アプリケーションの開発や運用には、サーバーが欠かせません。しかし、チームの規模が大きくなれば、より多くのリソースが必要となります。
そこで昨今注目されているのが、「VMware Tanzu」です。本記事では、VMware Tanzuの概要からメリットまで、幅広くお伝えします。
VMware Tanzuとは
VMware Tanzu(ヴイエムウェアタンズ)とは、クラウド・仮想化技術を得意とするVMware社が提供しているソフトウェアです。主に、「コンテナ」によって仮想化されたアプリケーションのデプロイや管理を効率化する目的で使われます。
VMware Tanzuの重要な役割は、コンテナの運用に用いられる「Kubernetes」をサポートすることです。ほかにも、可用性や拡張性に優れた「モダンアプリケーション」の開発を支援する機能もあります。
コンテナとは?
コンテナとは、1つのOS上に複数のアプリケーション実行環境を構築できる仮想化技術です。通常の仮想サーバーでは、各ノードに独立したOSが割り当てられます。それに対してコンテナは個別のOSを持たず、物理サーバーが持つ1つのOSを共用するのが大きな特徴です。
仮想サーバーでは各ノードのOSがリソースを消費しますが、コンテナはOSの数が増えない分、軽量で1つの物理サーバーにより多く配置できます。さまざまなアプリケーションを効率よく運用するのに適しており、昨今のクラウドサービスには欠かせない技術です。
VMware TanzuとKubernetesの関係性とは?
Kubernetes(クバネティス)とは、コンテナ化したアプリケーションのデプロイや管理を行うプラットフォームです。ただし、Kubernetesを既存のオンプレミス環境で動作させるためには、多くの設定やセキュリティ対策が必要となります。
Kubernetesのこうした問題を解決するのが、VMware Tanzuです。VMware Tanzuを利用することで、さまざまな環境でKubernetesを扱いやすくなるでしょう。オンプレミス・クラウドを横断した管理なども可能となり、運用の負担を軽減できます。
VMware Tanzuのエディション
VMware Tanzuとしては2022年1月現在、下記3種類のエディションが提供されています。それぞれについて、順番に解説します。
- Tanzu Basic Edition
- Tanzu Standard Edition
- Tanzu Advanced Edition
Tanzu Basic Edition
「Tanzu Basic Edition」とは、主にオンプレミス環境におけるKubernetesの運用を効率化するエディションです。サーバー仮想化ソフトウェア「vSphere」により構築された既存のインフラ上でKubernetesを操作できるため、移行作業の負担を軽減できます。
Kubernetesを既存インフラで操作することで適正なコンテナ制御が可能となり、リソースの最適化につながるでしょう。
Tanzu Standard Edition
「Tanzu Standard Edition」とは、vSphereだけでなくマルチクラウド環境でのKubernetes操作も可能なエディションです。オンプレミスやクラウド、エッジ(端末機器)など多くの環境をまたいだコンテナ管理が行えます。
また、データ保護やポリシー管理機能も持ち、セキュリティやガバナンスが強化されているのも特徴の1つです。Kubernetesの運用を効率化するのに適したエディションだと考えられます。
Tanzu Advanced Edition
「Tanzu Advanced Edition」とは、より大規模なKubernetes運用を効率化できるエディションです。コンテナの構築機能が追加されていることに加えて、ライフサイクル全体にわたりコンテナを保護できます。
特に、開発チームと運用チームが連携する「DevOps」によりソフトウェア開発を行っている企業に適したエディションです。Kubernetesの運用が効率化されることで、開発者が開発だけに専念しやすくなるでしょう。
VMware Tanzuの主要なポートフォリオ
VMware Tanzuは、さまざまなコンポーネントで構成されています。VMware Tanzuのポートフォリオにおける主要な3つのコンポーネントについて、順番にご紹介します。
- Tanzu Kubernetes Grid
- Tanzu Mission Control
- Tanzu Application Catalog
Tanzu Kubernetes Grid
「Tanzu Kubernetes Grid」とは、複数のクラウドをまたいだKubernetes運用を可能にするコンポーネントです。オープンソースのKubernetesをベースに作られたコンテナランタイムで、コンテナのライフサイクル管理が行えます。
また、オンプレミス・クラウド・エッジのいずれでも実行でき、あらゆる場所でのKubernetes環境構築を支援します。
Tanzu Mission Control
「Tanzu Mission Control」とは、さまざまな環境にある「Kubernetesクラスタ」を一元管理できるコンポーネントです。Kubernetesクラスタとは、コンテナ化されたアプリケーションを実行できるノードのまとまりを指します。
APIを経由することでKubernetesクラスタの作成やライフサイクル管理が行えるでしょう。また、複数の環境をまたいでKubernetesクラスタに運用ポリシーを適用することも可能です。
Tanzu Application Catalog
「Tanzu Application Catalog」とは、企業におけるオープンソースソフトウェアの活用を支援するコンポーネントです。開発支援ツールやランタイム、データベースなど、オープンソースソフトウェアであれば種類を問いません。
オープンソースソフトウェアの脆弱性を診断したり、利用できる形式に変換したりします。また自動的にアップデートされるため、開発を継続的に効率化することが可能です。
VMware Tanzuのメリット
VMware Tanzuのメリットについてはある程度触れてきましたが、ここで改めて整理しましょう。主なメリットは、下記の3つです。
- モダンなアプリケーション開発に必要な機能
- 高度な自動化
- セキュリティ性が高い
それぞれ、順番に解説します。
モダンなアプリケーション開発に必要な機能
VMware Tanzuを用いることでモダンアプリケーションの開発も行えます。モダンアプリケーションとは、大量の同時アクセスにも対応できる可用性や、レスポンス遅延のない俊敏性を持ち合わせた新しいアプリケーションです。
Tanzu Application Catalogなどを用いることで、モダンアプリケーション開発におけるデリバリーの高速化が実現します。アプリケーションをモダン化すれば、ユーザー体験の向上につながるでしょう。
高度な自動化
VMware Tanzuは、高度な自動化により開発や運用の負担を大幅に軽減します。コンテナの作成や管理、ガバナンスはもちろん、オープンソースソフトウェアの活用なども自動化が可能です。
また前述のモダンアプリケーション開発を実現すれば、サーバーレス(サーバーを意識しない)なアプリケーションの運用が可能となります。結果として、開発者がインフラの管理に時間を取られることもなくなるでしょう。
セキュリティ性が高い
セキュリティ性の高さも、VMware Tanzuが持つメリットの1つです。コンテナや各種データを保護するための機能が充実しており、セキュリティ対策を個別に講じる負担を軽減できます。
また、単一の制御ポイントからKubernetesクラスタの管理が行えるため、セキュリティを確保しやすくなるでしょう。モダンアプリケーション開発を実現すれば、コンポーネントレベルでテストやデプロイが可能となり、インフラへの影響も抑えられます。
Microsoft Azure上でVMware Tanzuを活用可能
VMware Tanzuは、「Microsoft Azure」上での活用も可能です。Microsoft Azureとは、インフラ構築や高度なデータ活用を実現するクラウドサービスで、VMware Tanzuにも対応しています。
アプリケーションの構築や実行、管理が行えるのはもちろん、MicrosoftとVMwareによる統合的なサポートが受けられるのも魅力です。海外だけでなく、国内の導入も増えています。アプリケーションの開発や運用に欠かせないインフラを革新するソリューションとして、検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回はVMware Tanzuの概要からメリットまで、幅広くお伝えしました。
VMware Tanzuとは、コンテナによって仮想化されたアプリケーションのデプロイや管理を効率化するソフトウェアです。エディションはBasic・Standard・Advancedの3種類あるため、企業に合ったものを選びましょう。