します。

従来までのAIでは明確な回答を用意し、AIにその回答を記憶させ、予測回答する方式が主流でした。そのため、オリジナルコンテンツの作成はできず、予め用意された回答しかできませんでした。

その点、ディープランニングを活用する生成AIは、自ら考え、テキスト・画像・音声・動画などのさまざまな形式のコンテンツを生成できます。

企業が直面する生成AIのリスク|セキュリティ

企業が直面する生成AIのリスク|セキュリティ

生成AIを利用する上で、最も注意したいのはセキュリティに関するリスクです。以下で、具体的に解説していきます。

セキュリティリスク

生成AIは、与えられた情報にもとづいて、規則的なパターンやルールを見つけその情報を元に次の回答を作成していきます。

与えられた情報を元に次の情報を予測するため、生成AIに社内の機密情報などを入力してしまうと、別の生成AI利用者の回答に機密情報が使用されてしまう可能性があり注意が必要です。

生成AIはオリジナルなテキスト・画像・動画などのコンテンツ生成が魅力ですが、これらの回答は過去の経験や事象から導いたパターンやルールにもとづいて生成されたものであるため、必ずしも真実であるとは限りません。生成AIのコンテンツを鵜呑みにし、そのまま情報を公開することはリスクが高いので注意しましょう。

セキュリティリスクの例

AIチャットボットなど、外部からアクセスできる生成AIを運用している場合、不正なアクセスが行われると、機密情報が漏えいしてしまう危険性があります。

また、セキュリティリスクは、機密情報の漏えいだけでなく虚偽情報の発信もありえます。前述したように、生成Aによる情報Iは、正確ではない場合があったりディープフェイク技術などによる実在しない情報が生成されてしまったりする可能性があるのです。

実際に、海外の多国籍企業では38億円もの被害が報告されています。これは、上司からオンライン会議で指示を受けて行った送金ですが、この上司がAIで生成された偽物だったのです。送金した会計担当者だけでなく、会議に参加していた他のメンバーも上司本人だと認識するほど見分けがつかなかったそうです。

ほかにも、生成AIのセキュリティリスクに関する事例は多く報告されています。
そのため、生成AIを利用する際はガイドラインの制定や入出力データのモニタリングがとても重要です。

企業が直面する生成AIのリスク|著作権侵害

企業が直面する生成AIのリスク|著作権侵害

生成AIによって生成されたコンテンツは、オリジナルコンテンツであっても、完全にオリジナルなのかといわれると不確実なものがあります。大量の学習データを元に、開発が行われるため、第三者の著作物に類似し著作権侵害のリスクが生じるのです。

以下で、具体的に解説していきます。

著作権侵害のリスク

著作権侵害のリスクには、大きく分けて2種類の側面が存在します。

「利用する企業としてのリスク」と「生成AIサービスを提供する企業としてのリスク」です。

利用する企業としてのリスク

生成AIは、大量の既存データからパターンデータや規則、ルールを学習しオリジナルコンテンツを生成します。しかし、世の中に公開されている情報が元になるため、他の著作物と類似した内容が提供される可能性があります。

このことから、完全一致はしていなくても、類似コンテンツとして著作権侵害のリスクが生じるため注意が必要です。

サービス提供企業としてのリスク

生成AIの開発には、ディープラーニング技術を用いて大量の学習データを元に規則性やパターンの解析を行います。

その際に使用される学習データは、著作権で保護されている著作物(記事やレポート、情報)であっても2024年5月現在の日本国内の法律では、利用が認められています。

しかし、情報元の利用規約や著作者の権利・利益を侵害してしまう場合などには、違反となる可能性があるため、十分に留意が必要です。

著作権侵害のリスクの例

それぞれの側面でリスクは異なると同時に、それに対する事例を詳しく解説していきます。

利用する企業としてのリスク例

生成AIが作成したコンテンツが既存の著作物に酷似している場合に、そのコンテンツは著作権侵害と見なされる可能性があります。

具体的には、生成されたテキストが既存の記事の一部をそのままコピーしているなどの場合です。

サービス提供企業としてのリスク例

生成AIの開発用に使用した学習データが、利用規約により利用範囲が制限されている場合に、無断使用すると著作権侵害に該当する可能性があります。

企業が直面する生成AIのリスク|生成したコンテンツに対する責任

企業が直面する生成AIのリスク|生成したコンテンツに対する責任

生成AIの利用に伴う著作権侵害やその他のリスクを軽減するために、利用する企業と生成AIサービスを提供する企業の両方がコンテンツに対して責任を持つ必要があります。

以下で、具体的な内容を解説していきます。

生成したコンテンツに対する責任のリスク

まずは、生成AIで作成したコンテンツにどのような責任を持つべきかについて解説します。

利用する企業としてのリスク

利用する企業は、生成AIが生成したコンテンツが著作権を侵害していないか、不適切な情報や表現がなされていないかを確認する責任が生じます。

サービス提供企業としてのリスク

生成AIを開発する際に、利用した学習データの情報元の利用規約を確認し、規約違反に該当しないか常に確認する責任が生じます。

また、場合によっては生成AIサービスの利用者にも、同様の利用規約を順守してもらえるように、サービス利用規定の制定などの対応が必要です。

生成したコンテンツに対する責任のリスク例

次に、生成AIで作成したコンテンツの責任の具体例についてご紹介します。

利用する企業としてのリスク例

生成AIを利用した広告作成や、ニュース記事・解説記事を作成した際に公的秩序に反する表現があるなどが考えられます。

サービス提供企業としてのリスク例

生成AI開発用の学習データの多くには「商用利用しなければOK」などの使用条件が明記されていることがあり、サービス利用者にも使用条件について利用前に同意してもらう必要があります。

生成AIのリスクに対する対策

生成AIのリスクに対する対策

生成AIの利用には、いくつものリスクが伴いますが、適切な対策を行うことで、リスクを適切に管理し、安全かつ効果的にAI技術を活用することが可能です。

以下では、「セキュリティリスク」「著作権侵害のリスク」「生成コンテンツに対する責任」の3つの観点から、必要な対策処置について解説していきます。

セキュリティリスクへの対策

セキュリティリスクへの対策は、以下の3つの対策が有効的です。

  • 入出力データのセキュリティ
    生成されたコンテンツを保護するために、暗号化技術を用いて、データの保存・転送・処理を暗号化することで、不正アクセスを防げます。

    大手のIT企業が提供するクラウドサービスでは、標準で暗号化技術が適用されるため、簡単にデータセキュリティを強化可能です。
  • 生成AIシステムへのアクセス制御
    生成AIシステムにアクセスできるユーザーを適切に管理し、不審なクライアントの侵入を防げます。認証と認可の仕組みを導入し、アクセス権限を最小限にすることがおすすめです。
  • 生成AIシステムの脆弱性管理
    定期的にセキュリティテストやペネとレーションテストを実施し、生成AIシステムの脆弱性を特定、修正することが大切です。

    テストで脆弱性が見つかった際には、迅速にセキュリティパッチを適用させます。

著作権侵害のリスクへの対策

著作権侵害へのリスク対策は、以下の3つの対策が有効的です。

  • 生成AI開発用の学習データの利用規約確認
    生成AI開発に利用される学習データは、適切な方法で入手したものであり、利用規約を確認することが大切です。

    オープンソースデータや適切な利用規約が定義されたデータのみを活用するようにしましょう。例えば、Open AIの学習データは利用者に対してデータの信頼性や利用条件が明確であり、著作権侵害のリスクを低減できます。
  • 生成されたコンテンツの検証
    生成AIによって作成されたコンテンツは、必ず既存の著作物のコピーではないか、検証する工程を導入するべきです。生成されたコンテンツを自動的にスキャンし、該当するドキュメントがないかをチェックするとよいでしょう。
  • 利用者ガイドラインの提供
    社内で生成AI利用ガイドラインを制定し、著作権侵害をしないための適切な利用方法や、生成データの管理方法、活用方法を明確化しておきましょう。

生成したコンテンツに対する責任リスクへの対策

生成したコンテンツに対する責任リスクへの対策は、以下の2つの対策が有効です。

  • 責任所在の明確化と定義
    生成AIサービスを提供・利用するときは、利用規約を策定し、生成されたコンテンツに対する責任の範囲を明確に定義する必要があります。

    事前に利用規約に同意することで、万が一の際にも定義通りの対応が可能です。生成AIのコンテンツは常に、これまでに紹介したリスクと隣り合わせである点を理解しておきましょう。
  • 法的コンプライアンスの順守
    著作権侵害に該当しなければ、どんなことをしてもよいというわけではありません。生成AIのコンテンツの利用は、現行の法律及び規制に準拠できているかを確認する必要があります。

    また生成AI関連法規は作成されたばかりです。そのため、今後は定期的に改訂が行われます。常に情報に敏感になり、対応すべき内容に漏れがないようにすることが重要です。

    必要に応じて、法務部門と連携して生成AIの利用に関する法的リスクを評価するなど、コンプライアンス順守に努めましょう。

生成AIリスクに関するガイドラインの記載事項

生成AIリスクに関するガイドラインの記載事項

生成AIリスクに関するガイドラインを策定する際には、社内情報や個人情報の入力規制と作成した情報の利用範囲は重要な観点です。

以下で、具体的に解説しているのでぜひ参考にしてください。

社内情報や個人情報の入力規制

以下の3つの観点を含めるようにしましょう。

  • 生成AIシステムへのデータ入力規制
    社内情報や個人情報を含むデータの入力は、必要最小限にとどめるべきです。
    必要なデータのみを収集し、他のデータは収集しないか、匿名化するなどの手段を用いて個人を特定できないようにする規制を行うようにしましょう。
  • 生成AIシステムへのアクセス制限と権限管理
    社内情報や個人情報を扱える人員には、アクセス権の制限を必ず設ける必要があります。最小限の人員で構成し、必要な場合のみアクセス権を付与するという運用を行いましょう。
    また、システムへのアクセスログを管理し、定期的に不正アクセスを検出できるようにすることも大切です。
  • 暗号化とセキュリティ対策の方針
    入力されたデータは暗号化し、高いセキュリティ対策環境下で保管される点を明記しましょう。データ転送時や保存時にセキュリティプロトコルを使用し、漏えいや改ざんを防止できます。

作成した情報の利用範囲

以下の3つの観点を含めるようにしましょう。

  • 明確な利用目的の定義
    生成された情報の利用目的・利用範囲を明確に定義しておきましょう。その目的以外の用途に利用しないようにすることで、セキュリティ事故を防げます。

    また、規定範囲外の利用目的が実行される際には、事前に関係者が把握できる体制を整える必要があります。
  • 情報の真偽を確認する
    生成AIが作成したコンテンツには、虚偽情報が含まれている可能性があるため、情報の正確性に関して必ず人の目で確認する必要がある点を明記しておきます。

    生成AIは、自動でコンテンツ生成を行え便利ですが、情報の正確性には欠けるため、運用上の注意が必要です。
  • 情報の共有と外部提供の制限
    生成されたコンテンツは、必要以外の利用者と共有するべきではありません。関係者のみで共有するべきものである点を明記しておきましょう。

    特に、外部への生成コンテンツの提供は、慎重に検討するべき内容です。社内であれば、情報の適用範囲の規制が可能ですが、1度社外へ出た情報は修正や削除が難しくなります。

生成AIに関する国内外の対応

生成AIに関する国内外の対応

 

日本国内では、AI倫理ガイドラインの策定が総務省や経済産業省によって行われています。また、政府支援のプログラムや大学・企業と連携し、研究開発も進行しています。

一方で海外では、下記のような施策が加速してきている状況です。

  • 欧州連合(EU):AI法案の策定、論理ガイドラインの導入
  • 米国:大統領令によるAI開発推進
  • 中国:AI技術の国家戦略化や大規模な研究開発投資

この流れは、国外・国内問わず今後もますます加速し続けると予測されています。

Azureを活用した生成AIのリスク対策

Azureを活用した生成AIのリスク対策

Microsoft社が提供するAzureにおいて、生成AI技術のセキュリティを強化する方針のもと技術が作成されています。具体的には、悪意のあるプログラムコードや生成された悪質なコンテンツなどを除外できるセキュリティ対策です。

Azureのセキュリティ機能とその利点

Azure Security Centerでは、クラウドワークロードのセキュリティ状態を常に監視し、脅威を検出して対応するための機能です。
これにより、生成AIの実行環境のセキュリティを一元管理でき、脆弱性への迅速な対応が可能になります。

Azureを使った具体的なリスク管理手法

Azure Policyを使用して、生成AIの運用環境が組織のセキュリティポリシーや法規制に準拠できているか評価することができます。

これにより、設定ミスやコンプライアンス違反のリスクを大幅に軽減しリスクを適切に管理することが可能です。

まとめ

本記事では、生成AIで生成したコンテンツに対する責任について「利用する企業」と「生成AIサービスを提供する企業」の両側面から解説しました。

近年、生成AI技術の進展により、テキスト・画像・音声などのコンテンツを自動生成することが一般化しつつあります。著作権侵害のリスクも増加しており、企業としてこれらのリスクを適切に管理する必要があります。

本記事を参考に、生成AIに関するさまざまなリスクに対応できるようにしましょう。

  • fb-button
  • line-button
  • linkedin-button

無料メルマガ

関連記事

VDI(仮想デスクトップ)とシンクライアントとの違いは?各方式の特徴
仮想デスクトップ
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い、メリット・デメリットも解説
ハイブリッドクラウド
VDI(仮想デスクトップ)導入時のメリット・デメリットをわかりやすく
仮想デスクトップ
大規模なVDIを成功に導くポイントとは?導入失敗から学ぶ法則を紹介
仮想デスクトップ
製造部門がCAD環境をVDI化するメリット
仮想デスクトップ
Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)にCitrix Cloudを組み合わせるメリットとは?
仮想デスクトップ
仮想デスクトップを導入するメリットについて【ユーザー視点、管理者視点で解説!】
仮想デスクトップ
DaaSとは?VDIとの違いについても解説
仮想デスクトップ
M³DaaSが実現する「リモートPCアクセスサービス」
仮想デスクトップ
主要クラウド型VDI(仮想デスクトップ)を徹底比較!
仮想デスクトップ
Horizon Cloud on Azureとは?AVDとの違いも解説
仮想デスクトップ
VMware Horizonとは?その基本を解説
仮想デスクトップ
戦略的アウトソーシングでIT部門をモダナイズ化
クラウド移行(インフラ・DB)
導入前におさえておくDaaSのメリット・デメリット
仮想デスクトップ
AVDの導入から運用まで成功に導くLakeside SysTrackとは?
仮想デスクトップ
これで解決よくある仮想デスクトップの運用課題
仮想デスクトップ
デスクトップ仮想化とアプリケーション仮想化の違い
仮想デスクトップ
VDIはなぜ失敗するのか?その代表的な理由を紹介
仮想デスクトップ
インターネット分離とは?AVDの登場で身近なセキュリティ対策へ
仮想デスクトップ
RELATED SITES

関連サイト

CONTACT

サイト掲載の
お問い合わせ

TOP